2016年08月26日

反戦セッション『ジャズ大名』



 『シン・ゴジラ』の影響でにわかに岡本喜八監督の再評価が起きている昨今、レンタルDVDやアマゾンプライムなどで喜八映画に初めて触れようとする人たちがいるとのこと。まっすぐ『日本のいちばん長い日』や『独立愚連隊』を見るのはまだしも、『ブルークリスマス』なんか見ちゃった日には「なんだこりゃ」となるのは必死!なので僕としては『ジャズ大名』あたりからお勧めしたい。

 南北戦争が終了、黒人奴隷としてこき使われていたトロンボーン吹きのジョーは「俺は自由だ!」と歩いている途中で同じく解放された兄のサム、従兄弟のルイ、叔父のボブと再会する。彼等の台詞は英語に日本語の吹き替え(石川あたりの方言)が被さる形。
 4人は祖国アフリカへ帰ろうとする旅の途中でメキシコ人の商人アマンド(ミッキー・カーチス)に出会い、俺の知り合いの船にただで乗せてやるから代わりに音楽をやってくれと言われ、喜んでついていくが乗せられた船は日の沈む西側に進んでいた(アフリカは南)。彼等はだまされていたのだ。クラリネット吹きの叔父ボブが病で死んでしまい、嵐に遭ったのをこれ幸いとジョーたちは小舟に乗って逃げ出す。

 気がつけばジョーたちは駿河の国庵原藩に漂着。助けられた彼等は藩主・海郷亮勝(古谷一行)の城内に匿われる。幕末の最中、珍客の処遇に窮した家老の石出九郎左衛門(財津一郎)は江戸にお伺いを立てるもそれどころではない江戸は藩主に一任させる。亮勝は世情に疎く、そんなことより愛用の篳篥(縦笛)を吹いていたいという藩主なので黒人の持つ楽器や音楽に興味が湧き、なんとか会おうとするが家老は会わせようとしない。
 江戸に預けている亮勝の奥方が世継ぎを産んだとの知らせが参り、藩主らは喜びに沸くが亮勝の妹・松枝(岡本真実。彼女のはっちゃけ演技が見事)は「子供は十月十日で生まれるもの。一年がかりで生まれた子供の話など聞いたことがない」と一蹴。亮勝が江戸に詰めていた日数と合わず、奥方の不義密通が疑われる。監督不行届の責任を取って切腹しようとする九郎左衛門を亮勝は止め、代わりに黒人たちと引き合わせることに。
 亮勝は黒人らから叔父ボブの壊れて音が出ないクラリネット(笑)を渡される。鈴川(本田博太郎)の通訳で「この楽器には篳篥の葦舌(リード)のようなものがないのだ」と自分の篳篥から葦舌を外してクラリネットにつけると音が出た!亮勝は思いのままにクラリネットを吹き続ける。朝から晩まで!

 戊辰戦争が激化し、幕府に続く街道にある庵原藩は幕府軍、薩長軍の通り道になっているので両軍が通り道に使うのであるが、亮勝は「ここをただの道にするのだ。幕府も薩長も自由に通ってもらえ」と城内に通り道をつくるよう命令。九郎左衛門は殿の部屋も潰すのか聞いたところ亮勝は「無用。余にはこれさえあればよい」とクラリネットを振りかざす。

 あっという間に城内に通り道が出来、それを「東名高速の前身」「バイパス開通」といったギャグにしてしまうセンスにはひっくり返った。城内には三味線、琴、鼓、果てはそろばん、動物の骨といったものまで駆使したジャム・セッションが始まる。「あんなどんちゃか騒ぎを…」と言っていた九郎左衛門までもが山鹿流陣太鼓を繰り出してセッションに参加してしまう!
 その頃城の通り道では幕府軍と薩長が激しく斬り合いをしていた。それをよそにジャム・セッションは狂乱の度合いを増していく。愚かな殺し合いをあざ笑うように人種も身分も飛び越えたセッションの方が楽しそうに見えるという反骨のメッセージが軽快なジャズのリズムに乗って届いてくる。
 冒頭でくらいブルースをやろうとする叔父たちに「そんな悲しげな曲じゃねっしゃ。もっと跳びはねるような陽気な、陽気な」というジョー。ひたすら暗くて陰鬱な反戦映画が多い中、底抜けに明るいトーンで描かれる本作は岡本喜八の奇才ぶりが伺える。岡本喜八を知らない人が今見ても充分楽しめるぞ。イェーイ!!


  


Posted by 縛りやトーマス at 00:19Comments(0)映画音楽旧シネマパラダイス

2016年08月25日

懺悔展

 久米田康治先生の画集『懺悔展』発売記念の作品展『一挙後悔中~さよなら久米田先生~』の大阪展が開催中。



http://gofa.co.jp/art/160702_kumetaten/index.shtml

 海岸通ギャラリーCASO、スペースB,Yにて9/4まで。『南国アイスホッケー部』から最新作『かくしごと』まで、原作担当の『なんくる姉さん』『じょしらく』に至るまでの原画展示、高精細出力画展示、画集の特典付き販売、展示会記念グッズの販売、コラボカフェメニューの販売。
 意外にも普通の漫画家みたいなことをしているので驚いた(笑)。絶望した!原画展で昔の仕事で小銭稼ぐ普通の漫画家みたいなことしている久米田に絶望した!しかし現地にいったらそんなことはなくてまた絶望するかも…過ぎゆく夏の締めくくりにいかがですか。


  


Posted by 縛りやトーマス at 14:48Comments(0)漫画

2016年08月23日

YouはShock!ペナントレースはすでに死んでいる!

 2016プロ野球ペナントレース。阪神は残り28試合の時点で4位。3位のDeNAとは3.5ゲーム差。CS出場に黄信号が灯っている状況で逆襲をかけるべく謎のコラボ企画を実施。


北斗の拳×阪神タイガース、監督を原哲夫描き下ろし&千葉繁がナレーション
http://natalie.mu/comic/news/198979
金本ケンシロウ大号令!“北條の拳”で3位を取り戻せ
http://www.sanspo.com/baseball/news/20160823/tig16082305030014-n1.html

 26日からの5位ヤクルトとの直接?対決を『北斗の拳ナイター』とし、原哲夫による世紀末救世主と化した金本監督が登場。

このクオリティ

 コラボグッズも販売され、当日はナレーションの千葉繁さんも来園して試合前イベントを盛り上げるという。なんか無駄に本気度が高いんですけど!
「201×年!甲子園は虎の咆哮に包まれた!」
「運命を切り開く男がいる! 天に背く男がいる! それは金本阪神二千年の宿命。見よ! 今このペナントの歴史に、終止符が打たれる!!」

 的なやつが聞かれるのかと思うと…

 しかしなぜ今になって北斗の拳なのかしら。しかも阪神、ヤクルトって4位5位だから今年の成績が世紀末じゃねえか。ペナントレースはすでに死んでいるって意味なのかな…


  


Posted by 縛りやトーマス at 10:32Comments(0)漫画野球

2016年08月21日

吠えろ重機!ドリルジャンボの世界

 『シン・ゴジラ』が異例のヒットを飛ばし続けている。公開直後よりも映画を見た人が口コミで作品の濃密さを伝え始めた二周目以降の数字が伸び、当初は25~30億程度ではと予想された興行成績も庵野総監督の前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を上回る55億越えが見えてきている。
 現代日本に巨大生物が実際に現れ被害を及ぼしたら政府はどう対策を取るか?というリアルなシミュレーションも去ることながら、後半に展開される重機を使用した対巨大生物作戦はアニメ風でもあり、現実世界でも可能と思わせるスペクタクルシーンでもあった。自衛隊の装備でもなく空想科学兵器でもない重機を使った作戦には特技監督・樋口真嗣が製作総指揮を担当した重機モノ作品『ロックドリルの世界 地底世界の超機械巨神』(なんちゅう大げさなタイトルや)を彷彿とさせる。



 これは削岩機、トンネル掘削機の国内どころか世界最大手のメーカーである古川ロックドリルのトンネルドリルジャンボを撮影した映像作品だ。総監督は樋口真嗣、監督は『ウルトラマンギンガS』『ウルトラマンX』『ウルトラマンオーブ』などで知られる田口清隆。テーマがドリルだからということでオーディコメンタリーには『天元突破グレンラガン』の監督、今石洋之が参加、ナレーションはグレンラガンの螺旋王役の池田成志が務めている。ドリルといえばこの人達!なメンツなのである。




 実際トンネルを掘るためのドリルはロボットアニメのような尖ってるやつではなく、シールドマシンかドリルジャンボで小さな穴を開け、そこに発破をしかける。
 本作は割と知名度のあるシールドマシンではなくドリルジャンボに焦点を当てている。なぜドリルジャンボの方なのかというと、見た目が単純にカッコいいのだ(笑)。



 これは作品中には出てこないが6ブームトンネルワークステーションというやつで、完全にロボットアニメに出てくるようなやつだ。巨大ロボット然とした外見にオタクの血が騒ぐ!今石洋之の「黄色と青いところで分離合体するんですよね!」と妄想を語り始める!
 このメンツなので当然特撮のドリルマシンについての話になり、ジェットモグラや本体に比べてドリルの小さいマシンでは穴は開けられないんじゃあ…などの話でウルトラセブンのマグマライザーはドリルが小さすぎるなどの話がみんなオタクなのでポンポン出てくる。



 今回の主役、JTH3RS-190EX3ブーム2ケージホイールジャンボの主力武器、じゃなかったブーム部分HD190油圧ドリフタ。
「煽りが轟天号っぽい」
 円谷特撮におけるメカ出動シーンを意識させるアングルでドリルジャンボを切り取っていく。このまま起動、合体変形となってもおかしくないノリ。



 配電盤ひとつ映すだけでもイチイチカッコいい。
「特殊なメカのように見えるけど配電盤」「(笑)」



「ガンヘッドみたい」
「その一言をどのタイミングで言うのかと(笑)」
「我慢できなくて…」
「誰が一番最初に言うのかと(笑)」

 そう、ドリルジャンボは外見はまんまガンヘッドで、ガンヘッドに色んな意味で魅了された人々はつい言わずにいられないのだった。パーティしようぜ!


せまい格納庫から登場するガンヘッド(嘘)

3本のブームはひとり1本ずつ操縦するため、こうやって3人並んで動かす

3本のブームは真上に穴を開けたりするために角度をつけられる

ライバル機登場(嘘)

海外輸出用の2ブームホイールジャンボT2RW-210

普通はこんなに伸ばさないらしいけど、絵作りのために「伸ばせるところまで伸ばして下さい」と田口、樋口がお願いした結果


 こちらの白いやつは油圧ドリフタが210と190よりすごい勢いであっという間に掘り進むそうです。



田口、樋口両名がふざけて作った激突シーン(笑)


ラストシーン、稼働時間を越えて使命を終えたドリルジャンボの墓場

 『シン・ゴジラ』で重機が大活躍している今こそ見直してほしい一本なのでみんなで見よう。ついでに『ガンヘッド』もな。

  


Posted by 縛りやトーマス at 20:38Comments(0)映画特撮・ヒーローオタク

2016年08月18日

20年間何も進歩しなかったのか『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』



 20年前に公開された『インデペンデンス・デイ』は大変な話題になり、当時まだあった大阪・北野劇場(関西最大の1,016席を誇った)の先行ロードショーに駆けつけた私は2時間近く前から並び、最前席を取った。シンプルな中にエイリアンをゲンコツでぶん殴るといった野蛮さも併せ持ち、感動すら覚える独立宣言のシーンに拳を突き上げた。絶体絶命の危機を団結の力で乗り越えるというのも万国の人間が納得できる内容だし、日本だけでも100億超えのヒットとなったのも理解できた。
 その続編である『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』はあんなにドキドキワクワクした映画の続編なんだからと期待していったが、20年前に熱狂した自分をゲンコツでぶん殴ってやりたい衝動にかられた。

 前作で撃沈したエイリアンの円盤から技術を得た地球軍はエイリアンと人類の技術を統合したハイブリッド戦闘機の開発や、太陽系の各惑星に対エイリアンの前線基地を設置し(まるで『謎の円盤UFO』か『ウルトラマンレオ』のMACみたい)、さらに強大な外敵からの侵略に備えていた。そして20年の月日が経過(実際の時間と同じ20年後を描いているのだ)
 20年前にアフリカ大陸に着陸していたエイリアンの円盤が突如起動し、信号を発した。前作の地球の勝利に貢献したデイヴィット・レヴィンソン(ジェフ・ゴールドブラム)率いる調査隊は宇宙にいる別働隊への連絡ではないかと推測。月の上空に謎の巨大球体が現れ、アメリカ大統領ランフォード(セーラ・ウォード)はレヴィンソンの「あれは侵略者のものではない」という忠告を聞き入れず破壊命令を下す。レヴィンソンらは破壊された中からコアとなる球体を回収するが、エイリアン本体の母船が出現、レヴィンソンらの乗る戦闘機は母船の引力に捕らえられたまま地球に降下、母船の攻撃により地球の主要都市は壊滅状態に追い込まれる。


 20年もかけて準備していた月基地があっさり破壊される描写にはまさしくウルトラマンレオのMAC全滅を思い出さずにいられない。あのMACステーションは侵略してくる宇宙人に対して設置されたのに、大抵は地球に宇宙人や怪獣が現れちゃうんだよな。MAC仕事しろ。『~リサージェンス』の月基地も簡単に破壊されるので20年間も何してたんだよおめーらは。
 ハイブリッド戦闘機もあっさり使い物にならず、パイロットだけが敵円盤の中に放り出されてしまい、どうするのかと思ったらエイリアンの戦闘機(!)が無人で放り出してあるのを見て

「あれを奪ってやろう」
「おい、あれはエイリアンの戦闘機だぜ。乗り方なんかわからねえよ」
「大丈夫だ。俺たちのと対して変わらない」

 って、すぐに乗り回しちゃうんだよ。ご都合主義にもほどがあるだろ。エイリアンは直接戦闘する兵士のエイリアンとこいつらを指揮するクイーンエイリアンがいて、クイーンをやっつければあいつらは統率が取れないぞ、というわけでクイーンエイリアンただ一匹を狙う作戦が取られるのだが、それならクイーンエイリアンも円盤の奥に引っ込んで出てこなけりゃいいのに、のこのこでてくるんだよな。数百メートルの巨大怪獣然としたクイーンエイリアンが人間が回収したコア(侵略エイリアンが危険視するデータが入っている)を持ったスクールバスと追いかけっこするシーンがクライマックスなんだけど、どうしたって知能が高い存在には見えない。地球人も侵略エイリアンもお互いアホ丸出しでこの20年間、互いに進歩しなかったことが伺える。

 興行収入の方は100億越えした前作とは比べ物にならないほどずっこけていて(公開一月で25億前後)、「こんなアホなものは見ていられない」と進歩していたのは観客だけのようだ。

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:07Comments(0)映画