2018年09月23日

サメVSステイサム!食うか食われるか?『MEG ザ・モンスター』



 上海の海底に建設された海洋研究所ではマリアナ海溝の調査が行われていた。海底とされていた地点を越えてさらに潜航する探査艇。しかし探査艇は謎の巨大生物に攻撃を受けて浮上できなくなる。研究所の責任者ジャン博士(ウィンストン・チャオ)は元レスキュー隊員のテイラー(ジェイソン・ステイサム)に助けを求める。テイラーは5年前に沈没した原子力潜水艦の乗組員救助に向かったが謎の巨大生物の攻撃を受け、仲間を見捨ててしまった過去があった。ジャンとテイラーは今回の事故が5年前と同じ巨大鮫メガロドンが起こしたものだと想定し、テイラーは最新の潜水艇で救助に向かうのだが。


 今時珍しい巨大生物のモンスター・パニック映画。今は何年だよ?日曜洋画劇場で淀川長治さんが『ジョーズ』と同じ原作者のピーター・ベンチリーのイカ映画『ザ・ビースト』を楽しそうに紹介していた時代じゃないんだぞ!と侮るなかれ。本作は全世界で興行収入4億7300万ドルを突破しており『ジョーズ』(75)が持つサメ映画歴代記録4億7000万ドルを40数年ぶりに更新したのだ!

 今更サメ映画なんてCGを使ってド派手に暴れまわるぐらいしか作りようがないと思ったが、本作はメガロドンに対して段階を踏むアプローチを描いて観客を飽きさせない。まずは最新の潜水艇(これが『ウルトラマン』とか『原子力潜水艦シービュー号』とかに出てきそうなデザインのメカでカッコいいぜ)で救出に向かう。すると探査艇は巨大なイカに襲われる!これは前述したベンチリーの『ザ・ビースト』へのオマージュか!?サメかと思ったらイカ!と思わせてそいつがメガロドンに食われて無事主役登場。それをなんとか追い払うが研究所のスポンサーは犠牲になった遺族らへの訴訟対応としてメガロドンを捕まえようとする。まずはGPSを打ち込み、シャークケージに入れた囮を使ってサメを捕獲するがさらにデカいメガロドンが現れて『ディープ・ブルー』で演説をぶつサミュエル・L・ジャクソンが無惨にサメに食われたみたいに飲み込まれる。海水浴客でごった返すビーチにメガロドンが来襲、大惨事の中生き残ったテイラーたちが最後の戦いを挑むのだ。

 全長23メートルとバカでかすぎるメガロドンと対決するのは世界一カッコイイハゲ、ジェイソン・ステイサム。元水泳の飛び込み選手で逆三角形の肉体はスタローンみたいなステロイド系の筋肉ではなくナチュラル・マッチョなステイサムが体一つで海に飛び込みサメと死闘を繰り広げる様は説得力がある。彼のおかげで単なるB級アクション映画の範疇を軽く飛び越えた。
「サメは俺が片付ける!」と銛一本、いやナイフ状の武器で戦いを挑むクライマックスは『白鯨』のエイハブ船長かと見まがう狂乱のバトルだ。ヒロイン的立場の登場人物がいるものの、ステイサムは彼女の代わりにシャワーシーンまで見せつけて観客へのサービス(?)も忘れない。もはやこの世界で互角にやりあえるのはメガロドンとステイサムしかいないという一騎打ちの前には少々辻褄の合わない脚本(探査艇が海底と思われる海層より深く潜航したことでメガロドンが深海からあがってきた、という説明があるんだけどじゃあ5年前にステイサムらを襲ったのはなんなんだよ?)とか全然気になりませんね


  


Posted by 縛りやトーマス at 11:27Comments(0)映画

2018年09月19日

自己完結しているオタクに捧ぐラブストーリー『君の膵臓をたべたい』(アニメ)



 君の膵臓をたべたい。奇妙なタイトルである。これがホラーなら違和感もないが純愛映画なのだ。食べたいほど愛してるのか?食べたいならまだわかる。これが「売りたい」だったら大変だ。金欲しかったら膵臓売れぇ!!昔そんな人がいました。あれは腎臓だったかな。

 住野よる原作によるライトノベルのアニメ化。2017年に実写化されて35億円のヒットを記録…したものの、実写版は原作とは一部を変更され、登場人物たちが大人になって12年前の物語を回想するという内容に原作者の住野先生が不満だったと言う。
 実写版の主演はDISH//の北村匠海に当時はまだ実写『あの花』や映画『咲-Saki-』の主演ぐらいでしか知られてなかった浜辺美波というキャスティングが弱いと思われたのか、それをカバーするために客の呼べるスター、小栗旬や北川景子を「大人になった現在の登場人物」として入れたのがいかにも東宝映画らしいね。アニメ版は実写より前に企画されていた上に住野先生自ら参加していたというので、実写版のような納得のいかない変更はなく原作に忠実につくられた。


 病院のロビーで偶然拾った一冊の本を拾った僕(物語の主人公。CVは高杉真宙)。「共病文庫」とかかれたその本は「僕」のクラスメイト山内桜良(CV:Lynn)がつづった秘密の日記。桜良は膵臓の病気により余命僅か。「僕」は桜良の両親以外では唯一病気のことを知る人物となる。それをきっかけに桜良と「僕」は仲良くなるのだが、「僕」は自分以外に興味のない「友人のいない」人間だった。
「僕」が友人をつくらないのは相手を見て「この人は自分のことをどう見ているのか?」が気になりすぎて友人ができない、という性格は友達がつくりにくい人間の内面を見事なまでに表していて、草食系という言葉では言い足りないほどの受け身野郎。「僕」は桜良に振り回され、どう見たってデートにしか見えない行為をし、挙句は一泊旅行にまで付き合わされる(「僕」はあくまで「付き合わされる」。ラノベオタクの人にわかりやすくいうとハルヒとキョンのような関係)。恋人同士でもなければやらないようなことを平気でしているのに二人は最後まで恋人にはならない。恋人にならない純愛映画!?なんだそれは!!

 象徴的なのが二人が劇中でやる真実か挑戦かゲーム。トランプを一枚ずつ引き合って数字の大きい方をめくった方が負けた相手に「真実か挑戦か」と聞き、負けた方は必ず「真実」と答え、勝った方は相手が答えにくい質問をする。負けた方は質問に真実を答えるか、答えたくない場合は「挑戦」を選ぶ。勝った方は相手に要求をし、負けた方はそれに「挑戦」しなくてはいけない。
 桜良は「わたしのカワイイと思うところをみっつ選んで」といい、「僕」は答えられないので「挑戦」を選ぶ。桜良は「わたしをベッドまで運んで」と要求。ヒロインにそこまで言われないとできない主人公!
 この「真実か挑戦か」ゲームは本作の最大の魅力。最後の最後まで恋人なのかどうかもはっきりしない二人の関係を表している。二人は他愛もない質問ばかりして桜良も「君はわたしのことが好き?」とか聞けばいいのに質問すらしなくてモヤモヤする。でもこれはそんなことをとても聞けないが、言わなくても自分の中ではわかっている自己完結しているオタクが好むラブストーリーなのだ。

 こんな話が多くの一般客に受け入れられているという真実。ビックリしました。時代がオタクに追いつこうとしている!

「僕」の声を演じた高杉真宙は『仮面ライダー鎧武』でヒーローになれないのならいっそ巨悪になってやる、と覚悟を決めながら小悪党にすらなれなかったよ…というひとり難しい役どころを演じていたが、今回も捉えどころのない自己完結する主人公を丁寧にきめ細かに演じていた。芸能人吹き替えと侮ることはできない。


  


Posted by 縛りやトーマス at 23:11Comments(0)映画オタク

2018年08月30日

『カメラを止めるな!』の本当の元ネタ?忘れ去られたアニメ『超変身コス∞プレイヤー』


 興行成績15億を突破し、20億円が見えている映画『カメラを止めるな!』FLASHが煽ったパクリ騒動もなんのその、夏映画の話題を掻っ攫っています。
 さてそのパクリ騒動の最中、月一で一緒にトーク・イベントをやっている友人Aことアシスタント・トモにこの作品を勧めたところ、「これって『超変身コス∞プレイヤー』に似てますよね?」と言い出すので何のことかさっぱりわからなかった。トモによると2004年にサンテレビで放送していた15分アニメ枠の『A15』で放送していたシリーズだという。14年前!元大学で自主制作映画を撮っていたトモは「撮影本編と劇中劇の舞台裏を描く二重構成の物語がカメ止めと酷似している」と指摘。「むしろ舞台GHOST IN THE BOX!よりもこちらがパクリかも知れない」とまでいうので見てました。以下解説。

 『A15』はポニーキャニオンのアニメレーベルm.o.eの15分アニメ枠の総称で、その中の『変身3部作』と呼ばれているうちの第一部にあたるのが『超変身コス∞プレイヤー』だ。


 コスプレ好きの女子高生である星野古都は、偶然邪神を復活させてしまい、その結果世界は魔物の徘徊する危機的状況に陥ってしまう。この状況を打破するため、彼女はコス∞プレイヤー(コスモポリタン・プレイヤー)と呼ばれる祈祷師の一人であるミコレイヤーとなり、仲間のコス∞プレイヤー達とともに敵と戦うことになる。
 古都はミコレイヤーとして仲間たちと戦い続けるが、強敵・黒祈士の正体が自分が邪神を蘇らせたために異世界に取り込まれ犠牲となったクルスであったことが発覚。クルスの帰還を他のコス∞プレイヤーが喜ぶ中、「本当は彼が黒幕ではないのか?」と疑いはじめ、仲間たちと袂を分かつことに。クルスはコス∞プレイヤーたちを目覚めさせるために彼女たちを無理やりトラウマに向き合わせたり、クルスに愛情を抱くスカーレット/シスタレイヤーをSM責めにしたりする。真相は古都を見守り導いていたタキツヒメこそが黒幕だったのだが最終的にコス∞プレイヤーたちの奮戦によって世界は救われる…という話が全8話に渡って展開されるが、前後のつながりが支離滅裂で破綻しているのだ。あとはコス∞プレイヤーたちが戦闘中に不必要としか思えないパンチラ、エロ描写を山ほど見せられるという出来の悪い(ただし作画レベルは高い)映像を見せられ何が何だかわからないまま完結。
 すると翌週からは『ヒットをねらえ!』という第二部にあたる作品が何の説明もなくスタート!


 生田美月は映像制作会社・宝竹の新人で、子供の頃に見た刑事ドラマに憧れて入社、ついにプロデューサーとしての仕事を任されることになるが、それは刑事ドラマではなく子供向け特撮番組の『超変身コス∞プレイヤー』であった…実は8話かけて放送されたものは同名のテレビ番組だった!ということが明かされる。生田はプロデューサーとして度重なる脚本制作のトラブル、上層部のワガママ、芸能事務所の方針に振り回されながらもなんとか番組を完成させようと奮闘。その様子をコメディタッチで描くという、おお、まるで『カメラを止めるな!』ではないか!
 劇中劇のアイデア自体はこれがオリジナルではないですが、似たようなことを14年も前にやっている人たちがいた!しかも深夜アニメの世界で!この二部では一部の『超変身コス∞プレイヤー』の展開が支離滅裂なのはダイジェスト版だったからということも明かされるし伏線の回収も行われる。『ヒットをねらえ!』はトラブルにもめげず作品を完成させようとする生田の姿に思わずほろりとしてしまい、特撮番組制作の舞台裏を知っている人には思わず頷ける場面も多い。登場人物の名前がいのくままさお(仮面ライダーシリーズで有名なベテランカメラマン)のパロディのかのうたつおとか、大物脚本家の名前が高原進三というどう見ても上原正三のパロディで特撮ファンはニヤリ。『ヒットをねらえ!』はカメ止めのように産みの辛さがきちんと描かれ泣き笑いもあり大変面白く、本作だけソフトを買ったという意見も聞く。しかし、このシリーズは『変身3部作』である。さらに第3部にあたる『LOVE♥LOVE?』がスタートするが、これが大変な問題作なのだ。


 タレントを目指す高校生の大泉直人はオーディションに落ち続けるが、ひょんなことから特撮番組『超変身コス∞プレイヤー』の脚本とメイキングビデオのカメラマンを任されることに。プロデューサー生田により大泉は『超変身コス∞プレイヤー』の原作者であり脚本家であることを隠してカメラを回す。メインヒロインである星野古都/ミコレイヤーを演じる八神菜摘は大泉のクラスメイトで彼女に好意を寄せる大泉はつい彼女を中心に撮影してしまう。ところがある日をきっかけに他の出演者の女性たちから大泉は熱烈なアプローチを受けることになる。八神一筋と決めている大泉は懸命に抗うのだが、童貞野郎・大泉を襲うラッキースケベの罠は如何ともしがたい!その裏では度重なる脚本の変更を生田に要求され、「あのチビッコがぁー!」と部屋でひとり悪態をつく日々を送る大泉の精神は崩壊寸前に。そんな中、演技の悩みを抱える八神の相談を受けた大泉は気が付けばラブホテルに二人きりに!

 当時の深夜アニメ王道のエロ・ラブコメ描写も極まれりといったところで物語は驚愕の展開に!なんと大泉が原作者であり脚本家であることは八神たち女性出演者全員が知っていて、彼女たちは自分たちの出番を少しでも増やしてもらおうと打算で大泉に迫っていただけだったことが発覚!
 真相を知った大泉は自分を馬鹿にしていた彼女たちに脚本上で復讐しようとする(!)ストーリー上不必要なSM責めに遭わせて
「純粋な俺の気持ちを踏みにじりやがって…!謝罪しろぉ!」
 と妄想を募らせる。そんな脚本、プロデューサーチェックの段階で引っかからない?と思うが、『ヒットをねらえ!』ではこの時期仕事がうまくいきすぎている生田がそんなことが起きてるとはつゆ知らず、大泉を信じて脚本をノーチェックで通していたことが描かれていたのだ!(まさかこんなところに伏線が)なのであとからこのシーンって必要なの?とぼやく生田に「脚本通したのは生田さんですよね!?」と強気に出る大泉!この後まあ色々あって(とても書けない)番組は打ち切りになってしまうのだった。


「二重構成で本編&劇中劇の舞台裏を描く」という『カメラを止めるな!』のスタイルを14年前に完成されているのがスゴイ。こちらは二重どころか三重だもの。
 しかしこの『変身3部作』が『カメラを止めるな!』同様の熱い支持を受けて今も語り継がれる作品なのかというと疑問。僕も全然知らなかったし(この枠でやってた『鋼鉄天使くるみ』は見てたのに)、このカメ止め騒動で類似点を指摘しているような意見もほとんど聞かない。
 でもその理由もわかる気がする。3部作のうち面白いのは二部の『ヒットをねらえ!』だけで『超変身コス∞プレイヤー』はイマイチな出来の萌えアニメで、『LOVE♥LOVE?』は人間のドロドロした部分を描きすぎで、視聴者が応援できる部分がほとんどない。『カメラを止めるな!』はその辺が本当に上手くできていて、あの出演者たちを観客全員が応援したくなるようになっているが、『変身3部作』にそれが感じられるのは『ヒットをねらえ!』だけで『LOVE♥LOVE?』であんなスキャンダルを起こしている連中を安易に許すような展開に納得できない。はっきりいって『ヒットをねらえ!』までで終わっておけば傑作として語り継がれたかもしれない。
 深夜の萌えアニメにこんなこというのは野暮だけどパンチラもエロも必要以上に多すぎ物語のテンポを削ぐ勢いで入り込むので(ただでさえ15分アニメなのに!)まったく萌えられない。
 本シリーズの脚本を書いた荒川稔久さんはスーパー戦隊シリーズでおなじみの人でアイドル好き、萌えアニメでも定評のある人なのになぜこんなことに。『LOVE♥LOVE?』ではヒロインの八神が大泉に「この人の脚本を読んで、ヒーローものが好きなんだなあってことがすごく伝わってきたんだ」っていうけど『超変身コス∞プレイヤー』を観る限り、そういうの全然伝わってこないよ…

 しかし、影響された人たちはいたようで二年後の2006年に同じサンテレビで放送されたアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』は本編の劇中劇『朝比奈ミクルの冒険 Episode00』から第一話がスタートして後にその舞台裏が明かされるのだ!まったくの偶然だろうが、類似性や影響力を考えずにいられない。

 こういうのを見てみると『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が同じようなテーマでも観客が応援したくなるような物語にして、カタルシスを与えるのが上手かったのかがわかるね。
 上田監督、次回作は『超変身コス∞プレイヤー』と『ヒットをねらえ!』の実写リメイクやってくれないかな?絶対アニメより面白くなるよ。『LOVE♥LOVE?』はやらなくていい。

※変身3部作は別に封印作品でもなんでもないので、DVDやBDもしくはバンダイチャンネル、U-NEXTなどの配信サービスでも観られます

  


Posted by 縛りやトーマス at 02:45Comments(6)映画特撮・ヒーロー

2018年08月23日

浜村淳、『カメラを止めるな!』を観る

 Twitterのタイムラインに「浜村淳、『カメラを止めるな!』をそんなに面白くはなかったという」というのが流れてきた。それはMBSラジオの長寿番組『ありがとう浜村淳です』の8月17日放送分だ。浜村さんは最近になってようやく『カメラを止めるな!』を観たようです。一体どういうことなのか確認した。以下その部分の書き起こしです。この日は金曜日なのでアシスタントは鳥居睦子さん。



浜村:映画もテレビドラマもネタがないんですよ。なにか変わったことやらんと。私はおとといね、『カメラを止めるな!』という映画、300万円でつくって今稼ぎ10億円や
鳥居:今すごいヒットしてますね
浜村:見てきましたけどね、そんなにビックリするほど面白いとは思わなかった
鳥居:まあハードルを上げ過ぎるとね
浜村:あのね、今の若い人は過去の名監督の映画を観てない人が多い。観よう思っても見られない。テレビでちょくちょくやるぐらいで。黒澤明、木下恵介、溝口健二、小津安二郎。名監督中の名監督はね精魂込めて作った映画、ほとんど見てない。外国でいうとジョン・フォード、ウィリアム・ワイラー、あるいはデヴィット・リーン。こういう名監督の映画をね、それこそ40年50年経ってますから、めったに見てないですね
鳥居:そうですね
浜村:本格的な映画というものを。だからね、自分の周りにいる普通の人がね、普通に撮って、ゾンビの映画を撮ってるうちに一人二人と本物のゾンビになっていく。これあの自分の身の回りに普通の人がドジ踏むから面白いんですね。そういうことやと思いましてね。まあなんでこんなに当たったんか、よくわからない、もう一遍、今日か明日観に行こうと…
鳥居:あっそうですか(笑)
浜村:(笑)
鳥居:でもなんか私は若者の情熱はすごい感じましたけどね
浜村:そうですね。情熱は確かに感じますけど、あの無名の人々が上田、上田慎一郎監督やったっけ
鳥居:ねえ、この監督さんもこれがデビュー作で
浜村:初めてね、長編映画初めてでね、確か滋賀県の人でしょ
鳥居:そうですか。へえー
浜村:(スタッフに確認するように)わからない?そこまでは?そうですか。ちょっとそこまでは
ありがとう娘:滋賀県の方ですね
浜村:滋賀県の人、そうなんですね
鳥居:じゃあご両親も喜んではるでしょうね
浜村:そら大喜びですわ。映画の世界という道楽もんが入る世界にね
鳥居:(笑)ホントですね
浜村:うちの息子が入りよってからに
鳥居:入っちゃった(笑)
浜村:ロクに金も稼げないですよ
鳥居:でもこれで稼いでますよ
浜村:今まではロクに稼がんと、実家に仕送りもせんとやね、何をブラブラしとんねん、てなもんやったんですが
鳥居:決めつけてますけど!そうじゃないかも知れませんよ。もしかしたら
浜村:そうかもしれんやんか
鳥居:一生懸命働いてたかもしれませんよ
浜村:あのね、カツドウの世界に入った人の親はみんな心配しますよ
鳥居:心配はしてはるでしょうけど
浜村:あんな世界入って大丈夫やろかと。それがね、もう10億円、その映画だけに10億円入ったわけではないけれど、経費やら色んなもん引いても何億円
鳥居:ものすごい額ですよ
浜村:もうひょっとしたら、うちの息子、琵琶湖を買い占めるんやないやろかと
鳥居:ホントにねえ


 聞いてみるとそんなに否定的には言ってないじゃないですか。もういっぺん観に行こうとか言ってるし。ただ『カメラを止めるな!』の面白さはまったくわかっていない感じですが。「自分の身の回りに普通の人がドジ踏むから面白い」ってどういうことなのかまったくわからない。浜村淳さんだからしょうがないけれど。でも昔の名監督の映画はねえ、面白いですよ。ヴィクター・ハルぺリンとかエド・ウッドとかルチオ・フルチとかジョージ・A・ロメロとか。  


Posted by 縛りやトーマス at 02:00Comments(0)映画

2018年08月21日

カメ止めパクリ騒動

 先週末の興行ランキングで圏内に再浮上、興収は8億を突破している映画『カメラを止めるな!』。無名の制作陣、キャストによる製作費300万円の快進撃に世間が拍手喝采を浴びせているのですが、それに水を差すような話題が…なんと、この映画がパクリだというのです!!
 騒動の発端は今日発売された週刊誌FLASHから。

独占スクープ
大ヒット映画をめぐる著作権侵害疑惑
原作者が告発
『カメラを止めるな!』は私の作品を無断でパクった

https://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101002

 この映画の「原案」としてクレジットされている劇団PEACE(現在は解散している)の主宰だった和田亮一氏。和田氏はFLASHの取材とnoteにて公開している文面で映画『カメラを止めるな!』は自分が原作、演出を手掛けた舞台『GHOST IN THE BOX!』(2011年初演、2013年に再演)を無断でパクっていると主張する。

映画「カメラを止めるな!」について
https://note.mu/rookey/n/ne25a640b8cc7

 事の経緯を記すと、舞台『GHOST~』は和田氏が二部構成のプロット(サスペンス映画の撮影をしていた映画サークル内で本当の殺人が起き、撮影が始まる直前の出演者、スタッフのやりとりが明かされる)を考案し、当時劇団に居た和田氏の後輩A氏(映画パンフレットによると荒木駿)が脚本を書いて上演された。
 劇団解散後の2015年に『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督がかねてより交流のあった元劇団員のB氏(映画パンフレットに大坪勇太との記載あり)と接触、脚本を書いたA氏に映画用の脚本執筆を依頼する。この時和田氏はnoteの記事によると「精神を病んでおり、立ち直ることができなかった」ためにこの映画化プロジェクトに参加することができなかった。劇団員たちとの連絡も絶っていたというので、和田氏に映画化の連絡があったかどうかは不明。
 が、この企画は頓挫し、消滅。2016年にとある企画コンペのために『カメラを止めるな!』の形に近いプロットを完成させるがコンペは落選。2017年にENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾のオファーを受けた上田監督がオーディションでキャストを決定、『カメラを止めるな!』の企画がスタート。そして映画が完成。公開当初のクレジットには荒木、大坪両名の名前が記載されていた。

 映画の大ヒットを受け、和田氏は7月8日に『カメラを止めるな!』を鑑賞。その際には以下のようなツイートをしている。

ワダリョウイチ
‏ @Rookey_rw
7月8日

これから
「カメラを止めるな!」を見る。
僕が25歳から3年間命をかけてやってた劇団の、その公演の一つに上田監督が刺激され作られたという作品。
多分いろんな感情が生まれると思うんだけど。
大盛況です。
すごい。
うれしい。
楽しみ。

https://twitter.com/Rookey_rw/status/1015892121717391365


カメラを止めるな!
めちゃ面白かった。
作り手のみんな、映画が好きなんだなぁと思えた。
あの頃命かけて大好きな仲間と作ってた作品がこんな感じで命を与えられてて、本当にうれしかった。
最高でした

https://twitter.com/Rookey_rw/status/1015955712843739137

 このように当初は和田氏も映画版の方に感激して上田監督からも感謝のリプライを送られている。7月13日までは映画を観た人のツイートやWEBの映画記事にRTしているのだが、クレジットに自分の名前がなかったことや、構成や大まかな設定部分はそのままなのに「これはオリジナルストーリー」と言い張っている上田監督の姿勢を疑問に思った和田氏は7月18日に上田監督へ「原作という形で劇団名、作品名を入れてくれないか」と連絡。翌日上田監督から「『企画開発協力 劇団PEACE和田亮一』でいかがでしょうか」と返事があったのだが映画製作に協力していなかった和田氏はGHOST IN THE BOX!のタイトルと荒木、和田両名の名前を原作者としてクレジットして欲しいと要求。この要求に上田監督は「映画のもととなったのは舞台だが、出来上がったものは別物だから原作と(クレジットを)入れることはできない」と返答。
 この返答に納得できない和田氏は上田監督、映画のプロデューサーである市橋浩治氏と交えた三者会談を行うが市橋、上田側は原作者のクレジットを入れることを頑なに拒否。映画の拡大公開を控えた時期だったため「クレジットは今日決めたい」と言われたので一旦は口約束という形で「原案」の提案を受け入れる。しかしやはり納得ができなかった和田氏は弁護士を立てて「原作」のクレジットを要求。その後市橋プロデューサーから原案利用契約書が送られ、権利を買い取る形にして今後映画を舞台にリメイクする権利、二次使用の権利なども映画側が有する、というものだったためこれに納得できない和田氏はFLASHに告発のインタビューを受け、訴訟の準備をしているという。


 発売中のFLASHには舞台『GHOST~』と映画『カメラを止めるな!』の類似点が記されていて「二部構成」「撮影を見守るモニター室がトラブルに対応する様が描かれる」「途中で脚本の辻褄が合わなくなる」「台本にないトラブルを役者がアドリブで回避する」「たまたま居合わせた製作スタッフの関係者が撮影に参加する」などほとんど一緒で、これは和田氏が「自分が原作者」と主張するのもわかる。
 ただ和田氏が主張する「上田監督がオリジナルストーリーと主張していた」ようなことは僕が知る限りなかったと思うし、当初から劇団PEACEの『GHOST~』が元になったという話はあちこちのインタビューで話しているし多くの人が周知の事実だと思う。このように和田氏の主張や態度は疑問が残る部分も多い。三者会談でも口約束だけで済ませようとしたところとか。noteでは
「銀魂の映画は、全くオリジナルストーリーだけどちゃんと「原作」って入ってます」
 と書いているけど、あれは原作から各エピソードを引っ張ってきて組み合わせただけだよ!あれをオリジナルストーリーと認識するなら『カメラを止めるな!』は上田監督がオリジナルといってもいいことになるのでは?
 市橋、上田側にはなんで頑なに原作とクレジットしたくないのかもわからない。FLASHを読む限り舞台版も映画もほとんど同じなのだから「原作」とクレジットしてもよかったのでは?映画化の企画に参加していない人間を原作者とクレジットするのが嫌だったのか?この騒動で思い出すのが映画『そして父になる』の盗作疑惑だ。


「そして父になる」盗作騒動のウラ側
http://hunter-investigate.jp/news/2013/10/post-418.html

 映画『そして父になる』は病院側のミスによって取り違えられた子供をそうとは知らず6年に渡って育てていた親が真実を知って血の繋がりをとるか、6年間のつながりを取るか煩悶するという物語だ。
 この映画は是枝裕和監督のオリジナル脚本とされていたが、実は「参考文献」となった本がある。ノンフィクションライター奥野修司氏が17年に渡る取材で書かれた『ねじれた絆-赤ちゃん取り違え事件の十七年』(文春文庫)だ。
 映画は公開前(つまり撮影終了後)に制作会社のフジテレビから「『ねじれた絆』を参考文献としてクレジットしたい」と依頼があった。この時点で事後承諾にも程があるのだが、文春側は「『ねじれた絆』を参考にしているが、「原作」というには当たらない」として参考文献にすることを了承している。
 ならば何が問題なのか?文春側は映画の内容についてどうこういわない代わりに『ねじれた絆』が参考文献であることを世間に広く告知してほしい、という紳士協定をフジ側と結んだつもりだったが、その告知が思ったより為されなかったことを問題視しているようなのだ。

 今回のケースとまったく同じではないだろうが、事後承諾という部分では同じかと。権利関係という極めて敏感な問題をなあなあで済ませるとロクなことないですね。『ターミネーター』がエリスンの作品を引用したと訴訟になって大金取られたみたいに海外ならもっと揉めてると思うよ。

 騒動の渦中になった和田氏にもややこしい問題が浮上している。金の持ち逃げ問題だ。

tsun+sun(つんつん)
‏@greeNtsuN

tsun+sun(つんつん)さんがライブドアニュースをリツイートしました

おいおい和田さん、カメ止め訴えてる暇あったら「TOKYO:PUNCH-LINER」の件をちゃんとしてください。
自分は前払い予約のDVDとCD代持ち逃げしてるんですよ?
関係者の方に伺った話では、連絡もつかないし居場所もわからないということでしたが?それでどうやって許諾取れと?

https://twitter.com/greeNtsuN/status/1031690230464536576

 別の舞台の金を持ち逃げしているという。本当かどうか知らないけど知りたくもない色んな闇が漏れ出してる感じ。
 世間でヒット中の映画がパクリだと原作者が主張→その原作者は別のところで金を持ち逃げしていた
 という『カメラを止めるな!』ばりに二重構造になっているのが面白い。ぜひこちらをカメ止め2として続編、映画化してほしい。製作費は300万円で。


  


Posted by 縛りやトーマス at 15:08Comments(0)映画日本のとんでも事件

2018年08月17日

連続82回で止まった!

 僕が定期的に発行してる映画に関する小冊子(コピー本だけど)『映画はわかってくれない』で色んな映画のベスト10について書いた。「映画の中で死んだ人数が多いベスト10」とか「ロングランされた日数ベスト10」だとかだ。インドで20年以上連続上映されていた映画を見つけた時は悠久の時を生きるインド人の奥深さに感動した。
 そしてまた新たなベスト10ネタを見つけた。


映画「カメラを止めるな!」公式
‏@kametome12

6/23公開初日から≪82回連続満席≫を続けてきた聖地・新宿ケイズシネマ!本日惜しくも初めて満席がストップ(あと数人でした…!)。しかし【82回連続満席】この伝説的記録はしばらく破られる事はないでしょう。(上田監督が自分で破ると言ってました)。ケイズシネマでは9/7(金)まで連日12:30から上映中!

https://twitter.com/kametome12/status/1030027781625667584

 口コミ展開で前代未聞の大ヒットロングランを続ける『カメラを止めるな!』が初日から上映をしていて、ファンの間では聖地と呼ばれている新宿K's CINEMAがなんと上映初日から82回連続満席という記録を達成していた。K's CINEMAはスクリーンがたったひとつしかない上に84席という小さい映画館ではあるが、このこじんまりした場所から伝説が始まったというのも感慨深いではないか。
 K's CINEMAの前身は新東宝の封切館で、後に東映の封切館として任侠映画をかけていた新宿昭和館だ。60年代の東映任侠映画路線を中心に上映していた頃は観客が映画にハマってみな肩をいからせて映画館を後にし、スクリーンの上で起きた暴力や任侠を知人に熱く語っていたことだろう。2018年では客が「ポンッ!」と奇声をあげながら知人に『カメラを止めるな!』の凄さを語っている(想像)。時代が流れて上映する映画が変わっても同じようなことが起きているのだから不思議。レンタルDVDや配信サービスの充実によって映画館にゆく客足が減っているというのに。映画館は不変だ。




  


Posted by 縛りやトーマス at 13:18Comments(0)映画

2018年08月14日

奪還せよ『エクスティンクション 地球奪還』

 ネットフリックスで配信されているSF映画『エクスティンクション 地球奪還』を観た。



 主演はマイケル・ペーニャ。『エンド・オブ・ウォッチ』で主役ジェイク・ギレンホールの相棒役を演じ、『アントマン』でアントマン=スコットの親友役、『オデッセイ』で主役マット・デイモンの親友役…って親友役ばっかりだな!なんか、親友役が似合う顔なんだな。

 そんなマイケル・ペーニャ演じる主人公ピーターは悪夢にうなされる。何者かに襲撃され、同僚も友人も家族も殺される。そのせいで家族と不和が生じ仕事も上手くいかない。上司デヴィット(マイク・コルター)の勧めで医者にかかろうとするが病院で自分と同じ悪夢にうなされている男に出会う。これは妄想か?現実なのか?
 画してどこからかやってきた宇宙船(!)と武装したエイリアン(!)によって攻撃が始まる。ピーターは職場の工場が安全だという夢を見ていたのでそれを信じマンションから家族を連れて脱出する。途中でエイリアンを返り討ちにし彼らの武器を奪う。しかしエイリアンは気絶していただけで武器である銃を追跡してピーターたちに追いつく。そしてピーターはエイリアンたちの正体と目的を知る。


 最初はよくあるベタな侵略SFかと思い、2018年とは思えない古びた描写が続く上にピーターのうつ病に悩まされるようなダメ社員ぶりが胃に痛いのだが、中盤からはあっと驚く仕掛けが施され『エクスティンクション 地球奪還』のタイトルの意味がわかるようになると映画の内容自体が一変する。
 主人公の周囲でしか展開しないような話だが最後には世界規模にまで拡大するのだった。こういうの見るとやはり映画はアイデアだと思う。現在の社会問題にも相通じるテーマがあって唸らせてくれた。

  


Posted by 縛りやトーマス at 11:32Comments(0)映画ネットフリックス

2018年08月12日

約一年で撤去された前田有一

 去年の夏ぐらいからとあるTSUTAYAが前田有一の超映画批評で見事高得点を獲得した映画24選というコーナーをつくっていて、初めて見かけた時思わず嘔吐しそうになった。



 このコーナーの作品はこの店じゃ絶対に借りないぞ!と決意したが、ひょっとして他のTSUTAYAにも同様のコーナーができているのだろうか…と恐ろしい考えに囚われた。もうTSUTAYAじゃDVDレンタルできない!急いで府内のTSUTAYAを見て回ったが他の店にはなかった。

 おそらくこの一店舗に前田有一のフォロワーが居て、コーナーをつくったのだろうがいい迷惑だ。ちなみにこの店舗には「NO MORE 漫画実写映画」コーナーもあってデビルマンだのガッチャマンだのヤッターマンだのが並んでいた。なぜか実写ハガレンが置かれていなかった。前田コーナーといい、ひどくセンスのない店員がいたものだとため息をついたものだ。

 だが前田有一コーナーはこの夏めでたく撤去となって約一年の短い命を終えた。正義は勝つ。
 しかしこの一年に渡ってコーナーがあったのに僕はSNSやネットなどでTSUTAYAに前田有一のコーナーがある!という書き込みを一度も見た記憶がない。誰も気づかなかったのか、あの店舗を利用する者に前田有一を知っている人間が店員と僕しかいなかったのか。前田有一って人気ないんなー。




  


Posted by 縛りやトーマス at 23:18Comments(1)映画日本のとんでも事件ネット

2018年08月06日

シリーズ最高の傑作にして最大のトンデモ『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』



 『スパイ大作戦』の映画化『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新の第6作。本作はシリーズ最高傑作にして最大のトンデモ作品だった!


 IMFのイーサン・ハント(トム・クルーズ)率いるチームは核弾頭に使われるプルトニウム3個を回収すべく、売人から買い取ろうとするも取引現場が何者かに乱入され、仲間のルーサー(ヴィング・レイムス)が人質に取られる。イーサンはルーサーを見捨てることができず、プルトニウムは何者かに奪われてしまう。彼らの正体はアポストル(神の使徒)と名乗る前作『ローグ・ネイション』に登場した無政府組織シンジケートの残党だ。
 アポストルが世界中の3都市を核汚染させようとする陰謀を止めるため、IMFはプルトニウムを手に入れようとしている正体不明の男、ジョン・ラークを捕らえるミッションを発動。だが彼らの前にCIAの新長官エリカ・スローン(アンジェラ・バセット)が現れ勝手な行動ばかり取り、世界を危険に晒しているIMFは信用できないとCIAエージェントのウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を同行させる。パリに潜入したイーサンとウォーカーは正体不明の謎の女、ホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)に接触しようとするラーク(リャン・ヤン)を発見、眠らせてラークのマスクを作ろうとするが思わぬ反撃に遭ってしまう。しかも突如現れたMI6のエージェント、イルサ(レベッカ・ファーガソン)が二人を助けようとしてラークを射殺してしまう。顔を破損させたためにマスクは取れない。イーサンは「ラークの顔は誰も知らないはずだ」と変装もせずに素顔でホワイト・ウィドウに近づく。
 ウィドウとの接触に成功したイーサンだがウィドウ自身は仲介役に過ぎず、アポストルの要求はシンジケートのボスであり、前作でIMFが生け捕りにしたソロモン・レーン(ショーン・ハリス)を護送先のパリで脱獄させること。


 今回は複数の登場人物が複雑に絡み合い、しかも誰が本当の悪役なのか?がわからないようになっている。それは脚本上でわからないようにさせているのではなく、脚本家がわかっていない(笑)。
 なぜなら本作は撮影前に脚本が完成せず(33ページしかできていなかった)、監督のクリストファー・マッカリーは撮影しながら続きを考えた。まずトム・クルーズがアクションのアイデアを出し、それとストーリーがつながるように構成しようとした。なのでアクションとストーリーにまったくつながりがなくなってしまった。最初に出てくるヘイロージャンプ(7620メートルの高度から落下して低高度でパラシュートを開く)の目的は「パリに潜入する」というものだが、パリにいくだけなんだから普通に空港で飛行機に乗っていけばいいだろ!?
 クライマックスでもヘリで逃亡するジョン・ラークを追ってイーサンが荷物をぶら下げたロープに飛びついてそのまま追跡するんだけど、何をぶら下げてるのかまったくわからない。ぶらさがりのアクションを撮るためにそうしたとしか思えない!劇中ピンチになる度に「どうするんだ?」「今考える!」といったやり取りが繰り返される。それ、この映画の撮影のことだろ!

 脚本完成前に撮影に入るというのは駄作が出来上がる条件のひとつで、『クレオパトラ』『地獄の黙示録』(こちらは俳優側のトラブルで脚本を書きなおしたんだけど)なんかも同じで、その法則に従うなら『~フォールアウト』も駄作になるところだが、シリーズNo.1といってもいい面白さなのだ。
 その理由は次から次へと息もつかせぬアクションの連続なのでドキドキハラハラが最後まで持続するのと、ほとんどのシーンで主演のトム・クルーズが生身のアクションをやっているのでその迫力に魅せられてしまう。
 ヘイロージャンプのために100回練習ダイブをし、パリの街をBMWで爆走し、ヘリコプターの免許を取って疑似墜落させるスパイラル飛行を実演する。さらにはビルからビルへ飛び移るスタントで失敗して足を骨折までする!骨折が治るのに半年以上かかるといわれたものの、6週間で撮影に復帰したというトム・クルーズ。『プロジェクトA』のジャッキー・チェンじゃないんだから。
 今年で56歳のトム・クルーズ、もはやジャッキーでもやらないスタントに挑んでます。今回のサブタイトル「フォールアウト」は核爆弾が爆発した後に降る死の灰のことだけど、「余波」の意味もあるからトム・クルーズに影響されて色んな役者が「俺も負けないぞ!」と生身のアクションに挑むようにならないものか。56歳に負けるなよ!


 そしてBL界隈でも大人気のイーサン・ハント×ベンジー・ダンのカップルでおなじみ、サイモン・ペッグは今回もお姫さまポジション。ある人物にベンジーが成りすまして危険なミッションに挑む場面では

ベンジー「バレたらどうするんだよ?」
イーサン「安心しろ!その時は助けるから」
ベンジー「どうやって?」
イーサン「今から考える」

 このやり取り(笑)
 死にかけたベンジーを助けるかどうかが今回もクライマックスになっていて、またも安定のヒロイン感でした。


  


Posted by 縛りやトーマス at 00:45Comments(0)映画トンデモ映画

2018年08月04日

2010年代のエド・ウッドだ!『ブリグズビー・ベア』



 パッと見、とても冴えない25歳の青年ジェームズ(カイル・ムーニー)は両親のテッド(マーク・ハミル)とエイプリル(ジェーン・アダムス)に外出を禁じられ、地下に閉じ込められて暮らしている。外には有毒ガスが溢れていて危険だからと…
 ジェームズの楽しみは部屋のポストに届けられる、クマの着ぐるみが主人公の教育番組(『アレフ』みたいなの)、『ブリグズビー・ベア』ただひとつ。毎日のように同じ番組を見ているジェームズはそれに取り憑かれる。ある夜、ジェームズは警察が両親を連れて行くのを見る。ジェームズも同様に連れ去られ、警察署の一室で担当刑事のヴォーゲル(グレッグ・キニア)から、テッドとエイプリルは本当の両親ではなく、ジェームズは赤ん坊の頃に二人によって連れ去られたのだと教えられる。

 …というまるで『ルーム』みたいな話なのだが、こちらはより奇妙な展開になっていく。ジェームズは本当の両親と妹のオーブリー(ライアン・シンプキンズ)と暮らし始めるのだが、いくら本当の家族とはいっても25年も会っていない人間と普通に暮らせってそりゃあ無理だ!それに両親も妹も明らかにジェームズに気を遣ってよそよそしい態度だし。その上ジェームズにはブリグズビー・ベアのことしか頭にない。警察からブリグズビー・ベアはテッドたちがつくっていたのだと聞かされて「あの人たちが作ってたんだ!サイコーだ!」と大喜び。スポーツや映画を見せて他のものに興味を持たせようとする両親だがジェームズが興味を持つのはクマの着ぐるみだけ。

「ブリグズビー・ベアは僕のすべて、人生なんだ!」

とまるで「クラナドは人生」みたいなことをいうジェームズ。しかし新作はもう見られない…それなら、自分で作ってしまえばいい!
 ジェームズはオーブリーに連れられて行ったパーティーで出会ったスペンサー(ジョージ・レンデボーグ・Jr)がブリグズビー・ベアに興味を持ってくれたことをきっかけにブリグズビー・ベアの続きを作り始めるのだ。
 ジェームズたちがつくる映像は完全に素人仕事で予算もなければ技術もない。切り抜きの背景に安っぽい小道具、ヘナチョコなアクションの数々は失笑そのものだが、ブリグズビー・ベアにすべてをかけるジェームズたちには次々と理解者が現れる。特にヴォ―ゲル刑事はジェームズの純粋な創作意欲に打たれて警察の押収品からブリグズビー・ベアの小道具をこっそり渡してあげたり、かつて『テンペスト』のプロスペロー役で舞台に立ったという過去をうっかり話してしまい、ジェームズにもう一度やろうと誘われる。いざやり始めると昔取った杵柄が蘇り、ワンテイクに異を唱えて「もう一度やらせてくれ。今度はもっといい演技ができそうなんだ」と本気になり始める!
 そんな彼らに強く反発するのは父親のグレッグ(マット・ウォルシュ)だ。ジェームズが作ろうとしているのは彼から息子を奪った誘拐犯がつくったわけのわからない映像だ。グレッグはジェームズには治療が必要だと精神病院で放り込んでしまう。だがジェームズらが撮影している様子をオーブリーから見せられ、ジェームズにはクマの着ぐるみが必要なんだと理解を示す。

 奇妙な設定で始まった映画は、「何があっても映画を作りたいやつら」への愛がほとばしっている。ジェームズは自分の行動に揺るがない自信を持っていて、たったひとつでも大切なものを持っていて、そのためにすべてを賭けることができる人間のなんとまぶしいことよ!
 ジェームズは25年引きこもり生活の割にやたらとポジティブでどう見ても不釣り合いなパーティ会場でブリグズビー・ベアの愛をぶちまけてプチ人気者になってしかも、童貞喪失しそうになる!(未遂に終わるが)そこで童貞卒業したら創作意欲は失われるに決まっているので、未遂に終わった彼はますますブリグズビー・ベアにのめりこむ。
 この超ポジティブで嫌味がなく、テンポよく話が進んでいくところも本作の良さだ。

 クライマックスで目一杯の愛情を注いだ作品がボロクソに批判されたらどうしよう、とジェームズはトイレで嘔吐するのだが、スペンサーは「俺たちは最後まで作り上げたんだ。だから他人からの評価なんてどうでもいいのさ」というのだ!なんという男泣きのセリフ!
 『ブリグズビー・ベア』は創作における産みの悲しみ、辛さを見事に表現している。クリエイティブな仕事をした人はあのラストシーンに必ず泣く。技術や金じゃない!愛なんだよ!と叫ぶ『ブリグズビー・ベア』は間違いなく2010年代のエド・ウッドだ!



  


Posted by 縛りやトーマス at 12:34Comments(0)映画