2020年08月31日

階戸瑠李さんの勇姿を忘れない

 女優の階戸瑠李さんが亡くなった。


女優・階戸瑠李さん、急死 31歳 16日放送『半沢直樹』に出演
https://www.oricon.co.jp/news/2170799/full/

 階戸さんはOLからグラドルに転身後、24歳の時に雑誌FLASH主催のミスFLASH2013に永井里菜、池田裕子らとともにグランプリに選ばれ、グラドルユニットG☆Girlsの3期メンバーとして加入、2016年には女優業に専念するためユニットを脱退。2018年には映画『娼年』で主演の松坂桃李とかなり過激なベッドシーンをフルヌードで演じ話題に。今年はBL漫画の実写化『性の劇薬』への出演、そして『半沢直樹』のレギュラー出演と話題が続く中での訃報となった。

 僕が彼女を知ったのはTOKYO MX系列の『ファイヤーレオン』に当時所属していたエースクルー・エンタテインメントの紗綾が同番組にメインで出ていたこともあって準レギュラー扱いで出ていたときだ。三森すずこがオーナーをしている喫茶店の店員という役だったが同店にやってくるローカルヒーローとちょっとしたコントを起用にこなしていた。

 事務所によるとてんかんの持病があったという。直接の死因が現在確認中とのこと。突然の訃報に言葉もないのですが、彼女が『ファイヤーレオン』で見せた勇姿を忘れないということだけは伝えておこう・・・



  


Posted by 縛りやトーマス at 23:26Comments(0)映画特撮・ヒーロー邦画

2020年07月30日

俺はKGBだ!『痴漢電車 満員豆さがし』



 先日、肥後橋アワーズルームで行われた竹内義和先生と快楽亭ブラック師匠の『屈曲位大放談!』にて教えていただいた新東宝、滝田洋二郎監督の『痴漢電車』シリーズの二本目。

 満員電車内で迷彩服にヘルメットに偽装用の葉っぱまで張り付けた(こんなやつ電車に乗ってだけで怪しいわ)男(成田誠)が女学生(蘭童セル。ロリータフェイスの女優なのでこの名前になったそうな)をおイタしちゃうのだが、男はその時にアソコの奥にあるケースを隠す。女学生は家に帰ってそれを取り出すと中からはカメラのフィルムが出てきた。

 男は翌日、電車でまた彼女におイタを働き、ケースを取り戻そうとするが彼女とその友人(麻生うさぎ)に袋叩きにされてしまう。男は自衛隊から脱走した隊員で、そのフィルムは自衛隊と横須賀の米軍が結託して核兵器を密かに日本政府に売り渡した証拠が収められている。3人はこのフィルムを使って政府を脅して大金をせしめようとする。

 女学生はマル暴のデカ長(久保新二)の愛人として囲われていて、デカ長は自衛隊から逃げ出した男を捕まえて出世を企んでいる。このデカ長は婦警(たかとりあみ)を利用して自衛隊の男を捕まえようとするのだが、まるで役に立たない。デカ長にハメられてるか、逆に自衛隊の男にハメられて交通事故を起こしかける(バカ)。

 この騒動に絡んでくるのが謎の黒スーツにサングラスの男。演じるはもちろん立川丹波守(当時の名前)こと快楽亭ブラック師匠。役どころはKGBのスパイだが、デカ長が女学生の友人を誘拐した現場に乗り込んでくる場面で、台本では「俺はKGBだ!」というところ、本人のアドリブで「俺はボボノフ・オメコスキー、KBGのスパイね!」とかまして爆笑を呼ぶ。ボボといえば九州地方では女性のアソコのことなので、それを揶揄したギャグかな?

 最後は女学生らのたくらみが台無しになってしまうという、ありがちな骨折り損のくたびれ儲けなオチで終幕。シュールかつアヴァンギャルドな展開に頭がクラクラしました。数々のゲリラ撮影(電車内は下半身のクローズアップ以外はすべて本当の通勤電車で撮影され、横須賀の施設入口ではモロに警備員が写っている横で撮っている)には低予算ポルノ時代の何者にも囚われない自由奔放さが見え隠れしているといえなくもない!

 新東宝のポルノなんて、よほどのことがない限り見ないだろうけど思わぬ逸品、珍品があるので安く扱うことはできないのであった。


  


Posted by 縛りやトーマス at 11:40Comments(0)映画邦画

2020年05月24日

全部千眼美子のせい『心霊喫茶「エクストラ」の秘密-The Real Exorcist-』



 どういう根拠の元で行われたのかまったくわからない政府の緊急事態宣言がやはりどういう根拠の元で決定されたのかまるでわからない宣言解除によって大阪府内の一部の映画館の営業自粛が解除されたことで、この週末は数か月ぶりに映画館に行った、という人も多いだろう。もちろん僕も。
 埋立地の映画館、MOVIX堺にて見た映画は千眼美子主演の『心霊喫茶「エクストラ」の秘密-The Real Exorcist-』。幸福の科学映画かよ。しょうがない。これがMOVIX堺営業再開のオープニングタイトルだからwちなみにネットで座席数を確認したら全部の上映回が「残りわずか」になっていて、いくら娯楽に飢えているからってそんなに客が集まってるのか!?と思ったら単に座席が新型コロナウィルス対策で密にならないようにしているので、座席数が少なくなっているだけだった。


東京は世界一不思議な街である。思わぬところに心霊スポットがあったり、思わぬ人が実は霊能者だったり

 という、それ不思議という枠で括るには極端すぎない?というナレーションで開幕。ごく普通の一般人、さゆり(千眼美子)は普通の人とはちょっとだけ違い、道行く人にとりついた霊の声が聞こえる(全然普通じゃないよ、それ!)。他人に対する悪意に満ちた霊の声に体調を崩したさゆり、ある喫茶店の前で倒れこんでしまい、店のママに介抱される。さゆりはその喫茶店「エクストラ」のマスターとママの勧めでアルバイトと店に来る客の悩み事を解決するボランティアを兼業することに。ちなみに店はコーヒーの種類、淹れ方の拘りが常連客に受けている。さゆりの方も「霊感の強いお姉さんが悩み事を聞いてくれる」と話題に。ちなみに店のブックスタンドには幸福の科学の本がいっぱいだ(これ絶対マスターとママが信者の店だよね?)。

 女子小学生が母親を伴ってさゆりに相談に来る。何もないところで頬を切られたのだという。

「ひょっとして、透明人間に顔を切られたのかって・・・」

 と判断する女子小学生も大概だが、さゆりの対応もどうかしてる。

タイム・バック・リーディングを行います

 なにそれ?これはその場にいながら過去にさかのぼってその時の状況を見ることができる、という超能力みたいなもんで、さゆりはその能力を使って女子小学生が顔を切られたときの状況を「見る」すると不思議な生き物が高速で女子小学生の顔を切った!

「スカイフィッシュだ!」

 それUMAやん!

「すごいよ!君スカイフィッシュに顔を切られた日本で初めての人間だよ!」

 つっこむこと、そこじゃねえから!二人は納得した様子なんだが、これ、スカイフィッシュかどうかの検証はまったくされてないし、さゆりがタイム・バック・リーディングで見た映像はさゆりしか確認できないから本当かどうかわからないし!こんな感じで以後さゆりは自分だけが確認できる映像を「真実」と言い張って、周囲はなぜか受け入れていく、という展開が続きます。次の相談者はバイト先の売上金をひったくられた青年イサム(伊良子未來)がショックのあまりふらふらとエクストラに入る。さゆりはタイム・バック・リーディングでひったくり犯が警察官で、自宅の住所はおろか「今は反省しているはずだからきっとお金を返してもらえますよ」まで透視してしまう!さゆりのいうとおり、犯人は謝罪したうえお金も全額返してくれた。
 イサムはさゆりの能力に惹かれて以後、彼女の手伝いをするように。二人で学校のトイレに居付いた自殺した女子高生の霊を浄化したり、学校の先生の新居が元墓場だったことから戦国時代の合戦で死んだ兵士の霊を「エルカンターレ・ファイト!」で緊縛封印(?)したりと、もはやさゆりの活動は悩み事相談の解決ではなく、降魔師なのだった。これ全部、ボランティアで無償なんですよ。さゆりは「毎日、寝る前に今日一日、自分のしたことは神様に対して恥ずかしくないことか、考えながら生きている」と自分の生活は修行なのだとイサムに打ち明ける。


 幸福の科学映画って基本的に2種類で教義を元にした説教くさい映画か、教義を元にしたトンデモ映画のどちらかなんです。これはあきらかに説教くさくて、タイトルから絶対にトンデモ映画だと思ってたのでちょっと残念。いじめにあって自殺した女子高生の霊に「自殺はよくありません!」と説教(幸福の科学では自殺はよくないこととされている)したうえ、学校の先生にも「命を大切にする教えを広めろ」と迫り、幸福の科学の教義が書かれた本を霊が出たトイレに置くようにという。こんなの置いてある学校のトイレいやだよ!

 千眼美子演じるさゆりの人物設定は完全にトンデモで、この子、最初は単に霊感が強いっていうだけだったのに、幸福の科学の信者がやってる店で大川隆法の教えを聞かされ、影響を受けただけで除霊の能力まで身に着けたってことですよね?ちなみに自宅には幸福の科学の神棚(?)があって、壁には巫女のような白衣と緋袴が飾ってあるんだけど、あんた何者なの??

 イサムは杏花(希島凛)という彼女がいるのにさゆりのところに入りびたり、デート中にもさゆりの話ばかりする・・・って彼女がいない僕が見てもそれ、アウトだから!次第にイサムへの怒りとさゆりへの嫉妬を募らせる杏花に悪魔(折井あゆみ)が忍び寄る!悪魔は巧みに杏花の精神を操って「あの女に彼氏を奪い取られる」「苦しいのなら自殺した方がいいよ」と悪意を吹き込むのであった。でも彼女とイサムの仲が破綻してるのって、完全にさゆりのせいだから悪魔は関係ないだろうと思う。むしろさゆりが悪魔やん!

「私にとってもかつてない戦いになります。準備をしないと!」

 と水垢離をして巫女服に着替えて臨戦態勢を整えたさゆりと悪魔の付き合ってもいない男の彼女を救う地上最大の戦いがはじまる!エル・カンターレ・ファイト!


 ちなみに喫茶店の「エクストラ」という名前はマスターが映画『エクソシスト』のファンだから、つけたんだって。この店にはマスターの小さい娘がいつもいて、やってくる客に「よくない霊がついてる」「あの人もうすぐ死ぬよ」「水子の霊が見える」とかつぶやいて、「シーッ」とかいわれてんだけど、やっぱりこの店、悪魔の店やん!!

 ラストには大川隆法夫妻と長女の大川咲也加がゲスト出演!あ、本物の悪魔が(以下略)

  


Posted by 縛りやトーマス at 19:01Comments(0)映画仏陀再誕邦画

2020年03月16日

女優陣が完全に決まってますね『初恋』



 三池崇史初のラブストーリー!という触れ込みの映画『初恋』は設定だけ聞けばいつもの三池節歌舞伎町を舞台にした黒社会バイオレンス映画だ。

 孤児で才能はあるが、何事にも情熱のないボクサー、葛城レオ(窪田正孝)は格下相手に一発でのされてしまい、医師の診断は脳腫瘍で余命僅か。やる気のなさ故に生きるきもなさそうなレオだったが突然「あんたもうすぐ死ぬよ」って言われても・・・茫然自失となって夜の歌舞伎町をさまよっていると、突然現れた少女に「助けてください!」と言い寄られ、少女を追いかけてきた男を咄嗟に出したパンチ一発でKO。その男のポケットからは警察手帳が!

 レオが助けた少女モニカ(小西桜子)はヤクザのカップル、ヤス(三浦貴大)とジュリ(ベッキー)に囲われている売春婦でヤク漬けにされているせいでかつてDVを受けていた父親(山中アラタ)がブリーフ一枚で突っ立っている幻に悩まされている。この夜も客を取らされたものの、父親の幻を見てしまったのだ。
 ヤクザの組員、加瀬(染谷将太)は組が扱う覚せい剤をひそかに手に入れ、つるんでいる悪徳刑事の大伴(大森南朋)を抱き込んで横流しを企んでいた。すべての罪はヤスとジュリ、モニカにかぶらせようとしたのだがトラブルの果てにヤスを殺す羽目になり、客を装ってモニカを見張っていた大伴はレオにのされ、ジュリは加瀬が雇った殺し屋を返り討ちに。完璧だった計画は破綻し、お勤めを終えて組に復帰した組長の権藤(内野聖陽)とヤスの復讐に燃えるジュリが加瀬と大伴を狙い、さらには権藤に片腕を切られた過去を持つ台湾マフィアのボス、ワンがやってくる!閉店した深夜のホームセンターを舞台に三つ巴の殺し合いが幕を開ける。余命僅か、自分のことにすらやる気が起きなかったレオは生まれて初めて誰かのために命をかけて戦うことに。


 かつて『漂流街 THE HAZARD CITY』のクライマックスに血文字で「LOVE」なんて書いてしまうほど恋愛もの(といっても男同士の殺し合いなんだけど)に腰が引けていた三池崇史監督ですが、不幸な生まれすぎる女に惚れた男が命がけになるという、ある意味ベタな話なんだけど、そこは三池崇史なんで窪田正孝演じるレオは朴訥そのもので、モニカに惚れたような様子を全然見せない!いや、そこはもう少し露骨に惚れたような演出しようよ!

 こんなヘナチョコな「恋愛もの」もないもんだ!やはり三池崇史に恋愛モノは厳しかったか?と思ったがそうともいえない。今までの三池映画ではありえないほど女性陣がカッコよく撮られているからだ。特筆されているベッキーの怪人ぶり!完全に決まっちゃってる目で夜の歌舞伎町を裸足で疾走!これまで芸能界の優等生的ポジションがよっぽど窮屈だったのか、こんなイキイキしたベッキー、見たことない!
 ベッキーより一押しなのが、凄腕の台湾マフィアを演じる藤岡麻美!元チェキっ子、元cheeseの藤岡麻美。バンド解散後は台湾に渡って舞台やCMで活躍したのは知ってましたが、日本での仕事は久しぶり。流暢な台湾語とアクションでファンの度肝を抜いてくれました。愉快な酔っ払いのお姉さんとして1シーンだけ出てくる矢島舞美も最高だし、三池映画でこんなに女優陣がカッコイイのも珍しい。三池映画にまた惚れた。普段は三池映画を観ない人も、この映画には惚れたやろう!

  


Posted by 縛りやトーマス at 20:16Comments(0)映画邦画

2020年02月27日

高島礼子がキャインキャインと鳴いて政伸に噛みつく!わんわんばんこ!『犬鳴村』



 清水崇監督は前作『こどもつかい』で引退直前の滝沢秀明にファンキーな衣装を着せた上で動物の毛の生えた笛を吹いて子供を操り大人を殺すファニーな役をやらせていた。ホラーよりも笑いの要素を多く含んだ作風に観客は度肝を抜かれていた。この時清水崇のギャグセンスが目覚めた!

 映画『犬鳴村』は九州地方の都市伝説のひとつ「地図から消えた場所・犬鳴村」伝説を題材にしたホラーだ。怖いもの知らずのカップル、西田明菜(大谷凜香)と森田悠真(坂東龍汰)は犬鳴村伝説のある山中によりによって夜中に向かい、旧犬鳴村トンネル前にある電話ボックスの前に立つ。

「午前2時にこのボックスに電話がかかってくるそうでーす」

 と無邪気な明菜に比べてやや怯えている悠真はどうせデタラメだろうというが、電話ボックスのベルが鳴る!明菜が受話器を取ると、うめき声ともうなり声とも判別のつかない声が聞こえてくる・・・
 二人は受話器を置くとさらに闇の向こうへ進み、トンネルを超えた先にある「この先、日本国憲法通用せず」と書かれた看板を発見。そこには廃墟と化した犬鳴村があった。明菜は臆せずに廃墟のトイレで用を足す。するとトイレの壁の向こうから村人らしき複数の陰が迫ってくる。二人は大声をあげてその場を立ち去るのだった。

 犬鳴村から帰ってきた明菜は人が変わったようになり、部屋に引きこもっては不気味な絵を描き続ける。彼女を心配した悠真は臨床心理士の姉、湊(三吉彩花)にカウンセリングを依頼。湊は勤務先の病院でふさぎ込む児童の遼太郎(笹本旭)を診断しており、圭祐(須賀貴匡)と優子(奥菜恵)の両親にその場にいない「本当のママ」について語りだす遼太郎に恐ろしい何かを感じていた。
 カウンセリングの甲斐なく放尿したまま歩き回るといった奇行を繰り返す明菜に手の施しようもなかった。不意にいなくなった明菜の携帯に呼び掛ける悠真。

「なにやってんだよ?みんな探してるんだぞ」
「ごめんね。すぐ行く」

 電話が切れると、悠真の目の前に明菜は真っ逆さまに落ちてくるのだった。

 葬儀で明菜の父親は悠真の両親、晃(高嶋政伸)と綾乃(高島礼子)を「お前らのろくでもない息子のせいで娘は死んだ」と責めたてる。綾乃は申し訳ないと頭を下げ続けるが晃は憮然とした表情を崩さなかった。
 悠真と湊の弟で小学生の康太(海津陽)は夏休みの自由研究で犬鳴村のことを調べており(そんな自由研究はやめろよ!自由にもほどがある)、兄が犬鳴村にいってから何かがおかしいと思い、自分も村に行こうとするが「くだらんことはやめろ!」と晃に一喝されるのだった。

 悠真は悪そうな仲間たちとともに明菜の仇を取ろうと犬鳴村へ向かうが、旧犬鳴村トンネルはブロック塀で封鎖されていた!最初はこんなところなかったのに!
 ビビった仲間は逃げ出すが、悠真と車に隠れていた康太はブロック塀を乗り越えてトンネルの奥へ。そして・・・二人は消えてしまった!晃、綾乃、湊は警察とともに旧犬鳴村トンネルを捜索するが、二人の痕跡は途絶えていた。

「お前らには犬殺しの血が流れてるんだー!」

 と妻を罵倒する晃。半狂乱になった綾乃は警察を相手に暴れまわり、「キャインキャイン!」と泣きわめいて夫に噛みつく!以後綾乃は完全におかしくなり、犬のように這いつくばって「キャインキャイン」と鳴きながらエサを食らうのであった・・・って、犬鳴ってそういう意味なの??高島礼子みたいな美人女優に何させとんねん!!

 かつて犬鳴村には犬を殺して食べることを生業とする犬殺しの民がおり、周囲の村人からは迫害されていた。そこに都会からやってきた人たちが犬殺しの民に生活の支援をするようになった。彼らは一転裕福な暮らしになるのだが、都会から来た連中は電力会社の回し者で、この村をダムの底に沈める計画を立てていた。周囲の村人に「あいつらは犬と交配して子孫を残している」と嘯き、村に居づらくなった者たちの何人かは村を去ったが、それでも去らない者たちを小屋に閉じ込め、木に括り付けて放置した。そして犬鳴村はダムの底へ沈んだ。見捨てられた村人たちは電力会社のものたちを強く恨んで死んでいった。綾乃は犬殺しの民の生き残りの子孫で、晃は電力会社の人間の子孫だった!犬鳴村の民の呪いが電力会社の子孫たちを呪い続けるのだった!


 東映の『犬神の悪霊』(1977)みたいな話なのだった。『犬神の悪霊』がクライマックスでオカルトサイキックホラーに転じて観客を呆れさせていたように、清水崇監督は高島礼子をキャインキャインと「犬鳴」させて笑わせようとしたのだった。完全に笑わせようと思ってるよね。

 その証拠に、J:COMでやってる『笑福亭鶴光のオールナイトニッポンTV@J:COM』に映画の宣伝にやってきた清水崇監督は鶴光師匠の挨拶「わんばんこ!」の向こうを張って

「わんわんばんこ!」

 と叫んだのであった。“犬鳴”だけに・・・!

  


Posted by 縛りやトーマス at 21:18Comments(0)映画邦画

2020年02月19日

これぞ真の社会正義映画!ドンキー!『ロバマン』




 世界に日本が誇るバカ映画の巨匠、河崎実監督の最新作『ロバマン』が最高にバカ!主演は吉田照美。『てるてるワイド』『やる気MANMAN』の人気ラジオパーソナリティで茶の間(死語)を沸かした男の夢のタッグだ。


 吉田照美演じる主人公、吉村公三(元ネタは『ウルトラマンA』でギターのテクを披露する隊員から)はどこにでもいる平凡な男。定年退職後はやることもなく、外へ出ればラーメン屋の行列に横入りされ、文句を言おうにも強面に恫喝され、スマホながら歩きの若者に注意もできない小市民。そんな吉村の趣味は吉田照美のラジオ番組に投稿すること(吉田の声真似タレント、HEY!たくちゃんがソックリに演じていて混乱する)。P.N.ロバマンを名乗る吉村(由来は子供のころに顔が長いからロバそっくりだな!と言われたことから・・・ってそれ本人のことやん!)はラーメン屋の行列に横入りする輩を一喝、道いっぱいに歩くおばさんにクレーム。けっして自分ではいえないことを、ロバマンという別人格になった吉村は実践する。投稿の〆のセリフは「ドンキー!」この世の悪を断罪してニンマリ。

 しかしそんな吉村は現実では長年連れ添った嫁(熊谷真実が好演)からは「うるさいこのロバ!」とバカにされ、孫娘(欅坂46・小池美波)には「おじいちゃん、お小遣い頂戴」とATM扱いしかされていない悲しき68歳男。
 だが奇跡が起きる。町中でUFOを目撃(突然)した吉村。UFOからはロバの面を被ったロバ星人(ロバの顔のマスクにウルトラマンに出てきそうな宇宙人風のコスプレで、バカ映画の傑作『ロボット・モンスター』も底抜けの扮装だ)が現れ、吉村を同類と勘違いする(顔長いからね)。故郷へ連れ戻そうとするのだが、否定する吉村へ「これでリフレッシュしろ」とブレスレットを手渡す。このブレスレットがあれば怒りのパワーが満ちた時にロバマンに変身できるのだ!

「ドンキー!」

 の合言葉とともにスーパーヒーロー・ロバマンに変わった吉村はラーメン屋の行列に横入りするやつをすごくゆる~いパンチと腰の入っていないキックで叩きのめす。これぞロバマン・アクション!スマホながら歩きの若者を押しのけ、パワハラ、セクハラおやじを鉄拳制裁!ひかえおろう!

 ロバマンのコスチュームは8マン風なのがツボ。河崎実監督は以前8マンの実写化を目指して作画担当の桑田次郎先生のところにいったものの、精神世界へ解脱していた桑田次郎先生は「ヒーローも結局暴力で敵を倒しているのだからよくない」といったことを監督にいって、実写化は実現しなかった。その後『8マン すべての寂しい夜のために』を見た監督は心底あきれ返ったという・・・そう、この映画は河崎実監督の実写8マンへのリターンマッチなのだ!

 ロバマンの活躍はたちまち世間で

「あんなに顔の長いヒーローは藤田まこと以来ですよ」
「昔、ロバのパン屋ってのがあったんだけど、ロバマンにテーマ曲はあるのかな」(みうらじゅん・談)

 話題となり、


「ロバマン最高!」
「アジアにも進出してほしい」
「アベンジャーズなんか目じゃない」
「ロバマン抱いて!」
「電エースキックと対決してほしい!」

 とSNSにもコメントが溢れかえった。吉村はユーチューバーデビューし、『ロバマンのうた』(作詞は湯川れい子、曲は伊秩弘将!)を熱唱。

 調子に乗り始めた吉村=ロバマンはより大きな悪党に怒りの鉄拳を向ける。振り込め詐欺、結婚詐欺を容赦なく制裁する。すると世間てのはホントいい加減なもんで

「やりすぎ」
「結局暴力を揮っている」(桑田次郎先生かよ)

 と批判も集まりだす。中にはタブレット純(河崎映画の常連)みたいに「待ちに待ったヒーローの登場です。ロバマンにはエイトマン、鉄腕アトム、鉄人28号、海底人8823、スーパージャイアンツの要素が入ってます」と絶賛する人もいるのだが(どんだけ入れてんの。盛りすぎだよ!)
 世間からの思わぬ批判に「俺は間違っているのか?」と悩みだすロバマン。そんな悩めるヒーローの前に現れるのは日本初のスーパーヒーロー、月光仮面だ!

「ロバマン、君の信じる正義を貫きたまえ!」

 悪人を憎まず殺さず許しましょう、の月光仮面の一言は非常に重要だ。月光仮面に勇気づけられたロバマンはやられっぱなしのいじめられっ子に「君は喧嘩もできない優しい子なんだね」と優しく励ましてやり、いじめられっ子には手を出さずに口で言い返してやれ!とヒントを与える。桑田次郎イズムをきちんと継承する河崎監督、さすが!


 しかし本当の悪党は許さない!高級料亭で政治をないがしろにしている安倍総理大臣と菅官房長官(演じるのは河崎映画の常連、ザ・ニュースペーパー)がロバマンの次なる怒りのターゲットだ!

「ソバはやめましょう。モリソバ、カケソバ、今はまだちょっとね。モリカケで。ちょっと胃もたれする」
「いやーしかし安倍政権いいですねえ。いいわーいいわー、令和ってね」
「令和のおかげで辺野古もモリカケも、全部チャラ!」
「早く忘れていただいてねえ!」
「アベノミクスは失敗だ失敗だって言われてますけどねえ、失敗じゃありませんよ。うまくいってないだけですよ」
「それを失敗っていうんですから!」


 心底しょうもないギャグ(誉め言葉)のやりとりの後、政権の悪党二人にロバマンの鉄拳が炸裂する。
 映画『ロバマン』はしょうもないギャグ映画のフリをしながらこの世の本当に悪い悪を断罪している。『新聞記者』みたいな本当に悪い奴の名前を出さない腰の引けた忖度映画とは違う、『ロバマン』だけが真の社会正義を貫く映画なのだ!

 そしてロバマンは本当の悪と対決する。この地球に潜んでいるオールナイト星人とだ!演じるのは「わんばんこ!」「乳頭の色は?」でおなじみ笑福亭鶴光師匠だ!

 オールナイト星人はこの世の悪を見逃す、もしくは放置し、フェイクニュースを拡散することでネガティブなエネルギーを増幅させ地球を支配しようとする巨悪。「オールナイト~パヤパヤ~」とどっかで聞いたセリフで登場するオールナイト星人にとって正義のエネルギーをばらまこうとするロバマンは敵だ。星人に送り込まれた刺客を返り討ちにしたロバマンは奴の地下基地に突入。

「ロバマン、お前は私の敵ではない!政治も教育もありえないことが起こっているだろう」
「文化放送からニッポン放送へ移るやつ、松竹芸能から吉本興業に移るやつ!モラルもなんにもないわ!」(誰の事だよ!)

この世界を動かしているのは花札でもトランプでもない!トランプはマジックを使いごまかしている!日本の政治もしかり!この私が世界を動かしているスーパーコンピューター以上の存在なのだ!」

 急に気の利いたギャグをかます鶴光師匠!思わず「うまい!」と膝を打った。

 人の本質は悪だというオールナイト星人の攻撃(マントを翻して「私は、宇宙!」という、『ねらわれた学園』で峰岸徹が演じた魔王子・京極のパロディが突然挿入される)に屈しそうになるロバマン。そんな時助けに現れた謎のヒーローとは!?その正体に度肝を抜かれてほしい。

 ン十年間ヒーローとバカ映画を作り続けてきた河崎実監督の「徹底してバカをやる」という覚悟の前には世にあふれる「なんちゃってギャグ映画」など微塵も残さず吹き飛んでしまうであろう。韓国映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞を獲得して「日本映画はダメだなあ」なんていってるそこの君!日本には河崎実が!ロバマンがいる!!

 ちなみにこの映画の上映時間は68分。史上最低のバカ映画と謳われた『魔の巣』の上映時間と同じ!狙った?


  


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2020年01月18日

これが日本の格差社会映画だ『カイジ ファイナルゲーム』



 実写映画『カイジ』シリーズの第三弾にして完結編。前作から9年ぶりの新作だ。9年も経ってるのだから、カイジ実写シリーズのコンテンツとしての魅力はすでに失われていると思っていたので、新作は意外だった。その間原作はいまだに続いていて、現在では命がけギャンブルで手に入れた24億をもって逃亡しようとするヘイスト(強盗)映画の脱出劇のような展開になっていて、原作漫画の売りである登場人物たちの緻密で高度な心理戦を今までにない形で描き出しており、相変わらずの面白さだ。
 が、実写映画の方は原作漫画の、漫画ならではの緻密な心理戦は実写で描くことは不可能なので、全部登場人物たちは絵で表現されていた心情や互いのやりとりを全部セリフで説明し、しかも絶叫口調でやる。ひたすらに大声で芝居がかったセリフを絶叫するの単純にして単調だが、舞台役者として巨匠・蜷川幸雄に揉まれた藤原竜也、歌舞伎役者の血を引く香川照之の異常なほどに高められた絶叫芝居の勢いに見させられてしまうのもまた事実。

 さてそんな単純にして単調な人生の破滅を賭けたギャンブル映画の3作目は、初めてのオリジナルストーリーだ。これまでの帝愛グループとカイジらロクデナシのギャンブラーとの戦いではない。相手は、日本だ。
 東京オリンピック以後、日本の経済は完全に破綻し、不況のどん底に落ち込んでいた。何の冗談かと思ったが本気でそういう設定なのである。日本全体が一握りの富裕層が暮す優雅な高層ビル群と、貧民が暮すスラム街に分断されてしまっている。スラムでは缶ビール一本が1000円という金額になり

「ふざけんじゃねえよぉ~!これじゃビールも飲めねぇよ~ぉ!」

 とカイジ・竜也がいつもの絶叫演技。派遣で働くカイジは給料の7割をピンハネされてまたたま絶叫。「なんだよこれぇ!これじゃ生きていけねぇよぉ!」そこに現れた会社社長で「派遣の帝王」と呼ばれている黒崎(吉田鋼太郎)が「いやならやめろぉ~!いくらでも代わりはいるんだぁ~!」と竜也に負けず劣らずの絶叫演技。吉田鋼太郎といえば藤原竜也と同じ蜷川幸雄の舞台で鎬を削った役者同士ではないか。シェイクスピア劇も真っ青の対決がスクリーンで展開される。

 その後カイジは地下で対決した大槻班長(松尾スズキ)から一発逆転のギャンブルがあると教えられ、秘策を授けてもらって参加。この映画には4つのギャンブルが登場する。ちなみに4つのギャンブルは原作者の福本伸行自らが考案したものだ。最初のギャンブルは「バベルの塔」。集められた参加者はとあるビルの位置を教えられ、最上階ににそびえる鉄塔の頂点にあるカードに最初に触れたものが最大99億9999万円か、同価値の情報を得るか、選択権が与えられる。カイジは大槻からビルの場所を事前に聞いていて、隣接するビルから鉄骨を伸ばして綱渡りを決行。見事勝利者となり情報をゲット。その情報によってカイジは資産家の老人、東郷滋(伊武雅刀)に出会う。東郷はこの国で栄華を極めている大金持ちだが、まもなく国会で政治家が銀行の預金を封鎖する法案を成立させようとしていることを知り、それを止めるために政治家の買収を画策するが、手持ち資産では足りず、黒崎と全財産を賭けた直接対決のギャンブル「最後の審判」に挑もうとする。その協力者として「金よりも情報を選んだ」カイジと最高についている女、桐野加奈子(関水渚)を仲間に引き入れる。どれだけ多くの賛同者を集め、大金を積むことができるかというギャンブルに挑むが、黒崎の罠に陥り大ピンチに。追加資金を手に入れるためカイジは地下で行われている命がけのギャンブル「ドリームジャンプ」に挑戦。見事大金を手に入れ、事前に仕掛けていた作戦によってカイジは勝利するが最後の最後で邪魔をする、通称・影の総理と呼ばれる若き官僚・高倉浩介(福士蒼汰)と彼が得意とするギャンブル「ゴールドジャンケン」で雌雄を決する勝負に出る。

 一握りの富裕層がすべての富を牛耳って貧困層を支配する格差社会の構造にメスを入れる、とでも言いたげな内容には白けてしまう。この映画の制作は日本テレビなんだけど、現在の格差社会を助長しているのがテレビ局をはじめとするマスメディアではないか。政府に牛耳られて政権のまともではない政策や与党の不祥事を糾弾することすらできない。『銀河英雄伝説』でも言ってたでしょ。「政治家が賄賂を取ることは政治の腐敗ではない。政治家個人の腐敗であるにすぎない。政治家が賄賂を取っても糾弾できない、それを政治の腐敗というんだ」と。
 そんな連中が貧困層の大逆転によって腐敗政治が転覆する、なんてフィクションを堂々と作っている事実には笑いが止まらないね。この人たちはこんな話を本気で信じていないに決まっている。映画の中で10人の参加者のうち9人が死ぬ死のバンジーゲーム「ドリームジャンプ」とかをやらせている側の気分でしょ。こんなバカげた映画をつくって大儲けしている状況に笑いが止まらないだろう。「またバカな貧乏人どもがありもしない絵空事を見に映画観に来ていやがるぜ」ってね。
 また原作者の福本伸行自身も今や大金持ちなんだから、本当の貧困層の気持ちなんてわかっちゃいないだろう。彼はまだ漫画家としてまっとうなやり方で稼いでいるんだから100歩譲って許せるけど、口では安倍政権を批判するようなお話にしながら(この映画の脚本は福本本人)実際は格差社会の利益を享受しているんだから、笑わせるなよ。
 本人が考案したというゲームの数々も原作漫画に出ていたいろんなギャンブルのクオリティに達しているものはひとつもなく、ガッカリです。ひょっとして漫画に使わなかったアイデアを引っ張りだしてきただけなんじゃあ・・・

 カイジ実写の1と2には山本太郎が出演している。山本は今、格差社会の是正のために本気で戦っているじゃないか。この映画のどこにも格差社会と本気で向かい合おうとしている部分は見当たらない。福本さんよぉ、山本太郎の爪の垢でも煎じて飲んでこいや!
 虚無だけが広がる無限の荒野。この映画の出来が悪魔的だった!



  


Posted by 縛りやトーマス at 15:15Comments(0)映画漫画邦画

2019年12月26日

過去最高にカワイイ浜辺美波『屍人荘の殺人』



 今村昌弘のデビュー作『屍人荘の殺人』は「このミステリーがすごい!2018年度版」「週刊文春ミステリーベスト10」「2018 本格ミステリ・ベスト10」第1位、そして第18回本格ミステリ大賞受賞と国内ミステリーランキング4冠を達成した話題作で、その実写映画化だ。

 大学のミステリー愛好会(研究会じゃないの?)のたった二人だけのメンバー明智(中村倫也)と葉村(神木隆之介)の自称ホームズとワトソンは依頼を受けて様々な事件の解決に乗り出すが、いつも空回り。葉村などでミステリー小説の犯人予想を一度も当てたことがなく、ついたあだ名が「迷宮太郎」。今回も学生の依頼を受け推理をするも的外れな解答をした上、横から現れた美人女子大生にして本物の名探偵、剣崎比留子(浜辺美波)に鮮やかな推理を決められてしまい立つ瀬なし。
 名誉挽回の機会をうかがう二人に当の剣崎からロックフェス同好会(ロック同好会じゃないんだ・・・)の合宿に参加するのでついてきて欲しいと依頼。ロックフェス同好会に「今年のいけにえは誰だ?」という脅迫状が届き、身に覚えのない同好会メンバーから犯人を推理してほしいと頼まれた剣崎は助手として二人をスカウト。明智は事件解決のため、葉村は一目ぼれした剣崎のために(笑)ロックフェス会場の近くにある同好会メンバーが宿泊するペンションへ向かう。
 一癖も二癖もある同好会メンバーに不審のまなざしを向ける葉村に、明智は突然

「今から向かうペンションで事件が起きる!そしてその犯人も僕にはわかった!」

 と宣言する。何も起きてないのに事件て!あきれる葉村に明智は「君はただ何が起きるのか見ているだけでいいのだ」と自信満々。そんな二人の前にとんでもないことが起きる!

 映画『屍人荘の殺人』はネタバレ絶対厳禁で、この直後に衝撃的な展開が待っているのだが、これを完全にバラさなかったポスターや予告編は大したもんだ。



 殺人ミステリーとまったく別のジャンルを融合させてとんでもないカオスを生み出した本作は密室殺人やクローズド・サークルものといった使い古されたミステリーのジャンルにまだ掘り起こす金脈があることを再発見させてくれた。

 正直、謎解きのトリックや真相などは別段大したこともないんだけど、神秘めいた美人女子大生探偵を演じる浜辺美波の前にはそんなことはどうでもいい!あぁ・・・本作の浜辺美波は過去最高にカワイイ女子を演じていて、彼女が少々エキセントリックな言動をとってややこしそうな娘だなと思わせても、うどんを食べてる写真を延々とスマホに残していたり、雲竜型で推理の冴えを見せたりする場面も、普通に考えたら絶対つまんねえんだけど浜辺美波なら何もかも許せてしまう。いいじゃないか!べーやん(浜辺美波の愛称らしいが、僕らの世代はべーやんといえば堀内孝雄じゃないのか)がカワイイんだから!

 映画というのは総合芸術なんだということを改めて思い知らせてくれた『屍人荘の殺人』は前代未聞の映画なのだよ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:55Comments(0)映画邦画

2019年11月17日

地獄だぞ!『地獄少女』



 強い恨みを持つ者が深夜0時ちょうどにアクセスすることで開かれるサイト「地獄通信」。アクセス可能になったサイトで恨みを晴らしたい者の名前を書き込むことで閻魔あい=地獄少女と接触でき、彼女から渡された藁人形の赤い紐を解くことで対象者を地獄に送る契約が成立する。しかし契約が成立した場合は依頼者もその命が尽きた時に地獄に送られることとなる・・・

 と「人を呪わば穴二つ」的な因果応報の物語であるアニメ『地獄少女』の実写映画化。アニメ版では閻魔あいの声を演じた能登麻美子の怖可愛い演技が高く評価されすぎたため、実写版の閻魔あい役は大丈夫?と不安の声が聞かれたが、実写映画版の閻魔あいを演じる玉城ティナもまた怖可愛い存在感を披露してくれたので大満足。


 白石晃士監督による(脚本も担当)実写版はアニメ版以上に人間の悪意をありのままに描いたものとなった。ごく普通の女子高生、市川美保(東宝映画売り出し中の若手スター、森七菜)は毎日をつまらなく過ごし、カリスマ的なビジュアル系ミュージシャンの魔鬼(藤田富)のライブだけが楽しみだった。あるライブ会場で痴漢行為に遭って声も出せずおびえていると、そばにいた見知らぬ女性客が男を引っ張り出して蹴り倒す!必要以上に!!
「お前みたいなやつが魔鬼を汚すんだ!」
 美保はその女性、南條遥(仁村紗和)と仲良くなる。二人がライブ後にカフェにいるとそこに魔鬼がやってきて、バックコーラスのオーディションに二人を誘う。「今度コーラスに参加してくれる地下アイドルの子のライブに来ないか?」魔鬼に誘われ、そのアイドル御厨早苗(大場美奈)のライブ会場にやってきた二人は目の前で早苗がストーカーに顔を切られる惨劇を見てしまう。
 早苗は「地獄通信」にアクセスし、閻魔あいから藁人形を渡されるが、「紐を解いたものもまた地獄に送られる」と告げられ、ストーカーを呪い殺す勇気が出せなかった。だがストーカーから謝罪の手紙が届き、そこには早苗を一生呪う言葉がつづられており、決心がついた早苗は藁人形の紐を解く。地獄少女によって「この怨み、地獄へ流します」となったが、地獄少女の言葉通り、早苗も地獄へ送られる。

 この流れは原作アニメどおりだが、白石監督はさらに観客に地獄を見せる。早苗は地獄送りになったことで行方不明になった(地獄送りにされると表向きは姿を消していなくなる。送られたことを知っているのは依頼者だけ)ストーカーの母親(なんと片岡礼子!)は早苗の元に謝罪にやってくるのだが、早苗はその母親の耳元で「地獄に送ってやった」とささやくのだ。
 その早苗もまた地獄送りで姿を消したことでストーカーの母親は真相に気づき、早苗の両親の前で刃物を渡して自分を殺せと迫るが、早苗の両親は「人を恨んでもいいことないですよ」とか薄っぺら~いヒューマニズムをひけらかしすのだった。すると母親は「早苗さんの方が正直でしたよ」と刃物で自分の首を突いて死ぬ!
 何してんの!!(本作で一番驚いた場面)地獄だぞ!!


 魔鬼のオーディションは遥だけが合格し、美保は彼女を応援するのだが、遥は以降人が変わったようになり、魔鬼の勧めで美保と縁を切る。魔鬼に違法薬物使用の疑いや、洗脳で人を操っていると聞かされた美保は遥を変えてしまった魔鬼を憎み、「地獄通信」にアクセスする。


 原作アニメ以上にえげつなく人の悪意を暴いたのもすさまじいが、白石監督はさらに「地獄通信」の謎を追うキャラクターとしてフリージャーナリストの工藤仁が登場!『コワすぎ!』の工藤じゃねえか!演じているのは浪岡一喜だが、あふれんばかりの工藤っぷりで(女のことばっかり考えてるところとか!情報提供の見返りに女子高生(また、名前が美保っていうのも・・・)に「やらせてくれないのかよ!」と毒づいたり・・・まさに工藤!)白石ファンをざわつかせる。

 アニメの実写化というと原作に気を遣い過ぎるか、ファンに媚びすぎて小さく収まったり単なるコピーになるところを、遠慮せずに拡大解釈、圧倒的なビジュアルの力で原作に負けない世界観を構築、さらに美保と遥の青春映画のように仕立て、自作キャラの出演など、白石ファンへのアピールもしっかり忘れない、なんともサービス精神満載な映画でした。この作品・・・地獄だぞ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 16:41Comments(0)映画邦画

2019年10月29日

土壇場からの大逆転、これが上田慎一郎監督の作家性だ!『スペシャルアクターズ』



『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督による長編第二弾。『カメラを止めるな!』はたった2館で劇場公開がはじまったが、話題が話題を呼び、公開劇場数が増え続け最終的には300館越えを達成するロングラン・ヒットとなった。
 未曽有のヒットを生み出したあとの第二弾には当然のごとく期待がかかるわけだ。上田監督はワークショップを開催して出演者を公募し、18人に絞ったメインキャストにアテ書きする形で脚本を書こうとしたがプレッシャーに苛まれてまったく書けなかったのだという。
 キャストらが意見を出し合う形でようやく完成した脚本は「プレッシャーに異常なほど弱い男」が主人公の物語という、自分自身の置かれた状況をそのまま形にしたものだった。


 大野和人(大澤数人)は子供のころに見たテレビの特撮ヒーロー番組『レスキューマン』に憧れ、役者を目指すものの、オーディション現場で監督から「それのどこが演技だ!もっとお前の持ってるもんをみせてみろよぉ!」と『カメ止め』風に詰め寄られ、気絶してしまう。気弱な上に緊張状態が限界になると気絶してしまうという、致命的な欠点を抱えている和人はオーディションに落ち続け、警備員のバイトもまともにこなせず、家賃も払えずどん底人生。
 ある日、数年間会っていなかった弟の宏樹(河野宏紀)と偶然再会。宏樹は「スペシャルアクターズ」という俳優事務所に所属しているという。その事務所はドラマの端役などを提供する他に、依頼者の相談を演じることで解決するなんでも屋のようなことをやっていた。例えば恋人の前でええかっこをしたい、という依頼には酔っ払いを演じて依頼者に街中で絡んでわざと負ける、といった役を演じるのだ。

 金も仕事もない和人は演じることができる、ということでスペシャルアクターズに入所する。最初は映画館の笑い屋、行列の代行などをしていくが、思わぬ大仕事が回ってくる。実家の旅館がカルト宗教団体に乗っ取られようとしており、洗脳状態に置かれている姉の女将・津川里奈(津上理奈)を助けてほしいという妹・祐未(小川未祐)からの依頼を受けたスペシャルアクターズは事務所の全メンバーを総動員した大作戦を計画。その主要メンバーに和人が選ばれたのだ。
 大役を任され、まさに気絶しそうなほど緊張する和人だが、カルト教団の信者を装って潜入した旅館で女将の里奈と『レスキューマン』のヒロインを重ね合わせた和人は勇気を振り絞ってミッションに挑む。努力の結果、カルト教団がインチキだという証拠を手に入れるのだが、予想外のトラブルが続出、緊張状態はMAXに。気絶してしまえばすべては台無しになってしまう。和人は人生最大の危機を乗り越えられるのか。



 役者生活10年間で役者の仕事が3回、自分が役者をしていることは母親と知人の二人しか知らないという、異色にもほどがある経歴の大澤数人の存在感よ!そんな彼はワークショップで上田監督に「緊張を解くためにやわらかいゴムボールをずっと揉み揉みしている」というインパクトあるアイデアを出したりしていて、彼のなんともいえない素人感、よくぞこの人を見つけてきたなと。

 長編一作目の『カメラを止めるな!』はすでにある舞台演劇にヒントを得た作品であり、純粋なオリジナルとは言い難いかもしれないが、その根底には上田監督がプロの映画監督を目指そうとしながら、専門学校を中退、詐欺にあったり、ホームレスにまでなったりした苦悩と失敗の人生があり、追いつめられた人間が思いもよらない実力を発揮する土壇場からの大逆転があった。『スペシャルアクターズ』も主人公の和人が気絶しそうなほど追いつめられながら、ずっと好きだった『レスキューマン』への思い入れが超能力という奇跡の大逆転を呼び込む。失敗の人生を経験しながらも映画への熱い思い入れが失われなかったことが『カメラを止めるな!』という奇跡を呼び込んだように「ダメ人間の土壇場からの大逆転」というテーマこそが上田監督のオリジナリティであり、作家性なのだろう。

 そんな作家性が炸裂した『スペシャルアクターズ』は148館という規模で公開されたものの、興行ランキング圏外スタートとなり、興行的には大苦戦となっている。『カメ止め』でまさかの大ヒットとなり、今度はまさかの大苦戦。
 だが2館ではじまった映画がファンの支持に支えられてロングランとなったのだから、まだまだわからない。なにしろ、上田監督は「土壇場からの大逆転」の男なのだから。

  


Posted by 縛りやトーマス at 00:28Comments(0)映画邦画