2020年01月18日

これが日本の格差社会映画だ『カイジ ファイナルゲーム』



 実写映画『カイジ』シリーズの第三弾にして完結編。前作から9年ぶりの新作だ。9年も経ってるのだから、カイジ実写シリーズのコンテンツとしての魅力はすでに失われていると思っていたので、新作は意外だった。その間原作はいまだに続いていて、現在では命がけギャンブルで手に入れた24億をもって逃亡しようとするヘイスト(強盗)映画の脱出劇のような展開になっていて、原作漫画の売りである登場人物たちの緻密で高度な心理戦を今までにない形で描き出しており、相変わらずの面白さだ。
 が、実写映画の方は原作漫画の、漫画ならではの緻密な心理戦は実写で描くことは不可能なので、全部登場人物たちは絵で表現されていた心情や互いのやりとりを全部セリフで説明し、しかも絶叫口調でやる。ひたすらに大声で芝居がかったセリフを絶叫するの単純にして単調だが、舞台役者として巨匠・蜷川幸雄に揉まれた藤原竜也、歌舞伎役者の血を引く香川照之の異常なほどに高められた絶叫芝居の勢いに見させられてしまうのもまた事実。

 さてそんな単純にして単調な人生の破滅を賭けたギャンブル映画の3作目は、初めてのオリジナルストーリーだ。これまでの帝愛グループとカイジらロクデナシのギャンブラーとの戦いではない。相手は、日本だ。
 東京オリンピック以後、日本の経済は完全に破綻し、不況のどん底に落ち込んでいた。何の冗談かと思ったが本気でそういう設定なのである。日本全体が一握りの富裕層が暮す優雅な高層ビル群と、貧民が暮すスラム街に分断されてしまっている。スラムでは缶ビール一本が1000円という金額になり

「ふざけんじゃねえよぉ~!これじゃビールも飲めねぇよ~ぉ!」

 とカイジ・竜也がいつもの絶叫演技。派遣で働くカイジは給料の7割をピンハネされてまたたま絶叫。「なんだよこれぇ!これじゃ生きていけねぇよぉ!」そこに現れた会社社長で「派遣の帝王」と呼ばれている黒崎(吉田鋼太郎)が「いやならやめろぉ~!いくらでも代わりはいるんだぁ~!」と竜也に負けず劣らずの絶叫演技。吉田鋼太郎といえば藤原竜也と同じ蜷川幸雄の舞台で鎬を削った役者同士ではないか。シェイクスピア劇も真っ青の対決がスクリーンで展開される。

 その後カイジは地下で対決した大槻班長(松尾スズキ)から一発逆転のギャンブルがあると教えられ、秘策を授けてもらって参加。この映画には4つのギャンブルが登場する。ちなみに4つのギャンブルは原作者の福本伸行自らが考案したものだ。最初のギャンブルは「バベルの塔」。集められた参加者はとあるビルの位置を教えられ、最上階ににそびえる鉄塔の頂点にあるカードに最初に触れたものが最大99億9999万円か、同価値の情報を得るか、選択権が与えられる。カイジは大槻からビルの場所を事前に聞いていて、隣接するビルから鉄骨を伸ばして綱渡りを決行。見事勝利者となり情報をゲット。その情報によってカイジは資産家の老人、東郷滋(伊武雅刀)に出会う。東郷はこの国で栄華を極めている大金持ちだが、まもなく国会で政治家が銀行の預金を封鎖する法案を成立させようとしていることを知り、それを止めるために政治家の買収を画策するが、手持ち資産では足りず、黒崎と全財産を賭けた直接対決のギャンブル「最後の審判」に挑もうとする。その協力者として「金よりも情報を選んだ」カイジと最高についている女、桐野加奈子(関水渚)を仲間に引き入れる。どれだけ多くの賛同者を集め、大金を積むことができるかというギャンブルに挑むが、黒崎の罠に陥り大ピンチに。追加資金を手に入れるためカイジは地下で行われている命がけのギャンブル「ドリームジャンプ」に挑戦。見事大金を手に入れ、事前に仕掛けていた作戦によってカイジは勝利するが最後の最後で邪魔をする、通称・影の総理と呼ばれる若き官僚・高倉浩介(福士蒼汰)と彼が得意とするギャンブル「ゴールドジャンケン」で雌雄を決する勝負に出る。

 一握りの富裕層がすべての富を牛耳って貧困層を支配する格差社会の構造にメスを入れる、とでも言いたげな内容には白けてしまう。この映画の制作は日本テレビなんだけど、現在の格差社会を助長しているのがテレビ局をはじめとするマスメディアではないか。政府に牛耳られて政権のまともではない政策や与党の不祥事を糾弾することすらできない。『銀河英雄伝説』でも言ってたでしょ。「政治家が賄賂を取ることは政治の腐敗ではない。政治家個人の腐敗であるにすぎない。政治家が賄賂を取っても糾弾できない、それを政治の腐敗というんだ」と。
 そんな連中が貧困層の大逆転によって腐敗政治が転覆する、なんてフィクションを堂々と作っている事実には笑いが止まらないね。この人たちはこんな話を本気で信じていないに決まっている。映画の中で10人の参加者のうち9人が死ぬ死のバンジーゲーム「ドリームジャンプ」とかをやらせている側の気分でしょ。こんなバカげた映画をつくって大儲けしている状況に笑いが止まらないだろう。「またバカな貧乏人どもがありもしない絵空事を見に映画観に来ていやがるぜ」ってね。
 また原作者の福本伸行自身も今や大金持ちなんだから、本当の貧困層の気持ちなんてわかっちゃいないだろう。彼はまだ漫画家としてまっとうなやり方で稼いでいるんだから100歩譲って許せるけど、口では安倍政権を批判するようなお話にしながら(この映画の脚本は福本本人)実際は格差社会の利益を享受しているんだから、笑わせるなよ。
 本人が考案したというゲームの数々も原作漫画に出ていたいろんなギャンブルのクオリティに達しているものはひとつもなく、ガッカリです。ひょっとして漫画に使わなかったアイデアを引っ張りだしてきただけなんじゃあ・・・

 カイジ実写の1と2には山本太郎が出演している。山本は今、格差社会の是正のために本気で戦っているじゃないか。この映画のどこにも格差社会と本気で向かい合おうとしている部分は見当たらない。福本さんよぉ、山本太郎の爪の垢でも煎じて飲んでこいや!
 虚無だけが広がる無限の荒野。この映画の出来が悪魔的だった!



  


Posted by 縛りやトーマス at 15:15Comments(0)映画漫画

2020年01月18日

吹替がお好き? けっこう。ではますます好きになりますよ。

 全国を巡回中の映画『コマンドー4Kニューマスター吹き替え版』。何十年の前の映画の、しかも吹き替え版が再上映されているのは異例だが、コマンドー吹き替え版の持つ魅力と、玄田哲章氏他が演じる声の魔力によるものだろう。もはや俺たちは吹き替え版でなければ『コマンドー』を見られない体にされてしまったんだ・・・コマンドーがお好き? けっこう。ではますます好きになりますよ。

石丸博也、ジャッキー・チェン吹き替えギネス記録認定「ジャッキーさんが命懸けで作品つくり続けたおかげ」
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2020/01/14/kiji/20200114s00041000176000c.html?amp=1

 コマンドー玄田哲章以上にこの人以外が考えられない吹替、それがジャッキー・チェンの声を長らく演じている石丸博也氏だ。たまに字幕版でジャッキー映画を見たりしたら声に違和感がありすぎてもう、耐えられないですね。

 石丸さんも高齢で、ジャッキー役もそろそろ交代なのかな・・・ってジャッキー自身も高齢だよ!ひょっとしたら交代せずに済むかもしれない。仮に交代するとしたら誰かな?やっぱり山寺宏一さんですか?(いい加減に山ちゃんを休ませろよ)



  


Posted by 縛りやトーマス at 00:02Comments(0)映画

2020年01月14日

第92回アカデミー賞ノミネート作品(決戦は2月9日)



 2020年2月9日(現地時間)に発表される第92回アカデミー賞の全ノミネートが発表された。


作品賞:
『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』
『マリッジ・ストーリー』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『パラサイト 半地下の家族』

監督賞:
サム・メンデス(『1917 命をかけた伝令』)
マーティン・スコセッシ(『アイリッシュマン』)
トッド・フィリップス(『ジョーカー』)
クエンティン・タランティーノ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)
ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』)

主演男優賞:
アントニオ・バンデラス『Pain & Glory(原題)』
レオナルド・ディカプリオ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
アダム・ドライバー『マリッジ・ストーリー』
ホアキン・フェニックス『ジョーカー』
ジョナサン・プライス『2人のローマ教皇』

主演女優賞:
シンシア・エリヴォ(『ハリエット』)
スカーレット・ヨハンソン(『マリッジ・ストーリー』)
シアーシャ・ローナン(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)
シャーリーズ・セロン(『スキャンダル』)
レニー・ゼルウィガー(『ジュディ 虹の彼方に』)

助演男優賞:
トム・ハンクス『A Beautiful Day in the Neighborhood(原題)』
アル・パチーノ『アイリッシュマン』
ジョー・ペシ『アイリッシュマン』
ブラッド・ピット『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
アンソニー・ホプキンス『2人のローマ教皇』

助演女優賞:
キャシー・ベイツ(『リチャード・ジュエル』)
ローラ・ダーン(『マリッジ・ストーリー』)
スカーレット・ヨハンソン(『ジョジョ・ラビット』)
フローレンス・ピュー(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)
マーゴット・ロビー(『スキャンダル』)

脚本賞:
『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(ライアン・ジョンソン)
『マリッジ・ストーリー』(ノア・バームバック)
『1917 命をかけた伝令』(サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(クエンティン・タランティーノ)
『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン)

脚色賞:
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
『2人のローマ教皇』

撮影賞:
ロジャー・ディーキンス『1917 命をかけた伝令』
ロドリゴ・プリエト『アイリッシュマン』
ロバート・リチャードソン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
ローレンス・シャー『ジョーカー』
ジャリン・ブラシュケ『The Lighthouse(原題)』

編集賞:
『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『パラサイト 半地下の家族』

美術賞:
デニス・ガスナー『1917 命をかけた伝令』
ボブ・ショウ『アイリッシュマン』
バーバラ・リン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
イ・ハジュン『パラサイト 半地下の家族』
ラ・ヴィンセント『ジョジョ・ラビット』

衣装デザイン賞:
マーク・ブリッジス『ジョーカー』
ジャクリーヌ・デュラン『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
アリアンヌ・フィリップス『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
メイズ・C・ルベオ『ジョジョ・ラビット』
サンディ・パウエル&クリストファー・ピーターソン『アイリッシュマン』

メイクアップ&ヘアスタイリング賞:
『ジョーカー』
『スキャンダル』
『ジュディ 虹の彼方に』
『マレフィセント2』
『1917 命をかけた伝令』

視覚効果賞:
『アベンジャーズ エンドゲーム』
『アイリッシュマン』
『ライオン・キング』
『1917 命をかけた伝令』
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

録音賞:
『1917 命をかけた伝令』
『フォードvsフェラーリ』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『ジョーカー』
『アド・アストラ』

作曲賞:
ヒドゥル・グドナドッティル『ジョーカー』
アレクサンドル・デスプラ『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
ランディ・ニューマン『マリッジ・ストーリー』
トーマス・ニューマン『1917 命をかけた伝令』
ジョン・ウィリアムズ『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

主題歌賞:
“I Can’t Let You Throw Yourself Away”(トイ・ストーリー4)
“I’m Gonna Love Me Again”(ロケットマン)
“I’m Standing With You”(Breakthrough)
“Into the Unknown”(アナと雪の女王2)
“Stand Up”(ハリエット)

長編アニメーション賞:
『トイ・ストーリー4』
『ミッシング・リンク』
『失くした体』
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』
『クロース』

短編アニメーション賞:
『Dcera (Daughter)(原題)』
『Hair Love(原題)』
『Kitbull(原題)』
『Memorable(原題)』
『Sister(原題)』

国際長編映画賞:(「外国語映画賞」が改称)
『レ・ミゼラブル』(フランス)
『Honeyland(原題)』(北マケドニア)
『Corpus Christi(原題)』(ポーランド)
『パラサイト 半地下の家族』(韓国)
『Pain and Glory(原題)』(スペイン)

長編ドキュメンタリー賞:
『アメリカン・ファクトリー』
『The Cave(原題)』
『ブラジル -消えゆく民主主義-』
『娘は戦場で生まれた』
『Honeyland(原題)』

短編ドキュメンタリー賞:
『In the Absence(原題)』
『Learning to Skateboard in a Warzone (If You’re a Girl)(原題)』
『眠りに生きる子供たち』
『St. Louis Superman(原題)』
『Walk Run Cha-Cha(原題)』

短編実写映画賞:
『Brotherhood(原題)』
『Nefta Football Club(原題)』
『The Neighbors’ Window(原題)』
『Saria(原題)』
『A Sister(原題)』


 作品賞では大本命が『アイリッシュマン』、対抗馬が『ワンハリ』、大穴で韓国映画から初のノミネートとなった『パラサイト 半地下の家族』というのが僕の予想です。ネットフリックス配信映画の『アイリッシュマン』に反発する声が『ワンハリ』『パラサイト』に集まるかどうかでアカデミー会員の票がどう動くかが見もの。

 監督賞もスコセッシとタランティーノの対決でスコセッシの映画人生の総決算が勝つか、タランティーノが初の監督賞(脚本賞の受賞経験アリ)に輝くか目が離せない。『ジョーカー』のトッド・フィリップス監督は下馬評では落選の声があったけどノミネートまで持ってきたので意外な結果があるかも?

 主演男優賞はホアキン・フェニックスか、『マリッジ・ストーリー』のアダム・ドライバーが有力。僕の一押しはアダム・ドライバーです。『マリッジ~』の悲しくもマヌケな旦那役(ナイフを使った冗談遊びで腕を切ってしまって貧血で倒れるシーンは最高です)は傑作で、ちゃんと演技できる人なんだなって思った。カイロ・レン役はなんだったんだ?

 主演女優はセロンとゼルヴィガーが有力らしいですが、二本ともまだ見てないからわからない。助演男優は『アイリッシュマン』のジョー・ペシとアル・パチーノの対決にブラピとアンソニー・ホプキンスがどう絡むか、激アツ部門。助演女優賞は『リチャード・ジュエル』で息子の無実を信じる母親役を好演したキャシー・ベイツか、『マリッジ・ストーリー』でやり手の弁護士を演じたローラ・ダーンの対決。
 他の部門では長編ドキュメンタリーは『ブラジル 消えゆく民主主義』が本命。作曲賞はジョン・ウィリアムスが功労賞的に獲得するかな。国際長編映画は文句なしに『パラサイト 半地下の家族』で決まり。


 今年も司会のいない第92回アカデミー賞、ネットフリックス系作品が一部の頑固者の意見を蹴散らして受賞するか、タランティーノとポン・ジュノが栄冠なるか?決戦は2月9日(現地時間)!!

  


Posted by 縛りやトーマス at 00:11Comments(0)映画ネットフリックス

2020年01月12日

てめえら、揚げてやる!『エクストリーム・ジョブ』



 実績ゼロで解散の危機を迎えた麻薬捜査班の男女5名は最後の大逆転に賭けてドラッグディーラーの取引現場を押さえようとアジトの前にあるフライドチキン屋に張り込む。が、その店が閉店の危機に!

「この店、買い取ります!」

 昼はチキン屋、夜は張り込み捜査の2重生活を強いられた上にそのチキン屋がまさかの大ヒット!営業が忙しすぎて尾行に失敗するという本末転倒に陥る捜査班。彼らはチキンを揚げる前に犯人を挙げることはできるのか?

 という韓国映画『エクストリーム・ジョブ』は2019年の韓国映画史上No.1の大ヒットのみならず歴代トップの興行収入を記録した。韓国の歴代興行収入、観客動員に並ぶのは『国際市場で逢いましょう』のような歴史ドラマか、『神と共に』のようなアクションなので『エクストリーム・ジョブ』のようなコメディがランク入りするのは珍しい。肩肘張らずに観られる作品というのも大きかったろうが、テーマがいい。韓国ではフライドチキンは60年代半ばの「漢江の奇跡」と呼ばれる日韓基本条約で得た無償提供資金によって為しえた経済復興に誕生したファーストフード商売で、国民食のひとつになるほどの人気商売だ。そこに警察が捜査のための副業として店を開いているというアイデアは笑えてしまう。

 実績ゼロで上司から解散を宣告される麻薬捜査班。そのリーダーであるコ班長(リュ・スンリョン)は傷だらけで現場から帰ってくる通称「ゾンビ班長」と呼ばれるベテランだが後輩の方が先に出世してしまう万年班長どまり。ラストチャンスに賭けて大物ドラッグディーラー、イ・ムベを捕らえようと彼のアジト前で24時間の張り込み態勢に入る。目と鼻の先にあるさびれたフライドチキン店に居座るが、店主から人気がないので店を人に売るといわれ、コ班長は退職金を前借して店を買い取ることに。買った以上営業しないといけないということで捜査班のトラブルメーカー、マ刑事(チン・ソンギュ)を厨房担当に。なんと彼は“絶対味覚”を持つ男だった!「俺にこんな才能があったなんて!」
 捜査班一の切れ者で紅一点のチャン刑事(イ・ハニ)をホールマネージャーに、情熱だけは人一倍の若手刑事ジェフン(コンミョン)を厨房補佐、「俺は尾行専門だから」という寡黙なヨンホ刑事(イ・ドンフィ)は店の外でアジトを監視する役目にしてフライドチキン屋を営業しつつアジトの監視をする24時間体制に突入。

 ところがこのフライドチキン屋がまさかの大繁盛。マ刑事の「カルビ漬けチキン」は「今までにない味だ」と絶賛されて連日行列ができてしまうほどのヒットに。コ班長らは店を切り盛りするのに大忙しで、外でアジトを見張っているヨンホ刑事から「アジトに動きが!尾行するので応援をお願いします」という無線にも出られない。ひとりで飛び出したヨンホ刑事が二手に分かれた車の尾行に失敗してトボトボ帰ってくると「この忙しいのに手伝いもしないで何をしていたんだ」と店長・・・いや班長に怒られる始末。

「分かれた車のどちらを追うか、究極の選択を迫られた俺の気持ちがわかりますか?」

 と愚痴るヨンホだが

「俺はずっと厨房で鶏と格闘していた俺の気持ちがわかるのか!」

 とマ刑事が吐き捨てれば

「私はホールマネージャーとして一日で78組の客をさばいたわ」

 とチャン刑事、

「毎日玉ねぎ80キロ、ニンニク500個の皮を剥く僕の大変さがわかりますか?」

 さらにジェフンからも反論されてしまう。俺たちは犯人を挙げるのが目的で、フライドチキンを揚げるのが仕事じゃない!しかし一日の売り上げ234万ウォンをたたき出すこのサイドビジネスは警察をやっているより儲かる。いっそチキン屋に鞍替えしようか・・・と弱気になるコ班長。だがその時アジトからフライドチキンの出前注文が。ついにこの瞬間が訪れた。捜査班は出前を装って突入する準備を整える。

 これは意外な才能があることを見出した者たちが副業に邁進しつつも、最後には正義の警察官としてあふれんばかりの才能の持ち主であったことに気づかされる(その才能を発揮できる機会がなかっただけなのだ)クライマックスの大アクションも最高で、先が見えない人生であってもその場その場で真面目に取り組む姿勢が胸を打つという感動的な物語だ。コメディというメインディッシュの中にこっそりとスパイスのように忍ばせた、最高に美味い作品。

  


Posted by 縛りやトーマス at 13:50Comments(0)映画食べ物

2019年12月26日

過去最高にカワイイ浜辺美波『屍人荘の殺人』



 今村昌弘のデビュー作『屍人荘の殺人』は「このミステリーがすごい!2018年度版」「週刊文春ミステリーベスト10」「2018 本格ミステリ・ベスト10」第1位、そして第18回本格ミステリ大賞受賞と国内ミステリーランキング4冠を達成した話題作で、その実写映画化だ。

 大学のミステリー愛好会(研究会じゃないの?)のたった二人だけのメンバー明智(中村倫也)と葉村(神木隆之介)の自称ホームズとワトソンは依頼を受けて様々な事件の解決に乗り出すが、いつも空回り。葉村などでミステリー小説の犯人予想を一度も当てたことがなく、ついたあだ名が「迷宮太郎」。今回も学生の依頼を受け推理をするも的外れな解答をした上、横から現れた美人女子大生にして本物の名探偵、剣崎比留子(浜辺美波)に鮮やかな推理を決められてしまい立つ瀬なし。
 名誉挽回の機会をうかがう二人に当の剣崎からロックフェス同好会(ロック同好会じゃないんだ・・・)の合宿に参加するのでついてきて欲しいと依頼。ロックフェス同好会に「今年のいけにえは誰だ?」という脅迫状が届き、身に覚えのない同好会メンバーから犯人を推理してほしいと頼まれた剣崎は助手として二人をスカウト。明智は事件解決のため、葉村は一目ぼれした剣崎のために(笑)ロックフェス会場の近くにある同好会メンバーが宿泊するペンションへ向かう。
 一癖も二癖もある同好会メンバーに不審のまなざしを向ける葉村に、明智は突然

「今から向かうペンションで事件が起きる!そしてその犯人も僕にはわかった!」

 と宣言する。何も起きてないのに事件て!あきれる葉村に明智は「君はただ何が起きるのか見ているだけでいいのだ」と自信満々。そんな二人の前にとんでもないことが起きる!

 映画『屍人荘の殺人』はネタバレ絶対厳禁で、この直後に衝撃的な展開が待っているのだが、これを完全にバラさなかったポスターや予告編は大したもんだ。



 殺人ミステリーとまったく別のジャンルを融合させてとんでもないカオスを生み出した本作は密室殺人やクローズド・サークルものといった使い古されたミステリーのジャンルにまだ掘り起こす金脈があることを再発見させてくれた。

 正直、謎解きのトリックや真相などは別段大したこともないんだけど、神秘めいた美人女子大生探偵を演じる浜辺美波の前にはそんなことはどうでもいい!あぁ・・・本作の浜辺美波は過去最高にカワイイ女子を演じていて、彼女が少々エキセントリックな言動をとってややこしそうな娘だなと思わせても、うどんを食べてる写真を延々とスマホに残していたり、雲竜型で推理の冴えを見せたりする場面も、普通に考えたら絶対つまんねえんだけど浜辺美波なら何もかも許せてしまう。いいじゃないか!べーやん(浜辺美波の愛称らしいが、僕らの世代はべーやんといえば堀内孝雄じゃないのか)がカワイイんだから!

 映画というのは総合芸術なんだということを改めて思い知らせてくれた『屍人荘の殺人』は前代未聞の映画なのだよ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:55Comments(0)映画

2019年12月22日

なんと劇場アニメの公開数が3桁!

 映像研究科の叶精二さんのTwitterで以下のつぶやき。

叶 精二(Seiji Kanoh)
@seijikanoh

某配給会社の方とお会いし「今年劇場用長編アニメは3桁に達する異常な数だったが、人気漫画原作作品と『天気の子』『プロメア』等を除き興行的不振が相次いだ。『君の名は。』以降類似設定の企画が通りやすく、公開時期が重なる可能性は3年前から指摘されていた」等々、今後の不安について色々と伺う。

https://twitter.com/seijikanoh/status/1208544424143159301

『君の名は。』以降類自作の企画が通りやすく~の点はこれまで予算の都合などで通らなかった企画が『君の名は。』の大ヒットによって一転、二匹目のどじょうを狙った企画が一斉に動き出し、公開時期がかぶるという良いのか悪いのか…という状況だったのは確か。にしても今年3桁もアニメ映画公開してたのは気づかなかった…ということで2019年に公開されたアニメ映画を数えてみた。



1月
劇場版総集編【前編】メイドインアビス 旅立ちの夜明け/【後編】メイドインアビス 放浪する黄昏(別々に上映された)
ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow
劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly
あした世界が終わるとしても
PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰
映画 コラショの海底わくわく大冒険!
7本

2月
劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉
劇場版 幼女戦記
コードギアス 復活のルルーシュ
PSYCHO-PASS サイコパスSinners of the System Case.2 First Guardian
劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ― オリオンの矢 ―
劇場版 王室教師ハイネ
6本

3月
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章「新星篇」
映画ドラえもん のび太の月面探査記
KING OF PRISM -Shiny Seven Stars- I プロローグ×ユキノジョウ×タイガ
ある日本の絵描き少年
スパイダーマン・スパイダーバース
PSYCHO-PASS サイコパスSinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__
劇場版 えいがのおそ松さん
グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION
映画 しまじろう 「しまじろうとうるるのヒーローランド」
KING OF PRISM -Shiny Seven Stars- II カケル×ジョージ×ミナト
レゴ(R)ムービー2
鬼滅の刃 兄妹の絆
映画プリキュアミラクルユニバース
劇場版 トリニティセブン ー天空図書館と真紅の魔王ー
14本

4月
テニスの王子様 BEST GAMES!! 乾・海堂 vs 宍戸・鳳/大石・菊丸 vs 仁王・柳生
映画 きかんしゃトーマス Go!Go!地球まるごとアドベンチャー
パンドラとアクビ
LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-
名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)
KING OF PRISM -Shiny Seven Stars- III レオ×ユウ×アレク
映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~
劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~
バースデー・ワンダーランド
東映まんがまつり(映画 おしりたんてい カレーなる じけん、映画 爆釣バーハンター 謎のバーコードトライアングル! 爆釣れ!神海魚ポセイドン、えいが うちの3姉妹、りさいくるずー)
10本

5月
KING OF PRISM -Shiny Seven Stars- IV ルヰ×シン×Unknown
甲鉄城のカバネリ 〜海門決戦〜
ダヤンとタマと飛び猫と ~3つの猫の物語~
蒼穹のファフナー THE BEYOND/第一話「蒼穹作戦」第二話「楽園の子」第三話「運命の器」
プロメア
歎異抄をひらく
LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘
7本

6月
海獣の子供
劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム
劇場版 誰ガ為のアルケミスト
Fate/kaleid liner Prisma☆Illya プリズマ☆ファンタズム
ガールズ&パンツァー 最終章 第2話
青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない
きみと、波にのれたら
薄暮
それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫
劇場アニメ フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~
センコロール コネクト
11本

7月
劇場版 Free!-Road to the World-夢
トイ・ストーリー4
ミュウツーの逆襲 EVOLUTION
天気の子
Walking Meat
ペット2
ミニオンのキャンプで爆笑大バトル
7本

8月
ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
劇場版 ONE PIECE STAMPEDE
二ノ国
映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説
4本

9月
ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -
BanG Dream! FILM LIVE
HELLO WORLD
羅小黒戦記
銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱
6本

10月
ストライクウィッチーズ 劇場版 501部隊発進しますっ!
BLACKFOX
空の青さを知る人よ
映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて
銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱 第二章
ロイヤルコーギー レックスの大冒険
キミだけにモテたいんだ。
劇場版 冴えない彼女の育てかた Fine
8本

11月
Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆
蒼穹のファフナー THE BEYOND/第四話「力なき者」第五話「教え子」第六話「その傍らに」
映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ
テニスの王子様 BEST GAMES!! 不二 vs 切原
フラグタイム
アナと雪の女王2
HUMAN LOST 人間失格
銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱 第三章
サンタ・カンパニー ~クリスマスの秘密~(同時上映「コルボッコロ」)
幸福路のチー
劇場版『ガンダム Gのレコンギスタ Ⅰ』「行け!コア・ファイター」
11本

12月
ルパン三世 THE FIRST
映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか
映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!
ぼくらの7日間戦争
ブレッドウィナー
僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング
この世界の(さらにいくつもの)片隅に
ヒックとドラゴン 聖地への冒険
劇場版 新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X
9本

・・・で、ぴったり100本!実際には短編映画も入っていますが70本前後だったここ数年の公開本数と比較しても多い。
 中には『劇場アニメ フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~』みたいにテレビ版に新規カット足しただけの総集編だったり、『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』『蒼穹のファフナー THE BEYOND』みたいなテレビの続きや新作をあえて劇場でやってるやつとかもあって、「劇場用アニメ」の意味を問い質したいやつもあるので、叶さんの疑問もわかりますわ。
 しかし『この世界の片隅に』に追随しようとする類似企画は見られなかった、ってそりゃしょうがないでしょう。あれは片渕監督の個人的なこだわりが結実したものなんだから、あれと類似したものやろうって多分人が死ぬと思います!

 さあて来年はどんな総集編アニメが見られるかなあ。

  


Posted by 縛りやトーマス at 16:17Comments(0)映画

2019年12月21日

人生という宮殿『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』



 19世紀末のフランスで、ひとりの郵便配達員が愛娘のために遊び場となる宮殿を作り始めた。建築の知識もない素人が33年の時をかけて完成させた宮殿は今では国の重要建造物として世界中から人が訪れている。

『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』
は無口で周囲からは変人と言われていた郵便配達員のジョゼフ=フェルディナン・シュヴァルが愛娘アリスのために途方もない時間をかけてたった一人で作り上げた究極のDIY、至高のセルフビルド、アウトサイダー・アートの極致を描いた作品だ。


 シュヴァルは寡黙でちょっと変わった郵便配達員の男だ。どれぐらい変わっているかというと、妻を亡くした時、幼い一人息子が残されるのだが、「息子と二人きりでどう過ごしていいのかわからない」という理由で息子を養子に出してしまうのだ!なにその理由!
 そんなシュヴァルは未亡人フィロメールに恋をする。フィロメールはシュヴァルの人柄に惚れ、二人は結ばれ、娘アリスが生まれる。息子とどう過ごしていいのかわからない人が娘育てられるの?もちろん子育ては全部フィロメールに任せっきりで、たまたま赤ん坊の娘をちょっと面倒みていて、と押し付けられると、泣く娘を抱えて無言で右往左往するのだった。こりゃダメだ!

 しかしアリスのことは愛しているシュヴァル、娘のために何かしてやりたい、と思い郵便配達の仕事をしていて、ぼんやりしてすっころんでしまう。転んだ時に見つけた奇妙な形の石に心奪われ、家に持ち帰る。
 これだ!と何かにひらめいたシュヴァルは「娘のために宮殿をつくろう!」と宣言。郵便配達の仕事の途中、道端でひろった石を集め、セメントをこね繰りはじめる。昼は郵便配達、夜は宮殿づくりの生活。しかし建築の知識もなんにもないただの素人のシュヴァルにフィロメールは「そんなの無理でしょ」というのだが

「昔、パン職人の元で修業をしていたから大丈夫だ」

 と何が大丈夫なのかわからないけど、とにかくすごい自信のシュヴァルは止まらない。周囲から変人扱いされ笑われようとも、上からおっこちて大けがをしても、24時間365日、土木作業は一日も休むことがなかった。
 そんなシュヴァルを見て周囲も変わりだす。養子に出した息子が作業の様子を観に来たり、息子のアイデアで作った宮殿の絵葉書が売れたりするのだった。

 一方、宮殿の完成には程遠かった。たった一人で作業しているうえに、こだわりの男シュヴァルの理想はとめどなくあふれてくるので、次から次へと増築が繰り返される。ついには娘のアリスが病気で早死にしてしまう。目的を失った宮殿づくりはそれでも終わらない。養子に出した息子も亡くなり、その孫娘アリス(息子が名付けた)が見守る中、33年の時を経てついに宮殿が完成・・・したがその二年後にフィロメールが亡くなると今度は家族が眠るための廟の着工にとりかかり8年をかけて完成!この時シュヴァル86歳!
 すべてを見届けた二年後、理想に生きたシュヴァルの人生という宮殿もついに「完成」する。

 死後、理想宮には多くの人が訪れ、ブルトンやピカソといった人物が理想宮を絶賛し、建築途中は誰もが(家族ですら)眉をひそめた理想宮は今やフランスの重要建造物に指定され、年間17万人が訪れ、今では誰も笑うものはない。
 現在は専用のスタッフが修復、保存にあたっている。ちなみに素人がつくった建築物にしては「しっかり」しているのだという。

 ワッツ・タワーやボトル・ヴィレッジ、沢田マンションの走りである。最初はみんなバカにしていたのに、いざ話題になり、ついに完成すると近所の人たちが祝いに来るといったあたりがなんとも。人間っていいかげんなんですねえ。今何かをやり続けていることで、バカにされている人がいあたら、ぜひシュヴァルの理想宮の話を思い出してほしい。彼は33年かけて理想を実現させたら、誰も笑わなくなったどころか、絶賛されたのだから。

  


Posted by 縛りやトーマス at 20:50Comments(0)映画

2019年12月16日

違和感のない実写映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』



 29年ぶりに劇場アニメとして復活した『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』は今年冬の2月にに公開された。そして年末の11月末にフランスで制作された実写映画が日本公開。え?フランスで制作!?そう、この『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』はフランスで制作されたのだ!

 本作で監督・脚本・主演を務めたフィリップ・ラショーは子供のころに見たアニメ『シティーハンター』のフランス版『Nicky Larson』にハマり、こう願った。「いつか実写版を作りたい!自分の主演で!」と。

 ラショーは実写版のプロットを原作者の北条司に送り、それが気に入られたので実写映画の企画がスタートする。北条からまずは脚本を送ってほしいといわれ、ラショーはスタッフらと18か月かけて脚本をつくる。その間、アニメ版全話、原作漫画全巻、さらにジャッキー・チェンが主演した映画まで見て、どっぷりとシティーハンターの世界にのめりこんだ。なぜなら、ファンが望む完璧な実写映画にしたかったから!

 この作品、なにより素晴らしいのは原作にある「もっこり」な下ネタもほぼ完全に再現したことだ。いや、再現したところではない、グレードアップしていた。ラショーのヒット作『真夜中のパリでヒャッハー!』や『世界の果てまでヒャッハー!』も下ネタや不倫ネタなどかなり際どく攻めていたが、こちらもなかなかのもの。「もっこり」という言葉をつかえない代わりに登場人物の一人が「モッコリー」という名前だった(笑)。

 嗅いだ相手を惚れさせる「キューピッドの香水」を守って欲しいという依頼を受ける獠(ラショー)。香水の効果を信じない獠に依頼者のドミニクが香水を一拭きすると、獠は依頼者のオッサンにもうメロメロ!無類の美女好きの獠ちゃんが女好きのもっこりパワーを封じられる、という展開は原作ファンにとっても斬新だし、面白い。香水入りのカバンを奪った海坊主との戦いの末、カバンを奪い返すもたまたま通りがかった、さえない男ジルベールのカバンと取り違えられ、香水の力を知ったジルベールはモデルのジェシカ・フォックス(演じるはお懐かしやパメラ・アンダーソン)を香水の力でモノにしようとする。


 獠や香、海坊主ら登場人物の見た目や、依頼が駅の掲示板に書き込まれたり(2019年なのに!?)、ファイティング・シーンに挿入歌『FOOTSTEPS』が使われたり、エンディングは原作アニメのように劇中からフェードインする形で主題歌『Get Wild』が使われるという、アニメのファンにとっては痒い所に手が届く構成で、映画用のオリジナル要素もまったく違和感なく取り込まれていて、日本の話をフランスに置き換える、というどうしたって違和感のあるはずなのに、はじめっからフランスが舞台の作品だったのではないかと思わせるほどだ。

 日本では主に吹き替え版が上映されたが、主人公二人の吹替は神谷明と伊倉一恵ではなく、山寺宏一と沢城みゆきに変更。山寺は新人のころにシティーハンターのアニメで「通行人A」とか「悪役B」とか脇役の声をやっていたので、その人が主人公の声を演じるとは、なかなか感慨深い。最近では三代目峰不二子の声などで人気を博している沢城みゆきとのコンビ、こちらも全く違和感がない。

 忠実に再現しつつ、オリジナル要素にも面白さがある、どこまでも完璧な実写映画なのだった。

  


Posted by 縛りやトーマス at 23:27Comments(0)映画漫画

2019年12月15日

山崎貴、面白いじゃねーか!『ルパン三世 THE FIRST』



 デジタルマンガ協会初代会長を務めたりと、デジタルコミックの世界にいち早く飛び込んでいたモンキー・パンチ先生はフル3DCGのルパンに挑戦しようとしていたという。そんなパンチ先生の夢がついに実現・・・したのはいいが、完成品を観る前に亡くなられてしまった・・・

 初のフル3DCG映画となった『ルパン三世 THE FIRST』の監督は山崎貴。観る者の多くをガッカリさせることでおなじみの山崎が初の3DCGルパンを手掛けるのだ。他に人選なかったの?と肩を落としながら観てみると・・・山崎、面白いじゃねーか!初めからそうしろよ!
 ドラえもんの時はスネ夫など、どうしてもフル3DCGに向いていないキャラクターの違和感がありまくりだったが、パンチ先生のデザインはフル3DCGの前にまったく違和感がなかった。


 初代ルパンすら盗み出せなかったとされるお宝ブレッソン・ダイアリーを盗み出そうとするルパン。だが同じ宝を狙っている者がいた。考古学の知識に長けた少女、レティシア(CV:広瀬すず)だ。彼女は単なる一般人に過ぎないのに、危険を冒してまでもブレッソン・ダイアリーを狙おうとする。そんな彼女にいつしかルパンはは協力するようになるのだが、このお宝を謎の秘密組織に属するランベール(CV:吉田鋼太郎)とゲラルト(CV:藤原竜也)も狙っていたのだった。その背後に見え隠れするナチスの残党。やがては銭形警部もルパンたちの仲間となって秘密組織に立ち向かう。

 山崎監督が好きそうな『カリオストロの城』の影響がばっちり伺える展開・物語で、可憐なヒロインに嫉妬故、悪の道に陥る科学者、どこまでも外道な悪役とキャラクターは明確で、王道。張り巡らされた伏線を回収するクライマックスも見事で、どうしよう、褒めるところしかない。山崎貴はたまに大して好きでもないジャンルやテーマを押し付けられて「コレ、大好きなんですよー」と思ってもいないことを言わされてるときがあるけど(ドラえもんとかドラクエとか)ルパンに関しては(特にカリオストロ)本当に好きなんだろうなあ。主題歌まで『炎のたからもの』風なのもたまらんね。人間、好きな仕事をやった方がいい。もうドラえもんとかドラクエとかやらなくていいからCGルパンだけやり続けてくれ。

 ただ唯一気になるのは、カリオストロにあった「埼玉県警」とか「カップラーメン」のギャグがそのまま採用されてるところ。それ、パンチ先生が嫌ってたやつだよ!なぜそれを入れたんだ!そこだけアウト!

  


Posted by 縛りやトーマス at 00:23Comments(0)映画

2019年12月10日

10年待った甲斐があった続編『ゾンビランド:ダブルタップ』



 2009年の公開作『ゾンビランド:ダブルタップ』の10年ぶりの続編。
 ゾンビ・パンデミックが発生して世界中が崩壊する中、友達のいないぼっち野郎ゆえにアポカリプスな状況を生き延びたコロンバスは世界をパワフルに生き延びてきたカウボーイオヤジのタラハシーや、詐欺姉妹のウィチタ、リトルロックらとすでに失ってしまった疑似家族をつくって生き抜いていく・・・というコメディ映画で、低予算なうえに当時は多くが無名だった監督、キャストだったが、映画は制作費の4倍を稼ぐ大ヒットを記録。
 それぞれのキャラを演じたジェシー・アイゼンバーグは『ソーシャル・ネットワーク』『エージェント・ウルトラ』『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』とヒット作を連発、ウディ・ハレルソンは『ハンガー・ゲーム』シリーズに出演、『スリー・ビルボード』でアカデミー助演男優賞ノミネート、エマ・ストーンは『アメイジング・スパイダーマン』シリーズに出演、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で各映画賞の女優部門に軒並みノミネートに終わるが、『ラ・ラ・ランド』ではアカデミー主演女優賞を獲得と全員が出世した。唯一リトルロック役のアビゲイル・ブレスリンだけはさほど活躍はなかったものの、当時13歳の彼女はこの10年ですっかり成長して、正月に実家で久しぶりに出会った姪っ子が大きくなっていてびっくりしたような気分を味あわせてくれた。監督のルーベン・フライシャーも『ヴェノム』でさらなるヒットメーカーとして名が知れた。

 続編は10年の間に何度となく企画されるものの、いろいろあって実現せず、もはや幻の企画として消え去るかと思ったが、10年目のメモリアルイヤーとしてついに完成した。コロンバスたちは今やホワイトハウス(!)で生活するセレブ(?)となっていた。安定した生活を得てコロンバスはついにウィチタにプロポーズ。しかし贈ったホープダイヤモンドが「カップルに破滅を呼ぶ」という迷信があり、また改めて結婚生活をするというのもウンザリだとウィチタはリトルロックを連れて出て行ってしまう。
 彼女のあとを追いかけようとすると、ゾンビ・アポカリプスを「冷蔵庫の中に隠れていた」と生き延びた、見るからにアーパーな女性マディソン(ゾーイ・ドゥイッチ)と出会い、熱烈なラブコールを受けた上に、どうせウィチタとはもう終わったんだ!とばかりベッド・イン!展開早すぎだろ!ちなみにこのゾーイ・ドゥイッチ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックスの母親役やってたリー・トンプソンの娘なの。

 冬のあとすぐに春が来た!と浮かれまくるコロンバス。しかしすぐにウィチタが帰ってきた!一緒に出て行ったはずのリトルロックは旅の途中で出会ったヒッピーミュージシャン(アヴァン・ジョーギア)に惚れて飛び出していってしまったのだ。
 典型的なアメリカ白人のタラハシーが彼を「どうせバークレーから来たようなやつ」「いけ好かない」とリベラルで知られるバークレーをいじってネタにするのが笑える(『アイアンマン』でもトニー・スタークが記者から死の商人呼ばわりされると「君はバークレー出身か?」といじるギャグがある)。
 妹を追いかけるために武器を取りに帰ってきただけなのに、突然三角関係が勃発!第三次大戦よりヘビーな戦いが今、始まる!いや、周りゾンビばっかりなんで!それどころじゃないよ!

 前回は名前のある登場人物が4人にすぐ死ぬ隣りの女子大生とビル・マーレイだけ(笑)という少数精鋭だったのだけど、パート2ということで新キャラが多く登場し、『ゾンビ』のリメイク、『ドーン・オブ・ザ・デッド』の主役ロザリオ・ドーソンが最高にイカス女として登場したり、すぐに死ぬような主人公たちのコピー、アルバカーキにフラッグスタッフ、もちろんアーパー娘のマディソン(吹替の声が安達祐実でさらにおかしい)など、新キャラがどいつもこいつも立ちまくりで、本来ならコロンバスを争う嫌味なライバルキャラとされるようなところ、観客から愛されるようにされているのが良い。
 最近のゾンビ映画にありがちなリアリティさをあえて排除し(コロンバスが『ウォーキング・デッド』のコミックを読んで「リアルじゃない!」とあえて言わせてるセリフに象徴されている)、「非リアルなゾンビものでも面白い」という難題を見事クリアしたフライシャー、恐るべし。
 多くのファンが納得の続編になっており、10年待った甲斐があった。
 コレジャナイ感が炸裂していた『ターミネーター:ニュー・フェイト』とか大きな違いでっせキャメロン!

  


Posted by 縛りやトーマス at 20:56Comments(0)映画