2018年03月12日

超人誕生『北の桜守』



 吉永小百合出演120本作品目。『北の零年』『北のカナリアたち』に次ぐ北の三部作完結編。これがなんとも…恐ろしい映画である。
 1945年。開拓団として樺太に渡った江蓮一家。てつ(吉永小百合)は北の大地に桜の木を育てる桜守として日々を過ごし、ようやく桜の木に小さな花が咲いたと喜ぶ。夫の徳次郎に「いつかこの地を桜の花で満開にしましょう」と。ちなみに徳次郎役は阿部寛だ。『ふしぎな岬の物語』で吉永小百合に恋い焦がれる甥の役を演じていた阿部寛がついに夫役に昇格!いや降格か?無理がありまっせ!!

 しかしソ連軍が海を渡り樺太に鉛玉が降り注ぐ。徳次郎は義勇軍に入り、家族を網走へと疎開させる。必ず再会するという約束をし、長男に「母さんと弟を守れ」と言い残し、二度と帰ってはこなかった
 激しい戦火の中を逃れたてつと次男の修二郎だったが、網走で二人を待っていたのはすさまじい貧困であった。着るものも食べるものにも事欠く日々。てつは「こんなところにいつまでも居てはいけない」と修二郎を網走から送り出す。そして1971年の札幌。アメリカに渡っていた修二郎(堺雅人)は妻の真理(篠原涼子)を連れて帰国する。アメリカに本社を置くホットドッグチェーンの日本一号店の支社長を任されたからだ。ホットドッグチェーンといっても見た目はコンビニなんだけど…
 初日から「24時間働けますか?売り上げのためにバリバリ働け!辛くても働け!」と労働基準法をバリバリ無視した宣言をする修二郎支社長!すると一本の電話が。それは15年会っていない母、てつをむしばむ病についての電話だった。網走で小さな雑貨店を営むてつは鏡に向かってブツブツと独り言をいうようになっていた。樺太での知人だった元警官の岸部一徳が世話をしているそうだが「普段はなんてことないのだが、時々こうなっちゃうんだ」修二郎はてつを引き取って札幌で暮らすことに。

 店の売り上げがなかなか伸びない上に奇行が激しくなるてつにいら立ち始める修二郎。以下小百合の奇行の数々。

・公園の桜の木を見て大雨の中、薄墨と糊で修復を始める小百合!
・「美味しいごはんを食べさせてあげよう」と家の庭で竈を炊き始める小百合!
・知らない八百屋で「つけで払う」とネギを持ち去る小百合!


 そう、今回の小百合さんは完全にボケ老人の役なのだ。しかし、天下の大女優吉永小百合を「ボケ老人」呼ばわりすることはできなかったのか、医者も「過去に大きなトラウマがあって、そのせいでしょう」と配慮したコメント。
 これ以上息子に迷惑をかけられないとこっそり家を抜け出す小百合(それが迷惑なんだって!)。修二郎は母と二人で親子の確執を乗り越え、雪解けのための旅に出る。

 吉永小百合は73歳とは思えない体を張ったシーンの数々にチャレンジしている。太田神社という「日本で最も険しい場所にある」という神社に行くのだが、険しい崖路を行き、最後は7mの絶壁をロープ一本でよじ登る小百合!トム・クルーズじゃないんだから…
 この旅の過程で網走での極貧生活を経て確執を深める親子が雪解けを経て家族の愛を取り戻すという話なんだけど、なぜ網走から息子を送り出したのか、という肝心の部分がよくわからず、感動しにくい。そして長男がなぜ出てこないのか、というところ。重要な部分なのに映画の途中でまったく触れないまま話が進む。観客はずっと「長男はどうしたの?」と疑問に思うのにそんな観客の疑問を無視して話が進められる。触れられない理由が説明されないので真相が判明しても興味をそそられず納得もできない。

 那須真知子の脚本は欠陥品ではないのかと疑うほど不親切で雑。さらに戦争中の悲惨な光景をなぜか舞台劇で表現し、またこれが脚本に輪をかけた雑さで、素人演劇なみに見える。本当にケラリーノ・サンドロヴィッチが演出したのかよ!
 戦中の悲惨な生活を描こうとしても、気になるのは吉永小百合の超人的な生きざまだ。戦火の海を泳ぎ、春の肌寒い海に足を踏み入れ、二年間を誰の力も借りず生き延びる。一体どうやって?もちろんそれも説明されない。吉永小百合は大女優であり超人であったからとしか思えない。主人公が不死身の超人であったと判明する『アンブレイカブル』を彷彿とさせるラストシーンには唖然。小百合は超人だった!この映画、スタン・リーとかに見せてあげたい。「日本にも超人がいた!」とX-MENの新シリーズに採用されないかな。こんな人間が本当にいたら日本は戦争に勝ってると思うの。


  


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2018年01月06日

痛い女の前代未聞復讐劇『リベンジgirl』



 いきなり、コロンビア映画のロゴマークから始まるので驚いた。コロンビア映画はこの映画を配給しているソニー・ピクチャーズの子会社なんだけど、今年から邦画ではコロンビア→ソニーの順でロゴが出るようになったよう。だからといってこの映画が北米で公開されるわけでもないので、よくわからない。

 さて、この『リベンジgirl』は成績優秀な上、類まれな美貌を持つヒロイン、宝石美輝(なんちゅう名前や。ちなみにたからいし・みきと読む)が男にふられた腹いせに相手をギャフンと言わせてやるわよと女性初の総理大臣を目指すコメディだ。


 東大を主席で卒業した経歴を持つ宝石美輝(桐谷美玲)はミスキャンパスのグランプリに選ばれる。才色兼備の美女たる美輝だったが、それらをすべて帳消しにするほど性格が悪いのだった。ミスキャンパスの授賞式では「私が優勝したのは…当然の結果です!」とか言っちゃうし。謙虚に「私が優勝できたのは家族のおかげです」みたいなコメントを求めていた関係者は口あんぐり。他の出演者はぶち切れ。「他の人たちは運が悪かったっていうか…家で鏡見てきたら?って感じなんですけど~」とかいっちゃうからしょうがない。

 そんな美輝も男に恋をする。政治家一族の御曹司で、ハーバード大を卒業した斎藤裕雅(清原翔)だ。コロンビア大じゃないところがいいですね!美輝の高すぎるプライドを満足させるには充分すぎる裕雅が指輪をプレゼントするらしいと聞いて自分への婚約指輪だと信じて疑わない美輝は有頂天!呼び出されたパーティ会場で自慢しまくるのだが、裕雅からのLINEに「まだ仕事なんだ。疲れてるから美輝の笑顔を送ってくれないか?」とメッセージが。美輝はさっそくスマホでビシバシに決めた笑顔を撮るのだが、パーティ会場の女性客たちも一斉に自撮りし始める。ナニコレ?するとミスキャンパスの準優勝者で東大の後輩・仲手川万里子(馬場ふみか)も「先輩、私の写真撮ってください」とか言ってくる。彼女のスマホを見たら美輝に届いたのと同じメッセージが(笑)。

 怒り心頭の美輝が裕雅の元に乗り込むと、彼の子供を妊娠した女性(佐津川愛美)が堕胎費用を渡されている!裕雅はとんでもなく女癖の悪い男で、斎藤家の財力と権力によってもみ消されてきたのだった(そんなやつが政治家目指していいのか)。「お前みたいな頭空っぽの女、本気で好きになるわけないだろ!身の程知れよ」とさんざんなこと言われて美輝のプライドはズタズタ。ちなみに指輪は馬場ふみかへのプレゼントでした!

 悔しくて悔しくてたまらない美輝は私も政治家になってあいつを見返してやる、そうよ、総理大臣になってやるのよと決意。
 導入部にはこちらの好奇心も鷲掴み、今後の展開に期待が持てたがこの後はもう何もかもスッカラカン。美輝は政治塾に入ろうとするのだがその塾長は過去様々な政治家を政界へ送り込んできた政治のプロ、斉藤由貴。「あなたの相談に乗ってあげるわ」っていうんだけど、斉藤由貴さん、人の相談に乗ってる場合じゃないよ…あなたの方が相談に乗ってもらわないと。今は斉藤由貴の方がリベンジgirlだよ!さんざんバカにしたマスコミに怒りのヨーヨー攻撃だ!「てめえら、許さねえ!」

 話が逸れたが、斉藤由貴は素人の美輝のために秘書役として門脇(鈴木伸之)をつける。門脇はかつて政治家の秘書をしていたが、嘘ばかりの政治家に嫌気が差したのだった。頭空っぽで男への仕返しを理由にしている美輝に「お前みたいなやつは政治家に向いてない!」とズバリな門脇。しかし美輝にもたったひとついいところがあるのを見つけ出す。それは嘘をつかないということだ。誰にでも本音を言ってもめることを恐れない(だから友達がいないんだけど…)彼女は大雨の下でティッシュ配りのバイトをしている佐津川愛美を見つける。そのおなかは膨らんでいた…
 みじめな私をバカにしているんでしょう、と毒づく佐津川愛美に桐谷美玲、「そうよ、みじめだと思ってるわ。こんな雨の中、大きなお腹でバイトしてるあなたをね!お腹の子供に悪いと思わないの!」と強引にティッシュを奪い取る美玲、彼女のティッシュ配りを手伝うその姿に鈴木伸之も彼女を見直すのだった。ってさぁ…
 シングルマザーの苦闘を描いてるにしても表現が雑すぎ。いくらなんでも妊婦でティッシュ配りのバイトはないだろ。しかもあんな大雨で…びちょびちょのポケットティッシュ、渡される方も嫌だよ。

 こんな風にあらゆる表現が雑。裕雅と同じ選挙区に出馬した美輝だったが、卑劣な中傷作戦に遭ってしまい、やつの事務所に殴り込み。あまりの女性蔑視ぶりに怒りのパンチを食らわせようとしたところ、美輝の代わりに秘書門脇のストレートが炸裂。彼女を守るために辞表は出してきた、ってそれで済むわけないだろ。こんなことやったら選挙どころじゃないよ!ぼけ、死ねっていったことで大騒ぎになってる政治家がいるというのに。


※ここからネタバレです



 クライマックスはさらに無茶苦茶で投票前日、最後の演説で聴衆の前に現れた美輝、自分が振られた男へのリベンジのために出馬しているのに、後援会の人々や支持者たちが真剣に彼女のことを応援しているのを見て嘘はつけない!と腹をくくった美輝は自分が振られた男への仕返しのために出馬したことを告げ、それでも一生懸命に応援してくれる後援会や支持者のためにいい政治をしたい、そしてこんな私を変えてくれたある人(門脇のこと)のため選挙に勝ちたいでーす、なアピールに草の根運動で増やした支持者から声援と拍手が…聴衆の中に事務所を去ったはずの門脇の姿を見つけた美輝は選挙カーを降りて駆け寄り、大勢が見ている中で堂々抱き合ってキス!「前代未聞だな…」と門脇。本当に前代未聞だよ!こんなオチ!!大の大人がこんな雑なものを作って恥ずかしくないのか。

 これ、映画の企画をしたときは小池百合子ブームを当て込んだのではないかと。公開時には小池百合子を宣伝に引っ張り出してあの政界の娼婦面した小池がテレビに出まくっていたのかと思うと。小池ブームが終わって本当によかったですね!今は小池もリベンジgirlですやんか。


  


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2017年11月04日

企画・秋元康の似非グルメ感が炸裂『ラストレシピ~麒麟の舌の秘密』



 原作者の田中経一氏のプロフィールを眺めると『料理の鉄人』『とんねるずのハンマープライス』『愛のエプロン』『クイズ$ミリオネア』という、泣く子も黙るヒット番組の演出をしていたことがわかり、その後幻冬舎で小説家としてデビュー、これも大ヒット。自身が代表を務める会社名、ホームラン製作所のごとく柵越え連発。満を持してそのデビュー作を実写映像化したところ、まさかのインフィールドフライといった結果に。いやあ、映画製作って難しいですね!

 本作は2010年代の現在と1930年のふたつの時代を舞台にした大河風ドラマ。現代で「最期の料理人」と呼ばれる佐々木充(二宮和也)は高額の報酬と引き換えに依頼人が食べたい料理をどんなものでも作り上げる(ザ・シェフみたいなやつだな)今回の依頼人は余命いくばくもない入院患者の団時朗・帰ってきたウルトラマンだ。彼の依頼は若い時によく食べていた食堂のオムライスを最後に食べたいというもの。しかし食堂はすでに閉店し、店の人間もどこにいったのかはもうわからない…

 が、その料理を充は病室に持ち込んだ料理セット(いいのかそんなの持ち込んで)でテキパキと調理しだす。そのオムライスは独特な味のソースをつかっていたのだが、充は八丁味噌を加えてソースをつくり、オムライスは完成。一口食べた団時朗は「まったく同じオムライスだー!」と感動にむせび泣く。もう潰れてしまった店のオムライスを充はなぜ料理できたのか?実は彼は一度食べた料理の味を再現できる、“麒麟の舌”という能力を持っていたからなのだった。

 しかし、ここで疑問が浮かび上がる。麒麟の舌の能力は「一度食べた料理の味を再現する」だから、充はどこかでこのオムライスを食べたことがあるのだろうか?ということ。当然、その辺のくだりが説明されるのかと思いきや、そんな説明はまったくされないのだった。じゃあ充はオムライスのソースに八丁味噌を使っていたことがどうしてわかったんだよ?麒麟の舌という設定が物語上、何も生かされていない。
 そんな疑問に誰も答えてくれず、200万円の報酬は払われる。けれど団時朗はオムライスを完食した後に隣にいる嫁さんに

「でも、やっぱりお前の手料理が一番だ」

 とか言っちゃうの(笑) 完食してからそれ言う?そんなの完食してからいうなーっ!!もう200万払ってるやんけ!これは嫁も末期の団時朗に『怪獣使いと少年』に出てきた民衆たちの勢いで襲い掛かってもいいぐらい。これが冒頭の10分で、あとはこのレベルの突っ込みが次から次へとやってくる。


 充は中国料理界の重鎮、楊晴明に呼び出され北京で依頼を受ける。それはかつて満州国でつくられたという日本版の満漢全席「大日本帝国食菜全席」を再現すること。そのレシピは1930年代の満州にて山形直太朗(西島秀俊)という料理人がつくったが、そのレシピは失われてしまった。まずはそのレシピの行方を追ってくれ!という依頼なんだけどそんなの探偵に頼めよ!
 ここからドラマはふたつの時代をいったりきたりすることに。山形直太朗は天才料理人として天皇の料理番を務めていた男で、彼もまた麒麟の舌の持ち主だった…にも関わらず、直太朗もまた麒麟の舌の能力をまるで使わない。

 直太朗はレシピづくりを青年時代の楊晴明とともに始めるのだが、初日に楊晴明が簡単な料理をふるまう。最後の一仕上げとして料理に小さい壺から取り出した調味料(楊晴明曰く、「魔法」)をふりかけ料理は完成。食べた後で直太朗は麒麟の舌の能力で同じ料理を再現する…のだが、楊晴明の調味料は彼が大事にしまい込んでしまったので使わずに調理する。
 と、この展開なら「同じような料理なんだけど魔法の調味料が使えなかったから、少しだけ味が違う!」っていうオチになるはずなのに、楊晴明は同じ味だー!って感想をいう。いや、魔法を使ってないんだから、同じ味じゃないだろ!あの壺に入ってた調味料はなんなんだよ!その説明も一切なし!そして大日本帝国食菜全席のレシピづくりにも麒麟の舌の能力は一切発揮されないまま…


 タイトルにもなっている「麒麟の舌」という能力が物語上、何の意味もないという杜撰な設定。後に判明するある人物と人物との関連性を結びつけるためにしか、機能していない。それだってよほど感が鈍くない限り、すぐに気づくと思うんだけど。
 「麒麟の舌の秘密」という、キャッチーなタイトルを思いついた時点で終了してる。この辺がなんとも「企画 秋元康」の仕事っぽい。タイトル以上のことは思いつかないという。アカデミー外国語映画賞の滝田洋二郎にジャニーズきっての演技派、二宮和也主演とみてくれだけは整えたものの、見た目が派手な料理だから美味いってわけじゃないんだよ。秋元が『料理の鉄人』でグルメを気取って料理をジャッジしてた時に

♪グルメじゃないから なんでもペロリ

 なんて歌詞書いてたあんたがグルメ気取るなよと感じたのを思い出した。秋元康がどんだけグルメか知らないけどこの映画を観る限り、やっぱり大したグルメじゃないな。この映画よりコンビニ弁当の方が美味いよ、きっと。

 こんな鍋の底が抜けきった内容でも女優陣は素晴らしく、仕事しか頭にない直太朗を傍でそっと支える妻役を演じた宮崎あおい(こういう役をやらせると宮崎あおいの右に出るのはいないな)や、後半、重要な役で登場する広澤草の存在感ときたら。『となりの801ちゃん』の主演だった広澤草が東宝の大スクリーンで光り輝くところを観る時代がくるとは、ちょっと感動してしまった。


  


Posted by 縛りやトーマス at 04:20Comments(2)食べ物トンデモ映画

2017年08月03日

出オチ漫画の実写化は止めよう『東京喰種 トーキョーグール』



 僕は漫画の方を一切読んだことがないので、よくわからないのだがこんなツッコミどころだらけの漫画もないのではないか。人を喰う怪物「喰種」が人間社会に密かに溶け込んでいるという設定だが、喰種は人間の肉以外は水とコーヒーしか飲めないのだ。そんなのすぐバレるんじゃないの??

 ごく普通の大学生、カネキ(窪田正孝)は憧れの先輩、リゼ(蒼井優)とデートをし、深夜の公園でハグされるが、リゼの正体は喰種だった!リゼの攻撃で致命傷を負うも、工事現場で吊られたままの鉄骨の下敷きになってリゼは死亡。って誰もいないのに鉄骨吊ったままにしてる現場なんかないと思うんですけど…あ、ちなみにこの映画の面白いところ、ここまでです

 重傷のカネキは病院に担ぎ込まれ、誰の許可も得ていないのに死亡直後のリゼの臓器を移植され一命を取り留める。そのせいで半分人間、半分喰種の半喰種にされてしまったカネキは普通の食事が喉を通らず人間を食べたい欲望を持つようになり、モラルと生存の間で苛まれる。

 リゼと出会った喫茶店「あんていく」に逃げ込んだカネキは喫茶店の店長芳村(村井國夫)、店員トーカ(清水富美加)らに助けられる。「あんていく」は喰種たちの駆け込み寺だった。心底嫌そうにカネキを手助けするトーカ。清水富美加が本当に嫌そうにこの役を演じていて、こんなツッコミどころ満載の気持ち悪い映画は嫌になるよなあ。出家したくなるのもわかる気がする

 この漫画では喰種が主人公の側なんだけど、人間を喰わないと生きていけないから、どうしたって読者の感情移入を削ぐではないか。「あんていく」に潜む喰種たちは近所にある自殺の名所で飛び降り自殺する人間の肉を回収しているとかいうかなり無理のある設定でアンチモラル感を薄めようとしてるんだけど、完全に失敗してます。人肉を提供している父親を殺されてしまい、その後は「あんていく」に母親(なぜか相田翔子)ともども身を寄せてる子供(桜田ひより)が「人を狩る能力がないから」ということで人肉は「あんていく」が提供するんだけど、目玉をナイフとフォーク使って食ってるんだよ(かなりグルメ風に)。そんな連中にどう感情移入しろっていうんだ!


 喰種の方がこの調子なら、対する人間たちの方も粒ぞろいのどうかしてる連中で、赫子(かぐね)と呼ばれる触手のような器官により恐るべき戦闘能力を持つ喰種に対抗する喰種対策局というのが存在していて、所属する捜査官が喰種と対決するんだけどなぜか一対一の勝負を挑む。武器は喰種の死体から赫子を取り出して製作したガリアンソード。そんなもん使わないで、大勢で取り囲んでロケットランチャーぶち込むとか、火炎放射器でも使えよ。最後にはケバブの串(回転する)でどついたりしてるし、銃器使え!銃器!そんなんで勝てんのかよ!
 劇団EXILEの人(鈴木伸之)がトレーニングで鍛え上げてる体見せつけてましたけど(彼らは裸見せてナンボですからね)相手バケモンですよ。体を見せてバタンキューするのは腐女子だけです。


 「人を喰う怪物が存在していて、そいつに体の半分を支配される」って要するに『寄生獣』で、しかも『寄生獣』があえてやらなかった展開ばかりやっている。なぜ『寄生獣』がパラサイトに対して人間が本格的に対策を取り始めたところで終了したのか考えようよ。
 半分喰種になった主人公が喰種たちの隠れ家に匿われる、って時点で終了してる出オチ漫画なんだから。火星にいったらGがいた!っていう 『テラフォーマーズ』もそうだけど、漫画ではよくても実写にした時には実写ならではの説明や説得力のある描写が必要なんだから。
 もう出オチ漫画を実写化するのはやめよう。


  


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2017年05月19日

暁照夫の三味線ばりのなんでこんなにうまいんやろうか演技『スプリット』



 最近は大コケ映画ばかり撮ってたが前作『ヴィジット』をヒットさせ復活の狼煙を上げたM・ナイト・シャマラン監督の新作。
 退屈そうな顔をしてる女子高生ケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)はクレアの誕生日会に招かれ、その帰りにクレアとその友人マルシアとともに謎の男に拉致される。何処とも知れぬ部屋で目覚めた3人。自分たちを監禁した男、ケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)の隙をついて逃げ出そうとクレア、マルシアは相談を始めるがケイシーだけは「様子を見た方がいい」と冷静になるよう呼びかける。ケヴィンが外出先から帰ってくると、連れの女の声が聞こえてくる。クレアたちが助けを求めると監禁部屋の扉が空き、カーデガンを来てネックレスを首に飾ったさっきの男が姿を見せた!ケヴィンの正体は24人の人格を持つ多重人格者だったのだ…

 スキンヘッドにカーデガン、女声でしゃべりかけてくるパトリシアという人格になりきったマカヴォイの雑な女装を見た瞬間思ったね。「この映画、笑わせに来てる」と…!劇中では23人+“ビースト”と呼ばれる最後の人格、合わせて24人格というビリー・ミリガン状態を演じるマカヴォイ(実際は5人しか出てこないので24人はそもそも盛り過ぎだろう)。役者というものは多重人格者とか振り幅の大きい役を演じたがるものだろうか、神経質そうな男に温厚な若者、女に9歳の少年といった役を代わる代わる器用に演じていくマカヴォイを見る度に「どや!上手いやろう」と言われてるよう。まるで暁照夫の三味線ではないか。「なんでこんなにうまいんやろうかわたし~」
 こんな感じなのでショッキングなスリラー映画のはずがどうしても笑いが起きてしまう。マカヴォイが一生懸命になんでこんなに上手いんやろか演技をするほど笑えてくる!あまりに怖すぎて笑いが起きてしまうというのではなく、意図的に笑わせようとしてるな、これ。だって地下鉄でのビースト誕生シーン、完全にギャグだよ

 笑撃的な映画ではあるが、ラストでは本当に衝撃的な展開が待っていて、ここだけは本気で驚いた。そういうことだったのね!と納得のオチ。詳しくは書けないがシャマランの過去作に関係しているとだけはいっておく。


  


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2017年05月15日

96年のミニシアター

 20年ぶりに続編が公開されて話題の『トレインスポッティング』。20年前の96年という年はいわゆる単館系、ミニシアターブームの始まりだった。ミニシアターのムーブメント自体は88年の『ニュー・シネマ・パラダイス』に始まり、93年公開の『レザボア・ドッグス』、95年公開の『恋する惑星』というヒット作を経て「次のミニシアター系ブームは何か?」という状態であったことを考慮しても96年のミニシアター系映画のラインナップは凄まじかった

 若きレオナルド・ディカプリオが主演した『バスケットボール・ダイアリーズ』はドラッグにハマり、立ち直ろうとしてコーチにケツ犯されるディカプリオの姿に腐女子(当時はそんな言葉なかったから、ホモ好き女子とでもいうべきか)がワーキャー言ってましたな。『タイタニック』以前に目端の利く女子たちはミニシアターでレオ様に夢中になっていたのです。
 ラリー・クラーク、ハーモニー・コリンのコンビ作『KIDS/キッズ』ではニューヨークのストリートキッズたちの乱れた性の様子が(あえて)カッコよく描かれた。処女狩りが趣味のヤリチンに処女を奪われた上にエイズに感染させられた少女ジェニー(演じるは20代前半のクロエ・セヴィニー!)はヤリチンに事情を説明しようとするが、一箇所にとどまらないヤリチンはどこにいるのかわからない。映画のラストでようやく居場所を見つけるもヤッてる最中なので終わるまで待とうとしている間に寝てしまい、寝ている間にヤリチンの相棒君にパンツ下ろされてしまう。目が覚めた後で相棒君がビックリするというオチはまるで笑えなかった!その内容は当時アメリカ中で大騒動を巻き起こしたという。
 『恋する惑星』で一躍その名を知られたウォン・カーウァイの『天使の涙』『楽園の瑕』は日本で同じ96年に封切られたが『楽園の瑕』の理解不能な内容に『天使の涙』のちっとも可憐じゃなかったカレン・モクといい、作品としてはイマイチなものの、カーウァイブームの中、女性客が劇場に溢れかえっていた。

 ミニシアターには若い観客もいるが、年配の固定客も必ず居るもの。『午後の遺言状』(95)上映時にはそのような年配のお客さんが多く駆けつけたという。96年にもそういう人たちに支えられた『イル・ポスティーノ』という作品があり、長らくイタリア映画といえば『ニュー・シネマ・パラダイス』と『イル・ポスティーノ』と言われていたもの(その後『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)にとって変わられるけれど)。もう一度見直そうと思って近所のレンタル屋にいったらどこにも『イル・ポスティーノ』が置いてなくて以前はどのレンタル屋にも置いてあったのに、あのブームは遠い昔のことになってしまった。



 一方日本でも北野武の『キッズ・リターン』や岩井俊二の『スワロウテイル』といったその後の日本映画を代表する監督の代表作が生み出されていた。そして『ロスト・チルドレン』『ケロッグ博士』(当時のキネ旬ベスト10で淀川長治先生がベスト1にただひとり選んでいた)といった珍作も。『ケロッグ博士』はコーンフレークのケロッグ社の創始者のひとりであった博士が提唱した独自の健康法を『ミッドナイト・エクスプレス』のアラン・パーカーがブラックに描いたコメディで、当時のみうらじゅんさんがシスコーンからケロッグ派に鞍替えをしたことでもお馴染みの映画。ケロッグ博士役は狂気の博士役を演じさせたら世界一のアンソニー・ホプキンス!DVDがとっくに廃盤なのが惜しまれる。


 みうらじゅんで思い出したけど、この年には水野晴郎先生の『シベリア超特急』も公開されており、同じくミステリー映画としてこの年の話題をさらった『ユージュアル・サスペクツ』に負けず劣らずのふたつのどんでん返しは目端の利く映画ファンの話題を今に至るまでさらいつづけているのだった!
 トレスポとシベ超が同じ年に公開されているってのは奇妙なリンクを感じさせる。日英で同じ鉄道映画(?)が話題になっていたのだから。どちらにも本当の鉄道は出てきませんが…



 こう考えると1996年というのはミニシアター系どころか映画ファンにとっても有意義な時代だった気がします。20年前にレントンのようなボンクラ野郎だった僕はこれらの映画をミニシアターで見ていて、20年経った今でも同じようなボンクラのための映画を追い続けているのです。

  


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2017年01月23日

いつもの「頭が弱い」綾瀬はるか『本能寺ホテル』



 去年末に『鴨川ホルモー』『偉大なるしゅららぼん』などで知られる作家・万城目学のツイッターアカウントで

「映画の製作のためオリジナル脚本を書いてほしいと依頼され、シナリオ学校に通ってまで書いた脚本は監督・プロデューサーと何度も打ち合わせをしたのに全ボツ。しかし全ボツの後も映画の企画は進行し、私が脚本に書いた非常に重要なフレーズが、映画で小ネタとして使われている。即座に抗議したが撮り直しはしない、公開は強行する、しかし謝罪はしたいというがお断りした。結局は泣き寝入り」

 といったツイートが投下。作品や相手の特定はごかんべん、ということだったが、作品タイトルはすぐに判明した。東宝の『本能寺ホテル』だ。なぜかというと作品の設定や物語がどっからどう見ても万城目学の匂いがするから(それにスタッフが万城目学作品の『プリンセストヨトミ』とかぶっている)。というか僕もこれ、万城目作品だと思いこんでました。えっ違うの?


 繭子(綾瀬はるか)は冬の京都を訪れていた。恋人の恭一(平山浩行)と結婚することを決意していた繭子は恭一の両親の金婚式に参加するはずだったが手違いで予約していたホテルに泊まれず、当て所なく京都をさまよううちに路地裏に佇む本能寺ホテルにたどり着く。無事に宿泊できたが、エレベーターに乗り込んで扉が開いた先は戦国時代!
 戦国時代にうとい繭子は出会った森蘭丸(濱田岳)に胃薬を勧めたり、織田信長(堤真一)が鳥井宗室に天下三肩衝のひとつ、楢柴肩衝の献上を申し入れているところに出くわす。献上というものの、結局は権力を嵩に脅し取ろうとするわけだが、それを見た繭子は憤慨。無理やり信長の手から茶器を奪い取って「ダメですよ!脅し取られちゃ!」と能天気にもほどがある行為にでる。もちろん、繭子は彼が信長であることなどまったく知らないのだが、それにしてもこんな頭空っぽの女子大生みたいなことするか?あわや手打ちになるところ、現代にいる本能寺ホテルの支配人(風間杜夫)がロビーのベルを鳴らしたので帰って来られた(ベルを鳴らすと過去にいった人間が現代に戻れるんだけど、なぜそうなのか説明は一切なし)。繭子は自分の身に起きたことを説明するが当然誰も信じてくれない。
 ようやく自分の行った先が1582年の本能寺であることを知った繭子は何度も戦国時代と現代を行き来し、「本能寺の変」から信長を救おうとするのだが…

 綾瀬はるかって一体いつまでこんな白痴の女子大生みたいな役をやってるんだろうね(劇中でもあまりにアーパーな行動を取る彼女を濱田岳が「こやつは頭が弱いのでございます」というセリフもある)あんた、もう31だよ!深田恭子に断れたから、綾瀬はるかに回ってきたのかな?(この二人ってお互い役を押し付けあってるようなイメージがある)
 戦国時代の中でもミステリー要素が高い「本能寺の変」をテーマにしてるから、その謎でも解き明かされるのか?と思ってたらそんなことはまったくなく、光秀もみんなのイメージ通りの悪役を演じて「敵は本能寺にあり!」って叫ぶだけ。演じたのは高嶋政宏だが、これが政伸だったら裏切り者を演じたけれど、あんた、嫁に裏切られたやん!って突っ込めるのに。繭子に自分の死を告げられても信長は死期を悟ったように振る舞うだけで天下統一という自分の夢を部下の秀吉に託して炎の中に消える。繭子は自分のやりたいことや夢というのが何もなくて、就職した会社が倒産、あとは流されるままに婚約、式の日取りや会場も全部婚約者に決めてもらって意見も言えない(自分の意見がない)。けれど自分の夢に向かってまっすぐ生きている信長を見て「私も頑張らなくっちゃ!」と決意するっていうのがこの映画の結末。なんだそれは。戦国時代のミステリーを解き明かすのではなく現代に生きる女性の夢を後押しする「お前も頑張れよ映画」だったなんて…
 
 この作品は前述したように万城目学の全ボツ食らった脚本のアイデアを無許可で使用している、とのことだけどこんな中身空っぽ映画をパクってまで作りたかった土屋健プロデューサーに鈴木雅之監督のセンスを疑う。あんたら切腹な!パクるんなら、せめて面白そうなやつをパクろうよ…ジャック・ブラックの『スクール・オブ・ロック』がドキュメント映画の『ロック・スクール』をモデルにしたように…


  


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2017年01月08日

誰がカウンターで言えるんだこのタイトル『映画RANMARU(略)』



 あまりに低視聴率すぎて途中打ち切りとなったドラマ『神の舌を持つ男』の劇場映画化。テレビで失敗しているのになぜ映画化!?監督が堤幸彦なのであの大失敗作『銀幕版スシ王子!』の再来か?と散々な評価を受けている本作。本当に・・・なぜ映画にした?



 公開前には配給会社からこのような「堤監督からのお詫びの手紙」が送付されてきて、その時点で軽く引いた。作っておいてチマチマ言い訳するんじゃねえ!嘘でも「自信作です!ぜひご覧になってください!」となぜ言えない?さらにドラマを放送していたTBSが製作としてクレジットされていないことから、ドラマのあまりの不振ぶりに見放されたのでは、と余計な勘ぐりまでされてしまったのだった。

 試写状が届いたんだけど、そこには主人公の舌を模した切り取ると靴べらになるデザインが施されていて、どうしろっていうんだよ・・・と絶望的な気持ちに。



 あまりに長過ぎるタイトル
(『RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー! 略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編』)
 といい、すべてが全力でダダ滑ってる。ダメなものをオブラートに包もうとしてさらにダメになっている堂々巡り。もう一度いうけど、なぜ映画にした!?

 ストーリーは寂れた温泉街を舞台に殺人事件の真相を暴くという金田一シリーズみたいな話で、金田一のパロディをやりたいというのはわかるんだけど、思いついたギャグのそのまま脈絡もなく並べてるだけで、時折登場人物の顔が巨大化するバブルヘッド人形状態になって不協和音が鳴り続けるのだが、それになんの意味があるのかもわからないし・・・もう、なんなの一体!?
 木村文乃のウザカワイイ演技以外は大して見るところもないのであった。主演の向井理の決め台詞は「この僕を舐めないでもらいたい!」だけど、堤!映画を舐めないでもらいたい!!


  


Posted by 縛りやトーマス at 14:00Comments(1)トンデモ映画

2016年12月21日

ロックとポルノ、そして熊『変態だ』



 原作・みうらじゅん、監督・安齋肇という『勝手に観光協会』の2人が送り出す『変態だ』は前野健太演じる「その男」が三流大学に一浪の末なんとか入ってくるところから始まる。謎の巨漢・アフロ先輩(信江勇)に誘われて無理やり入れられたロック研究会で男は先輩の卒業後、残されたメンバーでバンド『不合格通知』を結成、そこそこ売れる。
 仲間たちが就職のため長い髪を切った時、男は音楽の夢を諦めきれずソロでやっていくことを決意。これもそこそこ売れて結婚し、子供を授かる。子供が寝ている間にやるやることやってしまう男と妻。妻役は恵比寿マスカッツ二期メンバーの白石茉莉奈!これはポルノ映画なのでエロいベッドシーンがあるのだが、彼女のカラミは違う作品で見ているものの、映画でヤッてるところを見るとそれはそれで興奮しますな。

 一件ごく普通の結婚生活を送っている男だが、実は妻に内緒で愛人を作っており、かゆくなるような甘いセッ クスをしている妻とは違い、愛人にペニスバンドでハメられている男。愛人役は『ウルトラマンX』の橘副隊長、月船さらら!怪獣対策している陰でSMプレイに耽っていたとは(違)ちなみに月船さららは元宝塚で男役だったから、男の役はお手の物だな!!

 雪山で行われるスノーロッヂフェスティバルに参加することが決まった男は愛人をマネージャーと偽って同行させる。「向こうでボロクソに犯してやるよ!」と言われなんかやだなあという顔をしながらも内心興奮しまくる男。実家のある街というから「ちょっと見に行こうかな」と言い出す妻を説得し、男と愛人は現地の雪山へ。すり鉢型の野外音楽堂には観客十数人しかいない。さすがに軽井沢のももクロライブとまでは言わんが、フェスの規模小さすぎ。しかも男の前にステージに立つのはウクレレえいじ。「それでは『フランケンシュタイン対地底怪獣』から・・・」って『大怪獣モノ』と同じことやってる(笑)
 そんな中でヒット曲の『ジェレミー』(みうらじゅん生涯のベストワン映画!)を歌う男。が、客席には内緒でやってきた妻の姿が…このまま鉢合わせするわけにはいかないと、ステージが終わるやいなや、愛人の手を取って山奥へ逃げ込む男。心中する気か、冗談じゃないと怒る愛人に男はそそくさとセルフ亀甲縛りを始めるのであった。やけっぱちになった愛人に攻められ、男は気を失う。目が覚めた男の前に現れたのは野生の熊であった…今、極寒の雪山で人と熊の死闘が始まる!


 何を言ってんだお前は、と思うかもしれないが、こういう映画なんだもん!人間は常日頃、日常から変態なのか、それとも極限の状況が変態を目覚めさせるのか。哲学めいたテーマを思わせるが単に驚かせたかっただけかもしれない。
 ミュージシャンが不倫してる話をみうらじゅんが書くっていうから、色々想像力を膨らませたのだが、さすがに恥ずかしかったのか、熊と人の戦いに逃げてしまったのは残念。
 何が変態なのかはわからなかったが、こんなものを金を出して観にいったあなたは確実に変態だ!



  


Posted by 縛りやトーマス at 20:31Comments(0)トンデモ映画

2016年12月04日

そんなに何度もどんでん返しはいらない『疾風ロンド』




 医学研究所から持ち出された炭疽菌。その炭疽菌の隠し場所と引き換えに金銭を要求した男は死んでしまい、回収を依頼された男はわずかなヒントを頼りに隠し場所のスキー場を捜索するが、脚を怪我してしまう。気温10度を越えると容器が破裂し炭疽菌で多数の死亡者が出てしまう。スキー場のパトロール隊員とその友人のスノーボード選手を上手く騙して炭疽菌の容器を捜索させるのだが…

 という筋立ては面白そうな東野圭吾の小説を映画化した『疾風ロンド』は映像化の方向性を完全に間違えたためにただの下らないバラエティに成り下がった。なにしろ監督が『サラリーマンNEO』の吉田照幸だもんなあ。なぜコメディコントの人がやるのか?この映画がコメディだから!コメディじゃないよ!この話!
 医科学研究所の研究員・葛原(最近東映映画にばかり出ている戸次重幸。東宝における吉田羊的ポジション)は炭疽菌・K-55を偶然の産物として開発してしまい、所長の東郷(柄本明)から「こんなものを作ったのがバレたら会社は潰れてしまうぞ!」とオーバーリアクション(これがまた見ていられないレベル)で発狂。葛原をクビにしてしまう。逆恨みした葛原はK-55を盗み出し、隠し場所の目印となる木につけたテディベアの写真とともに3億円を要求。しかし葛原は直後交通事故を起こして死んでしまう。

「死んだやつに金は払わなくていい。ラッキーだ!あとはK-55を回収するだけ」
 とオーバーリアクションで部下の研究員・栗林(阿部寛)に命じる。テディベアには位置を知らせる発信機がつけられており、4日だけ電源が持つ。気温が10度を下がると炭疽菌の容器が破裂してしまうため、4日後の金曜日がタイムリミット。栗林は最近不仲に陥っている息子の秀人(濱田龍臣)をスキー旅行という名目で炭疽菌が埋められている野沢温泉スキー場に連れ出して(なぜひとりで行かない?)回収を目論む。原作では架空のスキー場なのになぜ野沢温泉スキー場という実際にあるスキー場でロケまでしてるかって?タイアップだから

 栗林は慣れないスキーで転びまくり、立入禁止区域で遭難しかけて救助を呼ばれたり、挙句は靭帯を切って歩くことすら困難に。スキーもロクに出来ないのにキツイコースや立入禁止区域に入ろうとする栗林を不審に思ったパトロール隊員の根津(大倉忠義)やその友人のスノーボード選手・瀬利(大島優子)に問い詰められ、栗林は「ある患者の治療に必要な新薬が盗まれてスキー場に埋められてしまった」と咄嗟の嘘をついて二人を捜索に巻き込むことに成功。しかし彼等の行動を物陰から見つめる不審な男・折口栄治(ムロツヨシ)がいた。彼は葛原がK-55を盗み出す手引をした協力者、折口真奈美(堀内敬子)の弟で、真奈美は気弱な女を演じながら葛原に強力することで大金をせしめようと考えていた狡猾な女だった。真奈美はスキーの上手い栄治にK-55の回収を任せたのだ。

 この弟が怪しげな悪党として登場するんだけど、それがムロツヨシってねえ…他にちゃんとした役者いなかったの?こいつが一生懸命「怪しげな男」を演じてるんだけど、善良な振りをして近づくとか、こっそり阿部寛の後ろを付け回したとか、車の座席の後ろにいたとか、全部コメディで演出していてムロも「俺、お笑い分かってますから」風に演技するのも何もかも寒い!スキー場だから寒いってか!?ハッカーでテロリストの役がユースケ・サンタマリアだったりとか、どうして最近の日本映画って悪役のキャストがイマイチなんだろう?おかげでサスペンスフルな展開や物語がまったく生きてこない。後半のクライマックスに容器を奪ったムロと大島優子がスキー場を滑走しながらストックでチャンバラを演じたりする日本映画にしては迫力とスケールのあるアクションシーンがあってそこは結構手に汗握る。でもムロだしなあ。大島優子にあまり演技させないで「スノボ選手」っていう役割だけさせたのも上手くいっているのに、とにかくムロが残念
 そして全体をつつむコメディ風演出も意味不明。きちんとシリアスな物語にしておけばよかったのに。二転三転するストーリーはさすが東野圭吾と唸らせられるが、クライマックスから延々と続くどんでん返しの連続、そんなに何度も返さなくていいよ!『シベリア超特急』じゃないんだから…


  


Posted by 縛りやトーマス at 14:37Comments(0)トンデモ映画