2017年05月19日

暁照夫の三味線ばりのなんでこんなにうまいんやろうか演技『スプリット』



 最近は大コケ映画ばかり撮ってたが前作『ヴィジット』をヒットさせ復活の狼煙を上げたM・ナイト・シャマラン監督の新作。
 退屈そうな顔をしてる女子高生ケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)はクレアの誕生日会に招かれ、その帰りにクレアとその友人マルシアとともに謎の男に拉致される。何処とも知れぬ部屋で目覚めた3人。自分たちを監禁した男、ケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)の隙をついて逃げ出そうとクレア、マルシアは相談を始めるがケイシーだけは「様子を見た方がいい」と冷静になるよう呼びかける。ケヴィンが外出先から帰ってくると、連れの女の声が聞こえてくる。クレアたちが助けを求めると監禁部屋の扉が空き、カーデガンを来てネックレスを首に飾ったさっきの男が姿を見せた!ケヴィンの正体は24人の人格を持つ多重人格者だったのだ…

 スキンヘッドにカーデガン、女声でしゃべりかけてくるパトリシアという人格になりきったマカヴォイの雑な女装を見た瞬間思ったね。「この映画、笑わせに来てる」と…!劇中では23人+“ビースト”と呼ばれる最後の人格、合わせて24人格というビリー・ミリガン状態を演じるマカヴォイ(実際は5人しか出てこないので24人はそもそも盛り過ぎだろう)。役者というものは多重人格者とか振り幅の大きい役を演じたがるものだろうか、神経質そうな男に温厚な若者、女に9歳の少年といった役を代わる代わる器用に演じていくマカヴォイを見る度に「どや!上手いやろう」と言われてるよう。まるで暁照夫の三味線ではないか。「なんでこんなにうまいんやろうかわたし~」
 こんな感じなのでショッキングなスリラー映画のはずがどうしても笑いが起きてしまう。マカヴォイが一生懸命になんでこんなに上手いんやろか演技をするほど笑えてくる!あまりに怖すぎて笑いが起きてしまうというのではなく、意図的に笑わせようとしてるな、これ。だって地下鉄でのビースト誕生シーン、完全にギャグだよ

 笑撃的な映画ではあるが、ラストでは本当に衝撃的な展開が待っていて、ここだけは本気で驚いた。そういうことだったのね!と納得のオチ。詳しくは書けないがシャマランの過去作に関係しているとだけはいっておく。


  


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2017年05月17日

鷲は舞い降りた『イーグル・ジャンプ』



 イギリス史上初のスキージャンプオリンピック代表選手となったエディ・エドワーズの「実話に基づく物語」、『イーグル・ジャンプ』を観た。

 エディは幼少の頃から足を悪くしてギブスで固定しなければ歩くこともできない。外に気軽に出ていくことができない息子のために両親は本を買い与えた。そのうちの一冊、五輪大会での選手の活躍を記録した写真集『栄光の瞬間』を観たエディは五輪選手に憧れるようになる。
 大人になったエディ(タロン・エガートン)はノルディックスキーの選手として代表候補になるが、「素人並み」の成績でギリギリの位置にいる上に近眼というハンデを背負っているエディを嫌ってBOA(イギリスオリンピック委員会)の委員長ターゲット(ティム・マッキナリー)は彼を代表候補から外してしまう。
 「とっとと諦めて俺の仕事を手伝え」という左官工の父親にどやされるも五輪への夢を諦めきれないエディはテレビでたまたま観たスキージャンプ競技に目を奪われる。BOAに問い合わせると「イギリスにスキージャンプの選手はいない」と。なら競技を始めた瞬間に代表になれるぞ!エディは父親の車を拝借して強化合宿の行われるドイツへ旅立つ。

 この時点でエディはジャンプ台から飛んだこともないという、まさにド素人。「俺たちは6歳の頃から飛んでいるんだ」という優勝候補のノルウェーチームからはバカにされてしまう。エディは周囲の冷たい視線にもめげず練習を始める。一番小さい15メートルのジャンプ台を一発クリアしたエディは40メートルに挑むが着地すらできない。そこに現れたのはスキー場の整備係の男、ブロンソン・ピアリーだった。元アメリカの代表選手だったピアリーの指導のもと、エディは五輪出場を目指す。

 『X-MEN』シリーズのウルヴァリン役でお馴染みのヒュー・ジャックマンが演じるピアリーは実際にエディを指導したチャック・ベルホーンを元にしたキャラクターだ。ベルホーンはレイクプラシッドのスキーコーチだが、この映画では「元五輪代表選手」という設定。実力はありながら酒と女にだらしなく、コーチのシャープ(クリストファー・ウォーケン)によって代表資格を剥奪され、スキージャンプ界を追われたピアリーはエディのコーチとして再起を図ろうとする。話の筋立ては日本でもヒットしたジャマイカのボブスレーチームが五輪出場を目指す『クール・ランニング』とほぼ同じ。しかも『イーグル・ジャンプ』で描かれるのは『クール・ランニング』と同じ88年カルガリー冬季五輪なのだ。
 ピアリーが素人のエディに「スキージャンプってのは男女のベッドのように人生最高の瞬間を思い浮かべろ!」と指導するのがおかしい。また女たらしのイメージが似合う(褒め言葉)ヒュー・ジャックマンがやっているのがより似合うではないか。エディが「好きな女優はボー・デレクだ」というと「ボー・デレクとの最高の瞬間を思い浮かべろ!」ボー・デレクはモデル出身の女優で『類人猿ターザン』でゴールデンラズベリー賞を受賞した後は同賞をトータル三度も獲得した「80年代を代表する最低女優」なんだけど、モデルだけあってルックスは最高だから「最高の瞬間」を思い浮かべるにはピッタリ!

「ボー・デレク!」と叫びながらジャンプするエディはBOAの執拗な横槍をはねのけてカルガリー五輪への出場資格を得る。しかし出場選手中最低の61メートルをやっとの思いで飛んでいるのを見てピアリーは「あと4年じっくりと鍛えれば次の五輪で優勝候補になれる。今出ても笑いものになるだけだ」と出場を止めさせようとする。「優勝するために出るんじゃない。“栄光の瞬間”は今なんだ!」エディは彼と訣別する。

 70メートル級ジャンプに出場したエディは見事着地に成功し、両手を伸ばして翼のようにひらひらさせるポーズを見たマスコミは「イーグル・ジ・エディ」と呼んで持て囃す。最低の記録だというのに浮かれているエディに「お前は笑われているだけなんだぞ」と電話するピアリー。エディは笑われているだけではないことを証明するために飛んだこともない90メートル級への出場を宣言するのだった。

 エディの活躍は「勝つことではなく、参加することに意義がある」とする近代五輪の思想を象徴するもので勝利至上主義と金儲けに陥っているBOAの方針と真っ向から対立するため(「君は素人なみの記録しかない。それじゃスポンサーは納得しない」という委員長に「五輪はアマチュアの大会じゃないのか?」とエディがやり込めるシーンが象徴的)、エディは様々な嫌がらせを受け続ける。何しろエディが帰国し、国民が熱狂的に出迎えてもBOAの委員長は苦虫を噛み潰しているのだから…
 観客や世間の人々から愛されたエディは五輪を勝利至上主義と金儲けの場と捉えているような種類の人々から徹底的に嫌われ、出場資格のハードルを上げて彼を徹底的に五輪から締め出した。カルガリー冬季五輪はエディにとって最初で最後の五輪になった。

 90メートルジャンプに挑む際、エディはエレベーター内でフィンランド代表の金メダル候補“鳥人”ニッカネンから「勝ち負けなんかどうでもいい。俺たちは魂を解き放つために飛ぶ。世界中の前でベストを出せなきゃ俺たちの魂が死ぬ」カルガリーで金メダルを2つ取った男は最低の記録を出したエディとまったく同じ類の人間だったというクライマックスも感動的だ。日本ではヒットが望めないと思われたのかDVDスルーにされてしまった。『X-MEN』のヒュー・ジャックマン出演に、『キック・アス』『キングスマン』のマシュー・ヴォーン製作、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』の四人組のひとりを演じたデクスター・フレッチャー監督だぞ!?ヒットするかどうかわからないとかどうとか、参加することに意義があるんじゃないんですか!?


  


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2017年05月15日

96年のミニシアター

 20年ぶりに続編が公開されて話題の『トレインスポッティング』。20年前の96年という年はいわゆる単館系、ミニシアターブームの始まりだった。ミニシアターのムーブメント自体は88年の『ニュー・シネマ・パラダイス』に始まり、93年公開の『レザボア・ドッグス』、95年公開の『恋する惑星』というヒット作を経て「次のミニシアター系ブームは何か?」という状態であったことを考慮しても96年のミニシアター系映画のラインナップは凄まじかった

 若きレオナルド・ディカプリオが主演した『バスケットボール・ダイアリーズ』はドラッグにハマり、立ち直ろうとしてコーチにケツ犯されるディカプリオの姿に腐女子(当時はそんな言葉なかったから、ホモ好き女子とでもいうべきか)がワーキャー言ってましたな。『タイタニック』以前に目端の利く女子たちはミニシアターでレオ様に夢中になっていたのです。
 ラリー・クラーク、ハーモニー・コリンのコンビ作『KIDS/キッズ』ではニューヨークのストリートキッズたちの乱れた性の様子が(あえて)カッコよく描かれた。処女狩りが趣味のヤリチンに処女を奪われた上にエイズに感染させられた少女ジェニー(演じるは20代前半のクロエ・セヴィニー!)はヤリチンに事情を説明しようとするが、一箇所にとどまらないヤリチンはどこにいるのかわからない。映画のラストでようやく居場所を見つけるもヤッてる最中なので終わるまで待とうとしている間に寝てしまい、寝ている間にヤリチンの相棒君にパンツ下ろされてしまう。目が覚めた後で相棒君がビックリするというオチはまるで笑えなかった!その内容は当時アメリカ中で大騒動を巻き起こしたという。
 『恋する惑星』で一躍その名を知られたウォン・カーウァイの『天使の涙』『楽園の瑕』は日本で同じ96年に封切られたが『楽園の瑕』の理解不能な内容に『天使の涙』のちっとも可憐じゃなかったカレン・モクといい、作品としてはイマイチなものの、カーウァイブームの中、女性客が劇場に溢れかえっていた。

 ミニシアターには若い観客もいるが、年配の固定客も必ず居るもの。『午後の遺言状』(95)上映時にはそのような年配のお客さんが多く駆けつけたという。96年にもそういう人たちに支えられた『イル・ポスティーノ』という作品があり、長らくイタリア映画といえば『ニュー・シネマ・パラダイス』と『イル・ポスティーノ』と言われていたもの(その後『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)にとって変わられるけれど)。もう一度見直そうと思って近所のレンタル屋にいったらどこにも『イル・ポスティーノ』が置いてなくて以前はどのレンタル屋にも置いてあったのに、あのブームは遠い昔のことになってしまった。



 一方日本でも北野武の『キッズ・リターン』や岩井俊二の『スワロウテイル』といったその後の日本映画を代表する監督の代表作が生み出されていた。そして『ロスト・チルドレン』『ケロッグ博士』(当時のキネ旬ベスト10で淀川長治先生がベスト1にただひとり選んでいた)といった珍作も。『ケロッグ博士』はコーンフレークのケロッグ社の創始者のひとりであった博士が提唱した独自の健康法を『ミッドナイト・エクスプレス』のアラン・パーカーがブラックに描いたコメディで、当時のみうらじゅんさんがシスコーンからケロッグ派に鞍替えをしたことでもお馴染みの映画。ケロッグ博士役は狂気の博士役を演じさせたら世界一のアンソニー・ホプキンス!DVDがとっくに廃盤なのが惜しまれる。


 みうらじゅんで思い出したけど、この年には水野晴郎先生の『シベリア超特急』も公開されており、同じくミステリー映画としてこの年の話題をさらった『ユージュアル・サスペクツ』に負けず劣らずのふたつのどんでん返しは目端の利く映画ファンの話題を今に至るまでさらいつづけているのだった!
 トレスポとシベ超が同じ年に公開されているってのは奇妙なリンクを感じさせる。日英で同じ鉄道映画(?)が話題になっていたのだから。どちらにも本当の鉄道は出てきませんが…



 こう考えると1996年というのはミニシアター系どころか映画ファンにとっても有意義な時代だった気がします。20年前にレントンのようなボンクラ野郎だった僕はこれらの映画をミニシアターで見ていて、20年経った今でも同じようなボンクラのための映画を追い続けているのです。

  


Posted by 縛りやトーマス at 23:10Comments(0)映画トンデモ映画

2017年05月12日

効率の悪い戦い『グレートウォール』



 黒色火薬を求めてシルクロードを越えてきた英国人の傭兵、ウィリアム(マット・デイモン)とトバール(ペドロ・パスカル)たちは旅の途中、夜営地で謎の怪物に襲われ、その腕を切り落とす。馬賊の追撃を振り切り目的地の万里の長城までたどり着くが長城を警護する禁軍に捕まってしまう。折しも禁軍は60年に一度人間を襲う怪物、饕餮と戦っている最中であった。


 北方部族の襲撃に備えるために作られたとされる万里の長城が実は怪物の襲撃から国を守るためだった!というアホらしい設定の映画なんですが、長城を守る禁軍の戦いはさらにアレな具合。鶴軍という美女だけの部隊がいて、彼女たちが体につないだロープで城壁の上から真っ逆さまに落下、その勢いで怪物の両肩についている目を突いてやっつけ、下までいったところでロープを引っ張ってまた上に戻って新しい武器を手にして落下…というバンジージャンプ部隊。しかし落下の最中は無防備なんであっさり怪物にくわれてしまう。ほとんど死んでしまうので効率悪すぎでしょ!さらに後半では長城が破られて怪物が首都に向かっている、ということになって地面を歩いていっても間に合わないから空を飛んでいこう、と天灯という熱気球を使うが未完成品だったので半数以上が燃えて墜落する(笑)。こんな効率の悪い戦いを繰り広げていて、よく60年前に滅びなかったもんだ。饕餮という怪物は親玉の女王饕餮がいて、こいつを火薬でふっとばすと全滅するという決着で、適当すぎるだろ。なぜか外国人のマット・デイモンが中国を救うというデタラメにも程がある展開には苦笑するしかない。『紅夢』の頃は巨匠扱いだったチャン・イーモウもこの体たらく。
 それでも鶴軍のリン隊長を演じたジン・ティエンの美しさには惚れ惚れする。彼女は同じレジェンダリー・ピクチャーズの『キングコング:髑髏島の巨神』にも出ていたのでひょっとしたらこの作品もモンスター・バースのシリーズに含まれているのかも知れない。いっそ「モンスターバースの一環です」とでも宣伝しておけばもっとヒットしたはずなのに。鶴軍だけのスピンオフをつくるとかアイデアはあっただろうに。効率の悪さは映画の中だけにしときなさい。


  


Posted by 縛りやトーマス at 23:30Comments(0)映画

2017年05月11日

みんなねこだいすき『キアヌ』



 全米で大人気のスタンダップコメディアンのキーガン=マイケル・キーとジョーダン・ピールのコンビ(スタンダップコメディアンのコンビって珍しいな)による抱腹絶倒の猫コメディ映画。二人は日本じゃまったく知られていないので未公開のDVDスルーにされてしまったが腹抱えて笑える一本です。

 レル(ジョーダン・ピール)は彼女にフラレて以降、生きる気力を失ってる。従兄弟で妻帯者のクラレンス(キーガン=マイケル・キー)はそんなレルを励まそうと彼の家に向かうが、レルは家に迷い込んだ野良猫をかわいがってキアヌと名付け、映画のパロディカレンダーを作ったりするようになるまで回復していた。


何つくってんだw

 ところが、二人で映画を観に行った帰りにキアヌはこつ然と姿を消していた!半狂乱になるレルはとそれをなだめるクラレンス。二人は隣に住むマリファナの売人からキアヌは誘拐されたことを突き止め、街を仕切ってるギャングのアジトであるストリップバーに乗り込むことに。悪の世界とはまったく無縁な映画オタクのレルとクラレンスは黒人なのに「ファック」も口に出来ないような家庭人。そんな二人はなぜか裏の世界で恐れられている殺し屋コンビ、アレンタウン兄弟と間違われてしまうのだった。
 どこをどう見てもとっぽい二人は極悪な殺し屋にはどうしても見えないのだが、「殺し屋の証明」として壁を蹴って一回転するテクニックを見せたり(それができたからって殺し屋ってことにならないだろうに)、クラレンスがカーステレオでジョージ・マイケルの曲を聴いているとチンピラたちから「ナニコレ?」と言われたため、クラレンスはジョージ・マイケルの素晴らしさを熱心に説くことに。

クラレンス「ジョージはワム!ってコンビを組んでたんだが、ダチのアンドリュー・リッジリーと不仲になって彼と分かれた。以降はリッジリーの存在は消えちまったんだ」
チンピラA「消えた…殺っちまったってことか!」
クラレンス「そ、そう…なるかな…」
チンピラB「すげー!」

とバカ会話が繰り広げられる間にコメディ映画にしてはエグすぎるバイオレンスシーンが挿入されるので気が抜けない。
 この映画、いろんな悪が登場するんだけど、なぜか全員猫好き。特に理由もなく!「猫ちゃんかわいいね~おいでおいで~」とか強面の連中が猫なで声出してるの。人は猫を前にするとなぜ幼児化してしまうのか。かわいいんだからしょうがないじゃない!
 タイトルの『キアヌ』ってのはもちろんキアヌ・リーブスのことで制作サイドが一度オファーをしたがエージェントから断られるも予告編を見たキアヌが電話をかけてきて、クラレンスがマリファナでトリップしてる時に聞く猫の声として出演(笑)
 可愛い猫とバイオレンスがサンドイッチされた前代未聞(?)のコメディ、みんなねこだいすき。

  


Posted by 縛りやトーマス at 00:03Comments(0)映画

2017年05月10日

アイドルとファンの理想的なwin-win関係『堕ちる』



 岐阜県・桐生市で行われている『きりゅう映画祭』にて話題になった短編映画『堕ちる』は無口な織物職人の男が地下アイドルに本気で恋する様子が描かれた映画だ。その後、イベント上映のような形のみで各地を回っていたためなかなか見ることが出来ない作品として知られていたがこの度商業作品として映画館での上映が決定。俺も噂だけは聞いて期待しており、この度ようやく見ることが出来た。


 無口な織物職人の耕平(中村まこと)は仕事以外は何の趣味も興味もない男だが、行きつけの散髪屋の店長から「うちの娘がアイドルやってるんで、よかったら観に行ってくださいよ」とライブチケットを渡される。
 会場のライブハウス(これが文字通りの地下にあって笑える)に訪れた耕平はカウンターでチケットを渡すも「ドリンク代500円です」と言われ「えっ」となる。ライブハウスは飲食店として登録しているから、ドリンク代を取られるのは当たり前なんだけど、そんなこと知らない耕平の戸惑う様子に思わず「あるある」と頷いてしまう。
 そんな耕平は会場でアイドルオタクから「何曲目の時に振ってください!」といきなりサイリウムを渡されたり、「あなた、新規?」と馴れ馴れしく声をかけられたりして戸惑うばかり。ずっと前からいる古参ヲタと新規(初心者)のあるある感にニヤニヤしてしまう。そんな耕平は当然のごとく会場で地蔵(どうしていいのかわからず呆然と立ち尽くす人)と化す耕平はステージに立った散髪屋の娘であるアイドル、めめたんに心を奪われてしまう。

 それからというもの耕平は寝ても覚めてもめめたんのことが頭から離れない。会場で渡されたCD『Wonder land』(ハロプロ初期を匂わせる名曲)を一日中聴きまくり、部屋にはめめたんのポスターを貼りまくり、グッズである黄色一色のめめたんTシャツをアンダーウェア代わりにして仕事をする(!)。傍目には娘であってもおかしくない年齢の少女に夢中になる「どうかしてる」おっさんなのだが、他人事とは思えません!(この作品は他人事とは思えないかどうかで評価が変わります!)
 耕平はメジャーへの道を夢見るめめたんのために「なんとかしてあげたい」と思うようになり、そうだ、俺の織物職人の腕を奮って彼女のステージ衣装を作ろう!と決心する。職場の人間に変な目で見られながら織り上げた衣装をめめたんの生誕イベで披露する瞬間、耕平の人生は絶頂を迎える。そして後は堕ちていくのだった。
 めめたんはメジャーデビューが決まり上京することに。すると散髪屋の店長を通じてステージ衣装が送り返されてくる!追い打ちをかけるように耕平は織物工場をリストラされ、気がつけば何もないただのおっさんになった耕平は激しく慟哭する。


「め゛め゛だぁ~ん…!」


 地下アイドルの現場に集うオタクがほとんど40代以上で彼らが喫茶店に集まって「今後のめめたんをどう推していくか」を語る集い(全員めめたんシャツ)だとか彼らの異常なまでの馴れ馴れしさといった「あるある感」があまりにリアルだし、めめたんを演じている錦織めぐみはLuce Twinkle Wink☆というグループのメンバーで実際の地下アイドル!彼女の本当に何処かにいそうな地下アイドル感(本当にいるんだけど)など、各所のリアルさが妙な生々しさを産んでいてどこを切り取っても他人事とは思えないのだった。
 衝撃的なクライマックスとラストシーンだが、理想的なアイドルとファンのwin-winの関係が描かれていて鑑賞後はスカッとした爽やかさを覚えたね。「理想的なアイドルとファンのwin-winの関係」とは何か?アイドルは夢がかなって、ファンはそれを応援できるっていうのが理想的な関係でしょう。この間やっていたフジテレビの『ザ・ノンフィクション』の『その後の中年純情物語』では売れない地下アイドルの小泉りりあことりあちゃんとそのファンの中年男性、きよちゃんの二年後の顛末が描かれており、りあちゃんは未だに売れない地下アイドルとして模索の日々を送り、きよちゃんは頼まれてもいないのに薄暗い部屋で彼女のためのグッズを作っている(『パーフェクト・ブルー』じゃないんだから)という、どう考えても最悪の展開としか!前回はきよちゃんの純情ぶりに涙したが、今回は堕ちるとこまで堕ちきった感があり、これ以上見ていられない。

 『堕ちる』はたとえ堕ちるとこまで堕ちても幸せそうで夢のようなハッピーエンドであり、多くの「もう、後戻りできない」アイドルファンは涙してほしい。


  


Posted by 縛りやトーマス at 04:27Comments(0)映画

2017年04月30日

まさかの「リア充じゃない」恋愛モノ『ReLIFE』



 27歳の海崎新太(中川大志)は現在休職中のニート。前職をわずか三ヶ月で辞めてしまった上にそのことを聞かれるとしどろもどろになってしまうため、面接は連戦連敗。友人たちに仕事を続けていると偽って飲み会にいくのも限界。そんな新太の前に現れた男、夜明了(千葉雄大)は「一年間、高校生活をやり直しませんか?」と持ちかける。夜明は社会からドロップアウトした人間を社会復帰させる「リライフ研究所」の職員だった。

 ViViの「国宝級イケメンランキング2016」の一位になった(!)中川大志が27歳のニートに大胆に変身を遂げた(実際は18歳)『ReLIFE』は研究所が独自に開発した薬で10歳若返った中川大志がもう一度高校生活をやり直して社会復帰を目指す物語。海外小説の『リプレイ』みたいに人生やり直しネタはもともと突拍子もないアイデアなんだけど、それを突き詰めるとこうなっちゃうのな。
 新太は17歳に戻って一年間だけ高校3年生を再度体験する。リライフの被験者ということは絶対にバレてはいけない。バレると実験は即中止。「一年間の生活費免除、実験終了後の再就職先を紹介」という美味しい条件はナシになってしまう。でもクラスメイトたちに17歳の新太の記憶は残ってしまうんだけど、どうするの?と思ったら「彼らの記憶から新太さんの部分だけ消しますから」ってどうやって!?都合のいい話だな!

 新太はいっそ誰の記憶にも残らないように…と空気になって一年間をやり過ごそうとするが、初日にクラスメイトの日代千鶴(平祐奈)の席と間違えて座ってしまったり、カバンにタバコを入れたままにしていて担任(夏菜)に説教されるわトラブルまみれの新高校生活。クラスには監視及びアドバイス役として夜明がついてくるが不安だらけ。
 空気として過ごそうとしていた新太だが、他人とまったくコミュニケーションが取れない千鶴の様子を見ていて捨て置けなくなり(もともと世話焼きの性格だったのだ)「もっと自然な笑顔をつくるんだ」とアドバイス。それがきっかけで千鶴と学年トップを争うライバル、狩生(池田エライザ)や狩生への恋心にまったく気づかない大神(高杉真宙)らの相談に乗ったりしているうちに新太には「友達」ができてゆく。そして千鶴がかけがえのない存在になっていくのだが、卒業すれば千鶴の記憶から自分のことは消えてしまうのだから、告白なんて意味がないと怖気づく。でもこの思いは止められない!
 新太は千鶴に告白するのだが、帰ってきた答えは「ごめん無理」だった。こんなセリフ、『一週間フレンズ。』でも聞いたような…なぜ無理なのか?千鶴も人には言えない秘密を抱えていたのだった…ってこんなもん誰でもわかるわ!!(あえて書かないけど)

 新太がニートになった理由は辛すぎるし、千鶴のコミュニケーション障害な理由は同じコミュ障として泣かずにいられない。恋愛モノなのに、話の軸になる主役二人がちっともリア充じゃないという設定はなかなかいいところを突いている。コミュ障にだって恋愛する権利ぐらいあるだろうが!!実際のところは人生一年やり直したぐらいじゃ問題は解決しないと思うけど…少しは夢、見させてくれよぉ!俺も一年、いやせめて3年やり直させてくれれば…うちには護星天使・アラタは来ないのかよ!!

 原作が完結していないため、映画のラストはオリジナル。完成した時はスタッフ一同これ以上ない完璧なオチだと思ったはずだけど、今となってはやっちゃったって感じだよな…公開時期が悪かったね…


  


Posted by 縛りやトーマス at 21:36Comments(0)映画特撮・ヒーロー

2017年04月29日

20年後の悲惨な未来『T2 トレインスポッティング』



 20年前の1996年といえば単館公開映画全盛の年でラインナップをあげるだけでもゾクゾクする。『ユージュアル・サスペクツ』『イル・ポスティーノ』『デッドマン・ウォーキング』『天使の涙』『スワロウテイル』『キッズ・リターン』そして『シベリア超特急』(笑)その中でも『トレインスポッティング』は別格であり、特別であった。当時、職なし金なし彼女もなしのどん底人生(あれ?今とあんまり変わってないな)だった俺はスコットランド・エディンバラで職、金、希望、何もないがドラッグだけはあるというジャンキーたちが「人生を選べ、未来を選べ」と無限の選択肢があるように嘯きヘロインを決めている様子を見て、ドラッグはアネトン咳止めシロップぐらいしか決めたことないくせに、ビョーキ野郎になった気分でいた。そんな映画の20年ぶりの続編は物語も登場人物もそして観客の俺もきっちり20年過ぎていた。

 本作は映画『トレインスポッティング』の続編であり、原作者アーヴィン・ウェルシュの『トレインスポッティング ポルノ』(原作本『トレインスポッティング』の続編)をベースにしている。だがこの本は「原作の続編」ではなく「映画の続編」だ。映画『トレインスポッティング』のラスト、コカインを売って大儲けした金を持ち逃げしたレントン(ユアン・マクレガー)は気のいい友人のスパッド(ユエン・ブレムナー)にだけは分前をコインロッカーに残した。原作では単にスパッドのことを気にかけただけで金は渡さなかったのだが、映画を見てラストの改変を気に入ったウェルシュが映画のオチを公式に採用して書かれたのが『トレインスポッティング ポルノ』だ。『T2 トレインスポッティング』は原作本『~ポルノ』、映画のオチを採用した続編(ややこしい)。

 レントンはオランダ・アムステルダムで持ち逃げした金を元に事業をしていたが、会社は潰れ、妻に追い出され、健康面にも不安が残る。20年ぶりに実家に帰ってくるが母親は他界、老いた父は母親の願いでレントンの部屋をそのままにしておいていた。何も変わっていない部屋でレコードに針を落とす(イギー・ポップの『Lust for Life』!)が変わり果てた自分にぞっとして針を戻す。
 自分が裏切ったかつての友人たちも変わり果てていた。シック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)は叔母から譲り受けたパブの経営者になっていたが、新しい恋人ベロニカ(アンジェラ・ネディヤコバ)をつかって強請りに精を出す日々。スパッドは恋人のゲイル(シャーリー・ヘンダーソン)と結婚し、息子も産まれていたがサマータイムの導入が理解できず(マヌケすぎ!)遅刻つづきで仕事を首に。自暴自棄になった彼はまたドラッグ漬けになって自殺未遂を起こす。アル中の暴れん坊ベグビー(ロバート・カーライル)は殺人の罪で服役中だが、保釈が下りなかったことから脱獄。息子を誘ってコソドロを始めるが大学にいってホテルの経営を学んでいる息子は「オヤジの仕事には興味がもてない」と反発。大学だの、ホテル経営だの、ベグビーには当然理解できない。

 20年前はノーフューチャー!とばかりに好き放題に青春を謳歌し、それでもいくらでも選択肢はある、人生を選べる!といっていた連中を待っていた未来がコレ?金も仕事も女もない、あるのはドラッグとちっぽけな友情だけだった…あまりに悲惨すぎる20年後に涙するしかない。役者もみーんな年取って髪の毛は薄くなって禿げ上がり、少し走るだけで息が上がる。前作の象徴的な万引きの追っ手から逃げる疾走パートはもう再現できない!ドラッグなんて遊び程度にやって、きちんと就職のための勉強をしていたレントンの女友達、ダイアン(ケリー・マクドナルド)が弁護士になってバリバリ働いていて、しょぼくれたレントンに愛想尽かすところとかもう見ていられない。一体どうしてこうなっちまったんだ!俺たちの20年間はなんだったんだ!?
 やがてレントンは怒り狂うベグビーと再会する。20年ぶりのツケを精算しなくてはならないから。クライマックスもやはり原作とは違う結末が待っている。

 20年後に、同じ役者とスタッフで続編がつくられた意味のある内容だ。最近は80年代の映画ですらノスタルジーだといってリブートされる時代だが、大抵は単なるビジネス以上の理由がなかったりする。『T2 トレインスポッティング』は他のどの映画とも違う、20年後だからこそつくられた意味のある続編だ。俺たちは20年後の今も人生を、未来を選ぶ。どんなに悲惨でも。


これがラストにかかって一作目とつながってエンドロール

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:36Comments(0)映画

2017年04月26日

コレジャナイ『ゴースト・イン・ザ・シェル』



 ネットに脳から直接アクセスする「電脳化」そして「義体化」と呼ばれるサイボーグ技術の発達により高度な進化を遂げた近未来。人間と機械の境目が曖昧になった時代では「果たして自分は人間なのか?機械に『お前は人間だ』という夢を見させられているだけではないのか?」という問題が起こった。人は機械と区別するために自我や意識を指す「ゴースト」という概念を用いるようになった。
 士郎正宗の原作漫画を劇場用アニメにした『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は日本での興行成績はイマイチだったが、アメリカのビルボード週間売り上げで一位を記録したことなどでカッコイイ日本のアニメ、「ジャパニメーション」という言葉が広く知られるきっかけにもなった。

 現実と夢の境目が曖昧になるテーマに取り憑かれている押井守はさすが原作のテーマを理解していたが、今回製作されたハリウッド実写版では押井守による劇場アニメ版の「人形使い」といったキャラクターやテーマは大衆には難しすぎると判断したのか、主人公の少佐(スカーレット・ヨハンソン)が所属する公安9課は単にサイバーテロ犯罪と戦う正義の部隊のような表現をされてしまっている(実際は表に出すことができない汚れ仕事を請け負う組織)。
 少佐は過去に事故にあって両親を亡くし、全身義体化することで生き延びたという設定にされ、原作や押井のアニメではその正体は定かではない(神山健治による連続アニメ版では過去が語られる)のだが、ハリウッド版では安っぽい正体や過去が設定され、興ざめ。
 『ブレードランナー』を背伸びさせたような未来都市のビジュアルはちっとも魅力的でなく、公安9課の課長・荒巻にキャスティングされたビートたけしは全員が英語を話している中、堂々と日本語を話す。スタッフは「電脳化の発達によって違う言語でも瞬時に脳内で変換される」といった苦しい言い訳をしている。『攻殻機動隊』の下敷きになった『ブレードランナー』では人種、言語の違う人間が混在しており、シティ・スピークといった独自の言語も登場していたことに比べても進化どころか退化してるじゃないか。
 ビートたけしは日本のマンガ、アニメ作品が実写化された際「実写版というのは必ず、コミックやアニメに負けてファンから『こうじゃない』と文句を言われるのが定説」として本作を「初めて成功した実写化」と胸を張るが、この『ゴースト・イン・ザ・シェル』が明らかに定説ですよ!いつものわけのわからない日本描写もあるしね。墓石にでっかく『命』って彫ってあるのを見た時は腰が砕けた。たけし怒れよ!「ファッキンジャップぐらいわかるよバカヤロー!」って引き金を引いいてほしかった。僕らが見たかった攻殻はコレジャナイ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 11:19Comments(0)映画漫画

2017年04月18日

地上最強のオレとやれ!『キングコング:髑髏島の巨神』



 『キング・コング』(33)はあらゆる特撮映画の古典である(元祖は25年の『ロスト・ワールド』)。公開当時これを見た円谷英二が特撮の世界に足を踏み入れることになる。『キング・コング』がなければゴジラもウルトラマンもなかったのだ。そんな『キング・コング』は何度となくリメイクされた。76年と2005年だ。ディノ・デ・ラウレンティスとピーター・ジャクソンのリメイクはそれぞれ33年の古典をなぞって「未開の孤島に住むコングが捕らえられ、見世物にされるためNYに連れてこられるが、鎖を引きちぎって街で大暴れ、エンパイアステートビルの屋上から落下して死ぬ」という展開の物語だ。ところが今回のリメイクは初めてこの基本設定から離れて物語が進む。


 1973年、アメリカ政府はベトナムからの撤退を決める。長かった戦争から解放されると派兵された軍人の多くは安堵するが、パッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)は去りがたいものを抱えて撤退する部隊を見つめる。そんなパッカードに特務研究機関モナークの研究員、ランダ(ジョン・グッドマン)がある孤島に地質調査に向かうため同行して欲しいと依頼。ランダは元英国特殊空挺部隊のコンラッド(トム・ヒドルストン)を島の案内役として雇い、戦場カメラマンのウィーバー(ブリー・ラーソン)らも調査隊に同行することになる。
 パッカードの指揮するヘリ部隊とともに調査隊は髑髏島に到着、地質調査のためにヘリ部隊は島に爆弾を落とす。まるで『地獄の黙示録』みたい!BGMはさすがに『ワルキューレの騎行』じゃなかったけど。そこに現れたのは巨大な大猿、キングコングであった。ジャクソン版ではコングが出るまで1時間もかかっていたが、本作では30分もしないうちにコングが現れて大暴れ!その上今回のコングは何しろデカイ!初代の6~10メートルを超える31メートル強だ。コングはヘリ部隊を全滅させ調査隊はバラバラになる。
 生き残った人間たちは島を脱出する予定の合流地点を目指して進むが島に潜む巨大な怪物たち(巨大蜘蛛とか)に襲われる。コンラッド率いる調査隊たちは島の原住民が住む村にやってくる。ますます『地獄の黙示録』になってきたなあ…そこにはなぜかアメリカ人のマーロウ(ジョン・C・ライリー)が居た。マーロウは第二次大戦中に日本人パイロットのグンペイ(MIYABI)と激しい交戦の末、島に不時着。以来島からの脱出を目指して村に定着したという。
 マーロウから「コングは島の守り神で、殺してはいけない」と教えられたコンラッドたちは戦闘機を改造したグレイ・フォックス号で川を進んで合流地点を目指す。やっぱり『地獄の黙示録』だった!
 途中ではぐれていたパッカードらと合流したコンラッドらは島からの脱出を主張するが、パッカードは生存不明の部下、チャップマンの救出を優先すると言われ島の西へ向かう。西の山中でもっとも凶暴な化物、スカル・クローラーに襲われ、クローラーの吐き出した汚物からチャップマンの認識票がからまった頭蓋骨を見つける。コンラッドらは再度脱出しようというが、部下の復讐に燃えるパッカードはコングを抹殺しようという。「これは俺の戦争だ!」

 サミュエル・L・ジャクソンがいつものサミュエル・L・ジャクソンになって爆弾をかき集め、燃え盛るジャングルをバックに人対猿の対決だ!ジャクソンの決め台詞「このファック野郎!」とつぶやこうとした途端に死んでしまうってものすごいギャグだな!

 ベトナム戦争をテーマに怪物と怪物の新たな戦争を描いた『キングコング: 髑髏島の巨神』は最初から最後までクライマックスであり、多くの怪獣ファンが見たかった怪獣大決戦の映画である。本作はこの後『GODZILLA』(14)の続編『Godzilla: King of Monsters』(2019年)で勝ち残った怪獣とコングが対決する『Godzilla vs. Kong』(2020年)で完結するレジェンダリー・ピクチャーズのモンスターバースシリーズの一本。ということは来るべき対決に向けて「ヲイ、コング!宇宙怪獣なんかとチマチマやってねえで地上最強のオレとやれ!」っていうアピールなんだな!残念ながらコングのマイクアピールはなかったけれど…この挑戦状を受けて『Godzilla: King of Monsters』(2019年)でゴジラがどのような最強ぶりを見せてくれるのか乞うご期待!


  


Posted by 縛りやトーマス at 00:10Comments(0)映画特撮・ヒーロー

2017年04月15日

これぞ真のバットマン映画だ『レゴバットマン ザ・ムービー』



 レゴブロックをストップモーション・アニメのように動かしたCGアニメ『LEGO ムービー』(14)に次ぐLEGOアニメ映画第二弾。前作にも登場したバットマンをメインの世界観にしている。
 バットマンは言うまでもなくゴッサム・シティを守るヒーローであるが、自宅である大豪邸に帰れば伊勢海老をチンして食べながらトム・クルーズの『ザ・エージェント』を巨大ホームシアターで眺めるだけの孤独な中年にすぎない。執事のアルフレッドにも「いつまでこんな生活続けてるんですか?」と突っ込まれる始末。だがバットマンは動じない。だってバットマンは「孤独の男」だから!

 そんなバットマンのライバルを自称するジョーカーだが、テレビインタビューであなたにとってのライバルは誰か?と聞かれて「そうだな…スーパーマンかな?」と答えてるバットマンにショックを受ける。「僕が最大のライバルじゃないのか?」やけっぱちになってゴッサム・シティを破壊。駆けつけたバットマンに「やっぱり僕が最大のライバルだろ?」と問い詰めるも「いや…ライバルとかじゃなくて、倒すためだけにいる敵のひとりでしかないし」と返されて大ショック!ぶち切れたジョーカーはキャットウーマン、リドラー、ペンギン、トゥー・フェイスにポイズン・アイビーそしてミスター・フリーズといったバットマン世界のヴィランたちを結集、彼らを連れて自首を宣言する。
 刑務所でぬくぬくと過ごすジョーカーたちをしつこく監視するバットマンだが、おかしな様子はなく、やることがなくなったバットマンを世間は冷たく見放し、警察も共同で悪を捉えよう宣言。ますますやることがないバットマンは家にこもってトム・クルーズの映画を…

 バットマンは自ら孤独を選んだのではなく、誰からも相手にされてないだけだったのだ!途中でスーパーマンの家に行くんだけど、そこで行われているのはジャスティスリーグ結成57年記念パーティ。飲めや歌えやの騒ぎにバットマンは呼ばれていなかった!気まずい空気が流れる中、前回(LEGOムービー)も空気の読めない発言で周囲を凍りつかせていたグリーンランタンが「まあ、メールとかたまに届かないことあるからね!」とまたまた余計なことをいうのであった。本当にこいつは(笑)
 ジョーカーを信用していないバットマンは悪党を異次元に閉じ込める極悪ゾーンにジョーカーを強引に放り込む。しかしすべてはジョーカーの策略だった!極悪ゾーンにいるいろんな映画の悪役たちを解放、一気にゴッサム・シティを手中に収めようとする。その悪役たちがキング・コング、ヴォルデモート卿(ハリー・ポッター)、サウロンの目(ロード・オブ・ザ・リング)、エージェント・スミス(マトリックス)…この辺はワーナー・ブラザーズ映画だからいいけど、ジュラシック・パークのティラノとかミイラ男にドラキュラ、グレムリンてユニバーサル映画だろ!『アルゴ探検隊』の骸骨剣士もコロムビア映画だし…権利的にどうなってんの?

 こんな感じでモンスターバースを超えるムービーバースとなった敵をたったひとりで倒すことなどもうできない。バットマンはあれほど嫌っていた仲間をつくり、ともに立ち向かうしかないのだ…

 「バットマンは孤独で寂しいコスプレ中年」というバットマンの本質をグサリと突いた本作はLEGOのアニメという形だからこそ実現できたともいえるが、最初の頃のテレビドラマのバットマンはキャンプ(悪趣味)というジャンルで、そりゃあ普通に考えたらマヌケなマントにパンツ穿いて「俺はダークナイトだ!」も何もないもんだ。ノーランやスナイダーがつくるやたらとシリアス路線になっていく近年のバットマン映画は違和感だらけでどんどんつまらなくなっていく。その違和感に一石を投じた『レゴバットマン ザ・ムービー』は真のバットマン映画だ。これを本シリーズにしてほしい。

 一部で署名騒動にまで発展したロビン役の吹き替えをやった小島よしおは前評判を吹き飛ばす名吹き替え。「そんなのカンケイねー!」「おっぱっぴー」の持ちギャグもセリフの流れの中にさりげなく出て来るだけだから違和感なかったな。むしろ最高だと思う。悪評なんかカンケイねー!


  


Posted by 縛りやトーマス at 00:00Comments(0)映画アニメ

2017年04月12日

失敗は許されない結婚

 『仮面ライダー555』の園田真理役、『仮面ライダーキバ』のパールシェルファンガイア役でおなじみの芳賀優里亜さんが結婚。


ご報告
http://ameblo.jp/yuria-haga/entry-12264560036.html

 相手は今流行りの2.5次元専門俳優、鎌苅健太でなんというか2.5次元と3次元が結婚したみたい。同じ事務所で仲良しの秋山莉奈から2年遅れてのゴールイン、おめでとうございます。オシリーナともども、同じスパイキッズつながりとして失敗は許されない結婚生活が送れますように。


結婚記念に芳賀優里亜さんのセクシーショット置いておきますね


  


Posted by 縛りやトーマス at 01:57Comments(0)映画

2017年04月07日

お嬢様って怖いなあ『暗黒女子』



 公開前から、W主演のひとりである清水富美加の出家騒動のため変な意味で注目を浴びてしまった作品である。映画興行というもの、客がやってきてナンボ。かつて山口組を主役にした『山口組三代目』を作りながら共産党の映画も作ろうとし、それこそ幸福の科学の映画を自分のところの映画館でかけている東映がこの程度の騒動にビビるわけはなく、「むしろタダで宣伝してもらえてラッキー!」なんて思ってたに違いない。映画は何事もなく公開!

 良家の子女のみが通う聖母マリア女子高等学院(ベタな名前だな)。ある日学院経営者の娘で容姿端麗、成績優秀、全校生徒の憧れの的である「完璧な美少女」、白石いつみ(飯豊まりえ)が学校の屋上から転落死する。自殺か他殺かそれとも事故死か判別しない中、学校中にいつみが会長を務めていた文学サークルの部員の誰かが彼女を殺したという噂が流れる。
 その文学サークルで会長の座を受け継いだ澄川小百合(清水富美加)によってサークルの定例会が行われる。定例会は部員が持ち寄った具材を闇鍋に入れて灯りを消した部屋で食べ、各自が創作した小説を朗読するというもの。今回のテーマは小百合によって「いつみの死」と決められた。一年の特待生、美礼(平祐奈)、老舗料亭の娘、あかね(小島梨里杏)、留学生のディアナ(玉城ティナ)、高校生ながら小説の新人賞を受賞した志夜(清野菜名)の順で朗読が続き、彼女たちは小説の中でひとりの部員を「彼女がいつみを殺した」と名指しする。4人の朗読が終わり、最後に小百合が「これは私が書いたものではなく、白石いつみ本人が書いたものです」と最後の朗読を始める…


 いつみは部員の小説の中でしか語られず、どういった人物かは彼女たちの主観でしか示されない。ある人物の視点と別の人物の視点ではいつみという人物のイメージ、その行動はまったく別の意味で捉えられる『藪の中』状態だ。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』『心が叫びたがってるんだ。』などで思春期男女の諍いやぶつかり合いを瑞々しく描いた岡田麿里がお嬢様学校生徒特有の百合っぽいイメージを漂わせつつ、その裏にあるマウンティング意識といった闇の部分に光を当てる。
 いつみ役を演じた飯豊まりえはぞっとするほど美しく、その内に秘めた悪魔のような本性を見事に曝け出す演技だが、その影にそっと寄り添うような小百合役、清水富美加が真のヒロインとして文字通り「取って代わる」場面は空恐ろしく、単にイヤミス(後味の悪いミステリー)というだけでなく、一級のサスペンスとして完璧。
 
 作品として実に面白いんだけど、騒動から相当時間がたったせいか(もうみんな忘れてるよね)、興行的に厳しい数字らしい。こんなことなら出家騒動が盛り上がってる時に前倒しで公開すればよかったのに!時期的に東映の主力作品、プリキュアと仮面ライダーが組まれていたので繰り上げることが出来なかったと思われる。東映は特撮、アニメがメインコンテンツだからねえ。東映映画の構造的な問題が潜んでいるとしか。

 それと日本の観客がお嬢様学校に抱きがちな「ごきげんよう」「タイが曲がっていてよ」なイメージを破壊してしまったせいかも。『暗黒女子』という黒のイメージではなく清廉潔白な白のイメージを強調してパッケージングから観客を騙してしまった方がよかったような。この映画見て「お嬢様っていいなあ」と思う人はいないもんなあ。世の中は暗黒だ!


  


Posted by 縛りやトーマス at 22:35Comments(0)映画

2017年04月02日

ストイックな部活青春ものに圧倒『ハルチカ』



 橋本環奈は今、もっともストイックな十代女優である。『セーラー服と機関銃―卒業―』では寂れた商店街を守るために文字通り体を張る(首締められても!)。美少女すぎて可愛らしい役しか回ってこずに損してるのが勿体無い。福岡のアイドル時代も見た目と裏腹のデカ目の態度と押しの強さで人気だったので、彼女を活かす作品が少なくて残念だが、邦画界には彼女の才能に目をつけてなんとか活かそうとしている模様。

 負けん気の強いチカ(橋本環奈)は高校に入学した日に憧れの吹奏楽部に入ろうとするが、部員わずか二名で廃部寸前!小学校の時の同級生、ハルタ(佐藤勝利)がホルンをやってたことを思い出して勧誘するが「僕は高校では勉強するから…」と気弱に断りを入れるハルタにチカの重いローキックが一閃!かつてチカにいじめまがいの行為を受けて子分扱いされていたハルタは彼女の軍門に下って部員集めに付き合わされる。時にはビラ配りに本気が足りないとボディブローを喰らいながら
 タイムリミット寸前で最低限の人数を集めることに成功したチカたち。早速練習だ!フルートを選択するチカ。「チカちゃんフルートできるんだ」「ううん全然」なんとチカはフルート初心者だった!中学時代にやってたバレーを怪我で断念した時にたまたま聴いた吹奏楽部のフルートに心を奪われたチカはそれだけでフルートに憧れていたのだった。

 明後日の方向へと転がる物語に戸惑いを隠せないが、ここから観客は王道の破壊から再生を目の当たりにする。なんとかオーケストラのできる人数20人をかき集めた吹奏楽部は元指揮者だった顧問の草壁(小出恵介)の指導のもとコンクール出場を目指す。
 しかし初心者のチカはフルートのソロがうまく吹けず、練習はいつもそこで詰まってしまう。草壁は壁にぶつかった時、部員たちに「どう対処するか」を自分たちで考えさせるタイプの人間なので課題だけ与えてチカを突き放す。部員たちはチカに不満を抱くようになりケンカを始めてしまう。チカのおかげで再生するはずだった吹奏楽部がチカのせいでバラバラになりかける。
 再生のきっかけはハルタだった。急に倒れてしまったハルタは両親との約束で学業に専念するはずだったが、小学生時代のいじめをよりひどい行為で救ってくれたチカをヒーロー扱いしていたハルタはチカのために学業と部活を両立させようとして頑張りすぎたのだった。それ、恋だよ!!いや、ひょっとしたら彼女から受けた様々な暴力が忘れがたかったのかも…

 普通ならここでチャラチャラとした恋愛ものに陥りがちな話だが、チカはハルタの気持ちを組みながらも「フルートのソロをこなす」ことで答えようとする。元髭男爵という経歴の市井昌秀監督は今時ありえないほど生真面目な物語として本作を撮り、原作のミステリー部分やチカ、ハルタ、草壁の三角関係という大事な部分を無くしてまで「吹奏楽部をテーマにしたストイックな部活青春もの」として完成させた。この「ストイックで生真面目な部活青春もの」に重いローキックやボディブローをビシ!バシ!と決めてくれる橋本環奈ほどうってつけのヒロインはいないだろう。凡百の製作者ならハルタとチカのチャラチャラ恋愛ものに落とし込むところを彼女を使ってストイックな部活青春ものとして描き、見事なクライマックスに集約させる。
 草壁は「様々な問題や不条理に直面した時は少し顔をあげて仲間たちがいることに気づいてほしい」とアドバイスする。チカは「ソロはひとりではできない、仲間がいるからこそできる」ことに最後の最後に気づく。それが痛いほどわかるクライマックスは10年に一度、いや1000年に一度の圧巻だ。

  


Posted by 縛りやトーマス at 12:29Comments(0)映画アイドル映画

2017年03月30日

笑顔がいいだけで全米が震撼『チア☆ダン』



 『ちはやふる』『怒り』で2016年日本の10代女優界の頂点に君臨した広瀬すず。2017年はより良い作品に出て活躍するところが期待されるが、その2017年第一弾に選んだのはチアダンスであった。なんか、『恋空』で人気爆発した新垣結衣が『フレフレ少女』に出演するぐらい、不安だよ。

 『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』は福井県立福井商業高等学校のチアリーダー部、福井JETSがまったくの素人ながら3年で本場アメリカのチアダンス選手権で見事優勝、その後2017年まで5連覇を達成しているという実話を元にした映画である。こういう話は如何に実際の福井JETSに興味をもってもらえるか、素人が全米No.1ということがどれだけの偉業か、映画から感じてもらえるようにしないといけないはずが、この映画見ても何がスゴイのかまったくわからない。

 広瀬すず演じる主人公、ひかりはサッカー部に入った同級生(真剣佑)を応援したいという不純な動機でチアリーダー部に入るが、「全米選手権出場」を掲げる顧問、早乙女(天海祐希)の指導は「おでこを出せ」「恋愛禁止」とスパルタそのもので、部員は次々逃げ出していく。残ったひかりも運動神経ゼロでまるでついていけず、逃げ出そうとするのだが早乙女から「あんたは笑顔がいい」という理由で残らされる…
 ものすごい技が使えるとか、実は他の部員たちにはない才能があるとかじゃなくて「笑顔がいい」って…そりゃあ広瀬すずの笑顔は現代日本の十代少女で頂点に達するレベルであり、全米笑顔選手権なら7連覇はしそうな気もするが。コレ、チアダンスの話なんで!コメディリリーフとして登場する富田望生が母親にネグレクトされてる妹たちのためにアルバイトしながらダンスの特訓をしてたりする(なんでこんなハードな話が急に飛び出すんだ)ストイックさを発揮したりしているのに、広瀬すずは真剣佑とチャラチャラしながら笑顔がいい!ってええかげんにせえよ!
 そもそも天海祐希の指導力に疑問がある。彼女は夢はでかいけど、指導が適当なので誰もついてこず、最後にはあらゆるスポーツ界の指導者が書いた指導教本を読み漁るのだが、一番影響を受けるのが松岡修造の本って時点で駄目だこりゃ!
 クライマックスも怪我をして全米の舞台に立てない広瀬すずを最後の最後に笑顔を見せるためだけに起用しちゃってそのまま優勝。広瀬すずが笑顔を見せるだけで優勝できる全米って大したことないんだな。全米が震撼した!
 こんな適当な映画つくられちゃって、福井JETSの偉業が霞むなあ。実際のドキュメントを見た方が面白いんじゃない?

  


Posted by 縛りやトーマス at 20:35Comments(0)映画アイドル映画