2020年07月10日

失われても、再び高く飛ぶ『日本沈没2020』

 ネットフリックスで7/9からアニメ『日本沈没2020』が全世界配信された。




 1973年に発表された小松左京のベストセラー『日本沈没』を原作にした湯浅政明監督による全10話のシリーズで全話を一挙配信。原作は73年と2006年に映画化、74年にはテレビドラマ化しているが、アニメーションという形でつくられるのは初の試み。「地殻変動により日本列島の大部分が海に沈む」という描写をアニメでどう描くのか?

 第一話では突然の大地震により日本が未曽有の大災害に襲われる描写がえげつなく描かれる。そんな中、本作の主人公となる武藤家の人々は友人、同僚らを失いながらも家族との再会を信じ帰宅。ライトアップされた(!)神社に集い無事再会を果たすが、避難所にも水が迫り生き残った人々は安全な場所を求めてさらなる移動を選択する。ここまでが1~2話の話だ。
 建物が崩壊したりするようなスペクタクル描写はあまりないのが意外。代わりにあるのは何の前触れもなく突然訪れる死だ。劇中の登場人物たちは突然、あっさりと死んでいく。物語の前半はあまりにも突然やってくる人の死に武藤家の人々は悲しむ暇も与えられず前へ進むことを余儀なくされる。1973年の映画版でも地震で発生した火事を見て、「関東大震災では火でやられたんだ」と火元の確認をするようにいう老人が出てくるが、そこに津波で起きた洪水がやってきて流されてしまうのだ・・・死は突然にやってくるというオリジナルの要素を受け継ぎつつ、物語は進む。

 主人公たちは連れを失いつつ、道中で有名ユーチューバーのKITE(CV:小野賢章!)や山中のスーパー経営者であるモルヒネ中毒の老人、陽気な外国人のダニエルといった人たちと出会い、死人と会話できる子供と教祖様のいるコミュニティ、サンシティで一時の休息を得るも、そこも地震で崩壊。サンシティで出会った寝たきりの病人、日本沈没を主張した深海潜水艇の操縦者、小野寺(73年の映画では藤岡弘が演じた同名の人物をモチーフにしたと思われる)を連れ旅は続く。

 政府の進める日本脱出計画「D計画」により国民は国外へ脱出できることに。オリンピックの強化選手にも選ばれている武藤歩(CV:上田麗奈)は優先的に船に乗ることができたが、家族のある異変に気付き船を降りる。国の船以外にも「海上を移動する国家」を宣言する国粋主義者らの「国」に乗ることもできたが、母親がフィリピン人で子供たちはハーフという武藤家の人々は入国を拒否され、サンシティの崩壊を予言した小野寺は謎の数字を示し「行かない」といい、一行は富士山の噴火で崩壊する港から脱出。国粋主義者らの国は火山弾が直撃して沈没(やっぱり)。

 地元の漁師の船に乗せてもらった一行だが、津波に襲われテント型の救命ボートに乗るも、歩、弟の剛(村中知)は他のみんなとはぐれてしまい同乗していた漁師は鮫に食われて海中に没す。何日もの漂流の果て、手漕ぎボートに乗った母親のマリ(CV:佐々木優子)、歩の陸上部の先輩・古賀(吉野裕行)と無事再会。その後KITE、小野寺とも合流し、小野寺が残した謎の数字の場所、日本列島を隆起させるデータが残された希望の地へ向かう。


 この『日本沈没2020』で主に描かれるのは前述したようにスペクタクルな震災の描写ではなく、極限の状況で手を取り合い生きる人々の日常と不意に訪れる人間の死だ。避難所では小競り合いもあるが、多くの人々は助け合い、手を差し伸べてくれた他人に感謝する。怪しげなコミュニティのサンシティも「他に行き場のない人々に手を差し伸べていた」ことがわかったり。国が沈むという絶望的な状況でも人々が手を差し伸べ助け合うことで新たな希望が生まれる。


 日本が沈んでしまったら日本人という国家のアイデンティティは喪われるのか?という1973年の映画版でも触れられたポイントについても新たな答えを出している。映画版に特技監督としてかかわった中野昭慶は満州生まれで敗戦のため引き上げてきた人物で日本そのものに思い入れもないため、原作のアイデンティティにこだわる描写には「そんなもんかね?」と興味を示さなかったという(だから映画版では極めてドライに描かれた)。
 湯浅監督は武藤家を日本人の父とフィリピン人の母親の家族に設定し、ナショナリズムの観点から解き放とうとした。KITEも英語を話して海外でも活躍する男だし、モルヒネ中毒の老人も外国嫌いを口にしながら排斥はしない。国籍は関係なく人々が災害を通じてどう結びつき、繋がっていくのかという物語だ。

 後半は前半とうって変わってエモーショナルな死がやってくる。急に「昔水泳選手だった」なんて『ポセイドン・アドベンチャー』なのはご愛敬か。歩の陸上部の先輩でなぜか引きこもりになった古賀は水面に漂うメモリを拾うために100mの距離を5秒で拾って5秒で戻ってくる、10秒が生命線の賭けに挑む。だが数話前の場面では古賀が自身の100mのタイムを計測し、12秒かかっていたことがわかる。古賀は10秒で帰ってこられないことがわかっていて飛び出した。そしてメモリを歩に投げてバトンを渡した・・・


12秒じゃ間に合わないよ!


 マリは道中で何度もポラロイド写真を撮る。「せっかくだから」といって。物語のエピローグではありとあらゆる場面で記録を残していたことがわかる。在りし日の日本の映像もアーカイヴとして残されることがわかるのだが、その一枚が大阪・新世界にある映画館、新世界国際劇場のものとしか思えないカットもあって、これが後世に残された日本の記録になるのか・・・としみじみした。




 小野寺のデータからは沈んだ日本の一部が再び隆起することが示される。何年、何十年、何百年先かわからないが。震災時のケガで片足を切断することになった歩は義足の幅跳び選手としてオリンピックの舞台に立つ。新しい脚で彼女は遠く高く飛ぶ。日本列島もいつか必ず復興するだろう。一度失われても再び、飛ぶことができるのだ。

  


Posted by 縛りやトーマス at 10:02Comments(0)アニメネットフリックス

2020年06月19日

ランボー新作吹き替えに花澤香菜!戦争は終わってなかった!

 今月末公開の映画『ランボー ラスト・ブラッド』のヒロイン吹き替えが花澤香菜さんに決定。


花澤香菜:無謀なランボーに「一人で行かないで…!」 最愛の“娘”演じる
https://mantan-web.jp/article/20200617dog00m200046000c.html

 はなざーさんのランボー吹き替えって前にもあったような・・・そう、アニメ『ポプテピピック』スペシャル朱雀ver.のAパートだ。



 ポプテで花澤さんはランボーのパロディシーンでなぜか普段の私服がダサいとSNS上でネタにされていることへの不満をぶちまけ、「自分の金で買った好きな洋服をディスられている」「少なくともファッション雑誌には載っていた服だぞ」しまいにゃ「イベントに出ると大喜利ばかりやらされる」「毎日夢を観るんです・・・川柳大喜利ですべった時の夢を・・・」とか言い出していた。

 今回吹き替えに起用されたのはまさかこの繋がりなのか?ちなみにはなざーさん、映画の公開直前イベントでも安定のクソダサ私服だった・・・


なんだこの家で練習してるときのピエロみたいな服は・・・

 あいつらはなんなんだ!何も知らないくせに!

  


Posted by 縛りやトーマス at 08:51Comments(0)声優アニメネットフリックス

2020年06月08日

人身売買ネットワークの闇『ジェフリー・エプスタイン 権力と背徳の億万長者』

 先日、週刊文春で「死ぬこと以外はかすり傷」とかコイていた編集者が女性ライターにとんでもないセクハラをしていたことが暴かれ、その後も反省せず女性の側に問題があるかのような主張をして重傷を負っていました。女性ライターに「ヤラセロ!」と迫るLINEのやり取りは心底醜くキモイおっさんのあるがままの姿でみっともなく、見ていて吐き気を催しましたが、それすら可愛らしく思えるほどの話を聞きました。

 ネットフリックスで配信中のドキュメント・シリーズ『ジェフリー・エプスタイン 権力と背徳の億万長者』はアメリカの大富豪、ジェフリー・エプスタインが20年にも渡り未成年の女性を性的搾取していたというドキュメントだ。



 ジェフリーは高校を飛び級で卒業するほどの才人で、口のうまさを利用して次々とのし上がり20代の頃にヘッジファンドで莫大な財を成し、大富豪としてフロリダ州パームビーチに大邸宅をつくり、そこを人身売買で見つけた少女たちを招き入れ、性的搾取の城とする。
 ジェフリーの手口は巧妙で、身寄りのない孤児や親と離れて暮らすようなお金に困っている未成年に「200ドルあげる」と持ち掛け高級住宅街にある私邸に呼びつけ性的なマッ サージなどをさせる。ことが済んだ後は「他に友達を紹介してくれたら200ドルあげよう」と売春の仲介をさせるのだ。性的なことを要求された少女たちの中には驚いて「帰ります!」という子もいるのだが、そういう子にもやはり「じゃあ他の子を紹介して」といって200ドル渡す。身寄りのない子の中にはお金が欲しくてジェフリーの誘いを何度も受けてしまったり、また友人を紹介したことで罪の意識に苛まれて富豪であるジェフリーを告発することができない。にしてもこのロバ顔のオッサン、富豪のくせにたった200ドルってせこ過ぎだろ!

 2001年から2005年頃までの数年間で少女たちの勧誘ネッ トワークはネズミ算式に膨れ上がって米国内から果ては南米、欧州にまで広がっており、200人以上の被害者がいたという。

エプスタイン氏の邸宅には何人もの少女がやってくる

 という近所の住人の通報や、被害女性が訴えを起こしたことでついにフロリダ警察の手が伸び、2006年にエプスタインは売春勧誘、売春あっせんの容疑で逮捕、起訴される。最悪終身刑の可能性もあったがエプスタインは金と権力で罪から逃れる。司法取引の結果、下された罪はたった18か月の禁固刑。収監されながら一日12時間の外出が許されており(外で仕事をしなければならない、という理由で)、外に出られないのは週に一日だけだった。それ、禁固刑って言わないよ。

 フロリダ警察や被害者たち、世間はこの措置に疑問を抱くも、司法取引を下した連邦検事アレクサンダー・アコスタは当時も今もこの決定に問題はないと言い張った。彼はトランプ政権の労働長官だった・・・(後に解任される)

 禁固刑を終えて出所したエプスタインはこれまで以上に少女売春に励み、それは2019年まで続いた。性犯罪者として記録されている人物が約15年に渡って放置されていたのだ。
 なぜそんなことが許されていたのか?エプスタインの権力と金の力である。エプスタインはあらゆる業界に知人がおり、歴代大統領(クリントン、オバマ、トランプ)やルパート・マードック、マイケル・ブルームバーグといった実業家、英国のアンドリュー王子やトニー・ブレア首相、サウジアラビアの王太子といった政治家、国賓に及び、映画業界からはウディ・アレン、ケヴィン・スペイシー、ハーヴェイ・ワインスタインといったオールスター。彼らはみなエプスタインの邸宅で「サービス」を受けたという・・・
 著名人らと世界中で会うためにエプスタインは自家用ジェットで飛び回った。その名も「ロリータ・エクスプレス」!


 金と権力でやりたい放題していたエプスタインだが、2019年、重い腰をあげたFBIの調査によって二度目の逮捕となる。今度は逃がさないという意思の元、邸宅の家宅捜索が行われ少女のヌード写真だらけの部屋からは売春の証拠となる未成年女性の写真を収めたCD-ROMなどが発見、押収された。2006年の際には警察の捜査を見越したようにパソコンなどを処分していたエプスタインもついにお縄。

 100人を越す被害者が訴え出、その中の10数名は顔と名前を出して告発。勇気を出した彼女たちだが、前回のように金と権力で逃げ切られてしまうのではと不安だったが、エプスタインの逮捕状を出したニューヨークの司法は家宅捜索の際にダイヤモンドや偽造パスポートを押収していて、「逃亡の恐れがある」という理由で保釈を認めなかった。
 これで彼は一生牢獄の中だ!被害者たちは安堵したが、そうはならなかった。なぜなら彼は裁判を受ける前に自殺してしまったから!


 エプスタインは保釈を認められなかったあと、ニューヨーク・マンハッタンの矯正施設に入れられていたが、ここは札付きの「治安の悪い」場所で、自殺をさせないために他の囚人がいる房に入れられ、30分毎に見回りが来るはずだったが、エプスタインが自殺したとき、房内にはなぜか誰もおらず見回りは居眠りしていて、2台ある監視カメラはどちらも故障していた・・・

「エプスタインが売春ネットワークに参加している著名人の名前を裁判で出すことを恐れた何者かによる謀殺だ」

 華麗過ぎる著名人との交際が知れ渡っているだけにこのような噂がネット上を駆け巡ったが証拠はどこにもない(残念ながら)。しかし中には2ショットが残っているクリントン元大統領などがおり、彼は逮捕の後「以前は知り合いだったがここ最近は会っていない」といけしゃあしゃあと言い張った。性的被害にあった女性から「数年前のパーティで会った!」と証言されてたけど。

 もっとも情けないのが英国のアンドリュー王子で、彼は17歳の未成年に性的サービスを強制されたと訴えられた!被害女性は「王子は汗っかきですごく嫌だった」と訴えたが、アンドリュー王子は「わたしは汗をかかない体質なんだ」と言い訳。しかし公開された女性との2ショット写真を見せられ「2階になんか行ってない」と聞かれてもいないことを答えて大恥をかいた。2019年末に王子は公務から退くことを発表し公の場に一切姿を見せなくなった。


 エグゼクティブ・プロデューサーは『ブレアウィッチ2』『テッド・バンディ』のジョー・バーリンジャー。謎めいたエプスタインがどうやって大富豪になったのか、その過程やどういう人生を送って希代の変態ロリコン野郎が誕生したかの真相や被害者以外の証言がなかなか取れないという厳しい条件の元(だからこそこの一件の問題の根深さがわかるようになっている)、衝撃的な内容になっているのはさすがか。

 陰謀論なんかで「世界中に張り巡らされたロリコンネッ トワークの存在」が囁かれるけど、こういう一件が明るみになると、あながち嘘八百とも思えないのな。性的搾取した側は誰も責任を取ってないという事実に頭が痛くなる。箕輪ナントカもそうだけど、卑劣な人間はどこまでも卑劣になれるというのがよくわかった。

  


2020年04月12日

連結血滴子がやってくる!『続・空飛ぶギロチン/戦慄のダブル・ギロチン』

 清の第5代皇帝、雍正帝(ようせいてい)は父の康煕帝(こうきてい)が寛容だったことから蔓延った汚職を厳しく取り締まり、税制改革に臨み農民の負担を軽くし、自らは勤勉かつ倹約で政府の財源を増やすなどの劇的な改革を行ったことで知られる。
 しかし9人の皇位継承権を持つ中から選ばれるという、熾烈な争いを勝ち抜いた上、帝位を継いだ初期にも争いから落ちこぼれた皇子たちや臣下らから狙われたため、権力を維持するために粛清を行った。血滴子(けってきし)と呼ばれる暗殺集団をつくらせ、反逆しようとする外敵や臣下の裏切り者を彼らは組織の名前がつけられた暗殺武器で殺していった。血滴子・・・空飛ぶギロチンで!

 というのはショウ・ブラザーズが1975年に公開した映画『空飛ぶギロチン(血滴子)』のあらすじである。血滴子というのは歴史上に存在した組織だが、彼らが空飛ぶギロチンを使っていた、というのはショウ・ブラザーズの創作。この映画は大ヒットし、本編シリーズが3作、派生作品を生み出し、リメイクもされた。
 空飛ぶギロチンという武器は「100歩先からでも相手を殺せる、しかも防御不可能な必殺の武器」である。長い一本の鎖の先に円盤というか、帽子のような投擲部分がついており、こいつを投げると帽子の中から駕籠が下りてきて、相手の頭部を首まですっぽり覆うと、鍔から3枚の刃が飛び出し首を刈ると駕籠に刈った頭を入れたまま手元に帰ってくるという・・・非常に恐ろしいが、投げる→頭が収まる→刈る→首をしまって戻ってくる・・・といった過程は間抜けな感じもあり、血滴子映画(というジャンルがある)がバカンフー映画と笑われる理由にもなっている。
 今回はその『空飛ぶギロチン』の続編、『続・空飛ぶギロチン/戦慄のダブル・ギロチン』をご紹介!


配信中のネットフリックスのサムネイル


 前作のあらすじをざっと紹介すると、雍正帝によって選ばれた血滴子集団の一人、マー・トンはたぐいまれな空飛ぶギロチンの腕前を認められるが、忠臣を暗殺するという仕事に疑問を抱き、さらにはライバルであったシュー・シュワンクンがマーの弟の裏切りを吹聴し殺したことから脱走を図る。逃亡先で女芸人のユー・ピンと一緒になったマーは彼女と結ばれ子供を授かるが、皇帝の命を受けたかつての仲間たちに襲われる。マーはシューを殺し、仇を討つと妻子とともにいずこかへ去っていった・・・

 続編はこの後の話で、マー・トンも再び登場する(ただしキャストは変更)。

 雍正帝による粛清は続いており、漢民族を嫌う皇帝は後宮に美女が奉じられても「漢民族の女は不要!」と切り殺してしまう(なんて勿体ない・・・いや、残酷な)。反乱分子が皇帝の命を狙うも失敗し、皇帝は血滴子たちにアジトを襲撃させる。「高速の剣」といった技を持つ彼らも空飛ぶギロチンの前にはなすすべがない!が、彼らの苦境を救ったのが逃亡生活を続けている英雄マー・トン(ティ・ロン)。前作にも登場した対空飛ぶギロチンの武器、鉄の傘を使って血滴子をやっつける。業を煮やした皇帝はマーを抹殺させるための武器の作らせる。それがギロチン部分が二つになった連結血滴子(ダブル・ギロチン)!鉄の傘で最初のギロチンを封じてももうひとつのギロチンが飛び出してくるという無敵の武器。これでマー・トンもおしまいだあ!

 が、続編の物語は反乱分子とそのメンバーのひとりで、雍正帝の側近である軍事秘書官の娘ナー・ラン(シー・ズー)なのだ。彼女は漢民族の母親を殺されたことから、雍正帝への復讐を狙う。家族と逃亡を続けるマーは追ってから逃れ続けるが、妻子を殺されてしまい彼もまた復讐のために反乱分子に協力する。が、あくまでゲスト出演的な立場でメインはナー・ランが身分を知りながら彼女を育ててくれた軍事秘書官の父親が、命を投げ出しても娘を守ろうとする。親子の物語なのだ。

 ナーは雍正帝に近づくため、女だけの暗殺集団(!)を結成し、皇帝が抱える凄腕の血滴子、ガンとバオ(ガン役は前作でシュー役を演じたワイ・ワン。今回もチクり、監視が大好きという嫌味な男を好演しています)が「女の来るところじゃねえ」と嫌味を言われると

「女でも凄腕だったらいいんだろ!」

 啖呵を切ってカンフーの腕前を見せつけるカッコよさよ!クライマックスに至るまではそれはそれはカッコ良いものの、最後はあっさり殺されちゃうのでなんだったの!?
 最後は添え物のような扱いだったマー・トンが大活躍するのだった。だったら最初っから主役として扱えよな!マーはナー・ランが入手したダブル・ギロチンの設計図からギロチンやぶりの武器をトンカントンカンと作り出す。それが三節根!これでまず最初のギロチンを封じ、次に飛び出した第二のギロチンを鎖のついた根で巻き取って飛ばす!って画面で見てもよくわからないんですけどね・・・

 そもそも空飛ぶギロチン、必殺の武器って言われてるけど一本の鎖につながれて飛んでくるだけだから、かわせばいいだけだと思うんだが。実際に映画の中だとマーがひょいひょい避けてるし。かわしたら鎖の部分を切ってしまえばそれで終わりじゃあないんですかー!

 それでも空飛ぶギロチンの強烈なインパクトは忘れられない。まず投擲部分をびゅんびゅん回してタメをつくるんだが、ビュンビュンビュン!と不敵な音を立てると「ギロチンが飛んでくるぞ~!」って前兆なんだよな。飛んできたギロチンがスポッと頭に収まってスポーン!首が飛んでいく場面はああ・・・恐ろしい・・・

 この後『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』とか『空飛ぶ十字剣』といった派生作品が出てくるのでみんな見よう。見ないやつにはギロチンだ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 09:22Comments(0)ネットフリックス

2020年04月07日

エディ・マーフィ大復活『ルディ・レイ・ムーア』



「俺の名前はドールマイト。クソを消すのが俺の仕事だ」

 70年代に活躍した黒人ラッパー、ルディ・レイ・ムーアの伝記映画『ルディ・レイ・ムーア』はアカデミー賞にノミネートすら噂され(実際は未ノミネートに終わった)、ムーアを演じたエディ・マーフィはラジー賞の「名誉挽回賞」に選ばれた。本作のエディはここ20年ぐらいの不発ぶりを完全払拭し、なんなら歴代ベストワークではないかと思われるキマリっぷりを見せてくれた。ルディ・レイ・ムーアってなんなんだ??


 70年代のロサンゼルス。レコード屋の副店長(という肩書だが実際はアルバイト)をしているルディ・レイ・ムーアは田舎から飛び出して歌手として成功を目指す男だが、すでに中年。レコードはまったく売れずナイトクラブの前座でスタンダップ・コメディをやっても誰も笑ってくれない。俺はこのまま埋もれてゆくのか?

 レコード店の営業の邪魔をする浮浪者のリコ(ロン・シーファス・ジョーンズ)がやってきてムーアは彼を追い出すが、すごい勢いで下ネタをかます。それは往年の黒人コメディアン、ドールマイトのネタだったがそれを聞いたムーアはドールマイトのネタを今風にアレンジすれば受けるんじゃねえか?とリコに酒をおごってネタを書き留める。ナイトクラブの前座でムーアは巨大なアフロヘアのヅラをかぶり、ド派手なスーツに身を包んだポン引き風の衣装で“ドールマイト”を名乗ってうんと濃い下ネタをまくしたてる。

「親父はイカレチンポ、おふくろは腐れ娼婦!そしてあんたはケツで商売しているエロライオン!」
「妹さんに至っては凄腕テクニシャン、ミミズのチンポをおしゃぶりできるそうです!」
「そいつはおじさんを手籠めにし、おばさんと姪御さんにも手をかけた!気を付けないと次はおばあちゃんまで毒牙にかかってご昇天!」


 このネタがバカ受け。“ドールマイト”の仮面をかぶったムーアは一躍スターダムに駆け上がる。下ネタだらけのレコードは「こんな下品なの売れない」とレコード会社にハネられたので、自主制作。そうしたらこれも爆発的ヒットとなり、メジャーから全米流通に。

 大金が転がりこんだムーアは気前がよくなり、友人たちを食事に誘って「今、受けてるらしいぜ」という映画を観に行く。それはビリー・ワイルダーの『フロント・ページ』。ところがこの映画がまったく面白くなかった!

「これの何が面白いんだ?黒人はちっとも感情移入できねえ!俺たち黒人が面白いと思う映画がねえんだ!」「黒人がスカッとして、笑える映画をつくるしかない!」

 ムーアはドールマイトを主演にした映画製作に挑む。内容は?カンフーがあって売春婦が出て、おっぱい、バイオレンス・・・

 折しも時代は70年代のブロックプロイステーション全盛期。『黒いジャガー』『スウィート・スウィート・バック』『スーパーフライ』『コフィー』といった黒人を主役にしたB級映画が話題になっていた。映画に出る黒人といえば大金持ちの家で雇われるボーイか靴磨きしかない時代にブラックプロイステーションはイカす黒人がちょっとワルなダーティー・ヒーローを演じて白人たちをぶちのめす映画で活躍していた。
 今だ苦難にあえぐ黒人たちに夢と希望を与えたい!ムーアは映画製作に挑むが、スポンサーは現れない。「君は狭い黒人コミュニティの中だけのスターなんだ。全国区ではない」と厳しい現実を突きつけられる。
 ムーアはあきらめない。私財をなげうち、レコードの権利まで担保に入れて自主映画『ドールマイト』(1975)を作る。
 これで俺もリチャード・ラウンドトゥリーやメルヴィン・ヴァン・ピープルズのようなスターになるのだ!しかし彼には二人にあった決定的な要素が欠けていた。ラウンドトゥリーやピープルズは二枚目のルックスがあったが、ムーアの見てくれはただのさえない中年だったからだ(しかも腹が出ていた)。
 さらにドールマイトが劇中で披露するカラテ・アクションはヘナチョコで、演技も大根。本人と周囲の友人たち、若手スタッフ(UCLAの学生)らがカットがかかる度

「これは最高傑作だ!」

 と騒いでるのがなんとも。 劇中見せ場になるベッドシーンの描写は『ドリフ大爆笑』も底抜けで、ベッドで白人女を突き上げる衝撃で部屋中がギシギシいって、天井が落ちてきたと同時に昇天!ダメだこりゃ!!

 出来上がった映画はもう、本当に・・・どうしようもない・・・出来で誰も配給を買ってくれない。ムーアと友人たちだけが史上最高の傑作が誕生したと大騒ぎしていたのだ(クソを消す以前にこの映画がクソだった!)。このやり取りは駄作映画界の『市民ケーン』と言われたトミー・ウィゾーの『ザ・ルーム』の内幕を描いた『ディザスター・アーティスト』みたいで爆笑必至。どう考えてもハチャメチャな作品になるとしか思えない『ドールマイト』をムーアだけは絶対傑作と信じて疑わなかった。この自分の才能を信じて疑わない、異常なまでのポジティブさが彼の成功を支えたといっても過言ではなく、「ポジティブな黒人」というキャラで80年代に大スターとなったエディ・マーフィとかぶって見える。長い落ちぶれ時代を経験したエディがムーアを完璧に演じられたのもよくわかる。

 ここ20年は落ちぶれて半ば引退状態に追い込まれていたエディはこの作品に手ごたえを感じて、かつての大ヒット作『星の王子様 ニューヨークへ行く』のパート2をこの映画のスタッフと制作すると発表。エディの快進撃再びか!?

※映画はネットフリックスで配信中!


  


Posted by 縛りやトーマス at 00:25Comments(0)ネットフリックス

2020年03月18日

ラジー賞を制したのはやはり猫人間

 サイテー映画を決めるゴールデンラズベリー賞がようやく決定。2019年の栄冠は予想通り『キャッツ』に決まりました。


「キャッツ」ラジー賞で作品賞など最多6部門に、名誉挽回賞はエディ・マーフィ
https://natalie.mu/eiga/news/371291


 先日、新型コロナウィルスの影響で授賞式が中止になり、ネット上での発表となってしまった今回。毎年のように「本人は授賞式に現れるのか?」がなくなったことだけは残念です。ヒラリー・ダフ、洒落で来てほしかった。

 2014年の第35回から創設された「名誉挽回賞」はラジーでいつもバカにされている常連の役者や監督が今回は傑作だったから、名誉挽回しましたね!と遠回しにほめたたえる部門には『ルディ・レイ・ムーア』のエディ・マーフィが受賞。同じネットフリックス系映画のアダム・サンドラー(『アンカット・ダイヤモンド』)を抑えての受賞です。この二本はアカデミー有力候補と言われながらノミネートすらなかったので、ラジーで評価されたとは意外。ネットフリックスはラジーにも影響を及ぼしているんですねえ。

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:15Comments(0)ネットフリックス

2020年01月14日

第92回アカデミー賞ノミネート作品(決戦は2月9日)



 2020年2月9日(現地時間)に発表される第92回アカデミー賞の全ノミネートが発表された。


作品賞:
『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』
『マリッジ・ストーリー』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『パラサイト 半地下の家族』

監督賞:
サム・メンデス(『1917 命をかけた伝令』)
マーティン・スコセッシ(『アイリッシュマン』)
トッド・フィリップス(『ジョーカー』)
クエンティン・タランティーノ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)
ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』)

主演男優賞:
アントニオ・バンデラス『Pain & Glory(原題)』
レオナルド・ディカプリオ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
アダム・ドライバー『マリッジ・ストーリー』
ホアキン・フェニックス『ジョーカー』
ジョナサン・プライス『2人のローマ教皇』

主演女優賞:
シンシア・エリヴォ(『ハリエット』)
スカーレット・ヨハンソン(『マリッジ・ストーリー』)
シアーシャ・ローナン(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)
シャーリーズ・セロン(『スキャンダル』)
レニー・ゼルウィガー(『ジュディ 虹の彼方に』)

助演男優賞:
トム・ハンクス『A Beautiful Day in the Neighborhood(原題)』
アル・パチーノ『アイリッシュマン』
ジョー・ペシ『アイリッシュマン』
ブラッド・ピット『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
アンソニー・ホプキンス『2人のローマ教皇』

助演女優賞:
キャシー・ベイツ(『リチャード・ジュエル』)
ローラ・ダーン(『マリッジ・ストーリー』)
スカーレット・ヨハンソン(『ジョジョ・ラビット』)
フローレンス・ピュー(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)
マーゴット・ロビー(『スキャンダル』)

脚本賞:
『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(ライアン・ジョンソン)
『マリッジ・ストーリー』(ノア・バームバック)
『1917 命をかけた伝令』(サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(クエンティン・タランティーノ)
『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン)

脚色賞:
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
『2人のローマ教皇』

撮影賞:
ロジャー・ディーキンス『1917 命をかけた伝令』
ロドリゴ・プリエト『アイリッシュマン』
ロバート・リチャードソン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
ローレンス・シャー『ジョーカー』
ジャリン・ブラシュケ『The Lighthouse(原題)』

編集賞:
『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『パラサイト 半地下の家族』

美術賞:
デニス・ガスナー『1917 命をかけた伝令』
ボブ・ショウ『アイリッシュマン』
バーバラ・リン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
イ・ハジュン『パラサイト 半地下の家族』
ラ・ヴィンセント『ジョジョ・ラビット』

衣装デザイン賞:
マーク・ブリッジス『ジョーカー』
ジャクリーヌ・デュラン『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
アリアンヌ・フィリップス『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
メイズ・C・ルベオ『ジョジョ・ラビット』
サンディ・パウエル&クリストファー・ピーターソン『アイリッシュマン』

メイクアップ&ヘアスタイリング賞:
『ジョーカー』
『スキャンダル』
『ジュディ 虹の彼方に』
『マレフィセント2』
『1917 命をかけた伝令』

視覚効果賞:
『アベンジャーズ エンドゲーム』
『アイリッシュマン』
『ライオン・キング』
『1917 命をかけた伝令』
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

録音賞:
『1917 命をかけた伝令』
『フォードvsフェラーリ』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『ジョーカー』
『アド・アストラ』

作曲賞:
ヒドゥル・グドナドッティル『ジョーカー』
アレクサンドル・デスプラ『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
ランディ・ニューマン『マリッジ・ストーリー』
トーマス・ニューマン『1917 命をかけた伝令』
ジョン・ウィリアムズ『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

主題歌賞:
“I Can’t Let You Throw Yourself Away”(トイ・ストーリー4)
“I’m Gonna Love Me Again”(ロケットマン)
“I’m Standing With You”(Breakthrough)
“Into the Unknown”(アナと雪の女王2)
“Stand Up”(ハリエット)

長編アニメーション賞:
『トイ・ストーリー4』
『ミッシング・リンク』
『失くした体』
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』
『クロース』

短編アニメーション賞:
『Dcera (Daughter)(原題)』
『Hair Love(原題)』
『Kitbull(原題)』
『Memorable(原題)』
『Sister(原題)』

国際長編映画賞:(「外国語映画賞」が改称)
『レ・ミゼラブル』(フランス)
『Honeyland(原題)』(北マケドニア)
『Corpus Christi(原題)』(ポーランド)
『パラサイト 半地下の家族』(韓国)
『Pain and Glory(原題)』(スペイン)

長編ドキュメンタリー賞:
『アメリカン・ファクトリー』
『The Cave(原題)』
『ブラジル -消えゆく民主主義-』
『娘は戦場で生まれた』
『Honeyland(原題)』

短編ドキュメンタリー賞:
『In the Absence(原題)』
『Learning to Skateboard in a Warzone (If You’re a Girl)(原題)』
『眠りに生きる子供たち』
『St. Louis Superman(原題)』
『Walk Run Cha-Cha(原題)』

短編実写映画賞:
『Brotherhood(原題)』
『Nefta Football Club(原題)』
『The Neighbors’ Window(原題)』
『Saria(原題)』
『A Sister(原題)』


 作品賞では大本命が『アイリッシュマン』、対抗馬が『ワンハリ』、大穴で韓国映画から初のノミネートとなった『パラサイト 半地下の家族』というのが僕の予想です。ネットフリックス配信映画の『アイリッシュマン』に反発する声が『ワンハリ』『パラサイト』に集まるかどうかでアカデミー会員の票がどう動くかが見もの。

 監督賞もスコセッシとタランティーノの対決でスコセッシの映画人生の総決算が勝つか、タランティーノが初の監督賞(脚本賞の受賞経験アリ)に輝くか目が離せない。『ジョーカー』のトッド・フィリップス監督は下馬評では落選の声があったけどノミネートまで持ってきたので意外な結果があるかも?

 主演男優賞はホアキン・フェニックスか、『マリッジ・ストーリー』のアダム・ドライバーが有力。僕の一押しはアダム・ドライバーです。『マリッジ~』の悲しくもマヌケな旦那役(ナイフを使った冗談遊びで腕を切ってしまって貧血で倒れるシーンは最高です)は傑作で、ちゃんと演技できる人なんだなって思った。カイロ・レン役はなんだったんだ?

 主演女優はセロンとゼルヴィガーが有力らしいですが、二本ともまだ見てないからわからない。助演男優は『アイリッシュマン』のジョー・ペシとアル・パチーノの対決にブラピとアンソニー・ホプキンスがどう絡むか、激アツ部門。助演女優賞は『リチャード・ジュエル』で息子の無実を信じる母親役を好演したキャシー・ベイツか、『マリッジ・ストーリー』でやり手の弁護士を演じたローラ・ダーンの対決。
 他の部門では長編ドキュメンタリーは『ブラジル 消えゆく民主主義』が本命。作曲賞はジョン・ウィリアムスが功労賞的に獲得するかな。国際長編映画は文句なしに『パラサイト 半地下の家族』で決まり。


 今年も司会のいない第92回アカデミー賞、ネットフリックス系作品が一部の頑固者の意見を蹴散らして受賞するか、タランティーノとポン・ジュノが栄冠なるか?決戦は2月9日(現地時間)!!

  


Posted by 縛りやトーマス at 00:11Comments(0)ネットフリックス

2020年01月06日

話盛りすぎですよ!『コンフェッション・キラー 疑惑の自供』



 米国史上最多の360人以上を殺しテキサス州で死刑判決を受けた連続殺人鬼、ヘンリー・リー・ルーカス。彼の犯した殺人はあまりに膨大で本人も思い出せないぐらいなので、犯行時の状況を思い出せた時には「ルーカス特別捜査班」のメンバーを呼び出して自供をはじめる。ヘンリーの自供によって未解決だった事件のいくつかが解決し、誤認逮捕されていた容疑者は釈放されていった。獄中の死刑囚に警察が捜査のために話を聞きに行くという、あの『羊たちの沈黙』に登場するドクターレクターのモデルになった人物だ。

 そのヘンリー・ルーカスのドキュメンタリー、『コンフェッション・キラー 疑惑の自供』がネットフリックスで配信されているので観た。
 僕がヘンリーを知ったのは『羊たちの沈黙』を観た時と、世界中の連続殺人鬼を取り扱った平山夢明の『異常快楽殺人』を読んだ時だ。この本では『厳戒棟の特別捜査官』という中でヘンリーが取り扱われている。



 幼いころから淫売の母親に虐待されて育ったヘンリーは精神と身体の両方に傷を負い、23歳のころに結婚を誓った女性と母親が口論の末に家を出て行ってしまい、さらに母親から罵られたことをきっかけにその場で母親を殺害、40年の刑を食らうが、ベトナム戦争の影響による国家の財政圧迫を理由に10年で仮釈放となる。釈放直後にバス停で女性を殺害、金品を奪って逃亡。その後はあちこちを転々とし、フロリダでオーティス・ツールという「同性愛者の美青年」と仲良くなり、週末は二人で出かけていった先々で暴行、強盗、殺人を繰り返す。オーティスから「死の腕」という組織を紹介してもらったヘンリーは入会テストに合格し、組織からの依頼で誘拐、殺人を引き受けるようになる。組織から証拠を残さない技術を叩き込まれ、全米中を遠征して殺人行脚をオーティスとともに続けたがまったく捕まらなかったという。彼を疑った保安官に嘘発見器にかけられたが、「死の腕」の教育によってそれもパスしてしまう。ただ一度ドジを踏んだことで逮捕されてしまったヘンリーは獄中で「神の声」を聞いたことでクリスチャンに目覚め、連続殺人の告白をはじめた・・・

 という風に紹介されていた。ネット上の記事なんかでもヘンリー・ルーカスが紹介されるときはこんな感じだった。ところがネットフリックスのドキュメンタリーを見てみると、まったく違う。なんとこのヘンリーの自供はすべて誘導尋問によるもので、彼は連続殺人鬼ではないというのだ。


 テキサスでオーティスのいとこの少女、ベッキーとヘンリーは恋仲になる。だがつまらない諍いからベッキーを殺害、証拠隠滅のためにベッキーの祖母も殺害し遺体を捨てる。この一件を保安官にかぎつけられついにヘンリーはお縄になる。最初はしらを切っていたヘンリーだが、やがて保安官にベッキーと祖母の殺害を告白する。
 裁判所で事件の判決が下されようとした時、ヘンリーは突然

「残り100人の女性の殺人は?」

 と言い出し法廷は騒然となる。

 100人以上の連続殺人事件の容疑者となったヘンリーを捜査するため、全米の警察に犯人が捕まっていない女性の殺人事件について調査するよう通達が飛び、膨大な件数を処理するための「特別捜査班」が設けられ、テキサスのバウトウェル保安官がリーダーとなってヘンリーを尋問することに。バウトウェルはテキサス警備隊の伝説的な英雄で、あのテキサスタワー銃乱射事件の時に飛行機で現場上空を飛んで、機体に銃撃を受けながら犯人の位置を無線で知らせた男だ。バウトウェルは公安局長ジム・アダムスと交渉して専属の捜査班を組むよう、交渉しそれが認められる。アダムスは捜査班の窓口にテキサス警備隊のボブ・プリンスを指名した。

 特別捜査班の尽力によって全米中の未解決事件をヘンリーは自供していった。そんな中、ジャーナリストのエインズワースがヘンリーを取材をしたいと申し出る。エインズワースは殺人事件の容疑者を取材するジャーナリストで、30人以上の女性を殺したテッド・バンディとも直接面談したことがある。バンディを超える100人以上を殺した希代の殺人鬼!興味を惹かれないわけがない。

 バウトウェルはエインズワースの取材を歓迎した。ヘンリーに会いたいという人間はたくさんいたが、バウトウェルは「俺が会わせてやるよ」とまるでマネージメントしているタレントを会わせるような感覚でヘンリーを紹介する。なんと日本からもクルーがやってきているのだ。クルーは日本からおみやげを持ってきて渡すとヘンリーは大喜び。日本のクルーはさんづけでヘンリーを呼んで話を聞く。海外のスターに会っているみたいに。随分のんきだなあ。目の前の男は連続殺人鬼だぞ!
 と思うのだが、残されている記録映像では会談の様子はゆるゆる。なにしろヘンリーは手錠も腰縄もかけられていない。タバコだって吸い放題。

 日本のクルーを交えた会話の中で、ヘンリーは「日本にも行ったことがあるんだ」という。どうやって?と聞くと「車を運転してね」と笑う。え?車で?アメリカから日本へ車で行けるわけがない。この男、なんか変だぞ。
 その後部屋でエインズワースと二人きりになったヘンリーは「ここだけの話だけど、殺しは、全部作り話なんだ」と言い出す。


 ヘンリーの自供はバウトウェルらの誘導尋問によって行われたものだった。バウトウェルは全米の未解決事件の中から都合のいいものを選んで「〇月〇日、ここにいたよな?ここで女性が殺されているんだ」とヘンリーに告げて遺体のあった場所を地図や写真でそれとなく指し示して「ヘンリーが自白した」「犯人しか知らない情報を知っていた」といい、未解決事件の犯人をヘンリーにしていたのだった。

 これがなんで発覚したのかというと、バウトウェルの特別捜査班は未解決事件の犯行日をリストアップし、何月何日に犯行、そのあと移動して何日には犯行・・・という風にパズルを埋めるみたいにヘンリーの殺人行脚をつけていったのだが、それが明らかに不可能な日程なのだ。例えば10月2日にワシントンで犯行、そこから3200キロ移動して10月4日ヒューストンで誘拐未遂事件を起こす。960キロ先のアーカンソーで殺人、1530キロ移動して10月16日ニューメキシコでまた殺人、10月27日1600キロ先のネバダで殺人、2600キロ移動して10月29日ルイジアナで殺人、3400キロ移動したケベックで殺人、これが10月31日。11月2日に3200キロ移動した先のミズーリでまたまたまた殺人・・・
 一か月の間に1万7700キロを移動しての殺人行脚。時速80キロで車を飛ばして休息もなし、という条件でなければ達成できない。「巡航ミサイルでもなけりゃできない」と言われる。こんなことはありえない。するとバウトウェルは「彼は運転や車上生活が好きだったのです」・・・って何の説明にもなっていない!

 エインズワースらこの一件に疑問を持つ人はヘンリーを「話を盛るタイプ」として、自暴自棄になっていたヘンリーはバウトウェルら保安官たちを喜ばせたかったのだろうという。一件解決するごとにシェークをもらえるという条件でヘンリーは犯行を認める書類にサインし続ける。

「これは冤罪だ。とんでもないことになっている」

 特別捜査班の悪行を暴こうとする人が現れるのだが、公安局長のアダムスはそういった「余計な事をするやつら」を元FBI副長官だった権力を利用して陥れていく。盗聴、尾行、不法侵入、懇意にしているマスメディアを使って批判させる。それでも黙らなきゃ犯罪をでっちあげろ!ヘンリーを救おうとしたある検事は詐欺、賄賂の罪で手錠をかけられ人生を台無しにされてしまう。

 バウトウェルらは未解決事件を処理した英雄として扱われたかったのとテキサスでは保安官は偉大なヒーローでなくてはならない、という周囲からのプレッシャーがそうさせたのだろうとエインズワースらは分析する。
 しかしやってもいない犯罪をやったことにされたヘンリー、そして事件の犠牲者遺族はたまったものじゃない。ヘンリーの誘導された自供のせいで真犯人の多くは逃げおおせており、遺族らは「バウトウェルに騙された」と肩を落とす。

 とまあ、平山先生の『異常快楽殺人』と全然違うことになっていたのだった。当時、平山先生が入手できた資料にはここまで書かれてなかったんだろうなあ。彼もまたバウトウェルの被害者なのかもしれない。
 嘘つきとまではいわないけど、しかしいくらなんでもこりゃひどすぎでしょ!と思うのがヘンリーの相棒オーティスを『異常快楽殺人』の中では「同性愛者の美青年」としているところ。番組ではオーティスの映像もあるんだけど


右がヘンリー。左がオーティス。

 ・・・美青年て、どこがや、ど・こ・が!(いくらだいぶ年を経た後とはいえ!)

 平山先生、ヘンリーばりに話盛りすぎですよ!話盛りすぎて観てもいないビデオのレビューをでっちあげてた平山先生らしいけど!

  


2019年10月02日

20年封印されたメイキング ジム・キャリー大暴れ『ジム&アンディ』



 ネットフリックスで配信されているオリジナルドキュメンタリー『ジム&アンディ』(2017)を観た。

 これは1999年公開(日本は2000年)の実在したコメディアン、アンディ・カウフマンの自伝映画『マン・オン・ザ・ムーン』のメイキングだが、諸事情につき当時撮影された素材の多くがお蔵入りにされており、20年経ってようやく解禁されたというもの。

 アンディ自身はエンターテイナー、パフォーマーを自称してテレビの舞台に立っていたが、ネタの多くは舌っ足らずの声で「たんきゅう・べりまっち」といったりするだけで、他にはプレスリーのレコードに合わせて口パクしたり、『華麗なるギャツビー』を一冊丸ごと朗読したり、狂ったようにボンゴを叩く(だけ)・・・まるで面白くなかった。今ではファンの多くが「アンディ・カウフマンは面白くない。それが面白いんだ」とわけのわからない理由で支持されているのだが。しかしテレビ番組に出演して人気が出たアンディはトーク番組などに引っ張りだこに。あまりに忙しくて全部に出演できないので「俺の知り合いに面白いやつがいる。トニー・クリフトンっていうんだ」と友人を紹介した。
 トニーは酔っぱらって現れ、コールガールを脇に抱え「アンディなんか面白くもなんともない!あいつは最低だ!」とわめき散らした。酔っ払いの毒舌男としてトニーはアンディ以上に暴れまわる。そのトニーは、どう見てもヅラを被ってサングラスをかけたアンディにしか見えなかった。司会者も「あなたアンディさんですよね?」というとセットの横からアンディが登場!生放送中にトニーとアンディはつかみ合いのケンカを繰り広げる。トニーはアンディのブレーンであるボブ・ズムダが演じた。

「何これ?わけがわからない」

 アンディはあらゆる常識を破壊して暴れまわった。82年にはメンフィスで女性差別発言をしプロレスに挑戦、リングに女性をあげて勝ちまくった。「世界無性別級王者」を名乗り、誰の挑戦も受けると宣言。当時メンフィスで新団体CWAを立ち上げていたエース、ジェリー・ローラーを相手に戦って首の骨を折る重傷を負った。
 アンディは癌で早死にするが、それすら「どうせネタに決まってるよ」と信じてもらえなかった。実の家族まで彼の死を信じなかったぐらい。


 そんな誰にも笑ってもらえないアンディの生涯を描いた作品『マン・オン・ザ・ムーン』でアンディの役をコメディアンのジム・キャリーが演じた。当時のジム・キャリーは『エース・ベンチュラ』『マスク』などでヒットを飛ばしていたが、「下品な顔芸役者」としか認知されず、業界では嫌われていた。この作品にかけていたキャリーはアンディの芸を完コピしたビデオを送ってオーディションに勝ち残った。
 演奏家としての夢をあきらめて家族のために就職したキャリーの父親はその職で失業する羽目になり、一家はどん底の貧困に追い込まれる。キャリーは木を相手に独り言をいったりして「人を殺したくなるほど」絶望的な気分を忘れようとした

「アンディも同じようなことをしていた。笑ってほしいんだけど誰も笑ってくれない。僕はアンディなんだよ」

 撮影で完全に役になり切っていたキャリーはスタッフに「ジムさん」と呼ばれても「ジムって誰だ?僕はアンディだ!」と大声をあげた。トニー役で撮影をしている時もなり切って実際のトニーのようにアンディの悪口を言いまくり、時にはキャリーの悪口すら言った。紙袋を被ってスタジオに現れ「僕はバットマンだ!」と叫び、ユニバーサルの撮影所にスピルバーグのアンブリン社のオフィスがあるのを見つけると「会いに行こうぜ!」と乗り込んだ。

「大衆相手のクソ映画ばっかり撮ってないで、『ジョーズ』のころを思い出せよ!って言ってやるよ」

 幸いスピルバーグはいなかったので事なきを得たが、許可も取らずにカメラを回していたのでアンブリンの人間がカメラは止めてくださいと叫ぶのが映っている。監督のミロシュ・フォアマンはクランクイン2週間後に「君は何をやりたいんだ?わけがわからないよ」と泣きを入れた。『カッコーの巣の上で』『アマデウス』で二度アカデミー賞に輝いた巨匠が!
 フォアマンが匙を投げた現場でキャリーはアンディに、トニーになって暴れまわった。スタジオの外でもだ。『プレイボーイ』の編集者ヒュー・ヘフナーの『プレイボーイ・マンション』のパーティに招待されたときはアンディの代わりにトニーを行かせたが、ヘフナーはキャリーの変装だと思って歓待した。ところがその後本物のジム・キャリーが登場したので大騒ぎ。この時のトニーはボブ・ズムダ(今も健在)が昔のようにトニーを演じていたのだが、不審者としてトニー=ボブはたたき出されてしまう。悪ふざけもここに極まれり。
 ジェリー・ローラー本人がやってきてメンフィスのプロレスリングを再現する場面では当時のようにアンディになり切ったキャリーがローラーを罵倒しまくり、つれの彼女に水をぶっかける!スープレックスでアンディを投げる場面ではもちろん持ち上げた瞬間に撮影を止めて、スタントがその後を演じるわけだがキャリーはそれが不満で本当に俺を投げろと要求。拒否するローラーを「保険会社が怖いのか?」「根性なし!」と罵りだす。ついにブチ切れたローラーはキャリーをリング外で「制裁」する。かつてのメンフィスのように首を負傷して撮影がストップした様子は「ジム・キャリー、撮影中に負傷」と伝えられ、翌日テレビのカメラマンがスタジオの周囲を取り囲む事態に。「和解」を兼ねたテレビ番組でキャリーとローラーがトークした時もキャリーはローラーを煽りまくり、怒ったローラーがキャリーをビンタしてしまう。もちろん二人は打ち合わせの上で撮影しているのだけど、何も知らない周囲は唖然、茫然とするばかり。

 共演しているダニー・デヴィートやポール・ジアマッティもポカーンとしてるだけ。ただひとりアンディの彼女役で登場するコートニー・ラブだけはニコニコしてたけど(変人に付き合うのが慣れてるのかしら)。
 何が本当で何が嘘なのかわからなくなってしまうアンディの虚実をキャリーは完全に再現した。周囲も完全に巻き込まれてしまい、アンディの父親役を演じたジェリー・ベーカーがトレーラーハウスの中でキャリーを「息子のように」叱り飛ばす(何があったんだ)とアンディの実際の妹が「いつもアンディはあんな風に父に叱られていたわ」とキャリーのガチっぷりに本物の涙を流す。一体なんなの!!

 メイキング用に撮影された映像をユニバーサル側が宣伝にならないから回収すると言ってきたんだ!とキャリーは怒り心頭でボブに告げる。そりゃあこれ見たらキャリーは完全にキ〇〇イとしか思えないもんな。この映像が20年近く封印されてたのもわかるわ。ユニバーサル側の態度に憤慨するボブにキャリーは

「うっそだよ~ん!ダマされた?」

 一杯食わされたボブが大笑い。ジム・キャリー、何がやりたいんだよ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 23:41Comments(0)ネットフリックス

2019年04月03日

前作制作者の意に沿わない続編。『けものフレンズ2』は『ブレアウィッチ2』だった!



 2019年冬アニメ最大の話題作として放送された『けものフレンズ2』は大ヒットした前作最大の立役者とされるたつき監督の降板騒動以降、いまだ制作委員会やKADOKAWAへの批判が続いている中での続編制作とあって制作決定の時点で批判が加速するのであった。
 しかし『2』のメインスタッフのうち、監督は『アイカツ!』シリーズを大成功に導いた木村隆一、シリーズ構成、脚本は『ゾンビランドサガ』に関わっていたますもとたくやだと発表されるとひょっとして期待できるかも…というムードが高まり、「まあまあ落ち着いて。作品を見るまでは批判はやめておこう」といった冷静な人たちが現れたのだが、一部の「絶対許さないマン」たちが奇声を上げる中、初回放送日を迎えた。

 前作からの登場人物であるサーバルに加えて、新フレンズのカラカルが登場し、前作主人公のかばんちゃんに代わる新しいヒトキャラ、キュルルが登場。彼女はかばんちゃん同様正体不明で記憶のないキャラクターであり、彼女が持つスケッチブックに書かれた「記録」を元にジャパリパークのどこかにあるキュルルの「おうち」を探す旅にサーバル・カラカルが同行するというストーリー。
 この部分は前作までのプロットを踏襲しており、特に問題もないが、微妙に感じるのがキュルルのスケッチブックと絵である。前作では動物が擬人化したフレンズとヒトの間には明確な文化、生態の違いがあり、前作ではヒトが「道具を使って何かをする」という行為がフレンズにとって理外であり、ジャパリパークの地図をホルダーから取ったりするだけでサーバルが不思議がるといった描写があった。かばんちゃんにはフレンズのような力や行動力がなく、それを「何もできない」とフレンズから残念ながられたりしていたが、力を補う器用さと知恵でフレンズたちの問題や騒動を解決していく(ヒトの知恵がなければフレンズの抱える問題は解決しない)、という展開があった。
 ところが『2』ではキュルルが「紙に絵を描く」というフレンズにとって理外である行為をサーバルたちが普通に受け入れており、それに対するフォローが劇中では示されない。キュルルがクレヨンで器用に絵を描いていくのを見ても、それを不思議がる様子すらない。ならばフレンズたちの知能や経験が前作よりもプラスされたという説明が必要なんだけど、『2』では一切そんな様子がない。

 ならば『2』とは前作とは世界観が共通されているだけのパラレルワールドなのかというと、前作にも登場した場所やフレンズが出てきたり、ある建物が水没していたりなど、前作からの時間の流れを感じさせている。「前作からの続き」であることが示されているのに、整合性が取れていない。
 しかも第6話では前作の主人公、かばんちゃんが再登場。サンドスターやセルリアンに関する研究をしているという設定で前作からの成長がうかがえる。サーバルに関するなんらかの記憶があるが、サーバルにはないといった前作からの視聴者がモヤモヤする展開があるのに、やはりこのことについて追及されることはなく、シリーズの中の1エピソードとして処理されるのであった。

 前作が受けた要素のひとつに「散りばめられた伏線が最後にすべて回収されていく」という展開の面白さがあったのですが、『2』では何も伏線が貼られず、謎だけを提示されてそれを疑問に思っても「まあいいや」と気にも留めず主人公たちは次に進んでいく。この伏線をどれだけ回収しなかったかについては最終回放送直後にTwitterに貼られ、放送後に更新されたある画像をご覧ください。




 およそこれだけの謎が提示されながらひとつも回収されずに放置されたのです…『2』は放送直後は様子見の視聴者から生暖かい視線で観られていたものの、回を経るごとにバッシングする意見が目に付くようになり、アンチと化した人々の執拗な口撃に木村隆一監督が反発、その意見に一貫性がないことからさらなる炎上を呼ぶという悪循環に陥りました。

『けものフレンズ2』関係者の言ってることはバラバラで情報共有されてない(けものフレンズちゃんねる記事まとめ)

https://togetter.com/li/1328517

 木村監督はよくこの内容で自信満々に語ったり、アンチを相手に煽るような意見を書き込んだものだな…と思う。いっそネット上ではだんまりを通して雑誌・メディア媒体でのみ前向きなコメントだけ出しておけばこんなに揉めなかったのでは?
 一部の「最終回ではある程度疑問が解消されるはず」といった期待を裏切るように最終回でも投げっぱなしのまま終わってしまい、4月2日のニコニコ動画最終回上映会ではアンケートで「良くなかった 95.3」というアンケート史上最低だった『遊戯王 ARC-V』の94.2を越える記録を叩き出すのであった。

 この大人気だった前作の続編として期待されながら続編はどうしようもなくダメになる、といった現象を僕は見たことがある。『ブレアウィッチ2』だ。99年に公開され、世界中に反響を巻き起こした『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の続編として公開されたが、前作の制作者であったエドゥアルド・サンチェスとダニエル・マイリックは関わっておらず、「意に沿わない続編だった」「続編の制作にはもう少し落ちついてからがいいと思ってたが、スタジオが「鉄は熱いうちに打て」とゴーサインを出したんだ」とコメントしており、前作と関係があるような、ないような…別物の作品になっており、評価はボロクソ、ラジー賞の「最低リメイク・続編映画」を受賞。あっという間にブレア・ウィッチ人気は終息、正当な続編が誕生するまで16年もかかることになるのだった。

『けものフレンズ2』はそういう意味で『ブレアウィッチ2』に似ている。前作のヒットをなかったことにするほどのダメな続編というと『グレムリン2』『ベスト・キッド2』『スピード2』『スターシップ・トゥルーパーズ2』とかあるけど、「前作の制作者に意に沿わない続編」な上に評価もボロクソ、というと『ブレアウィッチ2』しか思い浮かばない。

 前作をたつき監督は3年もかけてつくったので、たった2年で続編が作られるわけもなく、監督降板については様々な理由が語られるものの、降板の理由として強調されるのは短期間にシリーズを量産したいKADOKAWAが前作をつくったヤオヨロズでは量産ができないと判断されたのかも。でもそれなら単に『2』では別の会社でやりますといえばいいだけで、実際2期や続編で制作会社の変わるアニメなんて珍しくないしね。『みなみけ』とか『生徒会の一存』とか…
 なのに降板理由として「関係各所への情報共有や連絡がないままでの作品利用」というのが公式の見解として挙げられ、まるでたつき監督、ヤオヨロズ側に非があるような書き方されちゃったのは関係者同士で感情的なもつれがあったんじゃないのかな?大人の対応では済まないような。ヤマカンが「監督の域に達してない」と言われた『らき☆すた』降板騒動と同じで。


 本当に「もう少しどうにかならなかったのか?」と言いたくなるほど辛い出来だったが、そんなにボロクソいうほどの悪い出来というより「ありがちなダメ続編」ぐらいですけど。僕はまた一話から『2』を見直しているので、どうしようもなくダメなところについては後日改めて語る。



  


Posted by 縛りやトーマス at 01:21Comments(1)アニメネットフリックス