2018年08月21日

カメ止めパクリ騒動

 先週末の興行ランキングで圏内に再浮上、興収は8億を突破している映画『カメラを止めるな!』。無名の制作陣、キャストによる製作費300万円の快進撃に世間が拍手喝采を浴びせているのですが、それに水を差すような話題が…なんと、この映画がパクリだというのです!!
 騒動の発端は今日発売された週刊誌FLASHから。

独占スクープ
大ヒット映画をめぐる著作権侵害疑惑
原作者が告発
『カメラを止めるな!』は私の作品を無断でパクった

https://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101002

 この映画の「原案」としてクレジットされている劇団PEACE(現在は解散している)の主宰だった和田亮一氏。和田氏はFLASHの取材とnoteにて公開している文面で映画『カメラを止めるな!』は自分が原作、演出を手掛けた舞台『GHOST IN THE BOX!』(2011年初演、2013年に再演)を無断でパクっていると主張する。

映画「カメラを止めるな!」について
https://note.mu/rookey/n/ne25a640b8cc7

 事の経緯を記すと、舞台『GHOST~』は和田氏が二部構成のプロット(サスペンス映画の撮影をしていた映画サークル内で本当の殺人が起き、撮影が始まる直前の出演者、スタッフのやりとりが明かされる)を考案し、当時劇団に居た和田氏の後輩A氏(映画パンフレットによると荒木駿)が脚本を書いて上演された。
 劇団解散後の2015年に『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督がかねてより交流のあった元劇団員のB氏(映画パンフレットに大坪勇太との記載あり)と接触、脚本を書いたA氏に映画用の脚本執筆を依頼する。この時和田氏はnoteの記事によると「精神を病んでおり、立ち直ることができなかった」ためにこの映画化プロジェクトに参加することができなかった。劇団員たちとの連絡も絶っていたというので、和田氏に映画化の連絡があったかどうかは不明。
 が、この企画は頓挫し、消滅。2016年にとある企画コンペのために『カメラを止めるな!』の形に近いプロットを完成させるがコンペは落選。2017年にENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾のオファーを受けた上田監督がオーディションでキャストを決定、『カメラを止めるな!』の企画がスタート。そして映画が完成。公開当初のクレジットには荒木、大坪両名の名前が記載されていた。

 映画の大ヒットを受け、和田氏は7月8日に『カメラを止めるな!』を鑑賞。その際には以下のようなツイートをしている。

ワダリョウイチ
‏ @Rookey_rw
7月8日

これから
「カメラを止めるな!」を見る。
僕が25歳から3年間命をかけてやってた劇団の、その公演の一つに上田監督が刺激され作られたという作品。
多分いろんな感情が生まれると思うんだけど。
大盛況です。
すごい。
うれしい。
楽しみ。

https://twitter.com/Rookey_rw/status/1015892121717391365


カメラを止めるな!
めちゃ面白かった。
作り手のみんな、映画が好きなんだなぁと思えた。
あの頃命かけて大好きな仲間と作ってた作品がこんな感じで命を与えられてて、本当にうれしかった。
最高でした

https://twitter.com/Rookey_rw/status/1015955712843739137

 このように当初は和田氏も映画版の方に感激して上田監督からも感謝のリプライを送られている。7月13日までは映画を観た人のツイートやWEBの映画記事にRTしているのだが、クレジットに自分の名前がなかったことや、構成や大まかな設定部分はそのままなのに「これはオリジナルストーリー」と言い張っている上田監督の姿勢を疑問に思った和田氏は7月18日に上田監督へ「原作という形で劇団名、作品名を入れてくれないか」と連絡。翌日上田監督から「『企画開発協力 劇団PEACE和田亮一』でいかがでしょうか」と返事があったのだが映画製作に協力していなかった和田氏はGHOST IN THE BOX!のタイトルと荒木、和田両名の名前を原作者としてクレジットして欲しいと要求。この要求に上田監督は「映画のもととなったのは舞台だが、出来上がったものは別物だから原作と(クレジットを)入れることはできない」と返答。
 この返答に納得できない和田氏は上田監督、映画のプロデューサーである市橋浩治氏と交えた三者会談を行うが市橋、上田側は原作者のクレジットを入れることを頑なに拒否。映画の拡大公開を控えた時期だったため「クレジットは今日決めたい」と言われたので一旦は口約束という形で「原案」の提案を受け入れる。しかしやはり納得ができなかった和田氏は弁護士を立てて「原作」のクレジットを要求。その後市橋プロデューサーから原案利用契約書が送られ、権利を買い取る形にして今後映画を舞台にリメイクする権利、二次使用の権利なども映画側が有する、というものだったためこれに納得できない和田氏はFLASHに告発のインタビューを受け、訴訟の準備をしているという。


 発売中のFLASHには舞台『GHOST~』と映画『カメラを止めるな!』の類似点が記されていて「二部構成」「撮影を見守るモニター室がトラブルに対応する様が描かれる」「途中で脚本の辻褄が合わなくなる」「台本にないトラブルを役者がアドリブで回避する」「たまたま居合わせた製作スタッフの関係者が撮影に参加する」などほとんど一緒で、これは和田氏が「自分が原作者」と主張するのもわかる。
 ただ和田氏が主張する「上田監督がオリジナルストーリーと主張していた」ようなことは僕が知る限りなかったと思うし、当初から劇団PEACEの『GHOST~』が元になったという話はあちこちのインタビューで話しているし多くの人が周知の事実だと思う。このように和田氏の主張や態度は疑問が残る部分も多い。三者会談でも口約束だけで済ませようとしたところとか。noteでは
「銀魂の映画は、全くオリジナルストーリーだけどちゃんと「原作」って入ってます」
 と書いているけど、あれは原作から各エピソードを引っ張ってきて組み合わせただけだよ!あれをオリジナルストーリーと認識するなら『カメラを止めるな!』は上田監督がオリジナルといってもいいことになるのでは?
 市橋、上田側にはなんで頑なに原作とクレジットしたくないのかもわからない。FLASHを読む限り舞台版も映画もほとんど同じなのだから「原作」とクレジットしてもよかったのでは?映画化の企画に参加していない人間を原作者とクレジットするのが嫌だったのか?この騒動で思い出すのが映画『そして父になる』の盗作疑惑だ。


「そして父になる」盗作騒動のウラ側
http://hunter-investigate.jp/news/2013/10/post-418.html

 映画『そして父になる』は病院側のミスによって取り違えられた子供をそうとは知らず6年に渡って育てていた親が真実を知って血の繋がりをとるか、6年間のつながりを取るか煩悶するという物語だ。
 この映画は是枝裕和監督のオリジナル脚本とされていたが、実は「参考文献」となった本がある。ノンフィクションライター奥野修司氏が17年に渡る取材で書かれた『ねじれた絆-赤ちゃん取り違え事件の十七年』(文春文庫)だ。
 映画は公開前(つまり撮影終了後)に制作会社のフジテレビから「『ねじれた絆』を参考文献としてクレジットしたい」と依頼があった。この時点で事後承諾にも程があるのだが、文春側は「『ねじれた絆』を参考にしているが、「原作」というには当たらない」として参考文献にすることを了承している。
 ならば何が問題なのか?文春側は映画の内容についてどうこういわない代わりに『ねじれた絆』が参考文献であることを世間に広く告知してほしい、という紳士協定をフジ側と結んだつもりだったが、その告知が思ったより為されなかったことを問題視しているようなのだ。

 今回のケースとまったく同じではないだろうが、事後承諾という部分では同じかと。権利関係という極めて敏感な問題をなあなあで済ませるとロクなことないですね。『ターミネーター』がエリスンの作品を引用したと訴訟になって大金取られたみたいに海外ならもっと揉めてると思うよ。

 騒動の渦中になった和田氏にもややこしい問題が浮上している。金の持ち逃げ問題だ。

tsun+sun(つんつん)
‏@greeNtsuN

tsun+sun(つんつん)さんがライブドアニュースをリツイートしました

おいおい和田さん、カメ止め訴えてる暇あったら「TOKYO:PUNCH-LINER」の件をちゃんとしてください。
自分は前払い予約のDVDとCD代持ち逃げしてるんですよ?
関係者の方に伺った話では、連絡もつかないし居場所もわからないということでしたが?それでどうやって許諾取れと?

https://twitter.com/greeNtsuN/status/1031690230464536576

 別の舞台の金を持ち逃げしているという。本当かどうか知らないけど知りたくもない色んな闇が漏れ出してる感じ。
 世間でヒット中の映画がパクリだと原作者が主張→その原作者は別のところで金を持ち逃げしていた
 という『カメラを止めるな!』ばりに二重構造になっているのが面白い。ぜひこちらをカメ止め2として続編、映画化してほしい。製作費は300万円で。


  


Posted by 縛りやトーマス at 15:08Comments(0)映画日本のとんでも事件

2018年08月17日

連続82回で止まった!

 僕が定期的に発行してる映画に関する小冊子(コピー本だけど)『映画はわかってくれない』で色んな映画のベスト10について書いた。「映画の中で死んだ人数が多いベスト10」とか「ロングランされた日数ベスト10」だとかだ。インドで20年以上連続上映されていた映画を見つけた時は悠久の時を生きるインド人の奥深さに感動した。
 そしてまた新たなベスト10ネタを見つけた。


映画「カメラを止めるな!」公式
‏@kametome12

6/23公開初日から≪82回連続満席≫を続けてきた聖地・新宿ケイズシネマ!本日惜しくも初めて満席がストップ(あと数人でした…!)。しかし【82回連続満席】この伝説的記録はしばらく破られる事はないでしょう。(上田監督が自分で破ると言ってました)。ケイズシネマでは9/7(金)まで連日12:30から上映中!

https://twitter.com/kametome12/status/1030027781625667584

 口コミ展開で前代未聞の大ヒットロングランを続ける『カメラを止めるな!』が初日から上映をしていて、ファンの間では聖地と呼ばれている新宿K's CINEMAがなんと上映初日から82回連続満席という記録を達成していた。K's CINEMAはスクリーンがたったひとつしかない上に84席という小さい映画館ではあるが、このこじんまりした場所から伝説が始まったというのも感慨深いではないか。
 K's CINEMAの前身は新東宝の封切館で、後に東映の封切館として任侠映画をかけていた新宿昭和館だ。60年代の東映任侠映画路線を中心に上映していた頃は観客が映画にハマってみな肩をいからせて映画館を後にし、スクリーンの上で起きた暴力や任侠を知人に熱く語っていたことだろう。2018年では客が「ポンッ!」と奇声をあげながら知人に『カメラを止めるな!』の凄さを語っている(想像)。時代が流れて上映する映画が変わっても同じようなことが起きているのだから不思議。レンタルDVDや配信サービスの充実によって映画館にゆく客足が減っているというのに。映画館は不変だ。




  


Posted by 縛りやトーマス at 13:18Comments(0)映画

2018年08月14日

奪還せよ『エクスティンクション 地球奪還』

 ネットフリックスで配信されているSF映画『エクスティンクション 地球奪還』を観た。



 主演はマイケル・ペーニャ。『エンド・オブ・ウォッチ』で主役ジェイク・ギレンホールの相棒役を演じ、『アントマン』でアントマン=スコットの親友役、『オデッセイ』で主役マット・デイモンの親友役…って親友役ばっかりだな!なんか、親友役が似合う顔なんだな。

 そんなマイケル・ペーニャ演じる主人公ピーターは悪夢にうなされる。何者かに襲撃され、同僚も友人も家族も殺される。そのせいで家族と不和が生じ仕事も上手くいかない。上司デヴィット(マイク・コルター)の勧めで医者にかかろうとするが病院で自分と同じ悪夢にうなされている男に出会う。これは妄想か?現実なのか?
 画してどこからかやってきた宇宙船(!)と武装したエイリアン(!)によって攻撃が始まる。ピーターは職場の工場が安全だという夢を見ていたのでそれを信じマンションから家族を連れて脱出する。途中でエイリアンを返り討ちにし彼らの武器を奪う。しかしエイリアンは気絶していただけで武器である銃を追跡してピーターたちに追いつく。そしてピーターはエイリアンたちの正体と目的を知る。


 最初はよくあるベタな侵略SFかと思い、2018年とは思えない古びた描写が続く上にピーターのうつ病に悩まされるようなダメ社員ぶりが胃に痛いのだが、中盤からはあっと驚く仕掛けが施され『エクスティンクション 地球奪還』のタイトルの意味がわかるようになると映画の内容自体が一変する。
 主人公の周囲でしか展開しないような話だが最後には世界規模にまで拡大するのだった。こういうの見るとやはり映画はアイデアだと思う。現在の社会問題にも相通じるテーマがあって唸らせてくれた。

  


Posted by 縛りやトーマス at 11:32Comments(0)映画ネットフリックス

2018年08月12日

約一年で撤去された前田有一

 去年の夏ぐらいからとあるTSUTAYAが前田有一の超映画批評で見事高得点を獲得した映画24選というコーナーをつくっていて、初めて見かけた時思わず嘔吐しそうになった。



 このコーナーの作品はこの店じゃ絶対に借りないぞ!と決意したが、ひょっとして他のTSUTAYAにも同様のコーナーができているのだろうか…と恐ろしい考えに囚われた。もうTSUTAYAじゃDVDレンタルできない!急いで府内のTSUTAYAを見て回ったが他の店にはなかった。

 おそらくこの一店舗に前田有一のフォロワーが居て、コーナーをつくったのだろうがいい迷惑だ。ちなみにこの店舗には「NO MORE 漫画実写映画」コーナーもあってデビルマンだのガッチャマンだのヤッターマンだのが並んでいた。なぜか実写ハガレンが置かれていなかった。前田コーナーといい、ひどくセンスのない店員がいたものだとため息をついたものだ。

 だが前田有一コーナーはこの夏めでたく撤去となって約一年の短い命を終えた。正義は勝つ。
 しかしこの一年に渡ってコーナーがあったのに僕はSNSやネットなどでTSUTAYAに前田有一のコーナーがある!という書き込みを一度も見た記憶がない。誰も気づかなかったのか、あの店舗を利用する者に前田有一を知っている人間が店員と僕しかいなかったのか。前田有一って人気ないんなー。




  


Posted by 縛りやトーマス at 23:18Comments(1)映画日本のとんでも事件ネット

2018年08月06日

シリーズ最高の傑作にして最大のトンデモ『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』



 『スパイ大作戦』の映画化『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新の第6作。本作はシリーズ最高傑作にして最大のトンデモ作品だった!


 IMFのイーサン・ハント(トム・クルーズ)率いるチームは核弾頭に使われるプルトニウム3個を回収すべく、売人から買い取ろうとするも取引現場が何者かに乱入され、仲間のルーサー(ヴィング・レイムス)が人質に取られる。イーサンはルーサーを見捨てることができず、プルトニウムは何者かに奪われてしまう。彼らの正体はアポストル(神の使徒)と名乗る前作『ローグ・ネイション』に登場した無政府組織シンジケートの残党だ。
 アポストルが世界中の3都市を核汚染させようとする陰謀を止めるため、IMFはプルトニウムを手に入れようとしている正体不明の男、ジョン・ラークを捕らえるミッションを発動。だが彼らの前にCIAの新長官エリカ・スローン(アンジェラ・バセット)が現れ勝手な行動ばかり取り、世界を危険に晒しているIMFは信用できないとCIAエージェントのウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を同行させる。パリに潜入したイーサンとウォーカーは正体不明の謎の女、ホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)に接触しようとするラーク(リャン・ヤン)を発見、眠らせてラークのマスクを作ろうとするが思わぬ反撃に遭ってしまう。しかも突如現れたMI6のエージェント、イルサ(レベッカ・ファーガソン)が二人を助けようとしてラークを射殺してしまう。顔を破損させたためにマスクは取れない。イーサンは「ラークの顔は誰も知らないはずだ」と変装もせずに素顔でホワイト・ウィドウに近づく。
 ウィドウとの接触に成功したイーサンだがウィドウ自身は仲介役に過ぎず、アポストルの要求はシンジケートのボスであり、前作でIMFが生け捕りにしたソロモン・レーン(ショーン・ハリス)を護送先のパリで脱獄させること。


 今回は複数の登場人物が複雑に絡み合い、しかも誰が本当の悪役なのか?がわからないようになっている。それは脚本上でわからないようにさせているのではなく、脚本家がわかっていない(笑)。
 なぜなら本作は撮影前に脚本が完成せず(33ページしかできていなかった)、監督のクリストファー・マッカリーは撮影しながら続きを考えた。まずトム・クルーズがアクションのアイデアを出し、それとストーリーがつながるように構成しようとした。なのでアクションとストーリーにまったくつながりがなくなってしまった。最初に出てくるヘイロージャンプ(7620メートルの高度から落下して低高度でパラシュートを開く)の目的は「パリに潜入する」というものだが、パリにいくだけなんだから普通に空港で飛行機に乗っていけばいいだろ!?
 クライマックスでもヘリで逃亡するジョン・ラークを追ってイーサンが荷物をぶら下げたロープに飛びついてそのまま追跡するんだけど、何をぶら下げてるのかまったくわからない。ぶらさがりのアクションを撮るためにそうしたとしか思えない!劇中ピンチになる度に「どうするんだ?」「今考える!」といったやり取りが繰り返される。それ、この映画の撮影のことだろ!

 脚本完成前に撮影に入るというのは駄作が出来上がる条件のひとつで、『クレオパトラ』『地獄の黙示録』(こちらは俳優側のトラブルで脚本を書きなおしたんだけど)なんかも同じで、その法則に従うなら『~フォールアウト』も駄作になるところだが、シリーズNo.1といってもいい面白さなのだ。
 その理由は次から次へと息もつかせぬアクションの連続なのでドキドキハラハラが最後まで持続するのと、ほとんどのシーンで主演のトム・クルーズが生身のアクションをやっているのでその迫力に魅せられてしまう。
 ヘイロージャンプのために100回練習ダイブをし、パリの街をBMWで爆走し、ヘリコプターの免許を取って疑似墜落させるスパイラル飛行を実演する。さらにはビルからビルへ飛び移るスタントで失敗して足を骨折までする!骨折が治るのに半年以上かかるといわれたものの、6週間で撮影に復帰したというトム・クルーズ。『プロジェクトA』のジャッキー・チェンじゃないんだから。
 今年で56歳のトム・クルーズ、もはやジャッキーでもやらないスタントに挑んでます。今回のサブタイトル「フォールアウト」は核爆弾が爆発した後に降る死の灰のことだけど、「余波」の意味もあるからトム・クルーズに影響されて色んな役者が「俺も負けないぞ!」と生身のアクションに挑むようにならないものか。56歳に負けるなよ!


 そしてBL界隈でも大人気のイーサン・ハント×ベンジー・ダンのカップルでおなじみ、サイモン・ペッグは今回もお姫さまポジション。ある人物にベンジーが成りすまして危険なミッションに挑む場面では

ベンジー「バレたらどうするんだよ?」
イーサン「安心しろ!その時は助けるから」
ベンジー「どうやって?」
イーサン「今から考える」

 このやり取り(笑)
 死にかけたベンジーを助けるかどうかが今回もクライマックスになっていて、またも安定のヒロイン感でした。


  


Posted by 縛りやトーマス at 00:45Comments(0)映画トンデモ映画

2018年08月04日

2010年代のエド・ウッドだ!『ブリグズビー・ベア』



 パッと見、とても冴えない25歳の青年ジェームズ(カイル・ムーニー)は両親のテッド(マーク・ハミル)とエイプリル(ジェーン・アダムス)に外出を禁じられ、地下に閉じ込められて暮らしている。外には有毒ガスが溢れていて危険だからと…
 ジェームズの楽しみは部屋のポストに届けられる、クマの着ぐるみが主人公の教育番組(『アレフ』みたいなの)、『ブリグズビー・ベア』ただひとつ。毎日のように同じ番組を見ているジェームズはそれに取り憑かれる。ある夜、ジェームズは警察が両親を連れて行くのを見る。ジェームズも同様に連れ去られ、警察署の一室で担当刑事のヴォーゲル(グレッグ・キニア)から、テッドとエイプリルは本当の両親ではなく、ジェームズは赤ん坊の頃に二人によって連れ去られたのだと教えられる。

 …というまるで『ルーム』みたいな話なのだが、こちらはより奇妙な展開になっていく。ジェームズは本当の両親と妹のオーブリー(ライアン・シンプキンズ)と暮らし始めるのだが、いくら本当の家族とはいっても25年も会っていない人間と普通に暮らせってそりゃあ無理だ!それに両親も妹も明らかにジェームズに気を遣ってよそよそしい態度だし。その上ジェームズにはブリグズビー・ベアのことしか頭にない。警察からブリグズビー・ベアはテッドたちがつくっていたのだと聞かされて「あの人たちが作ってたんだ!サイコーだ!」と大喜び。スポーツや映画を見せて他のものに興味を持たせようとする両親だがジェームズが興味を持つのはクマの着ぐるみだけ。

「ブリグズビー・ベアは僕のすべて、人生なんだ!」

とまるで「クラナドは人生」みたいなことをいうジェームズ。しかし新作はもう見られない…それなら、自分で作ってしまえばいい!
 ジェームズはオーブリーに連れられて行ったパーティーで出会ったスペンサー(ジョージ・レンデボーグ・Jr)がブリグズビー・ベアに興味を持ってくれたことをきっかけにブリグズビー・ベアの続きを作り始めるのだ。
 ジェームズたちがつくる映像は完全に素人仕事で予算もなければ技術もない。切り抜きの背景に安っぽい小道具、ヘナチョコなアクションの数々は失笑そのものだが、ブリグズビー・ベアにすべてをかけるジェームズたちには次々と理解者が現れる。特にヴォ―ゲル刑事はジェームズの純粋な創作意欲に打たれて警察の押収品からブリグズビー・ベアの小道具をこっそり渡してあげたり、かつて『テンペスト』のプロスペロー役で舞台に立ったという過去をうっかり話してしまい、ジェームズにもう一度やろうと誘われる。いざやり始めると昔取った杵柄が蘇り、ワンテイクに異を唱えて「もう一度やらせてくれ。今度はもっといい演技ができそうなんだ」と本気になり始める!
 そんな彼らに強く反発するのは父親のグレッグ(マット・ウォルシュ)だ。ジェームズが作ろうとしているのは彼から息子を奪った誘拐犯がつくったわけのわからない映像だ。グレッグはジェームズには治療が必要だと精神病院で放り込んでしまう。だがジェームズらが撮影している様子をオーブリーから見せられ、ジェームズにはクマの着ぐるみが必要なんだと理解を示す。

 奇妙な設定で始まった映画は、「何があっても映画を作りたいやつら」への愛がほとばしっている。ジェームズは自分の行動に揺るがない自信を持っていて、たったひとつでも大切なものを持っていて、そのためにすべてを賭けることができる人間のなんとまぶしいことよ!
 ジェームズは25年引きこもり生活の割にやたらとポジティブでどう見ても不釣り合いなパーティ会場でブリグズビー・ベアの愛をぶちまけてプチ人気者になってしかも、童貞喪失しそうになる!(未遂に終わるが)そこで童貞卒業したら創作意欲は失われるに決まっているので、未遂に終わった彼はますますブリグズビー・ベアにのめりこむ。
 この超ポジティブで嫌味がなく、テンポよく話が進んでいくところも本作の良さだ。

 クライマックスで目一杯の愛情を注いだ作品がボロクソに批判されたらどうしよう、とジェームズはトイレで嘔吐するのだが、スペンサーは「俺たちは最後まで作り上げたんだ。だから他人からの評価なんてどうでもいいのさ」というのだ!なんという男泣きのセリフ!
 『ブリグズビー・ベア』は創作における産みの悲しみ、辛さを見事に表現している。クリエイティブな仕事をした人はあのラストシーンに必ず泣く。技術や金じゃない!愛なんだよ!と叫ぶ『ブリグズビー・ベア』は間違いなく2010年代のエド・ウッドだ!



  


Posted by 縛りやトーマス at 12:34Comments(0)映画

2018年07月29日

大規模公開の私的作品『未来のミライ』



 マッドハウスの齋藤優一郎と細田守が共同で立ち上げたスタジオ地図の第三回作品であり、細田守監督第五作。

 4歳の男の子、くんちゃん(CV:上白石萌歌)は両親や周囲の愛情を一身に受けて育っていたが、母親が妹のミライを生むとみんなの愛情はミライが独占することに。ミライに嫉妬したくんちゃんはミライにイタズラをしたり、鉄道のおもちゃで殴ろうとしたりしたので、お母さんはくんちゃんをしかりつける。くんちゃんは怒りを爆発させて家の中庭に飛び出すと、見知らぬ異世界に飛ばされてしまう。その世界には中学生になったミライがいて、「お兄ちゃん、どうして私に意地悪するの!」とくんちゃんをしかるのだった。

『未来のミライ』は細田監督の長男が妹が生まれた途端に我儘を言い出すようになった、という自身の見て感じたエピソードを元に制作されている。くんちゃんは4歳児ならではのメンタリティで我儘放題に振舞う。両親が「くんちゃんはお兄ちゃんなんだから」と言われてもくんちゃんには自分が王様のようにふるまえる世界しか知らない。そこに飼っている犬のゆっこが人間の姿で現れる。「自分はこの国の王子だった」というゆっこはかつては自分がこの家の王子だったのに、くんちゃんが生まれると両親はくんちゃんにばかり愛情を注ぐようになった。くんちゃんがミライによって両親の愛情を奪われたのと同じことが起きていたのだ。
 くんちゃんの元に未来から人がやってきたり、または過去の世界に飛ばされたりして、くんちゃんは色んな人によって自分が生かされていること、自分は世界の王様ではないことを知って少しずつ成長していく。くんちゃんの冒険を両親はまったく知らないのであっという間に子供が大きくなり、大人になっていくのを目の当たりにしてしんみりするのだ。「子供は大人の知らないところであっという間に成長する」というのは現実の世界でもそうだし、細田監督が実際に感じたことだろう。
 と聞くと、どの家族にも相通じる不変のテーマのようだが、根底にあるのは細田守の私的な思いであり、これが災いして作品としては締まりの悪いプライベートフィルムになってしまった。

 この背景には今回単独で細田守が脚本を書いてしまったことにある。細田守は『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』では奥寺佐渡子という脚本家に任せて、『バケモノの子』では共同で脚本を書いていたが今回は細田単独だ。エンターテイメントとして完璧にストーリーを構成していた奥寺なしで、しかも細田守の私的な思いによるエピソードを並べただけの話は脈絡がなく、無意味な演出が積み重なった。
 最初のエピソードでは未来から来たミライにより「同じ時間軸では二人の人間は同時に存在できない」というタイムパラドックスが説明されるが、後半では同じ人物が同じ時間軸で存在している。その説明は一切ない。さらにくんちゃんは不満を爆発させ、家の中庭に降りると異世界(過去や未来)に移動するが、そのルールもほとんど説明されないので観客の多くはうっかり見落とすだろう。なぜこんなわかりにくいルールにしたのか。『時をかける少女』みたいにラベンダーの匂いを嗅いだらタイムリープする、みたいなわかりやすいやり方になぜしなかったのか。
 最初の「ひな人形を片付ける」というエピソードで人形のもっているしゃもじ状のものがお父さんの背中に張り付いていて、それをくんちゃん・ミライ・ゆっこが気づかれないように近づいて取るというのも、くんちゃんがサッと近づいて取ればいいだけでこれを物凄いドキドキ感あふれる演出にする必要ある?

 くんちゃんという人間の名前だかなんだかわからないのは一体なんなのか。妹が生まれたらくん兄ちゃんではないか。こんな口にするのも憚るような名前をなぜつけた。そのくんちゃんが犬の尻尾の尻穴に差し込んで歓声を上げる場面も細田監督の趣味かなんだかわからんけどさあ…相変わらずの獣好き、美少年もしくは美青年好きの細田守の性癖が炸裂してましたが、宮崎駿といい新海誠といい、日本のアニメ監督の性癖はなぜ歪んでいるのか。オタクだから?

 これを夏の時期に360館以上でかけた東宝の蛮勇には恐れ入る。『カメラを止めるな!』ぐらいの小規模でやるべきでしょう。細田守もこの規模でこんな私的な作品が許されるわけないのだから、せめてエンターテイメントに徹する勇気が必要だったのでは?


  


Posted by 縛りやトーマス at 20:01Comments(1)映画アニメオタク

2018年07月21日

その後の人生『最後のランナー』



 映画そのものは見たことがなくても、ヴァンゲリスの有名なテーマ曲はみんな知ってる『炎のランナー』。



『炎のランナー』はユダヤ系のハロルド・エイブラムスとスコットランド人のクリスチャン、エリック・リデルの二人が互いの誇りをかけてパリ五輪の短距離走(100m)で対決しようとするが、予選が日曜日に行われることから安息日に走ることはできないとするリデル。アンドリュー・リンゼイ卿が400mの代表権を譲るといい、リデルは100mを棄権する。ハロルドは100mで、リデルは400mでそれぞれ金メダルを取るが、決着は永遠につけられることがなかった…
 映画ではその後リデルが布教のため宣教師として中国に渡ったことが語られる。中国でリデルがどのような人生を送ったのか?に迫るのが『最後のランナー』だ。


 パリ五輪で金メダルを取った後、数多のスポンサーからの誘いを断ったエリック・リデル(ジョセフ・ファインズ)は宣教師として出生地であった中国・天津へ渡る。パリ五輪の翌年1925年のことである。
 中国で家族とともに暮らし、人種の分け隔てなく人道支援に励むリデルだが、満州事変が起き日本軍が天津を支配すると状況は一変する。領事館は国外退去を促すが現地にとどまって人道支援を続けることを選択したリデルは家族をカナダへ逃がし、自分は中国に残る。
 避難者の中国人たちと暮らし、日本軍に対抗するレジスタンスのジ・ニウ(ショーン・ドウ)や少年シャオ・ション(サイモン・ツウ)に慕われ日々を送るが太平洋戦争が勃発すると在留外国人たちにとって中国は暮らしづらくなる一方になる。ついに日本軍に捕らえられたリデルは外国人らとともに収容所へ送られる。
 リデルがパリ五輪のメダリストだと知った湯本少佐(小林成男)はレース対決を申し入れる。この辺は『不屈の男 アンブロークン』にも似たシーンがある。体力をつけろと多くの食べ物が振舞われるがリデルは拘留されている仲間たちや学校の子供たちに分け与えてしまう。レースは当然惨敗。勝利に沸き立つ日本兵たち。しかし食事を子供たちに分けていたことを知らされると激怒した湯本の命令でリデルと反発したデヴィッド(ザック・アイルランド)は独房に放り込まれる。

 日本兵による嫌がらせ、虐待が続くあたりも『不屈の男 アンブロークン』と似ており、あのころの日本軍はどこでも同じようなことやってたんだな。こういうと熱心な愛国者の人々は「また反日映画か。許せん!」と映画を観てもいないのに息巻いてるのです。日本軍の過去の悪行から目を逸らしてはいけない。しかし本作では悪化する戦況の中、レジスタンスによる支援物資の提供を知っていながら見逃したりする日本兵が居たりもするのでご安心を。どんな時にも人道的にふるまう人間がいるものである。

 とはいえひどいやつもやっぱりいる。デヴィッドへの凄まじい虐待がそれで、あまりの仕打ちに耐え切れずデヴィッドはニウに脱獄を手配してもらう。肥溜めの桶に浸かって逃げ出すという想像を絶する手段で脱獄を成功させるが、逃亡を手伝ったとアメリカ人のヒュー(ジェシー・コーヴ)が疑われ独房に入れられ、今までは見逃されていたレジスタンスによる物資提供もストップする。劣悪な環境で気管支を患い生命の境をさまようヒュー。彼のために薬を手に入れようとするリデルはもう一度少佐に対決を申し込む。だが少佐が提示した対決の日は日曜日。リデルは仲間のために安息日に走ることを決意するが自身の体も病に侵されていたのだった。


 信仰という信念のために走る、という『炎のランナー』でのリデルとまったく同じテーマなのだから思い切ってこちらの映画でも『炎のランナー』のテーマ曲流してほしかったなあ。ラストがもっと感動的になったと思うのだが。


  


Posted by 縛りやトーマス at 03:19Comments(0)映画

2018年07月18日

最後のビデオ店

 うちにはビデオデッキがまだあって、たまにテレビ放映したのを録画した『ウルフガイ 燃えろ狼男』とかを見たりするんですが、今や街のお店はレンタル「DVD」店に。そもそもビデオデッキを知らない世代がほとんどだもんなあ。日本でこうですから、アメリカではもはや絶滅寸前です。


レンタルビデオ店の思い出は? ─ アメリカでは残り1店舗、ほぼ絶滅へ
https://theriver.jp/last-blockbuster/

 日本よりも早くアメリカのレンタルビデオ店は絶滅状態に。残っているのは1店舗!世界中を探せばまだあるでしょうが、アメリカでは最後のお店です。『キング・コング2』のビデオを返却するために四苦八苦する『ビッグ・ヒット』やスウェーデン製のビデオだと言い張ってハリウッド映画のデタラメなリメイクを作り続ける『僕らのミライへ逆回転』など、レンタルビデオをネタにした映画は色々ありますが、通用しない時代がやってくるのです。
 ちなみに僕のレンタルビデオ店の思い出は借りたビデオに全然違うテレビの2時間ドラマが入っていたことです。

  


Posted by 縛りやトーマス at 17:29Comments(0)映画レンタル映画館

2018年07月16日

長年の疑問が解決した『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』



 『スター・ウォーズ』の脇役、ハン・ソロを主役にしたスピンオフシリーズ。本作で『スター・ウォーズ』シリーズの長年に渡る疑問が氷解した。それはハン・ソロがなぜあんな毛むくじゃらのチューバッカと四六時中一緒にいるのかということだ…

 ハン(ニューヨーク大学で演劇を学んでいる新鋭、オールデン・エアエンライク)は故郷の星で悪党の使い走りをさせられ、せこい盗みを繰り返すチンケな小悪党であったが、彼女のキーラ(エミリア・クラーク)を連れて星を脱出する計画を立てる。だが直前でキーラだけが連れ去られる。「成功して必ず迎えに来る」と言い残し、帝国軍のパイロット養成アカデミー入りするが反抗的な性格が災いしてアカデミーを追い出されしがない歩兵として這いずり回る日々。3年経っても彼女を迎えにいくどころか生活すらおぼつかないハンは同じように戦場を駆けずり回って金を稼いでいる悪党のベケット(ウディ・ハレルソン)にくっついて一攫千金を狙う。一度はベケットにハメられるハンだが、ウーキー族のチューバッカと共闘して脱獄。その様子を見たベケットはハンの腕を買って仲間に加える。

 そしてハンは思いもよらない場所でキーラと再会する。3年前は純朴そうな田舎娘だったキーラは犯罪組織のボス。ドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)の片腕としてすっかりイケてる女に。「いろいろあったのよ」とそりゃあよほど色々なことがあったんだろうなあ…なんか、田舎から東京に出て行った童貞くんが同じように上京した片思いの同級生と3年後に再会したら相手が洗練された都会の女になってた、みたいなアレ。
 カッコつけてかつての星を出たものの、小悪党の使い走りというかつての自分と何一つ変わっていないハンは彼女と今の自分との差に愕然とするのだった。こりゃあショックで毛むくじゃらと一緒にいるようになったとしか思えない。明らかにキラーの代わりにされてるよチューバッカ。


 本作は色々と衝撃的なシーンがある。ウーキー語というのが存在して、ハンとチューバッカが会話をする場面で字幕がつくところがあるんだ。今まではハンとチューバッカの間でしか会話が成立してなく、今まではハンがチューバッカのいっていることを好き勝手に解釈してたと思ってたけど、ちゃんと会話が成立していたことがわかった。
 そしてハン・ソロという名前は帝国軍のパイロットとして登録する時、ファミリーネームがないとダメだという理由で登録係が「お前はひとりぼっちだから、ソロだな」という理由でつけられる名前なのだ。えー!そんな適当な理由で!
 クライマックスには死んだと思われてたあるキャラが生きていたことがわかるけど、そいつが生きていたからってどうってこともないような。

 色んな裏話が明かされていくけれど、どれもこれも「そんなの知りたくなかった」ということばっかりで、アメリカで壮大にズッコケてSWファンからの厳しい批判にさらされる理由もわかる気がした。

 僕はハン・ソロがチューバッカと一緒にいる理由がわかってよかったから、いいけど。しかも仲間になるとき、泥レスリングをしたというのも…


  


Posted by 縛りやトーマス at 19:38Comments(0)映画