2019年03月14日

ここは世界一優しいただいまが待ってる場所『劇場版のんのんびより ばけーしょん』



 2013年と2015年に放送されたテレビアニメの劇場版。『のんのんびより』はバスは2時間に一本、牛が通行するので気をつけよという道路標識があるぐらいの田舎を舞台に、生徒が5人しかいない分校の生徒とその家族、知人たちの大した事件は何も起こらない日常を描いた作品だ。なので劇場版と言われても旭丘分校の生徒たちが世界の支配をたくらむ巨大な敵と戦うことはない。テレビアニメの延長で何も起こらない日常をただゆるく描くだけだった。『ゆるゆり なちゅやちゅみ!』と同じ。

 夏休みに入ったれんげ(小岩井ことり)ら旭丘分校の生徒たちはショッピングモールの福引で三泊四日の沖縄旅行を引き当てる。保護者替わりのかず姉(名塚佳織)、駄菓子屋(佐藤利奈)に、分校の卒業生ひかげ(福圓美里)、このみ(新谷良子)を加えた一行は沖縄へ。旅館の看板娘、新里あおい(下地紫野)と仲良くなったり、海でマンタを見たり、カヤックで川を下ったり、街中に牛がいるのを見て「ここも田舎なのん?」と思ったりもしたけれど、特に大した事件は起きない沖縄のバケーションを過ごすのだった。


 もちろん何も起きないのではお話にならないので、テレビ版にはない劇場版ならではの物語が存在する。分校の教師でありながらいつも居眠りしているれんげとひかげの姉、かず姉は木に引っかかった小鞠(阿澄佳奈)と蛍(村川梨衣)のカヤックを助けてあげたり、水分補給のペットボトルを忘れた二人の水を事前に用意していたりする。普段の様子からはありえない保護者然とした態度に驚かされるが、直後、バテて一歩も動けなくなる(やっぱり)。上京して都会暮らしをしているひかげは劇場版では完全にオチキャラになって毎度床に寝かされて笑いを取る。

 そして劇場版のメインを貼るのは、越谷姉妹の妹、夏海(佐倉綾音)であった。旅館の看板娘、あおいは同い年なんだが、真夜中にこっそりとバドミントンの壁打ちをやってる彼女を見る。「壁打ちをすると母親に怒られる」というあおいに自分も怖い母親に説教されることが多い夏海は感情移入。あおいの学校に案内してもらおうと、あおいの代わりにみんなで寝所の掃除をして自由時間をつくってあげたりする。自分の部屋の掃除すら強制されてもしない夏海が!
 夜の海での夜光虫の思い出などを経て、最後には「帰りたくない」と泣き出す。夏海は喜怒哀楽の激しいキャラなのでこのクライマックスには合っていて、観客の涙をしっかり誘う。同様に喜怒哀楽の激しいひかげも泣いていた(彼女は露骨に涙を見せるようなキャラではないので畳にうつぶせてる。劇中ずっと床に寝かされて文句言ってたひかげが床に突っ伏すって最高の演出ですね)。
 こういうシーンで落とすのなら、喜怒哀楽があまり顔に出ないれんちょんをメインにはしづらかったんだな。理解した。

※よく見たら突っ伏してたのはベッドでした


 監督、脚本とテレビシリーズと同じ川面真也、吉田玲子のコンビ。このコンビはさりげないキャラの仕草で印象付けて、じんわりと泣かせにくる。かず姉が珍しく頼りがいのあるところを見せた後でセピア色の画像でこの後のヘバリ具合を想像させたり、


在りし日のかず姉の雄姿(笑)

 最後の別れの場面も顔を拭って泣くところを見せたあと、車の中では鼻をすするぐらいで涙を抑えていたりと、日本映画特有の「泣いてまーす!悲しいでーす!」とわかりやすい表現はしない。なんてことのない日常の光景にこそ感動や涙する場面がある。
「にゃんぱすー」とれんげが手を挙げた物語は「ただいまー」で幕を閉じる。ここは世界一優しいただいまが待ってる場所。



  


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2019年02月27日

ゾンビファンの脳みそを破壊する『トウキョウ・リビング・デッド・アイドル』



 当時、SUPER☆GiRLSのメンバーだった浅川梨奈主演のゾンビアイドル映画。「ゾンビ」と「アイドル」というローバジェット映画の定番要素二つがドッキングしたらどうなるか?華やかなカップルとなるか、それとも最悪の組み合わせになるのか!?


 3人組の地下アイドルユニット「TOKYO27区」(3人組なのに27区というこのネーミング)のセンターであるミク(浅川)は今日も満員のライブをこなしたが、メンバーのモエ(スパガの阿部夢梨)、ルナ(尾澤ルナ)のドヘタな歌と合わないダンスにブチ切れ。
「やる気あんの?わたしらもうすぐメジャーデビューで、もう地下アイドルじゃあないんだよ!」
 そんなミクの態度に少々ウンザリな二人。地下アイドルにありがちな無駄に意識高いケンカ、よくありますね。観客もちょっとイラついたところで、エレベーターから現れたゾンビ(突然)に噛まれるミク!騒然となる楽屋裏!周囲は突然のことにおびえるばかり(そりゃそうだよ…いくらなんでもゾンビの出現、突然過ぎ)で、誰もミクのことを助けない(これまでの態度が悪いせいもあるんじゃない?)。彼女を助けたのはゾンビハンターの男(また突然だなオイ!)

 腕の噛まれた後を包帯で隠したミクは人で溢れかえる真夜中の街を疾走…って、ゾンビが出てるのに普通に人が暮らしてるの?
 そう、この世界では人々が普通に生活を送っているのだ。ゾンビといえば発生した瞬間に無法地帯になったり、文明、日常が崩壊する様が描かれるのだが、この映画では通り魔が出てきたぐらいの騒ぎで済んでいる。なんて斬新な世界観なんだ。役者の後ろをよく見ると通行人が通っていたり、道路を車が走ってる。決して低予算すぎてポスト・アポカリプスな世界を描けないわけではない。

 ゾンビ化するまでのタイムリミットは72時間。噛まれた人間は警察によって専門の施設に強制収容される。のだが、捕まえた警察の偉い人がアイドル・ミクのファンなのでこっそり彼女を逃がしてあげるのだ。なお、低予算映画なので細かい設定についてはすべてセリフで説明される。
 なぜミクは逃げ出すのか?それは都市伝説として伝わっているゾンビ状態から回復する血清を探し求めるために。
 偶然見つけた「ワンダフル探偵事務所」の男、犬田満男(『ハルサーエイカー2』の田畑ジョー役やってた尚玄)に助けを求めるミク。

「わたし、どうしても夢を叶えたいの…アイドルの聖地、中野サンプラザでコンサートをやって国民的アイドルになるまで死ねないの!」

 ずいぶん小さい夢だな!中野サンプラザは確かに聖地かもしれんが、そこから国民的アイドルまでかなり遠いぞ!そこは嘘でも武道館っていおうよ!ミクは血清に関する噂が書かれたムーのまがい物じみたオカルト雑誌を見せて「ここに書いてる」そんなもん信用すんなよ。

クラーケンとネッシーの戦いは気になる

 逃亡したことで全国指名手配された彼女を助けるのは面倒だと手を引こうとする犬田だが、ミクが頭を下げてまで懇願するのに気が咎めて、この依頼を受けることに。

 翌日、高田馬場あたりにある雑誌編集部を訪ねていくと、建物があった場所は更地になっていた。なんと、数日前に謎のガス爆発を起こして編集部員は全員死んでいた。オカルト雑誌に真実を書いたから消されたのか?陰謀論が渦巻く中、タイムリミットは迫る。公園の草むらから突然現れた(ホント突然)ゾンビの頭を金属バットでカチ割り、逃亡する二人。
 一方、逃亡したミクを捉えんとゾンビハンターらも二人の足跡を追っていた。そのうちの一人、日本刀が武器の女子高生ゾンビハンター・如月が悶絶するほどカッコいい!襲い来るゾンビをバッタバッタと切り捨てるアクションは演じた星守紗凪、本人自ら挑んでます。公式プロフによると「特技・殺陣」とあり、ヘナチョコな剣の振り方じゃありません。こんな映画(失礼)で本格的な剣術アクションが見られるとは…僕は彼女のファンになるぞ!

本物の剣術ができるうえにカワイイぞ

 公園での撮影の間、ずっと小雨が降っている。別にじめじめとした世界観を描きたいとかいうわけでもなく、ただロケ日が雨で日程を変更するほどの余裕がなかったんだろうな…

 ミクたちはオカルト雑誌に記事を書いた男の家で「A」と呼ばれる感染少女がゾンビから回復する血清を作り出すことができる情報を入手、情報屋からA=アリシアと呼ばれている少女が実験のためどこかに監禁されていることを知るが、どこにいるのかわからないままタイムリミットは迫る。童顔巨乳好きゾンビ(どういうこと)に襲われるが、熱心なミクファンのオタクによって助けられ、というかオタク二人が勇ましく立ち向かうもあっさり犠牲になってる間に逃げたんだけど!アイドルはオタクを犠牲にして生き延びるんだ…彼らこそドルオタの鑑として語り継がれるべきだ。

 しかしミクらの前にゾンビハンター・如月が立ちふさがる…が、如月はゾンビを切り捨てると

「わたし、ミクちゃんの大ファンなの!」

 如月はTOKYO27区の古参(初期からのファン)だった!如月はアリシアの監禁場所を知っており、かつて感染した時に血清によって回復していたのだった。ミクのためにゾンビを人体実験に使っている組織を裏切ることにした如月、ミク、そして元刑事という過去も判明した(またまたまた突然!)犬田の3人は地下実験施設へ向かう。


 あらゆる意味で従来のゾンビ映画の埒外へ飛び出しており、予想以上の面白さがある。低予算ながら本格的な剣術、パルクールなどの大胆なアクションがあり、なによりゾンビが現れてるのに特に文明が崩壊していないとか、何もかも斬新すぎる。ゾンビ映画という枠に囚われがちなゾンビファンの脳みそを気持ちよく破壊する一本です。




  


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2018年12月31日

理想の漫画実写映画第二弾『咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A』



 美少女オカルト麻雀青春物語という、ジャンル付けが不可能な小林立の漫画『阿知賀編 episode of side-A』の実写化作品。
 前作『咲-Saki-』でも徹底された「漫画のビジュアルを極限まで再現する」スタイルは本作でも採用。



 麻雀するときになぜかボウリングのグローブをはめる鷺森灼役のエビ中、中山莉子も衣装からして完全に再現。



 登場時に髪が浮いている、大星淡役の志田友美なども完全に再現。もちろん動いてるときに髪は浮きませんが…


漫画でもおなじみ、雀卓を左手で抑え込んで、右手で気流を起こしながらツモ上がる宮永照(浜辺美波)の必殺技もこの通り再現だ

 他にも「三順先の手が見える」とか「副将が自らに飜数の縛りをかけてその飜数以上で和了ると次に打つ大賞が同じ局で倍の飜数で和了れるというリザベーション」

リザベーションを使うと鎖に両手を縛られるのだ(?)

 などもちゃんと再現されてます。もはや麻雀ではない、能力者同士のバトルものじゃないか!っていわれても、そういう原作の実写化なんで。

 主役クラス以外の脇役のように見える登場人物にも、それぞれの物語があるのが原作漫画の特徴なんですが、実写版も阿知賀監督・赤土と小鍛治プロの関係や千里山女子の園城寺怜と清水谷竜華の本作もっとも百合な関係を限りなく描き切っていたのは特筆に値する。

 原作漫画は10代女子の群像劇で、邦画ではリアルな10代ではない役者を起用することが多いが、本作はあくまで同年代もしくはそれに近いキャスティングをして、前述したビジュアルを完全に再現、その上で演技力よりも10代女子の瑞々しさと百合関係を仄かに匂わせた友情物語を強調してつくられたことがファンも納得できる作品になっている部分ではないでしょうか。

  前作同様、これぞ理想的な漫画実写映画の指標として記録に残したい作品です。

  


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2018年12月11日

リアル大人の鬼ごっこ『TAG タグ』



 一年のうち5月の一か月間かけて少年たちは鬼ごっこを楽しんだ。最後に鬼になった者は一年間負け犬呼ばわりされるのだ。彼らは翌年にも同じことをやった。それを…30年間続けた!と、いう事実の実写化『TAG タグ』を観た(AmazonプライムやTSUTAYAで観られます)
 これはウォールストリート・ジャーナルに掲載されたワシントン・スポケーンで鬼ごっこを約30年続けている10人の男たちを取材した記事が元になっている。DVDに収録されたメイキングでは男たちが本気の鬼ごっこを繰り広げる様子が収められている。「タッチ返しは禁止」「鬼か?と尋ねられたら迅速に答えなければならない」と明確なルールがつくられ、一か月にわたって行われるのでいついかなる時も隙は見せられない

 ゴルフを楽しんでいるところにカートに乗って接近、タッチ!「お前が鬼だ!」
 シャワーを浴びている時にやってきてタッチ!「お前が鬼だぞ!」
 野球の観戦をしているところにマスコットキャラの着ぐるみでやってきてタッチ!「今度はお前だ!」

 この光景はまるで命がけでバカな行為に挑む『ジャッカス』みたい。この人たち、すげえバカ。だけどタッチされた方も想像もしていない手段やタイミングでやってくる鬼にタッチされて爆笑。
 この時点ですでに面白いけど、映画版はこの事実をさらに面白くアレンジしている。鬼ごっこをしていた5人のうち、今は大企業の社長として成功しているキャラハン(『ベイビー・ドライバー』のジョン・ハム)が雑誌のインタビューを受けていると、掃除のおじさんがやってきて、「ターッチ!お前が鬼だぞ!」それは鬼ごっこ仲間のホーガン(演じるは『ハングオーバー!』シリーズの歯科医役でおなじみ、エド・ヘルムズ)だった!この後、キャラハンが部屋のガラスを椅子でたたき割ろうとして失敗するシーン、爆笑。
 二人は他の仲間、マリファナ中毒のチリ(『21ジャンプストリート』『LEGOムービー』のジェイク・ジョンソン)、精神科医のカウンセリングを受けている最中のケヴィン(ハンニバル・ブレス)と団結してジェリーを今度こそ鬼にしようと企む。
 ジェリーは29年間、鬼になったことが一度もない最強の男で、ホーガンたちは節目の年である30年目こそヤツを鬼にして鬼ごっこを終えようというのだ。このジェリー役が『アベンジャーズ』シリーズのホークアイ、ジェレミー・レナー!彼はホーガンたちが迫ってもスローモーションでひょいひょいタッチしてくる手を交わし、パルクールを駆使し二階から飛び降りて逃げ切ってしまう。この飛び降りる場面で失敗してレナーは両腕を骨折、以後はギプスを嵌めたまま撮影したので本編ではCG処理したそうだ。『アベンジャーズ』や『ミッション・インポッシブル』ならまだしも、鬼ごっこ映画で骨折するなよ!レナー、どこで本気出してんだ…

 そんな大人のリアルすぎる鬼ごっこは口の悪すぎるホーガンの妻や鬼ごっこ仲間に入れて欲しいバーの店員らを巻き込んでエスカレート。ジェリーの結婚式を狙って計画を実行するホーガンたちをあざ笑うように罠を張って待ち伏せるジェリー。ただひとり諦めきれないホーガンがマナー違反ギリギリのタッチを迫る。クライマックスにはブラックすぎるキツ目のジョークがあるんですが、思わぬ感動的なオチが待ってるんですよ。
 実在の鬼ごっこをやってる人たちも「30年間鬼ごっこをやり続けることで友情がつながってきた。つながりを保つ手段があるのはいいことだよ」「鬼ごっこは逃げるためじゃなく、顔を合わせるためさ」っていってるし。大人になってもバカができるなんてすばらしい。

  


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2018年10月28日

全編PCの画面で展開する、追っかけが女優を救う…のか?『ブラック・ハッカー』

 全編PCの画面で制作された映画『サーチ』(2018)が話題になってますが、意外なアイデアのように見えて2015年には『アンフレンデッド』という全編Skypeの画面で構成されている映画があって先駆者というのは必ずいるものだなと(ちなみ両作品とも制作は同じティムール・ベクマンべトフ)。

 ところがさらに先駆者がいた!それが2014年のスペイン映画『ブラック・ハッカー』だ!監督は『シンクロナイズドモンスター』(2016)が話題になったナチョ・ビガロンド。主演はイライジャ・ウッド(ウッドは制作も兼任)。


 人気女優ジル・ゴダード(サーシャ・グレイ)のファンサイトを運営している追っかけ青年ニック(ウッド)はジルの新作映画『ダークスカイ 第3の波』の宣伝キャンペーンとして行われた「ジルと会食ができる豪華プレゼントが一名様に当たる!」企画に参加し、見事当選。期待に胸を膨らませてLAのホテルに泊まり、会食のはじまる夜までホテルの部屋で新作映画のキャンペーンをしているジルの動画配信を見ていたニックのPCに電話がかかってくる。電話の相手はコードと名乗り「会食は中止になった。ジルがわがままをいって中止にさせた」と告げる。そのころジルは記者会見でネットに流出した卑猥な動画について質問をされ、「映画会社が宣伝のために流した」と不満を言って会見場を飛び出していた。

 人気タレントと会食ができるキャンペーンに参加して騙されるって、ミスタードーナッツの高橋由美子手作りお弁当二名様プレゼントの当選者が女性だったあの一件を思い出して冷静ではいられません。

 コードはジルの携帯や会場、ホテルの監視カメラに不正アクセスをしてあやつることができ、ニックのPCでそれが見られるようにする。コードはジルが自身のエージェントとデキていると暴露すると、まさにジルはタクシーでエージェントの泊っているホテルに行くところであった。コードの指示でエージェントの部屋を自分の宿泊している部屋から盗撮させられる羽目になるニック。
 コードとの連絡が一旦切れたころ、ニックのPCには観たことのないアイコンが表示され、それをクリックするとゴーグルをつけた3人組が現れニックのことをネバダと呼ぶのだがニックには何のことかわからない。
 エージェントの部屋にやってきたジルは口論になって部屋を飛び出してしまう。エージェントは盗撮に気付きニックの部屋までやってくる。コードの指示でエージェントをスタンガンで気絶させるニックだが、エージェントを拘束しろという指示には「もういやだ」と拒否。しかしコードはスタンガンを使うニックの映像を警察に見せるといって脅し言うことを聞かせる。コードはニックを助けてやるといってオンラインにしたままのノートPCを持たせ、駐車場の車で脱出させる。
 コードはノートPCのウェブカメラでニック自身を写したままにするよう命じ、車に置かれたカメラ付き端末をダッシュボードに載せるようにいい、ある場所まで車を走らせる。ニックのPCにはコードがジルの自宅に潜入するライブ映像が配信され、いつでも危害を加えられると脅してくる。ジルの身を守るためニックはコードの言われるままにジルのPCにファイルを送信する。それはエージェントが拷問される映像だった。ニックはコードが連絡を絶った隙にアイコンをクリックしてゴーグル姿の3人組に連絡する。彼らはフランスにるハッカー(トリオップス)で彼らの世界では伝説のハッカー・ネバダを信奉していて、ニックをなぜかネバダと勘違いしている。ニックは彼らと連携を図ってジルを助け出し正体不明の男・コードを捕まえようとする。


『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでは世界を破滅から救う主人公を演じて一躍有名になったイライジャ・ウッドだがそれ以外ではしょぼくれた少年や気持ち悪い変人の役が多く、『アイス・ストーム』(1997)では隣の家の少女(まだおっぱいを小さくしていない頃のクリスティーナ・リッチ!)とデキちゃって自分の弟と本当の穴兄弟になったりとか、『シン・シティ』(2005)では連続幼女殺人鬼だったり。『パラサイト』(1998)はいじめられっこだけど寄生生物に立ち向かうヒーローの役だったけど…

 本作でもごく平凡な(イライジャ・ウッドだからその説明で許されているのであって、世間一般的にはキモヲタといわれておしまい)女優のおっかけを演じるウッドの見た目は如何にも、なので彼がヒイヒイいいながら憧れの女優を救おうとする展開にはつい感情移入しちゃうな。オタクを演じられる役者ってすごいわあ。
 全編PCの画面で展開しながら、外に出て行ってカーチェイスやったりするアウトドアさがまた売りで部屋の中だけで進行しがちな映画のテーマを気持ちよく裏切ってくれてよいですね。終盤の展開もひねりを効かせていて途中でなんとなく読めるとはいえ、あっと驚くクライマックスにしているところは面白い。
 ただしホテルの監視カメラから他人のスマホのカメラまでコントロールするってできるの?と思うし。ハッキングすればなんでもできる!と思われがちなパソコンに対する知識が少なかった昔のSF映画モドキ風の話はちょっと無理があるのでは。
 しかしこれが後の『アンフレンデッド』や『サーチ』につながると思うとバカにはできない。挑戦的な実験作なんですよ。


  


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2018年07月18日

最後のビデオ店

 うちにはビデオデッキがまだあって、たまにテレビ放映したのを録画した『ウルフガイ 燃えろ狼男』とかを見たりするんですが、今や街のお店はレンタル「DVD」店に。そもそもビデオデッキを知らない世代がほとんどだもんなあ。日本でこうですから、アメリカではもはや絶滅寸前です。


レンタルビデオ店の思い出は? ─ アメリカでは残り1店舗、ほぼ絶滅へ
https://theriver.jp/last-blockbuster/

 日本よりも早くアメリカのレンタルビデオ店は絶滅状態に。残っているのは1店舗!世界中を探せばまだあるでしょうが、アメリカでは最後のお店です。『キング・コング2』のビデオを返却するために四苦八苦する『ビッグ・ヒット』やスウェーデン製のビデオだと言い張ってハリウッド映画のデタラメなリメイクを作り続ける『僕らのミライへ逆回転』など、レンタルビデオをネタにした映画は色々ありますが、通用しない時代がやってくるのです。
 ちなみに僕のレンタルビデオ店の思い出は借りたビデオに全然違うテレビの2時間ドラマが入っていたことです。

  


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2018年07月06日

倒錯趣味があってもいいじゃないか『ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密』



 アメコミ『ワンダーウーマン』の起源に迫る『ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密』を観た。日本では劇場公開されずDVDスルーになった作品だ。2017年公開の実写映画は全世界で異例のヒットを飛ばしたがその作品は如何にして誕生したか?

 舞台は1928年。ハーバード大で心理学の教授をしていたウィリアム・モールトン・マーストン(ルーク・エヴァンス)と妻のエリザベス(レベッカ・ホール)は嘘発見器の原型の開発にも着手していたがウィリアムよりも優秀なエリザベスは「自分には女性器がついているから博士号が取れない」と不満の日々。
 ウィリアムは新入生のオリーブ・バーン(『高慢と偏見とゾンビ』のジェーン役で知られるベラ・ヒースコート)の美しさ故に周囲から浮いている様子に惹かれ、助手に雇う。オリーブの母エセル・バーンは産児制限のハンストを起こして倒れるぐらいのフェミニスト活動家で、幼い頃は修道院に預けられていた。
 3人は研究者と助手という関係を続け、嘘発見器の完成にまで至るが、ウィリアムとオリーブの関係に嫉妬したエリザベスによって引き離される。が、オリーブが本当に想っていたのはエリザベスの方だった。彼女は同性愛者だということに苦しむけれど、ウィリアムは「だったら3人で暮らせばいいじゃないか!3Pしよう!」と堂々言い放つ(笑)。画してオリーブは他の男との婚約を解消し、マーストン夫妻とポリアモリー(三人婚)の関係に至る。ポリアモリーは男性側からの一方的な関係を迫られがちな一夫多妻制とは違い、複数人が完全な同意の元に行われる関係だが、3人の関係は当然ながら周囲の理解をまったく得られず、大学に関係が発覚するやウィリアムは解雇されてしまう。
 オリーブの妊娠もあり、3人は引っ越した上同居するが周囲にはその関係がバレないようにしていた。ウィリアムとオリーブは作家として、エリザベスはウィリアムの秘書として家計を支えることに。


 ・・・これのどこが『ワンダーウーマン』誕生につながるの?とモヤモヤするが、直後に話は急展開する。ウィリアムは偶然立ち寄ったボンデージ趣味の衣装屋でフェティッシュアートの数々を見せられる。これは自分が長年研究してきたDISC理論(DOMINANCE=支配、INDUCEMENT=誘因、SUBMISSON=服従、COMPLIANCE=承諾 四つの交互作用で人間関係は築かれるとする理論)そのものだ!

「最大の幸福は愛するものに服従すること」
「大事なのは喜んで従うことだ。自らの意思で」
「人に強いられて望まぬことをするとただの承諾になってしまう。人は承諾すると、不満と抑圧を感じるものだ」
「恨みも生まれる。極端になると犯罪や戦争、ファシズムを生む」
「承諾を避ける方法は誘因だ。考え方を変えさせる」
「完全に支配するんだ。相手は望み通りに動く。自ら喜んで。誘因こそが愛や平和をもたらす」

 衣装屋で公開SMショー(にしか見えない)を見せられたエリザベスは嫌悪感を露わにするが、ワンダーウーマンそのまんまのコスチュームを着たオリーブに見とれて”真実の縄”をオリーブに這わせる。ウィリアムはギリシア神話に登場する女性だけの部族、アマゾーンを元にした漫画原作『スプリ―マ・ザ・ワンダーウーマン』を考案し、出版社に持ち込んでコミック化に成功する。
 真実の縄は3人が完成させた嘘発見器に基づくアイデアだし、インビジブル・ジェットはウィリアムが子供たちと遊ぶためにもっていた透明飛行機からのインスパイアだ。
 ワンダーウーマンは毎回敵から拘束されたり、縛られて鞭打たれるが“承諾”の楔を断ち切って女性の自由のために立ち上がる!そしてワンダーウーマンの誘因によって世界は愛と平和で満たされるという…
 コミックだけでは伝わらない背景があるとわかって目から鱗が落ちる思いだ。しかも倒錯的な趣味嗜好があるとわかったのも衝撃だ。そんな趣味の人でも最も有名な女性ヒーローの漫画を作れるのだから、まったく趣味嗜好だけで人を変態扱いするのは止めてほしいものだ。僕だってあんなに強くてカッコイイ女性がいるなら服従させてもらう。こちらからお願いしたい。完全に支配するんだ。相手は望み通りに動く。自ら喜んで!



  


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2018年07月06日

不能のヒロイン『富美子の足』



 舞台役者として活動、週刊プレイボーイ誌上にて類まれな身体を披露した途端、認知度が上がった片山萌美さんはワンコインで買える雑誌で水着見せるなんてサイテーと言い張る吉岡里帆と違って大人の女性なので、さっさとヘアヌードを見せたにも関わらず「「脱ぐと何かが変わるよ」っていろんな人に言われてたんですけど何も変わらなかったです。自己嫌悪とかもなかったし。少し期待していたんですけどね(笑)」とさらっと言い放つような人である。
 そんな彼女はその後当然のように低予算のちょいエロ映画シリーズに駆り出されて、ちょいエロな演技をあっけらかんと見せていた。ここで満を持して谷崎潤一郎原作映画に主演!


 片山演じるヒロイン、富美子は男を虜にして止まない「足」を持っている。思春期の頃、この足のせいで義理の父親に足を撫でまわされ、電車で痴漢に遭い続ける。会社に入れば上司が隙を見て足に頬を摺り寄せられる(どういう会社だ)。そんな経験から自分の足を嫌悪するようになり、顔と胸を整形すれば男は足を見なくなる!と思うがやっぱり男は富美子の足しか見ない!
 整形の費用を稼ぐためデリ ヘル嬢を始めた富美子は資産家の老人、塚越に見初められる。
「お前の足にわしの遺産をすべてやる!」
 塚越役は『冷たい熱帯魚』で観客を恐怖のどん底に突き落としたでんでんが演じている。今回は常に絶叫口調で周囲を恫喝しまくる、最初っから最後まで常軌を逸した変人の役だ。
 塚越の家で家政婦のような仕事を始める富美子だが、塚越は甥の野田(渕上泰史)に富美子の足を見せて「この足そっくりのモノをつくれ!」野田は売れないフィギュア造形家で、塚越にお小遣いをもらうためにせっせと富美子の足をつくるのだが、彼はどう見ても現実の女性に興味のないオタクなので、塚越に富美子の足を舐めてみろ(それでインスピレーションが湧くからと)と言われて心底イヤそうに富美子の爪先を舐める。そんな調子なので塚越の望むものは出来上がらない。「こんな足からは熱も魂も感じられない!」「ちくわだ!ちくわ!空っぽのお前そのものだ!」と罵倒され、出来上がった足は叩き壊される。
 とっととこんな仕事から解放されて、遺産を受け取りたい富美子の目算は外れまくり、家に帰れば同居している車いす生活の母親に金をせびられ、それだけでは飽き足らず若い男を連れ込んでそいつの相手までさせられる(そいつから巻き上げた金は当然母親の懐に)。そんな母親となぜ同居するのかというと、富美子の足に見とれてハンドル操作を誤った男の車が母親を跳ね飛ばしたという後ろめたさがあるから。この足が私の人生すべてを狂わせる!なにしろあてがわれた若い男も富美子の足を舐めまわし続けるのだから。

 これは不能の物語だ。富美子は足のためにまともな性交や男女関係をもったこともないし、足に魅入られた塚越もおそらく不能だろう。野田はオタクだからいうまでもない(笑)。性的な満足が得られない故に3人は狂っていく。
 野田を利用しようとする富美子は女性上位で跨って虜にしようとするが朝チュンの時に野田は富美子の足を舐めまわす。やっぱりこの足のせいだ!しかし追い詰められた富美子はこの足を利用しようとする。野田を蹴り倒してドスの利いた声で彼を支配し、塚越に金をせびりに来る娘を始末させる。暴力で支配された野田は身も心も富美子の虜になってついに塚越が望んだ完璧な足を完成させる。しかし富美子が望んだ結果が得られないという、最後の最後まで不能なオチなのだった。
 不能で不満足な話なのだが、片山萌美はトップまで披露する大胆演技で観客を大変満足させてくれる。ワンコインで買える雑誌のグラビアすら否定するような吉岡里帆では到底できないような渇いた演技と濡れ場で谷崎らしい歪んだ女性像をもつ人々には理想のヒロインだ。



  


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2018年06月12日

子供の幸せ『ゴーン・ベイビー・ゴーン』

 第71回カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した『万引き家族』には胸を打たれた。一見普通ではない、血縁関係のない家族が血縁関係のある普通の家族よりも温かい、という話で終盤、普通でないことを説教する警察官の高良健吾と池脇千鶴の言葉はまったくもって正しいのだが、正しさ故に家族の心にまったく響かないというのを見て「普通がそんなにいいのか、普通って何?」と思わされた。そして『万引き家族』を見ながら思い浮かべたのが『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007)だ。
※以下ネタバレしていますのでご注意ください。




 デニス・ルへインの『私立探偵パトリック&アンジー』シリーズの第4弾でベン・アフレックの初監督作品だ。ボストンの街で4歳の少女アマンダが誘拐され、行方不明になる。アマンダの母へリーン(エイミー・ライアン)が目を離した隙にいなくなってしまったのだという。誘拐事件にマスコミが飛びつく中、警察の捜査に進展がないことにいら立ってアマンダの叔母ベアトリス(エイミー・マディガン)は地元に詳しい私立探偵のパトリック(ベン・アフレックの弟、ケイシー・アフレック)と相棒のアンジー(ミシェル・モナハン)にアマンダの捜索を依頼する。

 へリーンは目を離したどころか、子供を置いて男友達のところに行っていたのだ。おまけにドラッグ中毒のへリーンはヤクの売人チーズ(エディ・ガテギ)の運び屋もやっていた。そんなゴタゴタを知っている警察署長のジャック・ドイル(モーガン・フリーマン)ははじめからへリーンのDVを疑っており、警察はアマンダがもう生きていないと決めつけている。ジャックはベテランの刑事レミー(エド・ハリス)とニック(ジョン・アシュトン)をパトリックにつけてやるが、彼らも真面目に捜査しないし、アンジーも「ゴミ箱に捨てられた子供の死体は見たくない」と乗り気でない。

 パトリックはボストンの地元仲間を使って情報を集め、チーズが誘拐の主犯と断定する。身代金と交換でアマンダを渡すようにいう。チーズは白を切るが数日後に引き渡しを指示。レミー、ニックとともに引き渡し現場に行くも予想外のゴタゴタが起き、チーズは誤射され死亡、アマンダは池に落ちて死体は上がらなかった。

 最悪の結末を迎えた事件だったがパトリックはさらに別の幼児誘拐事件に首を突っ込み、そちらも最悪の結末を迎えてしまう。だが、パトリックはついにアマンダ誘拐事件の真相にたどり着く。


 アマンダはそもそも誘拐されていなかった。へリーンに母親の資格がないと思った人物が信用のおける人間にアマンダを預けて育ててもらおうとしたのだ。


 『万引き家族』では父親のリリー・フランキーが家に帰る途中で団地の廊下でポツンとしている女の子を連れてくる。妻の安藤サクラが女の子を家に帰そうとするが、夫婦が激しく罵り合っているのを聞き、「産みたくて産んだんじゃない」と女の子の母親(片山萌美)が叫んでいるのを耳にし、女の子をそのまま連れて帰る。
 二か月後、女の子の家を訪れた児童福祉相談所の職員が女の子が家にいないのをおかしく思い警察に相談して行方不明扱いになる。リリーや安藤サクラたちの家族は女の子をゆりと呼んで家族同然に暮らす。二か月間も子供を放り出しておくような親のところにいるより偽物の家族のところにいる方が幸せだ、というわけ。


 アマンダを引き取った人物は「あんな母親がまともに子供を育てられると思うか?」といい、この国では親権を主張されれば虐待されている子供を親から引き離すことすらできないと。アンジーもアマンダはこのまま愛情のある人間の元で暮らす方が幸せだと言い出す。悩んだ末、パトリックは警察にすべてを話す。子供が帰ってくれば、母親はきっと変わる、と信じて。


 アマンダが無事、自分の元に帰ってきたヘリーンは…何も変わらなかった。男をつくって遊びに出かけるヘリーンは様子を見に来たパトリックを歓迎し、ベビーシッターが来るまでアマンダを見ていてくれといって出かけてしまう。ひとり寂しそうにテレビを見ているアマンダのソファの隣にパトリックは腰を下ろす。アンジーは荷物をまとめてでていってしまった。
 ルへインの原作小説のタイトルは『愛しきものはすべて去りゆく』だ。

  


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2018年02月28日

今度は宇宙だ!『ザスーラ』

 この間『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』の完成披露に行ってきた。すでにアメリカでは8週連続ランキング入りというロングランで大ヒット中。元の映画はガッカリズッコケ映画だというのに信じられない受け方が信じられず「今更双六映画のリメイクかよっ」と思ってたんだけど、今回のリメイクは相当面白く、インディ・ジョーンズシリーズみたいな冒険映画の趣があり、青春映画としての甘酸っぱさもありでどの世代が見ても楽しめる内容。



 今回はその前作『ジュマンジ』の「精神的続編」だという『ザスーラ』(05)を見ましたよ。



 『ザスーラ』は『ジュマンジ』がジャングルを舞台にしたリアル脱出ゲームならぬリアル双六ゲームだったが、こちらは宇宙が舞台。そして原作者が同じクリス・ヴァン・オールズバーグ。「精神的続編」とはそういう意味である。

 ウォルター(ジョシュ・ハッチャーソン)とダニー(ジョナ・ボボ)の兄弟は両親の離婚以来ケンカが絶えず、父親(ティム・ロビンス)も子育てに手を焼いていた。スポーツもできる兄のウォルターに比べてダニーは夢見がちで内気。父親は急な仕事が入って兄弟の世話を長女のリサ(クリステン・スチュワート)に押し付けて出て行ってしまう。ダニーは地下室で見つけてきたボードゲーム「ザスーラ」を持ってきて兄に構ってもらおうとする。
 「ザスーラ」はネジを回すと中央のカウンターが回転して出た数だけプレイヤーのコマが進み、止まったマス目のカードに書かれてあることが実際に起きる双六だ。宇宙を舞台にしているのでコマは宇宙船。
 ダニーがひとりでゲームを始め、コマが止まるとカードが飛び出す。「流星群を回避せよ」すると家の天井をぶち破って流星群が降ってくる!しかも自宅の窓の外は宇宙空間になっていて外へ出ることができない…脱出するにはゲームをクリアするしかない。こうして仲の悪い兄弟は力を合わせてザスーラを始めることに。

 この仲の悪い兄弟がゲームを続ける、というのがポイントで二人は何かにつけて言い争ってゲームはまともに進まない。ふてくされたダニーが「パスタをつくる!」と言い出してゲームを放り出したりしてるのを見てるこっちは「そんなことはどうでもいいから、とっととゲームを進めろよ!」とか思っちゃう。この二人がまったく可愛くないのでどうしてもイライラが募ってしまう(そういう脚本なんだけど…)。
 「宇宙飛行士を救え」というカードが出てきて、15年間宇宙をさまよっていたという宇宙飛行士(ダックス・シェパード)が勝手に家の中の食べ物をあさりだすのでウォルターは追い出そうとするがザスーラの敵キャラ、ゾーガン星人を追い払ってくれたことからダニーは残ってくれといい、このことでウォルターは「僕の意見を無視した」と不満顔。
 さらにゲーム盤が移動した衝撃でコマの宇宙船の位置がずれちゃうと「ズルした!」「してない!」とケンカ(いい加減にしろ)。ウォルターはダニーのコマを前の位置にずらすのだが出てきたカードは「不正をしたので罰」。あわれウォルターは宇宙空間に放り出されそうになる。なんとか宇宙飛行士の活躍で助けられるが再び二人はケンカ…

 そんな中、ウォルターは黄金のカードを引き当てる。「流れ星にひとつだけ願い事をする」家の外の宇宙空間を流れ星が通過。険悪になっている二人を見て宇宙飛行士はその願い事だけはやめろと叫ぶ。宇宙飛行士はウォルターがダニーなんかいなくなればいい、という願い事をするのだと思ったのだがウォルターは別の願い事をしていた。宇宙飛行士は
「15年前に自分も弟とゲームをしていたが、ケンカして流れ星のカードを引いた時『弟なんかいなくなれ」と願ってしまい、弟が消えてしまったのでゲームが続けられなくなった。君たちは同じことを繰り返してはいけない」
 と二人を諭す。


 と、ここまで来て二人のしつこいケンカや、仲を取り戻すことの大切さを訴えたいというストーリーのキモがわかるとこの映画俄然面白くなってくる。このままケンカだけしてたらギブアップするところだった。兄弟は協力してゾーガン星人に立ち向かい、故障したロボット(ブリキのおもちゃが巨大化している)を上手く操って窮地を切り抜けていく。
 宇宙船のデザインは50年代の流線形で、トカゲ型宇宙人のゾーガン星人やロボットなどには『ターミネーター』『エイリアン2』『ジュラシック・パーク』のスタン・ウィンストンが関わっている。監督のジョン・ファブロー(『アイアンマン』シリーズ)とウィンストンはCGと特殊効果を上手くミックスさせた映像をつくりあげた。トカゲの宇宙人とか、ブリキのロボットやら流線形のロケットやらが出てきて50年代SF映画のような古典のイメージが『ザスーラ』の面白さである。『ジュマンジ』をあまり気に入っていないというファブローは『ザスーラ』で見事に『ジュマンジ』のガッカリ部分を手直しして、古典SF映画の面白さを十二分に楽しませてくれた。やっぱり特撮では宇宙人とか、見たことないものを見せてくれないとな!


  


Posted by 縛りやトーマス at 09:30Comments(0)特撮・ヒーローレンタル映画館