2018年07月01日

奇想天外!これこそバットマンだ!『ニンジャバットマン』



 バットマンが日本の戦国時代にタイムスリップ。歴史を改変しようとするジョーカーの野望を止めようという想像の斜め上を行く物語である。知能を持った猿、ゴリラ・グロッド(CV:子安武人)の時空震エンジンによるマシンの暴走でゴッサムシティのヴィランたちとバットマンらがタイムスリップ。たどり着いた先は日本の戦国時代。バットマンより2年先にタイムスリップしていたジョーカー(CV:高木渉)、ハーレイ・クイン(CV:釘宮理恵)、そしてヴィランたちは戦国武将とすり替わる形でこの国を手中に収めつつあった。ジョーカーは第六天魔王と名乗り、ハーレイは森蘭丸的なポジション。デスストロークは独眼竜正宗のようないで立ちをし、ポイズン・アイビーは上杉謙信(女性だったのではないか?という伝説に準じる形で)のように越後を支配し、ペンギンは風林火鳥と武田信玄のような幟を立てる!
 バットモービル、バットウィングといったハイテクメカを早々に使いつぶしたバットマン(CV:山寺宏一)に残されたものはアルフレッド(CV:大塚芳忠)、ロビン(CV:梶裕貴)ら仲間と己の肉体のみ!


 『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのOP、『ポプテピピック』でおなじみ神風動画がはじめて長編に挑戦。それがバットマンのアニメでしかも戦国時代が舞台ってどういうこと?しかしこの選択が間違ってなかった!バットマンの世界観に完璧にハマっているのだ。もともとバットマンは蝙蝠の面をかぶったオッサンが夜な夜なイカれた悪党を私刑して回るという悪趣味(キャンプ)なジャンルだからこの奇想天外な設定、アクションこそがバットマンのスタイルといえる。ひたすらリアルにしようというクリストファー・ノーランのシリーズはやっぱダメだな。

 クライマックスでは城から手足が生えてロボットになる。アメコミで城がロボットに!東映版スパイダーマンのレオパルドンかよ!さらに5体合体で巨大ロボットに!ボルトロンだ!アメリカ人ではなかなか出てこない発想だ。

 そして中堅、ベテランのプロ声優による豪華な声の共演。『ニンジャバットマン』を見てもまだ俳優のイマイチな吹き替えをやらせようなどという連中は時空の彼方に消え去るといい。百姓に身をやつした高木渉&釘宮理恵の名演技を見てくれ!俺は魂が震えたね。

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:02Comments(0)映画漫画

2018年06月28日

俺ちゃんの映画、どうなるの?

 ついに恐れていた事態が現実になった。映画会社21世紀フォックスがウォルト・ディズニーに買収されたのだ。


米司法省、米ディズニーによる21世紀フォックス買収を承認
https://eiga.com/news/20180628/14/

 ディズニーによるフォックスの買収は去年あたりから具体的な金額の話になっており、記事内にもあるがコムキャストが買収合戦に参加し、ディズニーが買収額を引き上げてきた。この買収の背景には配信サービス、ストリーミング業界の再編があるという。

ディズニーのフォックス買収で、ストリーミング業界が激変する
https://wired.jp/2017/12/29/disney-fox-streaming/

 配信サービス大手のHuluの大部分を所有することになるディズニーがこれをきっかけに独自の配信サービスを始めることになるだろうという。そんなことよりも不安なのが、21世紀フォックスを買収することによってフォックスのもつ映画コンテンツ、スター・ウォーズシリーズやマーベル・コミックの映画に少なからず影響があるだろうということだ。

 ハン・ソロのスピンオフ映画の苦戦が伝えられるスター・ウォーズがますます拡大化するかもしれないしマーベルのシリーズはますます増えるだろう。それだけならまだいいけど(よくない)作品の内容にディズニーの規制が強くなることが危惧される。現状でさえMCU映画でレズビアンの要素をキャラクターから消したりするディズニーがフォックス買収でデッドプールの権利を手に入れるわけですよ!そしたらパンセクシャルの要素なんて消えてなくなるに違いない!FOXネットワークの『ザ・シンプソンズ』はFOXニューズにとって不適切なギャグを飛ばすほど反抗的だが、ディズニー傘下になることによってそんなユーモアも薄められるかも知れない…そんな未来は見たくないぞ!タイムマシンでこの買収をなかったことにするしかない!?



「ディズニーがFOXに買収されたら腑抜けた映画ばかりになっちゃうぜ!なあベッカム」
「そうだな。『あなたは私の婿になる』みたいな映画ばかりになるな」
「あれは傑作だろ!」

  


Posted by 縛りやトーマス at 22:49Comments(0)映画ハリウッド・スキャンダル

2018年06月26日

俺ちゃんに差別はない!『デッドプール2』



 奴が帰ってきた!R指定のスーパーヒーロー映画として爆発的なヒットを飛ばした前作より2年、不死身の男がスクリーンに帰ってくる!『デッドプール2』は人体実験で不死身の力を得た元傭兵の殺し屋、ウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)が前作から引き続き世界を股にかけてマフィアどもを皆殺しにしていたが、ある日報復として自宅を襲われ、最愛の恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)を失ってしまうという衝撃のオープニングで幕を開ける。ちなみにタイトルロールにも「どういうこと?」「彼女死んじゃったの?」と出てくる(笑)。


 ヴァネッサを失ったショックで酒浸り、コカイン漬けの日々を送るデッドプール。彼女の後を追って死のうとするも不死身だからできない!五体バラバラになった彼をコロッサス(ステファン・カピチッチ)がX-MENに迎えにやってくる。彼女のためにも正義のヒーローになってやり直せというコロッサスの勧 誘に「もっと有名なX-MENを出せ」(この映画は低予算なのでコロッサスとかネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドとか地味目なメンバーしかでてこない、という内輪ネタ)と愚痴りながらも加入。「絶対に人殺しはするな」と固く言いつけられたデッドプール。だが14歳のミュータント少年、ラッセル(ジュリアン・デニソン)が暴れている現場で彼が施設で虐待を受けていることを知ると施設職員らを銃殺。殺すなっていったのに!あわれデッドプールとラッセルは拘束されてしまう。ミュータント専用施設に入れられた二人の前に未来から来たサイボーグ戦士、ケーブル(ジョシュ・ブローリン)が現れ、ラッセルを殺そうとする。ラッセルは人間を恨み、殺戮する凶悪なミュータントとなりやがてケーブルの家族を殺すというのだ。ケーブルはラッセルの犯行を止めるためタイムマシンでやってきたのだ。ラッセルを救うためにデッドプールは新チーム『Xフォース』を結成する。


 本作はR指定なので人がバラバラになったり、首がすっ飛んだりするシーンが平気で出てくる。前作でも「明るく正しいヒーロー映画だと思った?早く映画館を出た方がいいぞ!」と観客に向けて話しかけてきたり、ドラッグ、セッ クスに関するきわどい描写が遠慮せずに出てくる。デッドプールは不死身で身体を真っ二つにされてもそこからまた生えてくる。ある場面では下半身がゆっくり生えてくる、フリチン状態の時にケーブルと会話してるデッドプールが足を組み替える。すると股間がモロ見えになるんだけど「なんで足を組み替えた?」「『氷の微笑』のパロディだよ」(『氷の微笑』でシャロン・ストーンが足を組み替えてノーパンの股間が一瞬見える、という有名なシーンの再現)…

 Xフォースにリクルートされたメンバーはたいしてロクな活躍をしないまま一人を残して全滅(笑)。そのうちのひとり、バニッシャーという「透明になる男」が出てくる。透明でセリフもないけど誰もいないところに「いる」。パラシュートで飛び降りた時(パラシュートだけが落下してくる)、高圧電流に触れて即死。感電の瞬間2秒だけ姿が見えて演じてるのがブラッド・ピットだとわかるというどうでもいいギャグに大物を起用。ちなみにブラピはコーヒー一杯でこの仕事を受けたそうです(これも、ブラピはいつもコカイン入りのコーヒーを飲んでいるという話にちなんだ強烈なジョークだと思う)。

 デブ少年のミュータントが出てきたり(デブのヒーローって見たことある?)、ネガソニックちゃんは女性だけど日本人女性のユキオ(忽那汐里がキュートに演じている)が恋人だし、デッドプールは盲目の婆さんと暮らし、インド人のタクシー運転手ドーピンダーを雇って彼が運転中にカーステレオでかけるインド音楽を「そんなわけのわかんねえ音楽かけるな」というケーブルを「差別すんじゃねえ!」と怒り爆発。ブラックトムという名のミュータントをケーブルが殺すと「お前は黒人差別か!」と言い放つ。アフロヘアの黒人女性ドミノ(ザジー・ビーツ)に「ブラック・ブラックウィドウだな」とアベンジャーズシリーズのブラック・ウィドウをその名前なのに白人女性じゃねえか!というネタをかましたり、X-MENというチーム名は「女性差別だ」といって新チーム名をXフォースにしたり…とにかく全方面に関して忌憚のない表現がこれでもかと繰り出される。こういうのはパンセクシュアリティ、全性愛といって性別を乗り越えてあらゆる人を愛する、というものでバイセクシュアル(両性愛)も越えている!デッドプールに差別はない!
 性差別も恩讐も血縁も乗り越えて、みんなで家族になろうという、『万引き家族』と同じテーマ。それをさらに越えている!スゴイ映画だ。
 なにしろ忽那汐里が日本人女性の役としてハリウッド映画に出演してるというのもすごい。今までのハリウッド映画じゃこういう役は日系アメリカ人や韓国人女優がやってたのだから。デッドプールは世界を変える…のか!?ラストの凄まじい自虐ネタもお楽しみに!


  


Posted by 縛りやトーマス at 02:10Comments(0)映画漫画特撮・ヒーロー

2018年06月23日

普通がそんなに偉いのか『万引き家族』



 第71回カンヌ映画祭にて日本人監督として今村昌平の『うなぎ』以来21年ぶりのパルム・ドール受賞作。

 東京の下町で暮らす5人家族の柴田家は血縁関係はないが、一軒家で暮らす「家族」だった。父親の治(リリー・フランキー)はいつものように息子の祥太(城桧吏)と二人で近所のスーパーから食品を万引きするのだった。その帰りに団地の廊下で寂しそうにしている女の子を見つけた二人は可哀そうに思い、家に連れて帰る。治の妻、信代(安藤サクラ)は「どうせ拾うなら金目のもの拾ってきなよ」と言ってとりあえず食事をさせた後で治と一緒に団地へ連れ帰ろうとするが、部屋の前で女の子の両親が激しく言い争う声が聞こえる。母親(片山萌美)が「あんな子、産みたくて産んだんじゃない」と漏らすのを聞いた信代は女の子を連れて帰り、「ゆり」と呼んで6人目の家族にする。二か月後、テレビでゆりが行方不明だというニュースが流れる。両親は二か月もの間、娘がいなくなったのに放置していたのだ。

 血縁のない人々が疑似家族を形成し、底辺の暮らしを強いられながらも本当の家族ですら持っていないような温かい愛情を持っている、というこの映画は日本の現代社会に対する痛烈なメッセージである。
 柴田家は貧困生活を送っているが固定の収入がある。祖母、初枝(樹木希林)は祖父の遺族年金があり、治は日雇いの工事現場で働き、信代はクリーニング店でパート、妹の亜紀(松岡茉優)はライトなJK風俗店でバイトをしている。きちんと働いてるのに貧困から脱出できないのだ。
 なぜ万引きをするのか?治と祥太は息の合ったコンビネーションで商品をさらっていく。「これぐらいしか教えることないから」という治は父として息子に何かを教えてやりたいができることは万引きしかない。それでも、息子に父親として何かを伝えてやりたい。

 やがて柴田家の5人が血縁関係もないのになぜ家族になっていったのかが明かされていく。家族の生活はある日突然終わりを告げる。ある事件のことで治と信代は逮捕され、家族はバラバラに。警察官の高良健吾と池脇千鶴がなぜ子供をさらったのか、なぜこんな生活をさせていたのかと懇々と諭し、説教するのだがこの二人の説教はまったく正しいのだが、それゆえに柴田家の面々の心に、そして観客の心にも響かない。普通に生きられないのか、と言われても普通の生活が耐えられない人たちが集まっているのに。そもそも普通ってなに?普通がそんなにえらいのか!(ああ、あの松岡茉優の普通を押し付けられて苦悩したであろう姿ときたら!)高良・池脇は「普通でいられない人々が至極真っ当な意見を突き付けられて追い詰められる」様を見せられる、ポジションとしては悪役だけど実にいい悪役。

 クライマックスには『ゴーン・ベイビー・ゴーン』みたいな展開が待っていて、物語は皮肉すぎる結末を迎える。この映画に対しても、パチンコにいったり海水浴に行く場面に「こんなものは本当の貧困ではない」と桂春蝶みたいな声が寄せられているというではないか。本作は貧困に陥り、虐待される人々を救おうとは言わずお前は違う、お前が悪いとマウンティングに血眼になり、「普通になれ!」と強要する現代社会の闇をただ静かに描いていく。人の幸せは普通かどうかだけでは決められない。

  


Posted by 縛りやトーマス at 13:21Comments(0)映画

2018年06月19日

オッサンを勘違いさせるのはヤメロ!『恋は雨上がりのように』



 週刊スピリッツで連載、アニメ化もした恋愛漫画の実写映像化。いつも不機嫌そうな顔で周囲からはクールと言われている女子校生がバイト先のファミレス店長の冴えない中年に恋をする、という昨今問題のありそうな内容のお話だ。

 小松奈菜演じる女子校生、あきらは陸上部の短距離走者として県大会の記録を出すほどだったが、練習中にアキレス腱を切ってしまい、競技から遠ざかる。失意のあきらがファミレスで雨宿りをしていると、店長の近藤(大泉洋)がコーヒーを勧めてくれ、手品でミルクを出してくる。そんなやりとりに淡い恋心を抱いたあきらはその店でバイトを始めるのであった。
 …って絶対にありえないだろ!こんなの!!こんなことで女子校生にモテるのなら、世間の中年男性はモテ放題ではないか。つい最近TOKIOの山口達也が未成年を家に連れ込んで不埒なことをしていて大問題になったり、NEWSの小山メンバーや加藤メンバーが未成年に飲酒をさせて大騒ぎになっていたけれど、あれはオッサンだから問題になってるんですよ。同年代の男が相手だったらそんなに揉めてなかったはず。
 少し前にチョイ悪オヤジブームとかあったけど、すぐに終わったのは仕掛けた方が男、中年男性の側だったからです。いくらカッコつけても女の子から言わせれば「オッサンじゃん!」の一言でおしまい。若い男と争ったら負けるのだ。近藤の魅力は「誠実で真面目で優しい」ぐらいしか見受けられず、そんなもんは何の魅力もない男の最後の拠り所であり、女子が惚れる要素としては弱すぎる。

 それに女子校生の方から中年男性に惚れるという話が純愛として扱われるのはどういうことか。これが逆だったら純愛として扱われるか?キモイと言われて終わりだ。こんな話にしているくせに道徳的な問題を指摘されないよう、近藤はあきらからのラブコールを大人の男として否定する。あきらが自分に恋心を抱くのは中途半端に諦めてしまった陸上への思いが代償行為として自分に向いているだけだと思い、彼女がリハビリして、再び陸上への情熱を取り戻すように応援する。

 じゃあ初めからこんな話作るなよ…

 この映画は誠実で真面目なら若い女子にもモテる!と勘違いする輩を大量に生み出すだろう。やめろ!オッサンはどんなに頑張ってもモテないんだよ!
 それに大泉洋は「冴えない中年男性」にするのは無理がある。充分冴えてるではないか。恋愛映画として成立させるために最低限のカッコよさが必要なのはわかるけど、それって結局人は見た目が9割ってことですか?そうでないというなら温水洋一あたりでやってほしかった
 こんなに罪深い映画も久しぶりだよ。オッサンに余計な夢を見させるのはやめろ。目を覚ませ!



  


Posted by 縛りやトーマス at 01:47Comments(2)映画

2018年06月18日

俺がドン・キホーテだ

 テリー・ギリアム監督の最新作として公開が予定されていたThe Man Who Killed Don Quixote(ドン・キホーテを殺した男)の上映が延期される可能性が出てきた。映画のプロデューサーとの間で権利をめぐるトラブルが発生しており、結果パリの裁判所が権利はプロデューサーであるパウロ・ブランコにあるという判決を下した。

テリー・ギリアム、『ドン・キホーテを殺した男』裁判で敗訴 ― 映画の権利認められず、各国での公開が不透明に
https://theriver.jp/don-quixote-rights-loss/

 映画『ドン・キホーテを殺した男』は2000年に50億円のビッグ・プロジェクトとしてスタートしたが予算と撮影日数不足、ロケ地のトラブル、ドンキホーテ役のジャン・ロシュフォールがヘルニアでダウンといった条件が重なって制作が中止に追い込まれてしまった。そのドタバタぶりは『ロスト・イン・ラ・マンチャ』というドキュメンタリー映画にまとめられた。大金積んで呼ばれた(であろう)ジョニー・デップが事の深刻さがわからないままニコニコ笑顔で現場にやってくる様子は笑えてしまう。その後ギリアムは低予算で映画を作らざるを得なかった。
 そんなギリアムが19年越しの執念の末、完成させた映画なのにまたまたトラブルですんなり上映することができないなんて…まさに本人がドン・キホーテと化しているギリアム監督。お願いだから上映させてあげて!




  


Posted by 縛りやトーマス at 14:01Comments(0)映画

2018年06月14日

あんたも痴人の愛『ファントム・スレッド』



 第90回アカデミー賞で6部門ノミネート、衣装デザイン賞を受賞。1950年代のイギリス・ロンドン。オートクチュールの仕立て屋、レイノルズ・ウッドコック(木彫りの張り型、というひどい名前)は交際していた女性にふられた後、街をうろつき偶然入ったカフェのウェイトレス、アルマ(ヴィッキー・クリープス)と恋に落ちる。アルマを強引に家まで連れてくるのであった。
 相手が有名なレイノルズだと知ったアルマは底辺の生活から脱出できると有頂天。しかしレイノルズのもとで暮らし始めた彼女を待っていたのは抑圧と隷属の日々だった。朝早くたたき起こされ「服を脱げ!」と言われて寸法を測られる。

「君のプロポーションは僕の理想のドレスにピッタリなんだ!」

 なんとレイノルズはアルマをドレスの寸法を測るためのマネキンにしたいだけだった!レイノルズは日常生活のすべてが完璧に整っていないと癇癪を起す。庶民のアルマのテーブルマナーはひどく、食器をガチャガチャと鳴らし、トーストを音を立てて食べる。「もう少し静かにできないのか!」と怒りだすレイノルズは「今日一日台無しだ!」とへそを曲げる。ウッドコック家ではレイノルズに気持ちよく仕事をしてもらうために主でありマネージャーでもある姉のシリル(レスリー・マンヴィル)、メイドたちが気を遣うい、ルーティンワークを守らせる。何人もの女性と噂がありながら結婚したことが一度もないし、ドレスには亡くなった母親をイメージしていると。気難しくて癇癪もちでマザコンで仕事のことしか考えてない人間じゃあねえ…
 しかし世の女性たちがレイノルズの仕立てたドレスを着ることを憧れている様子を見、そのレイノルズの恋人だというアルマは優越感を覚える。だがレイノルズに従属するだけの日々は御免だとアルマは彼を自分のものにするため、ある策略を巡らせる。

 それは毒キノコを彼に食わせることだった。細かく削って粉末にした毒キノコを料理に混ぜる。当然レイノルズは仕事の途中でぶっ倒れる。それを熱心に看病するアルマ(?)。母親の幽霊の幻影まで見るほど衰弱するが、アルマの献身によって体調を取り戻したレイノルズは「君なしじゃいられない!結婚しよう!」

 結婚が決まったアルマは食器を鳴らし、トーストを思いきりかじって食べ、紅茶を入れる時にわざわざ高いところから瀧のように注ぐ(『相棒』で右京さんがやってるアレ)。丁寧に最後の一滴を3回に分けて。わざと相手を苛つかせる行動を取る彼女にレイノルズは何も言えない。何かいえば彼女を失ってしまうかもしれないから…
 それでも諍いを起こす二人。アルマは再び料理に毒キノコを混ぜる。今度はオムレツに!なんとレイノルズも毒キノコに気付いていながらそれを食う!彼女を失いたくないから!


 まるで谷崎潤一郎の『痴人の愛』みたいな話だ。世界三大映画祭を制した天才ポール・トーマス・アンダーソンだから谷崎も読んでいたのかもしれない。
 レイノルズを演じたダニエル・デイ=ルイスもアカデミー主演男優賞を3度受賞したことがある天才なので痴れ者の愛に惹かれあったのだろうか。デイ=ルイスは本作を最後に引退を宣言している。今までは『ギャング・オブ・ニューヨーク』とか『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などブチ切れて人を殴り殺す役ばかりやっていた彼が正反対の役で引退とは…ひょっとしたらそんな女性と交際しているのか?
 


  


Posted by 縛りやトーマス at 09:28Comments(0)映画

2018年06月05日

ワクワクが止まらない!『ランペイジ 巨獣大乱闘』



 キョダイカが止まらない!宇宙ステーションで遺伝子操作の実験が行われていたが、巨大化したネズミが暴走。アトキンズ博士(『グラインド・ハウス』に出ていたマーリー・シェルトン)は脱出するが、巨大ネズミはステーションと脱出ポッドもろとも破壊し、実験のサンプルは地球に降り注ぎ、サンプルの飛沫を浴びた動物たちが巨大化する…
 という乱暴な設定による大アクション映画だ。主演したザ・ロック様ことドウェイン・ジョンソンは『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』に次ぐ大ヒットとなり、この二作でドル箱スターに。ロック様の役どころはデイビスという霊長類学者。あの外見で!?動物保護地区で面倒を見ていた希少種であるアルビノのゴリラ、ジョージ(おさるのジョージか!?)が突然巨大化して熊を殴り殺していた。そこにやってきたコールドウェル博士(ナオミ・ハリス)が巨大化の理由がエナジー社の遺伝子実験によるものだと説明。そのころエナジー社はブラックウォーターばりの民間軍事会社にサンプルの回収を要請するが、巨大化したオオカミ・ラルフによって全滅。エナジー社のタワーから発信されている低周波によってジョージ、ラルフ、ワニのリジーがシカゴに集結する。軍隊はまるで歯が立たない。コールドウェル博士とデイビスはエナジー社に保管されている治療薬を一本だけ回収。ジョージを正気に戻すことに成功。デイビスはジョージとともに軍隊から横どった武器を使って巨獣たちに戦いを挑む。

 この手の巨大モンスターものは人間の手に負えないサイズであるため、人間のキャラはただモンスターが暴れまわるのを見るだけになりがちだけど、なにしろ今回の主役はロック様なので巨獣たちと互角に渡り合うのだ。学者にそんなことできるの?と思われるが、デイビスは元特殊部隊の隊員だった!こんな強引な設定、ロック様以外に許されないだろう。デイビスは密猟者専門の部隊に居た時、アルビノのゴリラを狩ろうとする密猟者が親ゴリラを殺して子供を奪おうとした連中を皆殺しにし、人間に絶望したという過去があった。そんな彼が親を殺されたジョージとタッグを組んで人間たちを守ろうとするのだ。これは…深いテーマだな…最後までドキドキワクワクが止まらない!!
 ラストにはジョージが崩壊したビルから子供を助けたりする『猿人ジョー・ヤング』(1949)風の場面もあってゴリラ映画への目配せも忘れていないあたりがいいですね。



  


Posted by 縛りやトーマス at 09:39Comments(0)映画怪獣

2018年06月03日

せめてレイティング上げようよ『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』



 アマゾンプライムビデオで配信されていた『仮面ライダーアマゾンズ』の完結編となる劇場版。野座間製薬会社によって研究されていた人工生命体アマゾンは事故により4000の実験体が脱走、人間社会に潜伏した。食人本能を持つ彼らは駆除班によって狩られていたが、野座間製薬幹部・水澤令華(加藤貴子)の遺伝子をアマゾン細胞に移植することで作られた青年、悠(藤田富)=アマゾンオメガとアマゾン細胞の開発に関わっていた科学者、鷹山仁(谷口賢志)=アマゾンアルファの出会いによって物語は動き出す。身勝手な実験によって生み出されたアマゾンたちを駆除することに反発する悠は自らの実験で生み出されたアマゾンたちを狩ることで責任を果たそうとする仁らと対立。

 アマゾンズというタイトルから昭和ライダーの『仮面ライダーアマゾン』との関連を想像するが、旧作との関連性はまるでない。旧作の持つ怪奇ドラマと野性味あるアクションしか共通点はない。このシリーズを通して描かれるのは「食人」である。密かに暮らすアマゾンたちは食人本能を抑えるアマゾンレジスター(旧作のギギの腕輪を模したデザイン)を装着しているが、期限が2年しかないため以降は生きるためにやむなく人間を襲って食っている。「非人道な実験によって作られた者たちが生きるための食人は許されるのか?」ということだ。このあたりのグロテスクな描写が地上波の深夜放送ですら躊躇して配信限定になった理由だろう。


 season1とseason2の戦いを経て、生き残ったアマゾンは悠と仁の二人だけとなり、政府の駆除部隊4Cの黒崎隊は「この二人を狩ればすべては終わる」と作戦を展開。黒崎隊に所属されていた悠の義妹、美月(武田玲奈)は追い詰められた悠を救おうとし、二人ともども池に落ちる。二人は子供だけが暮らしている養護施設・切子学園に助けられる。学園長である御堂(姜暢雄)の元、自給自足の生活をして野菜しか食べない子供たちと暮らすことにする二人だが、里親にもらわれて学園を去る子供が里親によって食われているのを悠は見てしまう。この学園の子供たちは一握りの金持ちたちの食用として作られる「アマゾン畜産計画」によって生み出された新種のアマゾンであった!

 里親たちが子供をステーキにして食ってしまう描写はイーライ・ロスの『ホステル』ばりに演出されていて、本気度大の食人場面はseason1どころじゃなかった!さらにえげつないのは悠が学園に戻って事実を明かすと、子供たちは「知ってます!」「私たちは食べられることが喜びなんです」とおびえもせずに言い放つ。まるで藤子・F・不二雄の『ミノタウロスの皿』(家畜と人間の立場が逆転している星の話)ではないか。
 クライマックスに悠が選ぶ選択はもはや子供番組とか、仮面ライダーとかの枠を飛び越えてしまっている。この内容でレイティングG(全年齢対象)ってのはどうかしてるぞ!劇場で仮面ライダーのタイトルだけ見て子供連れて来てしまった親子による阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されてなきゃいいけど!日曜の朝からイスラム系テロリストを模したような集団、難波チルドレンを暗躍させてる『仮面ライダービルド』といい、最近の仮面ライダーはどうかしてる。

 本当はseason1で死ぬはずだった最強のヒモ、鷹山仁と悠が交わす最初の会話、いかにも仁さんらしくて最高ですね。


「仁さん!目が見えるようになったのか!」
「・・・もう見たいもんなんかねぇけどな・・・」


  


Posted by 縛りやトーマス at 14:43Comments(0)映画特撮・ヒーロー食べ物

2018年05月30日

ダイナマイトでぶっ飛ばせ『ピーターラビット』



 ヘレン・ビアトリクス・ポターは若いうちから菌類とキノコの研究をしていて、アマチュアでありながら論文を書き上げたが、当時のイギリス社会は日本をはじめとするアジア各国ものけぞるほどの男尊女卑社会であり、学会はポターの論文をまともに取り扱わなかった。やがてポターは研究から離れ、うさぎを主人公にした絵本作家として花開いていく。その作品『ピーターラビットのおはなし』には瑞々しい自然と動物、キノコが描かれていた…

 という漫画『もやしもん』で読みかじった知識を書いてみましたが、そういった予備知識は一切必要としない映画である。ピーターラビットシリーズ初の実写映画である本作は見た目のイメージからは想像もできないバイオレンス映画だからだ!


 湖水地方に住むピーターラビット(吹き替えの声は千葉雄大)と家族たちは近所の頑固おやじジョー・マグレガー(サム・ニール)の屋敷の畑からいつものように野菜を盗む。マグレガーはかつて畑に忍び込んだピーターの父親を捕まえてミートパイの具にして食ってしまったのだ。以来ピーターはマグレガーをからかっている。
 ある日マグレガーは心臓発作で死んでしまい、ピーターたち動物は「マグレガーが死んだ!この家も畑も僕たちのものだ!」と屋敷で大騒ぎを始める。
 しかし主のいなくなった屋敷にマグレガーの甥、トーマス(ドーナル・グリーソン)がやってくる。トーマスはハロッズのおもちゃ売り場で働いていたが、社長の甥が副支配人になって自分より出世したことを聞いて大暴れ、首になってしまう。
 大叔父であるマグレガーの屋敷と土地を相続することになったトーマスはそれを売り飛ばした元手で新しいおもちゃ店をつくってハロッズを見返してやろうとたくらむ。
 せっかく手に入れた屋敷と畑が奪われてしまう!ピーターたちはあの手この手でトーマスの追い出しを図るが、ピーターたちの味方である隣家の画家の女性、ビア(ローズ・バーン)はトーマスと仲良くなってしまうのだった。畑だけでなく、仲良しのビアさえ奪われてしまう!ピーターたちの追い出し作戦はエスカレート。柵とドアノブに電流を流し、何も知らないトーマスは高圧電流を食らって吹っ飛ぶ!アレルギーのブラックベリーを食わされ、アナフィラキシーショックで命の危険にまで晒され、我慢の限界を超えたトーマスはダイナマイトでウサギの巣を吹っ飛ばそうとする。ピーターは野菜を武器に、トーマスはダイナマイトを投げつける!敷地のあちこちがダイナマイトで吹っ飛び穴だらけに…

 おい、こんなバイオレンス描写があると思わなかったよ!ちなみにダイナマイトを投げるシーンは『プライベート・ライアン』を参考にしており、CG全盛の映画なのに本当の火薬を使っている!何考えてんの!!

 このバイオレンス描写の上、「この世の終わりと思い込んで自棄になって卵を生みまくる鶏」といった狂気を孕んだキャラクターが登場し、見ているこっちの頭がどうかしそうだ!(ちなみに吹き替えの声が千葉繁なのでより狂気のキャラに!)

 安易な子供映画と思い込んでいた観客の脳みそをものの見事に吹き飛ばしてくれた本作は愉快痛快!


  


Posted by 縛りやトーマス at 03:03Comments(2)映画