2019年11月20日

あかんやつや!ゆるキャン△実写化

『かぐや様に告られたい』『宮本から君へ』『悪の華』『地獄少女』など実写映画花盛りの昨今(そうなの?)ですが、まさか、こんな作品まで実写になるとは驚きです。


福原遥主演で『ゆるキャン△』実写ドラマ化! テレ東が原作に忠実にロケ

https://news.mynavi.jp/article/20191120-926028/

 ゆるキャン△まで実写にしようとはテレ東め・・・!
 テレビ東京といえば『玉川区役所 OF THE DEAD』となるドラマを福満しげゆき先生の『ゾンビ取りガール』を勝手にパクって実写化した過去があるだけに今度はきちんと許可をもらったのですね。ゆるキャン△をドラマ化!といえば売りにはなりますからねぇ。『玉川~』は無名の原作に金を使いたくなかった感がアリアリで、テレビ局の図々しさには白けてしまいますな!それはそれとして・・・

 しかしこのドラマ化のズレ具合は気になる。マイナビニュースの記事内にある

>原作コミックに可能な限り忠実に、ロケ場所にもこだわりながら撮影を行い

いや、忠実にするのはそこじゃねーから!忠実にするのはキャラの方だろうが・・・!漫画アニメのキャラに近づけるのはいくら無理だとわかってはいても、ある程度は漫画のキャラに沿ったキャストでお願いしたいじゃないですか!?いくら漫画アニメの実写化企画はキャスト優先で作品選びはその後だとわかっていても・・・わかってますよ?でも少しは期待させて!期待した挙句裏切られることがわかって「こんなことなら実写映画なんか見ないで原作だけ見ていればよかった」という気分になったこと、多々あるけれど!


原作だけで充分ですよ

 しかも題材がキャンプだよ!?キャンプものの実写化なんかしたところで『キャンプで逢いましょう』みたいな大失敗作が出来上がるぐらいだよ!

 で、今回のキャスティングが・・・

志摩リン:福原遥
各務原なでしこ:大原優乃
大垣千明:田辺桃子
犬山あおい:箭内夢菜
斉藤恵那:志田彩良


 えっ意外とよくない?福原遥、大原優乃はもちろんのこと、大垣役の田辺桃子は元みにちあ☆ベアーズ、箭内夢菜は『雪の華』、『殺さない彼と死なない彼女』『ブラック校則』とメインどころの出演作が続き、斎藤さん役の志田彩良はピチレモンのモデルで短編映画で二度の主演経験アリ。売り出し中の若手が揃った感があるな。こいつは・・・いいキャンプになりそうだ!あと劇場アニメの方もはよ頼むわ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 09:16Comments(0)映画アニメ漫画テレビ

2019年11月17日

地獄だぞ!『地獄少女』



 強い恨みを持つ者が深夜0時ちょうどにアクセスすることで開かれるサイト「地獄通信」。アクセス可能になったサイトで恨みを晴らしたい者の名前を書き込むことで閻魔あい=地獄少女と接触でき、彼女から渡された藁人形の赤い紐を解くことで対象者を地獄に送る契約が成立する。しかし契約が成立した場合は依頼者もその命が尽きた時に地獄に送られることとなる・・・

 と「人を呪わば穴二つ」的な因果応報の物語であるアニメ『地獄少女』の実写映画化。アニメ版では閻魔あいの声を演じた能登麻美子の怖可愛い演技が高く評価されすぎたため、実写版の閻魔あい役は大丈夫?と不安の声が聞かれたが、実写映画版の閻魔あいを演じる玉城ティナもまた怖可愛い存在感を披露してくれたので大満足。


 白石晃士監督による(脚本も担当)実写版はアニメ版以上に人間の悪意をありのままに描いたものとなった。ごく普通の女子高生、市川美保(東宝映画売り出し中の若手スター、森七菜)は毎日をつまらなく過ごし、カリスマ的なビジュアル系ミュージシャンの魔鬼(藤田富)のライブだけが楽しみだった。あるライブ会場で痴漢行為に遭って声も出せずおびえていると、そばにいた見知らぬ女性客が男を引っ張り出して蹴り倒す!必要以上に!!
「お前みたいなやつが魔鬼を汚すんだ!」
 美保はその女性、南條遥(仁村紗和)と仲良くなる。二人がライブ後にカフェにいるとそこに魔鬼がやってきて、バックコーラスのオーディションに二人を誘う。「今度コーラスに参加してくれる地下アイドルの子のライブに来ないか?」魔鬼に誘われ、そのアイドル御厨早苗(大場美奈)のライブ会場にやってきた二人は目の前で早苗がストーカーに顔を切られる惨劇を見てしまう。
 早苗は「地獄通信」にアクセスし、閻魔あいから藁人形を渡されるが、「紐を解いたものもまた地獄に送られる」と告げられ、ストーカーを呪い殺す勇気が出せなかった。だがストーカーから謝罪の手紙が届き、そこには早苗を一生呪う言葉がつづられており、決心がついた早苗は藁人形の紐を解く。地獄少女によって「この怨み、地獄へ流します」となったが、地獄少女の言葉通り、早苗も地獄へ送られる。

 この流れは原作アニメどおりだが、白石監督はさらに観客に地獄を見せる。早苗は地獄送りになったことで行方不明になった(地獄送りにされると表向きは姿を消していなくなる。送られたことを知っているのは依頼者だけ)ストーカーの母親(なんと片岡礼子!)は早苗の元に謝罪にやってくるのだが、早苗はその母親の耳元で「地獄に送ってやった」とささやくのだ。
 その早苗もまた地獄送りで姿を消したことでストーカーの母親は真相に気づき、早苗の両親の前で刃物を渡して自分を殺せと迫るが、早苗の両親は「人を恨んでもいいことないですよ」とか薄っぺら~いヒューマニズムをひけらかしすのだった。すると母親は「早苗さんの方が正直でしたよ」と刃物で自分の首を突いて死ぬ!
 何してんの!!(本作で一番驚いた場面)地獄だぞ!!


 魔鬼のオーディションは遥だけが合格し、美保は彼女を応援するのだが、遥は以降人が変わったようになり、魔鬼の勧めで美保と縁を切る。魔鬼に違法薬物使用の疑いや、洗脳で人を操っていると聞かされた美保は遥を変えてしまった魔鬼を憎み、「地獄通信」にアクセスする。


 原作アニメ以上にえげつなく人の悪意を暴いたのもすさまじいが、白石監督はさらに「地獄通信」の謎を追うキャラクターとしてフリージャーナリストの工藤仁が登場!『コワすぎ!』の工藤じゃねえか!演じているのは浪岡一喜だが、あふれんばかりの工藤っぷりで(女のことばっかり考えてるところとか!情報提供の見返りに女子高生(また、名前が美保っていうのも・・・)に「やらせてくれないのかよ!」と毒づいたり・・・まさに工藤!)白石ファンをざわつかせる。

 アニメの実写化というと原作に気を遣い過ぎるか、ファンに媚びすぎて小さく収まったり単なるコピーになるところを、遠慮せずに拡大解釈、圧倒的なビジュアルの力で原作に負けない世界観を構築、さらに美保と遥の青春映画のように仕立て、自作キャラの出演など、白石ファンへのアピールもしっかり忘れない、なんともサービス精神満載な映画でした。この作品・・・地獄だぞ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 16:41Comments(0)映画

2019年11月15日

何も始まらないうちに終了『フッド・ザ・ビギニング』



 何度となく映画化されてきた中世イングランドの伝説上の人物ロビン・フッドの物語。

 イングランドの領主ロビン(『キングスマン』のタロン・エガートン)は領民たちに慕われ、愛する恋人マリアン(イヴ・ヒューソン)とともに幸せに暮らしていた。しかし十字軍の遠征に徴兵されたロビンは「必ず帰ってくる」とマリアンに言い残し戦場へ。
 4年後、ロビンはアラビア兵の弓の使い手、ジョン(ジェイミー・フォックス)に苦戦するも捕らえるのだが、十字軍の上官は無抵抗の捕虜を虐殺、ジョンの息子も斬首される。それを咎めようとしたロビンは上官に忌み嫌われイングランドへ強制送還されてしまう。愛するマリアンの元へやっと帰ることができると気も晴れ晴れなロビンだが、領地には人っ子一人おらず、荒れ放題になっていた。2年前にロビンは戦死したことにされ、領地は没収、領民らは炭鉱で強制労働させられていた。すべてはノッティンガム州長官(ベン・メンデルソーン)の陰謀だった。さらに炭鉱の町でマリアンが別の男と仲良くしているのを見て絶望するロビン。
 そんなロビンの前に現れたのはジョンで、息子を助けようとしてくれた恩に報いるためにやってきたというジョンは共に州長官の野望を食い止め、貧困と重税に苦しむ民衆のために立ち上がろうとロビンを誘う。ジョンの元で弓の腕前を上げたロビンは頭巾をかぶった義賊ロビン・フッドとして立ち上がるのだった。

 ロビン・フッドものは映画でも大昔から何本を制作されており、最近でもケヴィン・コスナーの『ロビン・フッド』(91)や、リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ主演の『ロビン・フッド』(2010)などが制作されており、定番のネタだ。今回は昨今の映画界で有名な弓を撃つヒーロー、ホークアイっぽいアクションや、『バーフバリ』の弓矢同事三本射ちを上回る4本射ちを披露するなど、現代的アップデートも行われている。

 またケヴィン・コスナーやらラッセル・クロウみたいないけ好かない連中が義賊ぶりたくて作られる題材でもある。そこへいくと今回のタロン・エガートンはコスナーやクロウよりはええ人なのでそれだけで多少は好感がもてるな。

 とはいえ題材の古臭さやジェイミー・フォックスの嘘くさいキャラクター造形が玉に瑕で、ビギニングどころか何も始まらないまま失敗した模様。

  


Posted by 縛りやトーマス at 20:48Comments(0)映画

2019年11月04日

伝説の戦車映画再び『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』



 ロシアの伝説的戦車映画、『鬼戦車T-34』(1965)のリメイク作品。『鬼戦車T-34』は第二次世界大戦中にナチス・ドイツが戦車隊の練度を高めるために連合軍の捕虜を弾の入っていない戦車に乗せ砲撃の的にしていた、という設定の物語でソ連の捕虜3名+フランス兵を乗せたソ連戦車T-34が射撃訓練に駆り出される。だが車長のイワンは一瞬の隙を突いて包囲網を切り抜け、東へと逃亡する。4名の逃亡兵は途中で戦車を乗り捨て逃げ出すが、忘れがたい縁のようなものを感じて戦車に戻り、ドイツの町を進撃する。戦時中だけど平和な街中に突然戦車が現れるシーンが面白く、途中で呆気にとられた市民からビールをいただいてしまう、つかの間の自由を謳歌する場面が切ない。名画座なんかの「ソ連映画特集」などでいつもラインナップに入っていたので、シネフィルの人たちはよく見ていたかも。現在はDVDで安価に手に入れられるが、カルト映画として語られているその映画を最新のVFX技術にてアップデートしたのが『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』だ。


 舞台は同じく第二次大戦中の独ソ戦場。ネフェドヴォの雪原でナチス・ドイツの戦車隊に襲われる一両のフィールドキッチン(炊事自動車)。風前の灯となる車両だが、ドイツ戦車の砲撃の瞬間を突いて見事脱出に成功する。運転していたニコライ・イヴシュキン少尉(アレクサンドル・ペトロフ)は腕を買われて一両しかない戦車の指揮を任される。撤退する部隊を掩護しドイツ戦車中隊と戦う任務のためにだ。
「たった一両で?無茶だ」「銃をくれ。自殺する」
 という操縦手ヴァシリョノク(ヴィクトル・ドブロヌラボフ)ら兵士たちを一喝し、整備を整え戦場に立ったイヴシュキンは待ち伏せ、奇襲でドイツ戦車中隊を翻弄する。しかし中隊を指揮するイェーガー大佐(ヴィンツェンツ・キーファー)のⅢ号戦車の反撃を受け、乗員のコブザレンコ(アルトゥール・ソペルニク)らは死んでしまう。砲弾が直撃したわけではない。かすった際の衝撃とわずかな破片を食らってしまったのだ。衝撃の反響音だけで乗員が気絶する。恐るべきⅢ号戦車の砲弾!

 数年後、イェーガーはヒムラー長官からSS装甲師団ヒトラーユーゲントを任されるほど出世していた。最初の任務は師団の戦車隊育成。ソ連兵捕虜の中に傷を負いながらも生き延びたイヴシュキンの名を見つけたイェーガーは師団戦車隊の演習の的になるため戦車に乗れと命令する。砲弾を積むことすら許されず、ただ逃げることしかできない的だ。命令を拒もうとするイヴシュキンだが、従わないのなら通訳につけられた民間人の捕虜、アーニャ(イリーナ・ストラシェンバウム)を殺すと脅され命令を受け入れる。捕虜の中から使えそうなものを3人選ぶイヴシュキン。うち一人はかつてネフェドヴォの雪原で共に戦ったヴァシリョノクだ。
 ドイツ軍が鹵獲したソ連戦車T-34を渡されたイヴシュキンらは車内から同志の死体の下に隠された6発の砲弾をこっそりと回収する。反撃の手段を手に入れたイヴシュキンはただの的になるつもりはなかった。同志の死体を埋葬する際に演習場の光景を記憶し整備場にジオラマをつくると脱出の計画を練り上げる。

「無理だ。成功するわけない。俺たちはウサギ、やつらはオオカミだ」

 と弱気になるヴァシリョノクに

「外には自由がある。勝利がある。共に行こう」

 と男泣きの決め言葉で口説き落とすイヴシュキン。
 

 すっかりやる気になったヴァシリョノクはT-34の整備状態を見に来たイェーガーらの前で「華麗なダンスを見せてやるぜ!“白鳥の湖”だ!」と踊るように舞うように戦車を操って見せる。BGMは白鳥の湖だ(当然)!片輪走行、360℃ドリフト旋回という軽やかなライディングを見せつけられたイェーガーは警戒し、演習場の外に地雷を置くよう部下に命じる。それを小耳に挟んだアーニャはイヴシュキンに伝え、外の地図を手に入れるから自分も逃げるときに連れて行ってくれと頼む。

「それはできない」
「囚われの身はもうウンザリ。死んだ方がマシよ」

 アーニャとイヴシュキンの淡いラブロマンスがあるのが、リメイク版の特徴でもある。演習場を脱出後、バス停(!)で待つアーニャの元にT-34で駆けつけるイヴシュキン!このダイナミックな再会の場面、最高です。
 あっさり逃亡を許すわけないイェーガーはT-34の逃亡ルートを想定し、先回りで罠を張り待ち受ける。それを一手早く見抜いたイヴシュキンは市街戦でネフェドヴォの再戦を挑む。今度は我々が勝利するのだ。

 オリジナル版はサイレント映画化と思うぐらいセリフも少ない。その上ドイツ人のセリフには字幕ではなく、ドイツ語をしゃべった後にロシア語の「通訳」が入るのだ。逃亡するソ連兵らの物悲しい友情が情感をもって描かれたオリジナルとリメイク版が大きく違うところは最新のVFXによるド派手な戦車バトルだ。砲弾はスローモーションで交錯し、T-34がすんでのところでⅢ号戦車の砲撃を交わす!砲弾が命中した戦車が爆炎を上げて吹っ飛ぶ!クライマックスはイェーガーのⅢ号とイヴシュキンのT-34の一対一の勝負。戦車同士の一騎打ち!中々見られない光景だ。

 イヴシュキンとイェーガーは単なる敵ではない。二度の対決を超えたことで互いに認め合うライバルになったのだという激熱の解釈がリメイク版最大の魅力である。その魅力は瞬く間にロシア全土に広まり、興行収入40億円を超え、観客動員800万人を達成。ミュンヘンオリンピック男子バスケでアメリカの8連覇を阻んで優勝したソ連代表の活躍を映画化した作品が持っていた記録を抜き去ったという。
 これだけの記録となったのは、リメイク元の『鬼戦車T-34』自体が懐かし映画としてシニア世代がなじんでおり、懐かしさに惹かれて劇場に足を運び、最新VFXによるド迫力戦車バトル映画を若い世代が楽しみに行ったことによる相乗効果ではないだろうか。日本でいうところの『君の名は。』現象が起きたのだと。これは日本の『君の名は。』だ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:06Comments(0)映画

2019年11月01日

ワケわからんが、スーパーワンな『ロボット2.0』



 チッティが帰ってきた!「ワケわからんが面白い」という身も蓋もないキャッチコピーと共にインドからやってきたSFロボット映画『ロボット』はインド映画破格の37億円を投じてつくられた。
 生みの親であるバシー博士の彼女に恋をしたロボット・チッティは博士の怒りをかって破壊されるが、彼と対立する悪の教授によって悪の回路を組み込まれ、自らレプリカを大量に生産し殺戮兵器となり人間の敵になる。博士はロボットから悪の回路を抜き取り、捕らえる。ロボットは自分自身を分解し、博士は罪を許されることに。
 大量に生み出されたロボット軍団が大暴れする場面はハリウッドも呆気にとられる破天荒さで、インド映画の自由な発想は素晴らしいぞう。その『ロボット』の続編がやってきたのだ。製作費はさらにアップして90億円!これは『バーフバリ』の製作費(2本で約70億円)を遥かに超える、インド映画史上最高額である。監督と主演は前作に引き続きシャンカール(『ジーンズ 世界は二人のために』)、インド映画界が世界に誇る“スーパースター”ラジニカーントだ。今回も、「ワケわからんが」もっと面白い!

 自らつくったロボット・チッティの暴走で大変な被害が起きたことを反省し、人間のためになる良いロボットをつくっているバシー博士(ラジニカーント)。現在の助手はスーパーモデルのごとき美貌の美人ロボット、ニラー(エイミー・ジャクソン。ほんまもんのモデル兼女優)。
 街では人々のスマホが持ち主の手を離れ、どこかで飛んで行ってしまうという怪事件が勃発。スマホたちは携帯業者や通信大臣らを抹殺するのだった。えっスマホでどうやって殺すのって?たとえばこんな感じ。

・大量のスマホに圧し掛かられて圧死
・喉にスマホが詰まって窒息死
・体に入って爆発


 恐ろしい・・・スマホは恐ろしい・・・

 バシー博士は美人ロボットのニラー(エイミー・ジャクソン)とともに事件の調査を開始。このニラーの特殊スーツが『僕の彼女はサイボーグ』の綾瀬はるかっぽいデザインで素敵。
 博士は事態の解決に改良したチッティを復活させようとする。かつて暴走したチッティに殺されたボラ教授の息子は「また暴走して人を殺すぞ」と博士の計画に反対。彼は父親の復讐の機会をうかがっていたのだ。軍隊による解決が選択されるが、大臣がスマホによって殺されてしまい、政府はチッティの復活を承認する。

 街では大量のスマホが空を埋め尽くし、鳥人になったり、怪鳥に変化して人を襲っていた。い、一体どういうことなのかよくわからないと思うけど、映画を見た僕もよくわかりません。ワケわからんが、それがイイ!

 博士らはこの怪事件を生み出したのは鳥類学者のパクシにあることを突き止める。パクシ役は『パッドマン』で一躍名を知られることになったアクシャイ・クマール。
 パクシは携帯、スマホ普及のために短期間で大量に建設された電波塔の影響で鳥が死んでしまうことを嘆き、携帯業者の規制と電波塔の建設反対、スマホの使用禁止を訴えるが、まるで相手にされず失意の果てに首を吊るのだった。
 巨大な怨念となったパクシは霊体となり、スマホを自由にあやつることで人間たちに復讐をはじめる。

「携帯を持つ者には今から閻魔の審判が下る!」

 その前にバシー博士によって正義の戦士となったロボット・チッティ(ラジニカーントの二役)があらわれる!はぁー、なんという『ターミネーター2』感!奇しくもジェームズ・キャメロンが久しぶりに制作することになった『ターミネーター・ニューフェイト』が公開される前に『ターミネーター2』のパロディをやってしまおうとは・・・

 復活したチッティ(ラジニカーントの二役)はパクシと戦い、死闘の果てに勝利する。だがチッティの活躍を良く思わないボラ博士の息子は封印されたパクシの怨念を再び開放。パクシはバシーの体を乗っ取り、博士に手を出せないチッティをも破壊してしまう。
 もはや誰も彼を止めることはできないのか?ただ一人、いや一体だけ残されたニラーはチッティの修理を始める。ニラーはこのままのチッティではパクシに勝てないことを悟りバシーが封印していたファームウェア2.0のチップをメインCPUにセット。バージョン2.0のチッティが誕生!(タイトル回収)
 前回同様のワルなロボットとなったチッティはニラーとイチャつき始めるのだが、「おふざけはこれまで。あなたはパクシにバラバラにされた。ナンバーワンは彼よ」と煽ってくる。しかしチッティは動じない。

「ナンバーワンにこだわるのはガキだけだ。俺様はオンリーワン。スーパーワン。唯一無二だ!」

 唯一無二のスーパースター、ラジニカーントだからこそ説得力のあるセリフだなあ。クライマックスのサッカー場での決戦はとにかくハチャメチャで、全編にわたって常識に囚われない驚天動地な場面の数々にひっくり返る。スーパーワンの活躍はワケがわからん。が、この後本家『ターミネーター』もやってないようなネタが飛び出してきて、単なるオマージュで終わっていないのがインド映画の奥深さであろう。ワケわからんが、本家を超えた!

 インドでは現在VFXスタジオが多く作られており、VFXの本場ハリウッドのスタジオもインドにサテライトスタジオを持っている。『ターミネーター』っぽいとは言ったが、その『ターミネーター』の制作に関わってるスタン・ウィンストン・スタジオの後継スタジオ、レガシー・エフェクツも制作に加わっているので、公開間近の『ターミネーター・ニューフェイト』が「正統な続編」と謳っているようにこの『ロボット2.0』も「正統なスピンオフ」と言えなくもない(バカな)。

  


Posted by 縛りやトーマス at 01:49Comments(1)映画

2019年10月29日

土壇場からの大逆転、これが上田慎一郎監督の作家性だ!『スペシャルアクターズ』



『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督による長編第二弾。『カメラを止めるな!』はたった2館で劇場公開がはじまったが、話題が話題を呼び、公開劇場数が増え続け最終的には300館越えを達成するロングラン・ヒットとなった。
 未曽有のヒットを生み出したあとの第二弾には当然のごとく期待がかかるわけだ。上田監督はワークショップを開催して出演者を公募し、18人に絞ったメインキャストにアテ書きする形で脚本を書こうとしたがプレッシャーに苛まれてまったく書けなかったのだという。
 キャストらが意見を出し合う形でようやく完成した脚本は「プレッシャーに異常なほど弱い男」が主人公の物語という、自分自身の置かれた状況をそのまま形にしたものだった。


 大野和人(大澤数人)は子供のころに見たテレビの特撮ヒーロー番組『レスキューマン』に憧れ、役者を目指すものの、オーディション現場で監督から「それのどこが演技だ!もっとお前の持ってるもんをみせてみろよぉ!」と『カメ止め』風に詰め寄られ、気絶してしまう。気弱な上に緊張状態が限界になると気絶してしまうという、致命的な欠点を抱えている和人はオーディションに落ち続け、警備員のバイトもまともにこなせず、家賃も払えずどん底人生。
 ある日、数年間会っていなかった弟の宏樹(河野宏紀)と偶然再会。宏樹は「スペシャルアクターズ」という俳優事務所に所属しているという。その事務所はドラマの端役などを提供する他に、依頼者の相談を演じることで解決するなんでも屋のようなことをやっていた。例えば恋人の前でええかっこをしたい、という依頼には酔っ払いを演じて依頼者に街中で絡んでわざと負ける、といった役を演じるのだ。

 金も仕事もない和人は演じることができる、ということでスペシャルアクターズに入所する。最初は映画館の笑い屋、行列の代行などをしていくが、思わぬ大仕事が回ってくる。実家の旅館がカルト宗教団体に乗っ取られようとしており、洗脳状態に置かれている姉の女将・津川里奈(津上理奈)を助けてほしいという妹・祐未(小川未祐)からの依頼を受けたスペシャルアクターズは事務所の全メンバーを総動員した大作戦を計画。その主要メンバーに和人が選ばれたのだ。
 大役を任され、まさに気絶しそうなほど緊張する和人だが、カルト教団の信者を装って潜入した旅館で女将の里奈と『レスキューマン』のヒロインを重ね合わせた和人は勇気を振り絞ってミッションに挑む。努力の結果、カルト教団がインチキだという証拠を手に入れるのだが、予想外のトラブルが続出、緊張状態はMAXに。気絶してしまえばすべては台無しになってしまう。和人は人生最大の危機を乗り越えられるのか。



 役者生活10年間で役者の仕事が3回、自分が役者をしていることは母親と知人の二人しか知らないという、異色にもほどがある経歴の大澤数人の存在感よ!そんな彼はワークショップで上田監督に「緊張を解くためにやわらかいゴムボールをずっと揉み揉みしている」というインパクトあるアイデアを出したりしていて、彼のなんともいえない素人感、よくぞこの人を見つけてきたなと。

 長編一作目の『カメラを止めるな!』はすでにある舞台演劇にヒントを得た作品であり、純粋なオリジナルとは言い難いかもしれないが、その根底には上田監督がプロの映画監督を目指そうとしながら、専門学校を中退、詐欺にあったり、ホームレスにまでなったりした苦悩と失敗の人生があり、追いつめられた人間が思いもよらない実力を発揮する土壇場からの大逆転があった。『スペシャルアクターズ』も主人公の和人が気絶しそうなほど追いつめられながら、ずっと好きだった『レスキューマン』への思い入れが超能力という奇跡の大逆転を呼び込む。失敗の人生を経験しながらも映画への熱い思い入れが失われなかったことが『カメラを止めるな!』という奇跡を呼び込んだように「ダメ人間の土壇場からの大逆転」というテーマこそが上田監督のオリジナリティであり、作家性なのだろう。

 そんな作家性が炸裂した『スペシャルアクターズ』は148館という規模で公開されたものの、興行ランキング圏外スタートとなり、興行的には大苦戦となっている。『カメ止め』でまさかの大ヒットとなり、今度はまさかの大苦戦。
 だが2館ではじまった映画がファンの支持に支えられてロングランとなったのだから、まだまだわからない。なにしろ、上田監督は「土壇場からの大逆転」の男なのだから。

  


Posted by 縛りやトーマス at 00:28Comments(0)映画

2019年10月25日

ロケットやスペースシャトルが出る邦画にロクなものはない『最高の人生の見つけ方』



『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』などで知られるロブ・ライナー監督の2007年作品『最高の人生の見つけ方』は傲慢な生き方ゆえに娘から縁を切られている富豪のジャック・ニコルソン、自動修理工で自分のやりたいことを犠牲にしてまで妻と家族のために尽くしてきたモーガン・フリーマン、正反対の生き方をしてきた男二人が余命半年の癌と宣告され同じ病室になったことから知り合い、「死ぬまでにやりたいこと」リストをつくりそれを実践していく・・・というヒューマニズムあふれる感動のドラマだ。「終活」なんてものが流行っている日本でも通用しそうなテーマなのでワーナー・ブラザーズが日本でもリメイクしようというのはわかる。しかし、ニコルソンとフリーマンが日本になるとなぜ吉永小百合と天海祐希になるんだ??
 もちろん、傲慢な金持ちは天海祐希で、家族のために自分のやりたいことを犠牲にしてきた主婦役は吉永小百合である。これが逆だったら面白いんだけど、傲慢な金持ちの小百合さまはありえないし、家族のために何もかも犠牲にする天海祐希もありえない。


 高級ホテルチェーンを経営する実業家、剛田マ子(天海祐希)はやり手の女社長として新たに建設したリゾートホテルのオープンイベントに立ち会い、「私が成功しているのは、この場にいる欲深いお客様のおかげです!」とかいっちゃう正直な人間である。金、成功だけが彼女の人生哲学だ。無事イベントをこなしたマ子は宿泊先のホテルで嘔吐する。検査入院で受けた診断結果は余命半年の癌。なのにタバコを止められず病室でスパスパしたために放火センサーに検知され、病院内は水浸し。
 豪華な個室を二人部屋に変えられてしまい不満タラタラのマ子。同じ部屋になったのは平凡な主婦の北原幸枝(吉永小百合)だ。
 病室にやってきたマ子の夫、三木輝男が若いので驚く幸恵(なにしろ賀来賢人だから)。輝夫が外でさらに若い女と待ち合わせていちゃついてるのをうっかり見てしまって二度驚く。『家政婦は見た』じゃないんだから。マ子は輝夫の裏切りを知っていても愛していて、別れることができない。副社長の彼がマ子の会社を乗っ取ろうとしていることも知っているので、癌ごときでくたばることもできない。
 幸恵は平凡な主婦として二人の子供を産んだが次男の一慶(駒木根隆介)は引きこもり。彼は薄暗い部屋でずっとネトゲをやっているという、10年ぐらい前のひきこもり描写から一歩も抜け出ていない。夫は家庭のことをすべて妻に押し付けて寝転がっているだけ。夫を演じている前川清のやさぐれっぷりがなんともいえない・・・
 唯一まともに育って出版社の有能編集長として頑張っている(なぜかここだけ韓国映画の『あやしい彼女』みたいなの)長女の美春(満島ひかり)に「もし自分に何かあったらあとのことはよろしくね」と頼むがグータラな父親と引きこもりの弟の世話を押し付けられそうになった美春は「女だからって、なんでも私がやらなきゃいけないの?」と猛反発。幸恵もまた余命半年を宣告されていたのだ。家族に問題があり、同じく余命はわずかという幸恵にマ子は「私たち、似た者同士ね」と立場を越えて心を通じ合わせる。

 病院の長期中院患者で糖尿病のため食事制限をされている12歳の少女・神崎真梨恵(鈴木梨央)が「甘いものも食べられない、やりたいこと何もできない」と自暴自棄になってタバコを吸おうとしているのを咎める幸恵。自分も愛煙家でタバコのせいで病院を水浸しにしたマ子はタバコぐらいいーじゃん的な態度を見せるのだけど、真梨恵は突然(いかにも「突然」な描写で笑っちゃう)ぶっ倒れてICUに運び込まれる。真梨恵が持っていた巾着袋を預かったままにしていた幸恵は翌日、真梨恵の弟に会ったのでこれをお姉ちゃんに返してほしいと渡すが、弟は「返せないよ。お姉ちゃん、死んじゃった」と!なんだこの『今夜、すべてのバーで』みたいな展開は!
 真梨恵は「死ぬまでにやりたいことリスト」をつくっており、それを遺言のように預かった幸恵とマ子は少女の代わりにそのリストを実行する旅に出る。

 オリジナルとの変更点がいくつかある本作で、大きな変更点なこの「他人のリストを代わりに実行する」という部分だ。日本版のスタッフは50~70代ぐらいのシニア層男女に「死ぬまでにやりたいこと」をリサーチしたが、映画的なエピソードを作れそうなものが出てこず、「12歳の女の子がやりたいことを代わりにする」という話になったそうだ。このあたりがいかにも日本人的だねえ。あれをやれこれをやれと全部指示されてやるのは得意だけど、なんでもいいからやりたいことをやれ、と言われると途端に何もできなくなるのが日本人。日本人は自由に向いてないのだ・・・

 二人は真梨恵のリストにあった「スカイダイビングをする」「ピラミッドを見る」「甘いものを食べる」といったリストを次々こなしていく。圧巻は「ももいろクローバーのライブに行く」だ。二人はマ子の秘書、高田(ムロツヨシ)に用意された法被やTシャツ、缶バッヂにサイリウムでばっちり武装し、横浜アリーナのモノノフの中に紛れ込む。この時二人が着ている担当カラーは天海祐希がイエロー(しおりん)で、小百合さまがピンク(あーりん)だ。戦後のアイドル、小百合さまがあーりんピンクとは、グッドチョイスだ。
 ライブ中のトークコーナーでももクロは定番の会場に来ているモノノフの年齢調査を始める。20代の人、30代、40代・・・「じゃあ70代の人はいるかなー?」シーン。「さすがにいないか・・・」幸恵は70代なのだが、手を上げられない。そこで代わりにマ子が手を上げるのだ。ももクロは70代のモノノフ、幸恵に話しかける。その年で見に来たのはなぜ?と。幸恵は若いファンの子がいて、代わりに見に来ました・・・「その子は今日はいないんですか?」と聞かれて答えられない幸恵は話を濁す。そりゃ、突然そんな重い話されても、ももクロちゃん困っちゃうよ!!
 高田を含めた3人はステージ挙げられて一緒に『走れ!』を熱唱。この撮影は今年2月に行われたバレンタインイベントの様子で、イベント前には公式サイトで「この日は特別な撮影がありますので、その撮影の内容は公式で発表するまで秘密にしておいてください」とネタバレをしないよう、お願いがあった。公式が発表するまで当日ライブに参加したモノノフは誰一人漏らさなかったのだから、さすが。そりゃあ少女が「死ぬまでにライブに行きたい」現場に選ぶのもわかる。AKBなどではなく、ももクロの現場。僕も死ぬ前に見るライブならももクロにする。絶対する。


 さて、そうやってリストをこなしていく二人だが、どうしてもできない項目があった。それが「逆上がりができるようになる」「ウェディングドレスを着る」だ。マ子は子供のころ、逆上がりができずに同級生にバカにされた過去があり、しかも母親と死別したり、父親が借金をつくって逃げたりして子供のころは大変貧乏でつらい生活をしており、そのせいで「大金持ちになって見返してやる」と思うようになり、それが彼女の強欲っぷりの原点になっている。マ子はついに逆上がりができるようになる。僕も小学生のころ逆上がりがまったくできなくてバカにされた悔しい思い出がある(今はできる)ので、個人的に泣けたなあ。
 幸恵は逃げたマ子の父親を高田に頼んで見つけ出してもらい、強引に再会させようとする。拒否するマ子だが逆上がりが出来たマ子を見て、すでに痴ほう症になっている父親は「ようやった。よう頑張ったねえ」とマ子の頭を撫でてやる。一方幸恵は本当はウェディングドレスを着たかったけど、母親に言われて和服の式をした。それが心残りだという幸恵のためにマ子はエキストラを雇って結婚式をしてやる。そこには夫と娘も呼んでいるのだ。しかし何の関係もない人々を結婚式に巻き込んで70代の吉永小百合さんがウェディングドレス姿でほほえむ様は、無理がありすぎる。

 それまでも結構無理があるのだけど、ここから映画は完全におかしくなっていく。オリジナルの良さがニコルソンにフリーマンというベテランで老境に入った二人の会話やシチュエーションがおしゃれで、高級なコーヒー、コピ・ルアクに関する話や、フリーマンがホテルのバーで女性と交わすエベレストの話なんかはとにかく洒落ていて、さすがロブ・ライナーといったところ。しかし日本版はしみったれていて貧乏くささが目立つ。天海祐希の幼少のころのエピソードなんていかにも日本人が考えそうな成り上がり金持ち像で、おしゃれさの欠片もない。日本では同じようなシチュエーションがやりにくい、ってのもわかるんだけどねえ。

 父娘と和解した幸恵には最後にやるべきことが残っていた。引きこもりの息子のことだ。大みそかの夜に美春の妊娠が発覚すると幸恵は今も引きこもっている一慶の部屋の前に行き、自分は癌で余命いくばくもない。美春には赤ちゃんが生まれる。あんたが私の代わりに面倒見なきゃいけないのよ?と声をかけると引きこもりの息子はぬっと部屋から出てきて「面倒を見る」と頷く。
 って、無理でしょ!昨日まで引きこもってた息子が家族の面倒どうやって見るんだよ!自分の面倒も見られないから引きこもってるのに・・・


 そして驚くべきことがもう一つある。旅を終えて帰ってきた幸恵の前に真梨恵が現れるのだ!えっ確か死んだんだよね?
 真梨恵はずっとICUに居ただけだった。弟は母親がずっと姉の真梨恵にかかりっきりなのが気に入らなくて、咄嗟に「お姉ちゃんは死んだ」と嘘ついてただけだった!おい、これ反則やろ!定番のネタとはいえ、完全にやられた。というか腹が立つ。昔『同級生2』でも同じネタがあったんだよ。病室のベッドが片付けられて看護師が「死んだ」っていうからひっくり返ったらそれは患者の子が飼ってた鳥だって。
 20年越しに同じネタに引っかかって悔しいのなんの。脚本の浅野妙子は『同級生2』なんてやってないと思うけど、すげー腹が立つんだよな!
 死んでしまった子の代わりに願いをかなえる、というネタを反則技で潰しにきて、この映画ふざけるんじゃねえ。


 ラストは最後の願い「宇宙にいく」をマ子の遺産によってロケットを飛ばして無事リスト完走(その頃にはすでに真梨恵が生きてることがわかってるので、リストを完走させる意味はなくなっているのだが)。ロケットだのスペースシャトルだのが出てくる邦画にロクなものはない(『幻の湖』『北京原人Who Are You?』『明日があるさ THE MOVIE』・・・)ことをまたも証明してくれたのであった・・・

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:07Comments(0)映画ももいろクローバー

2019年10月21日

まったく笑えないコメディ映画『ジョーカー』



DCコミックスの『バットマン』に登場する悪役、ジョーカーを主役にした映画。バットマンではなく悪役が主役の作品だ。といってもティム・バートンの『バットマン』『バットマンリターンズ』もジャック・ニコルソンが演じたジョーカーとダニー・デヴィートのペンギンがほぼ主役級の扱いだったりしたわけだが(バートンは主役のバットマンよりも悪役の方に感情移入して撮っている)、その二本とも、違った作風になっているのがミソ。

 道化師の派遣会社で勤務しているアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は不況で荒廃したゴッサム・シティに住んでいる中年男だ。コメディアンとして活躍し、テレビで人気の司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)みたいにみんなを笑わせたいと思っている。
 アーサーは突然笑いだす病気に苛まれていた。バスに乗っているだけでおかしくて笑いだす。「僕は突然笑いだす病気なんです。気にしないでくださいね!」と自己紹介するためのカードを持ち歩いている。
 なのにピエロの扮装でサンドイッチマンをしていれば悪ガキに悪戯され、認知症気味の母親ペニーの世話もしなければならない。自分のカウンセリングもシティの財政難を理由に打ち切られた。こんなひどい世の中じゃあ、笑うしかないじゃないか!なあ、おかしくて仕方ないだろ?

 同僚のランドルから「これぐらいは持っておけ」と渡された拳銃を小児病棟で入院幼児を励ます仕事中にうっかり落としてしまったアーサーは会社を首になる。これで思い出したのが昔のバイト先の常駐現場にナイフを持ち込んでいた同僚がいて、大目玉を食らっていたことがあった。現場にはすごくイヤな先輩がいて、やっちゃう気だったのかな?彼は「護身用だ」って言ってたけど・・・

 首になった帰りにアーサーは地下鉄内で3人の酔っ払いサラリーマンに絡まれる女性を見る。仕事ないし、母親の介護もしなくちゃいけないし、市の財政難を理由に自分のカウンセリングも打ち切られてしまった。何もかも最悪だ。なのにこいつら会社で仕事にありついてる連中はみんな幸せそうだ。あーおかしくてしょうがない!
「てめえ、何がおかしいんだ?」
 リーマンたちに絡まれたアーサーは咄嗟に拳銃をぶっ放す。逃げ出した一人を執拗に追い回して背後から仕留め、構内から飛び出したアーサーの心は晴れ晴れだ。
 翌日ニュースで殺した相手が大富豪トーマス・ウェイン(ブレット・カレン)の証券会社の社員たちだと判明。この事件は「富裕層に恨みを持つ貧困層による犯行」とされ、シティにはピエロの扮装をして富裕層への怒りをあらわにする者たちが現れるようになる。「ピエロ」が怒りの象徴としてアイコン化されるのだ。シティの問題を解決するべく市長選に立候補することを宣言したトーマス・ウェインはこの事件を「街に蔓延る汚らしい連中がやりそうなことです」と吐き捨てる。この発言はシティで暴れまわるピエロたちの怒りの火に油を注ぎこむ行為になる。

 コメディアンとして初めてバーの舞台に立ったもののアーサーの生活は何も変わらない。母親の手紙で自分はトーマス・ウェインの隠し子であったことを知り屋敷に乗り込むも執事から冷たく追い返される。帰宅すると救急車で運ばれる母親の姿が。地下鉄の事件でアーサーのことを事情聴取に来た刑事たちの訪問に驚き発作を起こしたのだ。
 病院の入り口で刑事たちから事情聴取を受けるアーサーは派遣会社でランドルが拳銃を奪われたと告げていることを知り、自分にかかった疑いはすべてデタラメだと答える。病室で母を見守るとフランクリンの番組でアーサーが初めて出演したバーの映像が流される。僕のショーをフランクリンが見てくれた!どうだい母さんすごいだろう!
 アーサーを「ジョーカー(道化師)」と紹介したフランクリンはアーサーの「子供のころ学校が嫌いだった。すると母親は「いずれ社会人になるのだから」と。でも今僕はコメディアンだ」というダダ滑りのギャグを聞いて「確かに、誰でもコメディアンになれる時代です」と嘲笑する。

 市長選のための演説会場前ではトーマス・ウェインのテレビでの発言に怒り狂うピエロたちが押しかけていた。それに紛れ込んだアーサーは対面を果たすが、トーマスからは「あの女はイカれている」と言われ自分と母親ペニーとは何の関係もなく、アーサーはペニーの養子だという。母親がかつて入院していた州立病院のカルテからペニーの恋人の暴力でアーサーは「突然笑いだす病気」になったこと、ペニー自身も虐待をしていたことが明らかになるとアーサーはたった一人だけ信じていた母親にも裏切られたことに絶望し、彼女を殺す。

 絶望だらけのアーサーにたったひとつの光明が差し込む。フランクリンの番組スタッフから出演依頼の電話がかかってきたのだ。「以前放送したあなたのショーの映像が話題なので、出演しませんか?」あのダダ滑りして、フランクリンが薄ら笑いを浮かべたあれが!?アーサーは快諾する。
 生出演当日。ピエロのメイクをしたアーサーは刑事たちに追われるが今や町中がアーサーのようにピエロの仮面、メイクをした怒りに震える連中であふれかえっている。彼らはアーサーを守るように刑事たちの邪魔をする。無事アーサーはフランクリンの番組に「ジョーカー」として出演。「地下鉄の事件で3人をやったのは俺だよ」



 ここ30年ぐらいの映画でここまで危険なやつは見たことがない。今や世界中でかつてないほどの格差社会が蔓延しており、一握りの富裕層がありとあらゆる富と権利を支配して、貧困層を絶望のどん底に突き落としている。彼らはヘナチョコな連中が搾取されるのは当たり前さとばかりに偉そうな顔をしてふんぞり返っている。たかが稼いでいるだけの人間が稼いでいない人間を平気で見下し、テレビの司会者ごときがこれまた偉そうな顔で世間を切って捨て、他人を笑いものにするのだ。
 格差社会の底辺にあえぐ人々には他人事と思えない。違うことはたった二つ、銃を持ち人に向けるか、怒りを権力者に直接向けるか、だ。『ジョーカー』では貧困層の怒りが直接権力者たちに向いていくが、世界中でうっぷんの溜まった人の怒りが自分より底辺の人々に向かう有様だ。仕事を奪われた怒りを移民に向けたりだとか、今日本では台風の被害で避難生活を強いられる人たちが避難所にホームレスが来るのはイヤだと排除しようとしたり、それらの行動をお笑い芸人が「嫌でしょ」「何されるかわからないし」とか言い出す始末。またその発言を巡って議論が戦われたりする。プライベートもない避難生活を強いている役人や政治家に怒りは向かないのだ。

 アーサーは「自分からすれば悲劇でも、他人から見れば喜劇なんだ」といっていた。『ハングオーバー!』シリーズなどで知られるトッド・フィリップス監督は絶望的な格差社会をまったく笑えないコメディ映画として撮ってしまった。劇場内では観客が次第にどんよりしていくのがよくわかる。
 この映画を見てると、大抵の世の中はサディストによって支配されて、彼らによってマゾヒストが量産されていることがわかる。権力者はトーマス・ウェインみたいな他人を見下すサディストで、アーサーみたいに痛めつけられても笑うしかないマゾヒストを支配している。だがマゾヒストだっていつまでも痛めつけられてるわけではない。銃口がお前に向くことだってあるんだ。その時はお前を笑わせてやるぞ。さあ笑え!おかしくてしょうがないだろう?

  


Posted by 縛りやトーマス at 10:18Comments(2)映画

2019年10月17日

ツカマルシアター

 常に自分の周囲2メートルから5千キロぐらいまでのどうでもいい情報に目を光らせている僕の目に突然飛び込んできたこのニュース。


カフェで映画館、無許可営業=容疑の社長ら書類送検-警視庁
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019101600606&g=soc

 吉祥寺のミニシアター、ココマルシアターを運営する会社社長と元社員の男が書類送検。容疑はカフェと申告した映画館の二階で許可を得ずに映画を上映していた興行場法違反(無許可営業)だ。

 ココマルシアターはゲーム会社デジタルワークスエンタテインメントの代表取締役・樋口義男氏(今回書類送検された会社社長)が吉祥寺にかつて存在した映画館バウスシアターの魂を引き継ぎ、映画の上映だけではなく、配給、更に制作・監督まで手掛けるというビッグプロジェクトで、映画館建設のために実施したクラウドファンディングで目標額を大きく上回る約650万円を調達、約500人の応援するサポーターがつくなど、吉祥寺映画ファン界隈から熱い注目を浴びていました。

 しかし、プレオープンを予定していた日(2017年4月15日)までに工事が間に合わず、むき出しの配線がそのままにされた中、なんとか初日の上映だけは行ったものの、翌日以降の上映は中止。再工事のため正式オープンは延期に。その後しばらくの間ココマルシアターはオープン日決定→工事が間に合わずオープン日延期→工事が間に合わない→延期を果てしなく繰り返したのだった(4月15日のプレオープン日も一度延期したうえでの強行)。
 当初は2,3階も映画館として営業していく予定が今回の時事通信の記事内にもある「避難階段の数が足りなかった」ために許可が下りず、2,3階をカフェとして申告。しかし実際は2階でも映画の上映を行っていた

 なんとかオープンにこぎ着けたものの、初日の初回上映作品で「音がまともに出ない」「映像がまともに出ない」「上映中止に」というトリプルコンボをたたき出す結果に。ちなみに客は4人という・・・映画館のオープン日に4人て・・・


 このようにオープン以前、オープン直後もありえないようなトラブルを連発させていたココマルシアターはその後もクラウドファンディングやマクアケのサポーターにリターンしてなかったり、サイトの宣伝文やスケジュール表が誤字・脱字だらけだったり、館内アルバイトの態度がひどいとか、座席のシートが切り刻まれていたとか、看板からキノコが生えていたとか、そもそもココマルシアター自体がひどすぎるとか、突っ込みどころばかりが目立っていた。結局、2年数か月しかもたずに劇場は閉館。その幕切れのあとに書類送検というエンドゲームを迎えたのです。

 書類送検の容疑となった無許可営業については、映画館営業中に多くのココマルウォッチャーが指摘しており、都が57回も行政指導しながら改善しなかったというのだから悪質そのものだし、いろいろなトラブルがありながらもココマルシアターを信じて通ったり、ネタにしていた人たちを裏切る行為なんじゃないですかねえ。これが何よりも問題だと思うのです。
 樋口社長がココマルシアターについて語る誇大妄想めいた発言の数々も、こうなっては痛いだけでしたね。これじゃあココマルならぬツカマルシアターじゃないか!ココマルシアターの名前が出るたびに劇場マナーCMに出ていた武田玲奈のことを思い出したり(いねえよ!そんなやつ!)、ここでイベントしていたアイドル、つりビットの解散もココマルのせいだ!(多分無関係)

 まあ、樋口社長もココマルシアターに一度も行ったことがない僕に言われたくないでしょうけど・・・


武田玲奈にも謝れ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 21:15Comments(0)映画日本のとんでも事件ネット

2019年10月12日

スミーニャ軍曹の鬼解説T-34

 10月末に日本公開されるロシア映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』は伝説のロシア映画『鬼戦車T-34』のリメイクなのですが、最初に予告編を見たとき、「戦車でロシアだから、上坂すみれさんあたりが宣伝大使に選ばれたりしないかなあ」と思ってたら、その通りになりました。ほんまにやってどうすんねん。

発射!着弾!爆破!上坂すみれがロシア×戦車映画「T-34」の見どころナビゲート
https://natalie.mu/eiga/news/350916

 各映画会社が海外映画の宣伝のためにありとあらゆる手段を用いて旬の(または旬でない)タレントを使ってなんとかしてワイドショーに取り上げてもらって、「あの番組で何秒流れた」「この番組で長めに使われた」と広告会社だけが満足して、動員にはまったくつながらない・・・そんな間抜けな光景を何度も見てきましたが、珍しく作品と宣伝キャラがズバリハマった宣伝を観ました。配給のツインさん、お疲れ様です。

 Пойдем в кино!(映画館にいこう!)


すみぺの作品解説



  


Posted by 縛りやトーマス at 05:23Comments(0)映画