2019年03月03日

ヒロポンで空高く吹き飛んだ『麻薬王』

 今年のアカデミー賞ではNetflix配信映画の『ROMA/ローマ』が各部門にノミネートし、「配信限定映画なんか映画じゃない」という頭の固い連中など物ともせず3部門受賞に輝きました。
 かように最近のNetflix配信映画は野心作やビッグバジェットによる大作が続々配信され世界中の映画祭でも評価されているので、もはや映画館でかからなければ映画ではない、などと言っている時代ではないのです。
 今回ご紹介する映画は韓国で大ヒットした劇場映画ですが、日本ではNetflixで配信中の映画『麻薬王』です。
※以下ネタバレを含みます




 1970年代の韓国では覚せい剤製造ビジネスが盛んであった。かつて日本では疲労がポンと飛ぶ、という意味の「ヒロポン」という名称で生産、発売が公然と行われ、庶民の間に爆発的に広まっていた。第二次大戦時には特攻隊員の恐怖を取り除くためにキャラメルにヒロポンを入れて与えられた(当時は満州で作られていたという)。

 70年代になり、副作用などがようやく問題となり国内での製造が縮小されたため、海を渡った隣国、韓国に製造の場が求められ、韓国内でも覚せい剤の需要が高まり、大規模な生産が必要だった。
 金細工の職人、イ・ドゥサム(ソン・ガンホ)は家族思いの冴えない男。金を密輸する裏社会に頼まれて金が本物かどうかを鑑定する仕事で禄を食んでいたが、トラブルから拷問に遭い、密輸の罪で服役する羽目に。妻からも愛想をつかされてしまう。
 しかしドゥサムは密輸事業の際に日本の大阪で「釜山の水は良質なので、いいヒロポンがつくられる」と聞いたことがり、覚せい剤輸出で外貨を稼ごうとする。ドゥサムのビジネスは恐ろしいほど当たり、神戸山口組の抗争に巻き込まれたり(!)しながらも荒稼ぎを続け政財界にも名が知られるように。
 だが、かつて彼を拷問し刑務所に送り込んだ中央情報部の人間がドゥサムを脅しにくる。恨みを忘れていないドゥサムは彼に仕返し、遺体をバラバラにして海に捨てる。「麻薬を扱う人間は麻薬だけは使ってはいけない。破滅が待つだけだ」という教えに逆らってヒロポンを注射する。一線を超えたドゥサムはもう止まれない。政財界の大物の養女、ジョンア・キム(ぺ・ドゥナ)と知り合いになり、彼女の提案で「メイド・イン・コリア」と名付けたドゥサムのヒロポンは韓国、日本両国で爆発的に売れまくる。ヒロポンで莫大な利益を手にしたドゥサムはあちこちに寄付して表彰され、国を代表する名士となってゆくのだった。

 映画の舞台になる70年代の韓国は、60年代まで世界の最貧国に数えられるほどの底辺だったが、60年代後半に日韓基本条約、ベトナム戦争に派兵して得た外貨をきっかけに経済復興を遂げた。誰もが一山当てたいという空気の中で覚せい剤という金儲けのネタを手にしたドゥサムのビジネスは右肩上がりを続ける。しかし崩壊は足元に迫っていた。

 覚せい剤の撲滅を目論む検事キム・イング(チョ・ジョンソク)はドゥサムの妻やヒロポン中毒に落ちぶれた従弟を使ってドゥサムを追い込んでいく。最初は小動もしないドゥサムだったが、日韓基本条約をとりつけた朴正煕大統領の暗殺をきっかけに韓国は軍事独裁政権と民主化デモとの対立の時代に突入する。
 イケイケドンドンでビジネスを拡大させる中、親しい人間すらも切り捨ててきたドゥサムの周りには誰もいなくなり、飼い犬だけが寄り添う部屋でヒロポンに溺れ「アカが俺を殺しにくる」という妄想に取り憑かれ銃をぶっ放すドゥサムの屋敷をキム検事と兵隊たちが取り囲む。


 最近の韓国映画は政治的に際どいテーマをエンターテインメントに落とし込むのが得意で、『麻薬王』の数年後に起こった光州事件をテーマにした『タクシー運転手 約束は海を越えて』(これもソン・ガンホ主演作)のような歴史の恥部のような光州事件をすこぶる活劇として描くことに成功していた。絶好調の時代を生きながら一つの時代の終焉とともに没落するドゥサムの生きざまは悲しくもあり、魅力的でもある。説教臭くなく、笑って楽しめる娯楽映画になっているのがすごい。よくいうけど、日本じゃこういう映画は絶対作られないね。

 あと、映画のテーマソングがジグソーの『スカイ・ハイ』なのでやたらと勇ましいんだよな。でも実際は失恋の歌で、「愛を捧げたのになぜか君は僕を空高く(スカイ・ハイ)吹き飛ばした」という意味が「俺はみんなを幸せにしたかっただけだ。俺のおかげで大勢が救われた」と嘯くドゥサムのことを言っているようで切なかった。


  


Posted by 縛りやトーマス at 01:09Comments(0)ネットフリックス

2019年02月15日

ウドーフェスを超えた『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』

 2006年に行われたウドー・ミュージック・フェスティバルは今も多くの人の胸に刻まれている。悪い意味で。
 富士スピードウェイと泉大津フェニックスの二か所で開催され、「ウッドストックの興奮がよみがえる」「大人の夏フェス」と、とにかくすごい自信だけは伝わってきた。
 ふたを開ければ人はガラガラで、メインステージに大物が登場しても客はせいぜい数百、小さいステージで5人という有様で、学園祭の学生バンドでも、もう少し客呼べるよ!大阪会場の泉大津ではステージ内を犬を散歩させてる人がうろついてたりしていた。富士でもエリア前方でレジャーシートが敷かれていたり、持ち込み禁止の缶ビールを開けまくり(クーラーボックス持参で)、寝たりしていたという。
 スタッフもまるでやる気がなくて、会場の端っこで椅子に座って寝ている画像は拡散された。物販の奥で偉い人がやけ酒をあおっていた、などという噂も信じられるレベルの悲惨さ。「泉大津の集客は初日2千、二日目3千の計5千」(公式発表1万5千)という結果に終わり、ウドーの夢は砕け散った。以後ウドーミュージックフェスティバルは「大失敗した音楽フェス」の代名詞として伝説となった。しかし世の中は広い。ウドーを超える失敗を記録したフェスもある。




 ネットフリックスで配信中の『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』は2017年にバハマの島で2週間にわたって行われる予定だったファイヤ・フェスティバルのドキュメントだ。
 起業家のビリー・マクファーランドはラッパーのジャ・ルールをあるイベントに呼ぼうとしたが、コネがない。そこでジャとコネがあるという人物に話をすると「500ドルがいる」と言われ払った。別の人が「さらに1000ドル必要」と言われそれも払う。すると「ジャ・ルールが嫌がってる」…そんなやり取りを経てビリーはようやくジャと会うことができた。アーティストと出演交渉するだけで金も時間もかかる。なんて面倒なんだ!そこでビリーとジャは画期的なサービス「FYRE」を共同で立ち上げる。アーティストに出演交渉する際は「FYRE」で検索して予約をして金を払う。それだけでアーティストが出演してくれる!仲介人を通さないので余計なお金も無駄な時間もかからない。画期的なサービスだ。
 それをウェブ・サミットで発表したときはそれほどの話題にもならなかった。FYREのスタッフは宣伝するためにコンサートを開いては?とアイデアを出し、ビリーが「音楽フェスにしよう」と言い出す。そしてファイヤ・フェスティバルの企画がスタートする。

 バハマの島をひとつビリーは買い取り、ここで1万人規模の音楽フェスを開こうとする。そのためには何をすればいいか?まず宣伝だ!

 彼らはネットで宣伝するためのPV撮影を始める。スーパーモデルたちを10人以上も集めて会場となるパブロ・エスコバル・アイランド(ビリーが麻薬王エスコバルが所有してた島なんだ、とデタラメをいった)でモデルたちとビリー、ジャたちがパーティーを開いて酒を飲んでジェットスキーをしたりする動画がつくられた。焚火をし、モデルたちが豚と戯れる。なんで豚が必要なんだ?スタッフらにジャは「俺が豚が必要だといったら、必要なんだ!」コンセプトもターゲットもよくわからないパーティーの映像が延々と撮影され、モデルたちはなんで呼ばれてるのかわかっていない。撮影は進む。PVは完成。ビリーとジャはモデルたちに「ハッシュタグをつけて拡散しろ。とにかくバズるんだ!」
 映像はたちまち話題になりPV数はうなぎのぼり、広告代理店もFYREに投資しはじめ、著名人たちを数百人かき集めて同じ時間帯に一斉に投稿する一大キャンペーンも大成功。ファイヤ・フェスに誰もが注目した。このイベントの成功は約束されたも同然!

 しかし問題はここからだった。PVをつくって宣伝もした。ファイヤ・フェスはそれ以外何も決まってなかった。

 まず島には1万人も入れない。泊まる場所もない。豪華なヴィラに泊まれ、ヨットで専用シェフによる食事も楽しめる。とにかく豪華で、夢のようなフェスというのが売り文句だったが島には客のためのトイレもネット環境もない。テントを立ててそこに泊まるアイデアを出すが、ためしに一日泊まったスタッフは「うるさいし安全じゃないし蚊もたくさんいるし…」指摘されてもビリーは意に介さず「クルーズ船を借りてきて、そこに泊まればいい」絶句するスタッフに笑顔で「本気だよ!」と笑うビリー。一部のまともな人間たちは「このフェス、何かがおかしい!」と思い始めていた。

 現実的に島に入れる客は1000人までだと問題点を指摘したスタッフは翌日クビに。この時点でフェス開催まで45日。あと一か月半しかないのに、ようやく舞台設定のスタッフを雇っている有様。スタッフの多くはフェスもやったことのない素人ばかりだった。
 開催予定の島を完全に購入していないことがわかり、島の持ち主はエスコバルの名前をつけられて「イメージが悪くなる」と彼らを追い出す。近くに別の島を買うが規模は縮小。さらにその島で行われるレガッタの大会の開催時期と重なってホテルはほとんど抑えられている。フェス参加者が泊まる場所、トイレ、食事、ネット環境、ステージ…何もかも一からやり直し。
 毎日、毎時、毎分なにか問題が起き、資金は湯水のように消えていく。資金調達のためにチケットを購入した参加者に「特典を利用したいならさらに追加の料金を振り込んでくれ」高額のチケットを売った後なのに!
 客も何かがおかしいと思い始め、フェスの公式サイトに説明を求める書き込みが溢れたがビリーは都合の悪い意見は削除しろと担当に命令。
 出演予定だったメジャーレイザーのメンバーのひとりはたまたまバハマに休暇で来ていて、現場を観に行って「これ大丈夫?」と不安がるがビリーは自信満々に「大丈夫」というのだった。

 開催まで10日を切り、現場作業員とスタッフらは現実的にフェスの開催は無理だとわかったので、ビリーに警告し続ける。「中止しかない」資金繰りに行き詰まり、フェスを開催しなければ破産に追い込まれることになるビリーは開催を決行する。

 ほぼ素人のスタッフらは次々起こる問題を可能な限り解決する。「止められなくて、あの怪物を生み出してしまったんだ」。フェスのために用意した大量のエビアンを税関に抑えられ「17万5千ドルを現金で払え」と言われたとき、彼らはそれをどう解決したか?スタッフはいう。

「ビリーは…“チームのために犠牲を”と。“毎日してるのにまた?”」
「彼は“我らのゲイリーダーとして自分を売ってもらえないか?”“男のアソコを舐めてくれ”“水のために”と」
「“税関長とヤッたら水のコンテナが返ってくる”」


 正気を疑うビリーの発言だが、このスタッフは覚悟を決めて税関長に会いに行ったというのだ。フェスのために!実際は冗談だったみたいで水は返してもらえたのだが、なんなんだ?これは!


 開催前日の夜に雷雨がやってきて、ここまで悪いことが重なるものかと。完成していない避難用テントが雨水にさらされ、マットレスは水浸し。スタッフらはただ茫然と夜空を眺めつぶやく。「もう逃げられない…」

 開催日。島にやってきた参加者は夢の楽園に来たはずが地獄絵図のような光景に直面するのだった…

 これが初めから客をカモにしようとか、詐欺目的だったらわかるんだけど、ビリーは本気でものすごいフェスをやろうとしてたんだよね。情熱以外のすべてが足りなかっただけで、ってそれ一番問題だよ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 05:24Comments(0)音楽ネットフリックス

2019年02月06日

年金はちゃんと払え『ポーラー 狙われた暗殺者』



 デンマークの至宝、マッツ・ミケルセン主演の『ポーラー 狙われた暗殺者』を観た。ネットフリックスで配信中だ。

 プール付きの豪邸で引退生活を楽しむ男マイケル(『ジャッカス』のジョニー・ノックスヴィル!)がセクシーボディのギャルといちゃいちゃしていると、いきなり数人の男に殺される。
 ミケルセン演じるダンカン・ヴィズラは組織“ダモクレス”の殺し屋で引退を2週間後に控えている。ブラック・カイザーの異名を持つ凄腕だが、組織には「50歳になったら引退」という定年退職制度があるため、それに従って退職金と年金を受け取って余生を過ごそうと考えている。
 組織を父親から受け継いだブルート(マット・ルーカス)は組織の負債を埋めるため、引退する殺し屋たちの退職金と年金を払うのを惜しみ、「受け取り手が死んだ場合、金は組織のものとなる」という契約書の条項を利用して新たに雇った若手の殺し屋をつかって処分する(マイケルが殺されたのもそのため)。

 組織の連絡係、連絡は簡潔に「speak!(述べよ)」の一言のみ(このシーンがクソカッコいい)の女、ヴィヴィアン(キャサリン・ウィニック)を使ってダンカンはおびき出されるが、罠に気付き先手を打って皆殺しに。ブラック・カイザーの凄腕を知るヴィヴィアンはダンカンに手を出すぐらいなら、年金を払った方がマシよと忠告するが「年金を払いたくない!」とブー垂れるブルートは若手に命令してあの手この手でダンカンを葬ろうとする。

 今の日本じゃないんだから、そんなに年金払いたくないの?これは「年金をきちんと払わないとひどいことになる」という内容なので、日本の年金問題にも一石を投じる映画です(嘘)。

 中盤ぐらいまではミケルセンの引退を控えた殺し屋の悲哀が醸し出されていて、ミケルセンの渋い魅力が楽しめるのでそれを目的にして観る人は充分満足できるのですが、次第にトンデモ展開になっていって…マニピュレーターで動かす「軍隊」で追っ手を皆殺しにするあたりはもう何がなんだか。

 とにかく…年金はちゃんと払え!


  


Posted by 縛りやトーマス at 23:10Comments(0)ネットフリックス

2018年09月28日

中国版カイジ『動物世界』

 福本伸行の漫画『賭博黙示録カイジ』の中国版実写映画『動物世界』がネットフリックスで配信されているので見た。




 中国では6月末から劇場公開され、公開二日で約17億円、公開2週間で約50億円超えという大ヒットを飛ばしているのに、日本ではネットフリックス配信のみに。予告編ではピエロが化け物と戦ったりしているので別の意味で期待をあおられたのだが、有名スターが出ていないと劇場に足を運びたがらない日本の観客相手には厳しかったか。



 カイジ・ジョン(この名前、無理があるような)はゲームセンターでピエロのアルバイトをしているさえない男で、そのバイトも遅刻するわやる気ゼロのボンクラ。演じたリー・イーフォンは山田孝之っぽいイケメンで日本でも人気出そう。
 カイジは病気で意識不明の植物人間状態になっている母親の治療費さえまともに払えず、半分恋人の看護師チン(チョウ・ドンユィ)に世話をまかせっきり。彼女にプロポーズすらできないカイジは自分のダメさを嘆くばかり。チンは若い男の入院患者から浣腸をせがまれるという変態行為を迫られ(どんな病院だよ)、イライラが募ったカイジは(自分の妄想の中で)ピエロに変身!この男、精神的に追い詰められたりするとピエロに変身して怪物をやっつけるところを妄想する癖があった(どういうこと?)。カイジはブチ切れて変態患者を殴るが、それを見た他の入院患者が発作を起こしてしまう。彼氏ぶってカッコイイところを見せたところで彼女の迷惑になるだけだった…彼女が同僚の男と付き合っている話まで聞いてしまい、いよいよカイジはどん詰まり。
 カイジは街で黒服の男・遠藤に連れられ、謎の男・アンダーソンと会う。このアンダーソンが原作漫画における利根川なんだが演じるのはなんとマイケル・ダグラス!『アントマン&ワスプ』のラストで消えてしまった後どこに行ったのかと思いきや、中国で謎のフィクサーになっていたとは驚きです。
 アンダーソンはカイジが友人のジュン・リーから借金を背負わされたことを伝える。それは身を粉にして働いても30年かけなければ返せない額。アンダーソンはアラカコマカボノ島(???)を出港する客船ディスティニー号で行われるゲームに参加し、勝ち残れば借金を返済できるという。カイジは否応なく船に乗せられることに…

 ここからは原作第一章の『希望の船』編をほぼ忠実になぞった展開に。しかし船に乗り込む前に突然カーチェイスが始まったりと、気が抜けない。ピエロになる理由やアンダーソンとカイジの長年に渡る因縁めいたものを提示されシリーズ化を予言するような結末など、改変部分が全部つまらなく藤原竜也のビールを飲む演技がずっと一緒ぐらいしか見どころのない日本の実写版と違って自由な発想に彩られて楽しめる。ダグラス演じるアンダーソンは利根川みたいな名言をいってくれないのが惜しい。日本で失敗した実写映画は今後中国に任せればいいと思うの。


  


Posted by 縛りやトーマス at 19:31Comments(0)漫画ネットフリックス

2018年08月14日

奪還せよ『エクスティンクション 地球奪還』

 ネットフリックスで配信されているSF映画『エクスティンクション 地球奪還』を観た。



 主演はマイケル・ペーニャ。『エンド・オブ・ウォッチ』で主役ジェイク・ギレンホールの相棒役を演じ、『アントマン』でアントマン=スコットの親友役、『オデッセイ』で主役マット・デイモンの親友役…って親友役ばっかりだな!なんか、親友役が似合う顔なんだな。

 そんなマイケル・ペーニャ演じる主人公ピーターは悪夢にうなされる。何者かに襲撃され、同僚も友人も家族も殺される。そのせいで家族と不和が生じ仕事も上手くいかない。上司デヴィット(マイク・コルター)の勧めで医者にかかろうとするが病院で自分と同じ悪夢にうなされている男に出会う。これは妄想か?現実なのか?
 画してどこからかやってきた宇宙船(!)と武装したエイリアン(!)によって攻撃が始まる。ピーターは職場の工場が安全だという夢を見ていたのでそれを信じマンションから家族を連れて脱出する。途中でエイリアンを返り討ちにし彼らの武器を奪う。しかしエイリアンは気絶していただけで武器である銃を追跡してピーターたちに追いつく。そしてピーターはエイリアンたちの正体と目的を知る。


 最初はよくあるベタな侵略SFかと思い、2018年とは思えない古びた描写が続く上にピーターのうつ病に悩まされるようなダメ社員ぶりが胃に痛いのだが、中盤からはあっと驚く仕掛けが施され『エクスティンクション 地球奪還』のタイトルの意味がわかるようになると映画の内容自体が一変する。
 主人公の周囲でしか展開しないような話だが最後には世界規模にまで拡大するのだった。こういうの見るとやはり映画はアイデアだと思う。現在の社会問題にも相通じるテーマがあって唸らせてくれた。

  


Posted by 縛りやトーマス at 11:32Comments(0)ネットフリックス

2018年06月24日

ハイな料理対決

 ネットフリックスで配信がはじまった番組、『クッキング・ハイ』を見た。



 ”世界初、大麻料理対決番組”
!って何?番組は大麻料理の世界では知られたプロフェッショナル・シェフ二人が提示されたテーマに沿った大麻料理を30分以内につくり、二名の審査員によるジャッジを経て、勝利者には金のポットを進呈!

 面白いのは審査員で、こういう企画なのでどう見ても決めてる連中が出てくる。最初から最後までずっと笑ってるやつとか、鱈のフライを挟んだハンバーガーを食べてると「俺、魚食べられないんだよな…あ、でも食ってるわ。すげーうめえ」とかいうやつ、自己紹介で呂律が回らなくなるやつとか、この人たち大丈夫?毎回高品質のハッパを提供する「ハーブの達人」ウンガヨのキャラクターもいいし、審査する前に「THC小休止だ!」と言い出してTHCって何?と思ったら大麻の成分で、要するに一服決めてからジャッジしようぜってこと。小休止後はみんな愉快になってる。

 保守系のメディアでは絶対できないようなものをやってしまおうというネットフリックスの攻めの姿勢、悪くないわ!一回15分前後なのでサクサク続けて見られるので、みんな今すぐ契約だ。

  


Posted by 縛りやトーマス at 21:39Comments(0)食べ物ネットフリックス

2018年05月21日

ピザ配達人と首輪爆弾と真相『邪悪な天才 ピザ配達人爆死事件の真相』



 ネットフリックスで配信されてる『邪悪な天才 ピザ配達人爆死事件の真相』を観た。2003年にペンシルベニア州エリーで起きた実際の事件の真相に迫ろうとするドキュメントだ。
 エリー市の銀行に強盗が押し入り金が奪われる。警察はすぐに犯人を取り押さえたが犯人は「首輪に時限爆弾がつけられている!」と叫んだ。その男はピザ屋の配達人、ブライアン・ウェルズで配達に行った先で首輪をはめられ「強盗してこい」と言われたという。ウェルズはメモを持たされ、指示通りにすれば爆弾を外してやると書かれてあった。細かい字でビッシリと書き込まれたメモが9枚。
 警察は爆発物処理班を呼んだが、周囲の道路に張られた通行規制のため処理班の車は延々遠回りをする羽目になり、現場まで4ブロック先の位置で爆弾は爆発。その瞬間はテレビで生放送されていた!ウェルズが着ていた白いシャツの胸にはGUESS(推理しろ)と書かれてあった。

 この事件知ってる!映画評論家の町山さんの『キャプテン・アメリカはなぜ死んだか 超大国の悪夢と夢』という本に書いてあったからだ。

事件の詳細↓
http://www.asahi.com/motion/ap/wmp/TKY200309050152.html


 残されたメモには強盗の手順、その後首輪を外すための鍵の入手方法が書いてあった。現場近くの道路を延々と周り、数か所に置いてある謎を解かないと次のヒントにたどり着かないという、まるで謎解きゲームのようだった、と警察はいう。時限爆弾のタイマーは60分で、「とてもそんな時間ではすべての謎を解いて鍵を手に入れられない」初めからウェルズは殺される予定だった?

 ウェルズが強盗時に持たされていた杖型の銃や、首輪からはまったく証拠が見つからず、容疑者はまったく絞れなかった。その後ウェルズの同僚だったロバート・ピネッティが自宅で死んだ。死因は薬物の過剰摂取。FBIによる事情聴取の前夜に。ピネッティの死が事件にどう関係するかはわからず、捜査は難航。

 しかし事件は急展開を迎える。「ある女の家に死体がある。処分を依頼されたが断った」という通報があった。現場に駆け付けた警察は冷凍庫に放り込まれた死体を発見、女を捕らえる。女はマージョリー・ディール・アームストロングといい、冷凍庫の死体は彼女の夫、ジェームズ・ローデンだった。マージョリーは夫を殺したとして逮捕されたが「ビルがやったのよ!あいつは大ウソつきよ」と警察署にやってきたテレビカメラに叫んだ。ビルとは警察に冷凍庫の件を通報したウィリアム・ロススタインという元電気配管工だ。彼女と長年の友人だったロススタインはローデンに嫉妬して殺されたのだと。
 FBIはこの二つの事件が関連しているとして捜査を始める。マージョリーの自宅、ウェルズがピザを配達した電波塔の隠れ家はともに離れていない距離だ。そしてマージョリーは以前にも同居していた恋人を殺した容疑がある(正当防衛とされて無罪になった)。さらにウェルズの家には機械の部品が山ほどあった。マージョリーはロススタインを「俺に逆らうととんでもないことになる、とよく脅すのよ」と言っていた。

「倹約家で金属の収集癖がある」「機械に詳しく凶暴性がある」

 というFBIのプロファイリングにも一致するためロススタインはうそ発見器にかけられたが結果はシロ。「切り抜ける方法を知っているんだ」とFBIは悔しがる。
 そうこうしているうち事件から一年後にロススタインはガンで死んでしまう。一方マージョリーはローデン殺しの件で服役中にムショ仲間にピザ配達人爆死事件のことをさも自分たちがやったように語っていた。首輪爆弾を作ったのはロススタインだとも。
 2005年にマージョリーは刑務所の移動を条件に情報を渡す。マージョリーは仲の悪い父親の遺産が自分に入らないことに腹を立て、父親を殺すことを計画。釣り仲間のケネス・バーンズに殺しを依頼(ケネスはやる気がなかったと証言)、その金を工面するために銀行強盗を計画。実行犯を脅すために使う首輪爆弾をロススタインにつくらせた(ローデンは計画を邪魔しようとしたので殺した)というえらく遠回しな計画だった。

 しかしこれだって真相ではない!ムショのマージョリーはバーンズを「大バカ」と呼び、「私は正当防衛とはいえ二人の夫を殺した。なんだって父親の殺しをあんなバカに依頼するのさ!自分でやった方が安上がりだよ!」というのだ。
 バーンズとマージョリーは互いを「真犯人」といって罵り合ったが、2007年ついにマージョリーは終身刑+30年の有罪判決。マージョリーは獄中からとんでもない真相を告白する。ウェルズもピネッティも事件の「共犯」だというのだ。「あいつは共犯なんだ!だから犠牲者じゃないんだよ!」これは重い罪を逃れるためのデタラメなのか?それとも…

 ロスステインは寂しい男で、女性の愛を望んでも得られず、いろいろな道具を発明しても誰にも認められない。マージョリーはかつては総代をつとめるほどの秀才で美しかったが、心を病んで躁と鬱の間を行ったり来たりした。夫を二人も「正当防衛で」殺したはずのマージョリーが内縁の夫扱いだったロススタインだけは殺さずにいた。そしてピザ配達人爆死事件という世にも奇怪な事件を起こした。二人はまるで犯罪で結ばれたボニー&クライドのような関係に見える。
 というと『俺たちに明日はない』みたいなカルトでロマンティックなクライムサスペンスに思えるけど、実際はどうかしてる人たちの外道以下な事件だから。ドキュメントの力って恐ろしい。

  


2018年03月04日

まさにおそロシア『イカロス』

 3月4日(日本時間3月5日)に発表される第90回アカデミー賞。今回は去年ハリウッドに吹き荒れたハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ、パワハラ問題に端を発するMe too運動の余波を受けたせいか主要部門の有力候補は女性主人公の映画が並んだ。作品賞を争う二大候補は『スリー・ビルボード』、『シェイプ・オブ・ウォーター』。ただし監督賞に『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナーがなぜかノミネートしていないので、作品賞を『スリー・ビルボード』、監督賞を『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督が分け合うと予想する。

 まだ見られていない映画もあるので、全体的な予想はこの程度にしておくが、気になるのが長編ドキュメンタリー部門だ。5本のノミネートのうち二本がネットフリックスで配信されているので日本でも観ることができる。そのうち最有力候補と言われている『イカロス』を観たんだけど…これは…恐ろしい映画だよ…





 『ウィッチマウンテン/地図から消された山』に出演したりしてる映画監督のブライアン・フォーゲルはアマチュアの自転車レースに出ている男。彼はツール・ド・フランス7連覇を達成した鉄人ランス・アームストロングが現役引退後にずっとドーピングをしていたことを告白し、過去の記録、栄光をすべてはく奪されてしまったことに注目した。アームストロングはあまりに強すぎてドーピングを疑われ続けていたが、現役時代500回を超える検査すべてに陰性だったことを強調し「俺はドーピングなんかやってない!」と言い張っていた。しかし実際は…
 フォーゲルはドーピングの検査システムがおかしいのでは?と思い、なんと自らドーピングをしてアマチュアの自転車レースに出場、現代のドーピング検査がザルだということを証明しようとした。モーガン・スパーロックの『スーパーサイズ・ミー』のドーピング版だ!

 ドーピングの専門家と検査をパスする専門家を探してフォーゲルはフランスのアルプスを7日間走り続けるレース、オートルートに出場する。最初に頼んだ人間はビビって受けてくれなかったが、その代わり知人を紹介する、といってロシアのドーピング検査機関所長であるグリゴリー・ロドチェンコフと出会う。グリゴリーはドーピングのプロで、「レースに出て、検査をパスしたいんだな?任せろ」とスカイプで自信たっぷりにアドバイス。彼はいつも上半身裸で愛犬とじゃれあってる、おかしな人だ。そもそもドーピングの不正を告発する立場のグリゴリーがなぜ積極的にドーピングする人間の手伝いを喜んでするのか?不安になりながらも彼の力を借りてフォーゲルはオートルートに出場。しかしまさかの自転車の変速機が壊れてしまうというアクシデントでレースは惨敗…しかも尿検査の抜き打ちをすると言われながら実際は検査なんてなかった。なんだそりゃ!企画倒れやんけ!ガッカリだよ!


 しかしフォーゲルが真のガッカリを体験するのはそのあとだ。2014年12月にドイツのテレビがロシアの陸上選手の間でドーピングが蔓延していると告発、世界アンチドーピング機構(WADA)の調査でロシアが国家ぐるみでドーピングを行っていると報告。その中心人物は誰あろうグリゴリーだった。
 すっかり友達関係になっていたグリゴリーの正体に驚くフォーゲル。国家ぐるみのドーピングをやらせたというスポーツ相のヴィタリー・ムトコやプーチン大統領は報道を否定。しかしグリゴリーは所長の座を追われ、検査機関は閉鎖へ。
 するとグリゴリーはおびえた表情で「命の危険が迫っている」と亡命を希望。フォーゲルはなんとか彼をアメリカへ逃亡させる。数日後、ロシアの反ドーピング機関トップのニキータ・カマエフが「心臓発作」で死亡したというニュースが。彼は昔からの友人で親友だった、心臓が悪いなんて聞いたこともないというグリゴリー。「彼は本を書こうとしていた。ロシアで本を書くのは命取りだ」カマエフは国家ぐるみのドーピングを告発しようとしたのか?
 グリゴリーはカメラの前で告白する。ロシアが国家ぐるみでドーピングを推奨していたこと、北京五輪(2008)、ロンドン(2012)で獲得した多くのメダルはドーピングの結果だったこと、その中心人物として関わったこと、プーチン大統領がそれを知っていたこと…

 『イカロス』は監督が当初想定していた方向とはまったく違う路線に舵を切る。自ら挑戦した人体実験ドキュメンタリーのはずが、国家規模の陰謀を暴く壮大な話になっていくのだから。


※ここからネタバレに関することが書いてありますのでまだ見ていない人は鑑賞後に読むことをオススメします!






 冬季五輪のソチ(2014)でロシアは過去最大の33枚(うち金メダル13枚)のメダルを獲得したが、グリゴリーによるドーピング検査をパスする方法の内幕は「そんな簡単なことでいいの?」と開いた口が塞がらない。WADAはドーピング検査のために二種類のボトルを用意する。このボトルはスイスの会社がつくった特殊なボトルで、WADAのラボが所有するボトルのキャップを破壊して開ける機械でないと開けられない。グリゴリーは副スポーツ相だったユーリ・ナゴルニフの厳命で「ボトルを開ける方法を見つけろ」と言われ、元KGB職員にボトルを渡すと30分で開けてしまった!ロシアは尿検査が行われるWADAのラボの隣の建物に元KGBを待機させ、夜中にラボに忍び込んでボトルを盗むと中身を入れ替えラボに戻すという手段で汚れた尿を綺麗な尿に変えたという。
 国家ぐるみでこんなこんなことやってたのかと思うとアホらしくなってくるし、それを言われるまで見つけられないWADAもアホらしいが、勇気ある告発をしたグリゴリーはロシア政府から敵視され、グリゴリーがアメリカから密かにロシア国内にいる妹と交わした通話は盗聴されて、テレビで流された!スノーデンも真っ青の国家の陰謀に背筋が凍る思い。まさに…おそロシア!!

 WADAはグリゴリーがひそかに国から持ち出したハードディスクの資料から彼の告発は真実であり、ロシアは国家ぐるみでドーピングをしていると、開催が迫るリオ五輪(2016)にロシアを出場させないよう勧告。しかしIOC(国際オリンピック委員会)は最終的に271人の選手の出場を認めた。一体、フォーゲルとグリゴリーの勇気ある告発はなんだったのか?


 ギリシア神話のイカロスは蝋で固めた鳥の羽根をつけて太陽にも届くと舞い上がったが、焼け落ちて死んでしまった。二人の戦いはただの無謀だったの?オリンピックの理念って何!?


  


Posted by 縛りやトーマス at 00:52Comments(0)ネットフリックス

2018年02月19日

目指せ10億点『ゲーマーVSニブラー:最高得点を狙え』

 小学生の頃、近所のスーパーでやってたファミコンのゲーム大会に出たことがある。ゲームはナムコ(現バンナム)の『スカイキッド』。横スクロールのシューティングゲームで、レシプロ機を操作して宙返りで攻撃を避けることもできるゲームで爆弾で戦艦などを爆破、基地まで帰還するのが目的。アーケード版もあって何度か遊んだことがあったので他の参加者が失敗する中、僕は余裕で戦艦を破壊して決勝まで進んだが、明らかにやりこんでる高校生に優勝をさらわれてしまった。優勝賞品は当時発売されて半年ぐらいのディスクシステムだったので悔しくてしょうがなかった。準優勝の商品は『パックランド』のペンケース他ナムコグッズ。しばらくの間「スカイキッドで準優勝したやつ」ということで騒がれたことはいい思い出だ。ゲーム大会で勝つこと、というのは当時のガキの間でステータスだった。




 ネットフリックスで配信されているドキュメント映画『ゲーマーVSニブラー:最高得点を狙え』(原題『MAN VS SNAKE』)を観た。ゲーム大会で優勝した男のその後を追うドキュメントだ。
 『ニブラー』という蛇を操作して画面上のドットを食べつくすと次の面に進むゲームで、他のゲームと違ってなんと10億点まで表示できるところがポイント。100万点じゃない、10億点!
 アイオワの田舎町オタムアにあるゲームセンターでとある少年が『ニブラー』のハイスコアをたたき出しているのを見た16歳のティム・マクベイは「こんなの、僕だってできるさ」と挑戦、あっという間に前人未到の9億点をたたき出してもはや10億は目前。ゲームセンターの店長は「もう少しで記録達成だ!」と大喜びでテレビ局を呼び出し、10億点達成の瞬間は地元のテレビ局で放送。ティムの偉業は田舎町を駆け巡り、「ティム・マクベイの日」まで制定される騒ぎに。そのゲームセンターは後にゲームのハイスコアを管理・表彰するツイン・ギャラクシーだった。
 映画は40歳ですっかりデブになって地元の工場で退屈な作業の繰り返しに飽き飽きする元天才ゲーマーを映し出す。誇れるものは「かつてニブラーの世界チャンピオン」という過去だけ!PS4やXboxの時代に!

 しかもその世界チャンピオンという過去すら虚栄だったかもしれないのだ。なんと25年も経ってから、実はティムが記録達成した約一年後にその記録はあっさり塗り替えられていたことが判明する。イタリアのゲームキッズ、エンリコ・ザネッティが10億100万点のスコアを出していた!
 詳細が確認できないとツイン・ギャラクシーはエンリコのハイスコアを認めていないが、事実を知ったティムはニブラーの筐体を買って25年ぶりのハイスコア更新を目指す。さらにティムのライバルとしてドウェイン・リチャードという男が現れる。ドレッドヘアをなびかせながら自信満々に「俺がナンバーワンだ。ガタガタいうな!」という見るからに問題児な彼だが、張り合うライバルを見つけたティムはゲーム大会で激突する。そのためには特訓だとデブった肉体を絞り上げるべくBMXで街を走り回り、ロッキーのごとく階段(短いけど)を上り下り。BGMはもちろん『アイ・オブ・ザ・タイガー』(笑)

 単なるゲームのハイスコア争いというなかれ。『ニブラー』で10億点出そうと思ったら丸二日は連続プレイしないといけない。寝てる暇なんかない。トイレもメシもプレイ中にしないといけない。たっぷり自機を増やして時間切れでやられてる間にトイレとメシを済ませるのだ。あとはひたすら眠くなって集中力が切れてくる。腕も痛いし目も痛い。何時間やっても平気だった16歳の時とは違う。今はウォーターベッドで寝ないと体の疲れも取れない中年のオッサンなのだ。ついにティムはギブアップ。

 すでにゲームは卒業して、キックボクシングにハマっているというエンリコはシェイプアップされた肉体を誇らしげに見せる。40代にしてはイイ体してる。ハイスコアラーだった過去は「美しい思い出」になっている彼と比べるとティムの現在は失礼な言い方かもしれないが「落伍者」「負け犬」って感じ。ついに公式にティムを上回るスコアを出すプレイヤーが現れて文字通り二番手になってしまう。チャンピオンだった栄光の過去にすら縋れずに屈辱の二番手に甘んじるしかないのか?俺の人生どうしてこうなった?

「僕のニブラー魂に火が付いたよ」

 ライバルがいると燃える男ティムは再び立ち上がる。彼は世界チャンピオンの座を取り戻すことができるのか!?

 映画を見ていると昔のゲームのハイスコア争いは普通のスポーツよりもストイックだ。最近の格闘ゲームみたいに直接争うわけじゃない。ひたすら自分のスコアを高めていくだけで切れていく集中力を途切れさせないようにモンスターエナジーをがぶ飲みしてプレーヤーは画面を凝視する。ハイスコアは己との闘いなのだ。乗り越えるのは相手ではなく自分だ。

 16歳で記録を出した時のティムは「誰の挑戦でも受ける」「すぐに抜き返してやる」と言い放っていた。だが挑戦者に巡り合わないままの25年間、目的を見失ったティムは人生も完全にどん詰まり。しかし目的とライバルを見出した彼は青春を取り戻したように輝き始める。何度挫折しても立ち上がるのだ。勝つためじゃない、自分自身に挑むために。ほとんどロッキーのように。

 負けても恨み言を言わずに相手の記録は素直に褒めたたえるティムたちゲーマーのスポーツマンシップは他のどんなスポーツよりも清々しい。でも、テレビのニュース番組のキャスターからは「馬鹿な奴らの大会だろ?」って言われるんだけどね。ホントにマスコミの連中というのは…

  


Posted by 縛りやトーマス at 03:49Comments(0)ゲームネットフリックス