2019年03月06日

ふざけたものほど大真面目にやらなきゃ!『翔んで埼玉』



 伝説の漫画の実写化――とはよく言われるが、『翔んで埼玉』は本当の伝説だろう。100巻越えを達成した『パタリロ!』の魔夜峰央が1982~83年に発表、86年の短編集で発売されたっきり、よっぽどのファンでもなけりゃ覚えてないようなタイトルだったが、2015年に突然、単独の単行本として発売され、テレビの深夜番組などで取り上げられた結果、今回の実写映画化に!


 架空の日本、東京では出身地によって激しい差別が行われ、特に埼玉県民は通行手形がなければ外出することすら許されない!通行手形なき者は強制送還。そんな東京のエリート校にやってきたアメリカ帰りの転入生、麻実麗は実は埼玉県出身で都知事となって通行手形の撤廃を目論む。都知事の息子、壇ノ浦百美はそんな麗に恋心を抱き、エリート都民のステータスを捨てて麗とともに埼玉解放戦線に加わる。都知事の執事、阿久津翔は千葉解放戦線のリーダーで、麗とは違い、都知事に媚びることで千葉出身者の通行手形を撤廃してもらおうとしていた。翔が率いる千葉解放戦線と埼玉解放戦線は決戦の時を迎える。


…というあまりにバカバカしい話なので、どう実写化しても浮いてしまうような気がするのだが、実写版では原作漫画の部分を過去の都市伝説として、それを現代の埼玉人が「昔はこんなひどい差別があったんだ」と振り返るという構成にした。これは上手い。どんなに漫画チックな描写であっても現代人が「そんなバカな!」と突っ込みを入れれることで漫画チックな話が無理なく成立するわけだ。


 現代の埼玉。熊谷に住む菅原愛美(島崎遥香)は結納のため両親(ブラザートム、麻生久美子)とともに東京へ向かっていた。カーラジオからはさいたまんぞうの『なぜか埼玉』が流れていた。延々と続くあぜ道の中でようやく田舎を脱出して東京に住める、という愛美に父の好海は「埼玉だっていいとこだぞ」というが聞く耳もたない。地元ラジオ局のNACK5からはかつてひどい差別を受けていた埼玉を開放した伝説の人物、麻実麗の物語が紹介されていた。

 東京では出身地によってひどい差別が行われ、埼玉県人は通行手形がなければ通ることも許されなかった。通行手形無き者は強制送還。差別に耐える埼玉人たちは救世主の出現を待ち望んでいた。
 上流階級の生徒が通うエリート養成校の白鵬堂学院では都知事の息子にして生徒会長の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)によるヒエラルキーが築かれていた。東京都出身の生徒たちは宝塚のような生活を送っていたが、ピラミッドの最下層に存在する埼玉出身の者たちは木と泥でできた小屋で勉強させられていた。

「あいつらはいまでも通行手形がなければ外を歩けないのよ。生まれも育ちも埼玉なんて。おぞましい。ああいやだ!埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」

 ひどい言われようだな!体調が悪くなっても埼玉県人は医務室すら使えない。
「医務室は都民専用だ!埼玉県人はそこらへんの草でも食わせておけ!そうすれば治る!」

 そんな学院に港区出身でアメリカ帰りの転入生、麻実麗(Gackt)がやってくる。アメリカ流の洗練された物腰の美青年で、8か国語に精通する麗に学院の生徒たちはうっとりするのだった。

 高校生の役を二階堂ふみにGacktが演じるのがすさまじいギャグなんだが、二人とも現実感のない異次元のような役者なので過剰にデフォルメされた役がハマっている。ただのコスプレを超えた存在感で漫画の実写化を演じる役者として適任だ。

 なぜか麗は差別されている埼玉県人の生徒に優しく手を差し伸べるのであった。そんな麗を嫌う百美は東京23区の空気をつめたグラスで「東京のどの地区かを判別する東京テイスティングで麗に勝負を挑む。最短記録を持つ百美は自信満々であったが芸能人格付けチェックの王者、Gacktにそんな勝負を挑むとは命知らずだぞ!
「かすかに漂うインドカレーの香り…これは西葛西だっ!」
 と全問的中で最速記録を達成するのであった。くやしさのあまり気を失う百美をお嬢様抱っこで連れ去る麗。麗に仄かな恋心を抱いた百美は生まれてはじめてのデートに麗を誘う。遊園地で二人は隠れ埼玉人を逮捕するSAT(埼玉アタックチーム)による埼玉県人狩りを目撃する。麗の屋敷の家政婦・おかよ(益若つばさ)と子供が捕まりそうになっているのを見て助けに入ったことで出身地を疑われた麗はSATによる踏み絵を強制される。それは埼玉県の県鳥、シラコバトが描かれた埼玉県草加市の名産品、草加せんべいであった。

「貴様が都民ならばこれが踏めるはずだ!」

 ちなみに原作では都知事の踏み絵だったが、実写化ではよりデフォルメされた!麗はそれを拒否してSATの手からおかよたちを救う。実は麗は埼玉の大地主、西園寺家の子息で通行手形の撤廃を目論む埼玉解放戦線のリーダーだった。
 正体がバレた以上、ここにはいられないと逃亡する麗に百美はついていこうとするが、所沢へ行こうといわれると「あの所沢!?」と恐れおののくのだった。所沢はメットライフドームもあるのに、ひどい扱われ方w

 そんな話がNACK5で流れている現代パートでは事件が起きる。運転マナーの悪い車のナンバーが千葉ナンバーだったことにブラザートム(マウイ島出身、埼玉熊谷育ち)が「このチバラギがぁ!」とキレたことで助手席の奥さん役、麻生久美子(千葉県出身)が「ハァ?今なんつった?チバラギって、千葉バカにしてんのか?このダサイタマが!!」と突然のブチギレ。それまでは親子のもめ事をまあまあと諫めてたのに。

「海もねえ埼玉がいばってんじゃねえ!千葉にはディズニーランド、船橋ららぽーと、商業施設がいっぱいある!成田国際空港もあるんだよ!」

 という久美子の千葉自慢に対してブラザートムの

「埼玉にはなあ、東京航空交通管制部があるんだよ!飛行機が問題なく飛べてるのは全部埼玉県のおかげなんだよ!」

 といくらなんでも無理がある埼玉自慢。「どうでもいいから早く東京へいってよ!」と島崎遥香の一言に心の底から同意する。本当に、どうでもいい千葉と埼玉の維持の張り合い。

 そのころ都知事(中尾彬)の元では壇ノ浦家の執事、阿久津翔(伊勢谷友介)が百美の連れ戻しを画策する。翔は千葉解放戦線のリーダーで、埼玉県人の誇りを取り戻すべく戦おうとする麗とは違い、都知事にすり寄ることで通行手形の撤廃を企んでいた。翔によって麗と百美は捉えられ、麗は体中の穴という穴にピーナッツ(千葉名産)を入れられる拷問を受けそうになったところを、謎の一団に助けられる。それは埼玉県人でありながら上流階級の都会人のオーラを持った伝説の埼玉県人、埼玉デューク(京本政樹)であった。

 京本政樹もまたGacktに負けず劣らずの異次元オーラを漂わせる役者なので、伝説の人間にピッタリ。この映画、あと及川光博さえ出ていれば完璧だった。

 麗の本当の父親は埼玉デュークであることが判明する。長年の負け犬根性が染みついた埼玉県人たちは「所詮俺たちは田舎者だから」と卑下する彼らにかつての埼玉人は海がないことを羨んで、穴を掘って水を引こうとしたこともある気概があった。埼玉県人の誇りを取り戻そうと彼らを鼓舞し、千葉解放戦線との決戦に挑む。
 人数では劣る千葉側は大漁旗に千葉県出身のミュージシャン、YOSHIKIの肖像が掲げて有名人対決を挑む。

「あ、あれは世界的ロックミュージシャン、XJAPANのYOSHIKI!」
「うろたえるな、埼玉にだってロックミュージシャンはいる!」

 とアルフィー高見沢俊彦の大漁旗を掲げる。

「あれは日本のライブ回数No.1を誇るアルフィー高見沢!」

 このギャグのポイントはアルフィーには秩父市出身の桜井賢もいるのにスルーしてるところだね!無視すんなよ!

 この後、桐谷美玲・真木よう子VS反町隆史・竹野内豊の俳優対決を経て追い詰められた千葉側は「小島よしお・小倉優子」を送り出してくるんだけど、「小物過ぎる!」と一喝されちゃうの、小島と小倉に失礼だろ!


 …とバカげた対決をしている頃、百美は都知事が不正で蓄えた金塊の隠し場所が群馬にあると知り、未開の土地と呼ばれている群馬に足を踏み入れていた。埼玉、千葉、茨城のディスりが激しい本作だが、もっともボロクソに扱われているのが群馬で、プテラノドンが飛び、ビッグフットの足跡がある人外秘境。群馬県をなんだと思ってるんだ!


 本当にバカバカしい物語は想像を絶するクライマックスに突入していくのだが、もう、どうしようもなくバカバカしいというしかない。こんなバカバカしい話を大真面目にやったスタッフ、役者陣は最高の仕事をしましたね。ふざけたことは真面目にやらなきゃ面白くないのだから。真面目でなけりゃGacktと伊勢谷友介の濃厚なキスシーンなんかできるわけないわな。多くの漫画実写映画が漫画ならではのふざけた部分を真面目に再現しようとせずに「漫画だから」と鼻で笑いながらやったがために大失敗していますが、今後すべての漫画実写映画は『翔んで埼玉』を基準に制作すべき。

 埼玉という絶妙な「弄っても笑いになる」立ち位置なのが『翔んで埼玉』の笑いのツボですね。これ、他の地方では絶対にない、埼玉でしか成立しない笑いで、他じゃあ本気の争いになってしまう。それを象徴するように埼玉では異例の大ヒットで、普通映画の興行収入で地方ごとのトップは大体東京都の映画館なのに、『翔んで埼玉』だけは地元MOVIXさいたまがトップを記録してるぐらいだから。さいたまは懐が深い。



  


Posted by 縛りやトーマス at 01:32Comments(2)映画漫画

2019年02月26日

翔んでスタート!埼玉県の動員がスゴイ

 魔夜峰央の埼玉ディスり漫画の実写映画『翔んで埼玉』が異例の大ヒットを飛ばしているぞ。




『翔んで埼玉』1位スタート!埼玉県で驚異的な数字記録
https://www.cinematoday.jp/news/N0107071

>土日2日間(2月23日~2月24日)の全国映画動員ランキングが興行通信社より発表され、GACKTと二階堂ふみがダブル主演を務めた映画『翔んで埼玉』が1位を獲得した。初日22日からの3日間で興行収入は3億3,094万9,400円、観客動員は24万7,968人に達している。

>都道府県別興収シェアで埼玉県は、東京をおさえて全国1位に。同県内における興収で、2000年以降に公開された東映配給の実写映画でこれまでの記録を保持していた2005年公開の『男たちの大和/YAMATO』(最終興収:50.9億円)の公開3日間対比414.35%という驚異的な数字をたたき出した。


 確かに面白い映画なのだが、この漫画丸出しのデフォルメされた世界観がどれだけ受けるのか?この面白さが観客に伝わるのか?という不安があったのだけど、蓋を開ければ3億越えのスタートだ。この数字は2019年公開の実写映画で国内No.4の成績。


〇マスカレード・ホテル 動員61万人 興収約8億円
〇七つの会議 動員35万1000人 興収4億3400万円
〇十二人の死にたい子供たち 動員26万3398人 興収3億3921万8900円
〇翔んで埼玉 動員24万7968人 興収3億3094万9400円
〇雪の華 動員23万0012人 興収2億8475万2200円
〇フォルトゥナの瞳 動員19万人 興収2億5000万円
※いずれも公開三日間の成績


 6作品のうち『マスカレード~』『七つの~』『フォルトゥナ~』は東宝映画、『雪の華』『十二人の~』はワーナー配給。『翔んで埼玉』だけが東映映画。東映でヒットする実写は仮面ライダーとスーパー戦隊シリーズだけ(あと吉永小百合映画)、といわれている中でのこの大ヒットは例年にない勢い。特に舞台となった埼玉県で動員を稼いでおり、普通興収で各劇場のトップは当然ながら東京都なのだけど、この映画だけは全国トップがMOVIXさいたま!なんでひらがな?漢字が読めないのかな?(はなわの『埼玉県のうた』より)
 東映の公開作品でも2005年の『男たちの大和/YAMATO』以来14年ぶりのヒットという、東映さん、どれだけ当ててないんですか!!

 これから話題作が集中する三月の興行大戦をどれだけ乗り切るのかも楽しみです。あと、映画で埼玉以上にディスられてる栃木県(劇中でプテラノドンが飛んでたり、ビッグフットの足跡がある人外秘境として描かれている)の動員はどれぐらいなのか、気になります。


  


Posted by 縛りやトーマス at 10:36Comments(0)映画漫画映画興収関連

2019年02月12日

80年代の失われた風景が今『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>



 シティーハンターが連載していた80年代は僕がジャンプ読者だったど真ん中の時代であり、僕にのってのジャンプは『キャプテン翼』『キン肉マン』『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』『シティーハンター』であった(あとは巻来功士と黒岩よしひろ)。90年に公開された二本立て以来となる29年ぶりのシティーハンター映画。テレビスペシャルも99年以来なので新作アニメ自体が20年ぶり。「なぜ今シティーハンター?」などと野暮なことは聞かなくてもよろしい。いいものはいつ観てもいいのだ。

 しかし20ン年ぶりといわれると気になるところはふたつある。シティーハンターといえば新宿駅の掲示板に「XYZ」と書き込むとそれがシティーハンターへの依頼になるわけだが、とっくの昔の掲示板など無くなっている。今回は駅の掲示板のあった場所でスマホを起動させるとAR掲示板が出てくるのだ。
 もう一つは主人公、冴羽獠の「もっこり」である。美女の依頼は必ず遂行するが、美女と見れば見境なくナンパする男。もっこりを見せつけたまま美女を駅のホームで追いかけまわし、電車のドアにもっこりが挟まったまま山手線を一周させられる話は傑作なんだけど、現在の表現ではギリギリアウトといったところかもしれない。厳しい時代になったもんだ。

 しかし復活した今回の映画でも、もっこりネタは健在だった。美女のお尻を触ろうとし、シャワーを覗こうとし、更衣室を覗こうとピンク色に染めたドローン、その名もエローンを飛ばす。もっこり魂は2010年代にバージョンアップされていた。これがなきゃシティーハンターじゃない!!


 さらにシティーハンターのテレビアニメで思いだすのは作品を盛り上げた楽曲群だ。当時テレビアニメを見ていた視聴者の度肝を抜いたのは劇中のラストからフェードインする形でシンセサイザーのイントロが流れ、ドラムが鳴り響いて最高潮のリズムに達したときにEDに突入するTM NETWORKの『Get Wild』!劇中フェードインして流れだすEDテーマなんて前代未聞だった。この曲とともにTMはヒットチャートを駆け抜けた。1~3とシリーズを重ねる中で小比類巻かほる、大沢誉志幸、PSY・S、岡村靖幸、FENCE OF DEFENSEといったEPICソニー(CBSソニー)系アーティストの主題歌、挿入歌も話題になった。80年代はソニー系アーティストの時代だった。
 今回の映画では『Get Wild』が当時のバージョンで使用される、と宣伝されていたが、蓋を開ければアニメ1~3までの主題歌はほぼ全部使われていた。定番挿入歌の『MR.PRIVATE EYE』『FOOTSTEPS』まで使う大盤振る舞い。当時の視聴者は懐かしさが胸にこみ上げてくるだろう。

 声優陣もレギュラー陣は全員当時のメンバーが再結集。72歳の神谷明さんをはじめ、60代に達したベテラン勢が欠けずに全員集合したのは凄いこと。教授とかずえさんという映画でちょっとしか出ないキャラクターまで当時の声優だった茶風林さんと山本百合子さんをキャストしていたのでこのこだわりたるや!当時はモブの声が多かった山寺宏一さんが重要なキャラクターの声を当てたりしているのもグッとしますね。


 このように当時のファンが懐かしさに浸るための復活なので、シティーハンターファン、あなたのための映画ですよ!2のED、『STILL LOVE HER (失われた風景)』に合わせて現在の新宿の風景が流れてゆく場面…本作最高のエモーショナルなシーン。失われた風景は今も僕らの胸の中で生きている。



  


Posted by 縛りやトーマス at 00:12Comments(0)映画アニメ漫画音楽

2019年02月06日

青春学園ゾンビものの新機軸だ!『映画がっこうぐらし!』



 深夜アニメを席捲しているジャンル「日常モノ」の王道をなぞった展開で始まる漫画『がっこうぐらし!』は「学園生活部」という学校の中だけで24時間生活をする(帰宅しないので学校の外に出ない)部に所属する女子高生の話だ。学校には独立した太陽光発電、浄水施設、物資倉庫、屋上の菜園などが存在しており、学校内で生活ができるようになっている。
 女子高生と担任の女教師が学校内で延々とキャッキャウフフする日常生活を心行くまで楽しもうとする読者は、突然冷や水をかけられる。学校の外にはゾンビがうようよしていて、彼女らは校内に自ら築いたバリケードの内側に閉じこもって外界からの助けを待っている。学校から出ないのではなく、出られないのだ。ほのぼの日常モノと思わせておいて、ゾンビアポカリプスモノだった!という出だしにビッグなサプライズが仕掛けられている。

 原作漫画、アニメともにこの出だしのサプライズは徹底して隠されていて、特にアニメではまさかそんな展開になると思わなかった視聴者を混乱に陥れた。なので多くの原作ファンが実写映画版にも同様のサプライズを仕掛けてほしいと願ったのだが、映画では当初からゾンビものというのを明かしたうえで宣伝されていた。深夜のアニメ放送ではともかく、映画館ではこのサプライズが仕掛けにくかったのかな?


予告編

 ただでさえ実写化には厳しいアニメファンにこういう変更点は批判されがちで当初は実写化への期待値が著しく低かったのですが、出来上がった作品は予想を軽く上回る傑作でした。
 原作の第一部、高校編をベースに崩壊した学校から脱出(卒業)するまでの物語を一部原作からの変更点があるものの、上手くまとめ上げた。このパンデミックの背景にある大企業が関わっていること、その企業がつくった「職員用緊急避難マニュアル」などの存在は実写化では削除され、徐々に拡大していく原作世界の壮大なスケール観はミニマム化したが、それが却って成功した原因だろう。世界観は広げれば広げるほどスケール観が出ると思い込んでる人が多いけど、むしろ実写の世界観は縮めた方がよいのだ
 変更部分がかなりあるが、原作世界のスケール観がほとんど失われていないのがすごい。ゾンビたちとの対決、サバイバルなどはアニメ版も顔負けの激しさだ。変に続編を匂わせないでこの一作のみで完結させている作りなのも好感。学校からの脱出を「卒業」、そこからの大学編を「進学」、最終章の会社編も「入社」とする、一連のサバイバル生活を人間が学生生活を経て社会に出ていくまで、誰しもが経験する通過儀礼としている原作の魅力をきちんと描写したことが実写版最大の成功だと思う。

 主人公たちを演じたラストアイドルのメンバーも演技力はともかく、過ぎ去っていく日々を惜しむように精いっぱい生きていく様を全力で演じていて、彼女たちの今しかできない表現だろう。めぐねえ(おのののか)とのラストシーンは号泣必至。

 原作付き作品は原作と同じようにしないと、とかく文句をいわれがちだけど変更したって原作の魅力が奈辺にあるかをわかっていれば大丈夫。変更点で面白かったのは学園が崩壊する理由。映画ではゾンビと化した生徒がカセットコンロから漏れたガスにチャッカマンで火をつけたために爆発が起きる、という少々不可解な理由になっているのですが、劇中「ゾンビは生前の記憶に従って行動する」説明がある。そうだ、冒頭で主人公の由紀が保健室のベッドで漫画『ゆるキャン』を読んでいた。この学校にも『ゆるキャン』に出てくる野外活動サークル(野クル)のような部活があるのだろう。火をつけたのは野クル部員だった!そんなところに伏線を張っていたとは…!

  


Posted by 縛りやトーマス at 01:36Comments(0)映画漫画アイドル映画

2018年12月31日

理想の漫画実写映画第二弾『咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A』



 美少女オカルト麻雀青春物語という、ジャンル付けが不可能な小林立の漫画『阿知賀編 episode of side-A』の実写化作品。
 前作『咲-Saki-』でも徹底された「漫画のビジュアルを極限まで再現する」スタイルは本作でも採用。



 麻雀するときになぜかボウリングのグローブをはめる鷺森灼役のエビ中、中山莉子も衣装からして完全に再現。



 登場時に髪が浮いている、大星淡役の志田友美なども完全に再現。もちろん動いてるときに髪は浮きませんが…


漫画でもおなじみ、雀卓を左手で抑え込んで、右手で気流を起こしながらツモ上がる宮永照(浜辺美波)の必殺技もこの通り再現だ

 他にも「三順先の手が見える」とか「副将が自らに飜数の縛りをかけてその飜数以上で和了ると次に打つ大賞が同じ局で倍の飜数で和了れるというリザベーション」

リザベーションを使うと鎖に両手を縛られるのだ(?)

 などもちゃんと再現されてます。もはや麻雀ではない、能力者同士のバトルものじゃないか!っていわれても、そういう原作の実写化なんで。

 主役クラス以外の脇役のように見える登場人物にも、それぞれの物語があるのが原作漫画の特徴なんですが、実写版も阿知賀監督・赤土と小鍛治プロの関係や千里山女子の園城寺怜と清水谷竜華の本作もっとも百合な関係を限りなく描き切っていたのは特筆に値する。

 原作漫画は10代女子の群像劇で、邦画ではリアルな10代ではない役者を起用することが多いが、本作はあくまで同年代もしくはそれに近いキャスティングをして、前述したビジュアルを完全に再現、その上で演技力よりも10代女子の瑞々しさと百合関係を仄かに匂わせた友情物語を強調してつくられたことがファンも納得できる作品になっている部分ではないでしょうか。

  前作同様、これぞ理想的な漫画実写映画の指標として記録に残したい作品です。

  


Posted by 縛りやトーマス at 17:29Comments(0)映画漫画レンタル映画館

2018年09月28日

中国版カイジ『動物世界』

 福本伸行の漫画『賭博黙示録カイジ』の中国版実写映画『動物世界』がネットフリックスで配信されているので見た。




 中国では6月末から劇場公開され、公開二日で約17億円、公開2週間で約50億円超えという大ヒットを飛ばしているのに、日本ではネットフリックス配信のみに。予告編ではピエロが化け物と戦ったりしているので別の意味で期待をあおられたのだが、有名スターが出ていないと劇場に足を運びたがらない日本の観客相手には厳しかったか。



 カイジ・ジョン(この名前、無理があるような)はゲームセンターでピエロのアルバイトをしているさえない男で、そのバイトも遅刻するわやる気ゼロのボンクラ。演じたリー・イーフォンは山田孝之っぽいイケメンで日本でも人気出そう。
 カイジは病気で意識不明の植物人間状態になっている母親の治療費さえまともに払えず、半分恋人の看護師チン(チョウ・ドンユィ)に世話をまかせっきり。彼女にプロポーズすらできないカイジは自分のダメさを嘆くばかり。チンは若い男の入院患者から浣腸をせがまれるという変態行為を迫られ(どんな病院だよ)、イライラが募ったカイジは(自分の妄想の中で)ピエロに変身!この男、精神的に追い詰められたりするとピエロに変身して怪物をやっつけるところを妄想する癖があった(どういうこと?)。カイジはブチ切れて変態患者を殴るが、それを見た他の入院患者が発作を起こしてしまう。彼氏ぶってカッコイイところを見せたところで彼女の迷惑になるだけだった…彼女が同僚の男と付き合っている話まで聞いてしまい、いよいよカイジはどん詰まり。
 カイジは街で黒服の男・遠藤に連れられ、謎の男・アンダーソンと会う。このアンダーソンが原作漫画における利根川なんだが演じるのはなんとマイケル・ダグラス!『アントマン&ワスプ』のラストで消えてしまった後どこに行ったのかと思いきや、中国で謎のフィクサーになっていたとは驚きです。
 アンダーソンはカイジが友人のジュン・リーから借金を背負わされたことを伝える。それは身を粉にして働いても30年かけなければ返せない額。アンダーソンはアラカコマカボノ島(???)を出港する客船ディスティニー号で行われるゲームに参加し、勝ち残れば借金を返済できるという。カイジは否応なく船に乗せられることに…

 ここからは原作第一章の『希望の船』編をほぼ忠実になぞった展開に。しかし船に乗り込む前に突然カーチェイスが始まったりと、気が抜けない。ピエロになる理由やアンダーソンとカイジの長年に渡る因縁めいたものを提示されシリーズ化を予言するような結末など、改変部分が全部つまらなく藤原竜也のビールを飲む演技がずっと一緒ぐらいしか見どころのない日本の実写版と違って自由な発想に彩られて楽しめる。ダグラス演じるアンダーソンは利根川みたいな名言をいってくれないのが惜しい。日本で失敗した実写映画は今後中国に任せればいいと思うの。


  


Posted by 縛りやトーマス at 19:31Comments(0)漫画ネットフリックス

2018年09月24日

基本的なことができていない実写版

 来年一月に公開が予定されている実写映画『がっこうぐらし!』の第一弾ビジュアルが発表された。



 めぐねえ・・・違うよ・・・これは『がっこうぐらし!』じゃないよ・・・

『がっこうぐらし!』という漫画はほのぼの日常漫画と思わせてはじまるのだが、実はゾンビ現象で崩壊後の世界で女子校生4人が力を合わせて生き抜いていくというサバイバル漫画だったのだ!というギャップが売りのひとつなので、のっけからホラー!恐怖!ゾンビ!みたいな宣伝してどうするねん…スタッフ、おまえらちゃんと漫画読んだのか!!
 原作読んでてアニメ一期(一期だとは誰も言っていないが二期があることはもはや常識!)も完走した我々(誰よ)はオチを知っていながら「ほのぼの日常学園漫画だと思ったのにビックリしました」と驚いたり、「ポスターに騙されてやってきた家族連れが泣き叫んでいました」と嘘報告をしたり、「この宣伝は詐欺だと思うし青少年に悪影響がある」とBPOに報告したいんじゃあ~!隠せよ!そういう要素は!!




 どーせ軽いノリのスタッフがあえて逆を狙ったとか、ストレートに作品の本質を捉えてみましただの、少しは考えているようなことをぬかすのだろうが、この愚か者!お前はっ、何もわかっていない!ここには夢がどこにもない!


  


Posted by 縛りやトーマス at 22:54Comments(0)映画漫画

2018年09月11日

過去のトラウマを掘り起こす『けいおん!Shuffle』第3話

 まんがタイムきらら10月号にて『けいおん!Shuffle』第3話です!



 今月号は主人公コンビ紫&楓と違って軽音部活に積極的でない真帆ちゃん(ギター担当・仮)主役回。彼女は強引に軽音部に誘われた上にかけもちなのですが、今回はかけもちの部活がバスケ部のマネージャーであることが判明。
 ギターがバンドの花形で自分がギター担当でいいのか?と不安になり練習中もぼんやりする真帆ちゃんの顔面にボールがヒット。黒髪ショートボブに八重歯の部員に心配される真帆ちゃん。って何気に新キャラが登場した。


この子(名前がまだ出ていない)カワイイから推すわ

 この名無しの新キャラとの会話で真帆ちゃんが過去に右ひざを大けがしてリハビリ中だということがわかる。名無しの子に復帰はいつかと聞かれ言いよどむ真帆ちゃん。しまいには自分自身にバスケも勉強もできない、そんなやつにギターなんて無理よと責められる悪夢にうなされてしまう。真帆ちゃんは勉強でも学年テストの順位で楓に負けており、その楓に勉強を教えているのは紫なので実質二人に負けていて音楽への情熱でも負けている。こんな自分が軽音部にいたら迷惑かかっちゃう!とその場を逃げ出す真帆ちゃん…何このキッツイ展開

 自宅まで追いかけてきた紫&楓に自分の思いを打ち明けることによって吹っ切れた真帆ちゃんは軽音部もバスケも全力でやるという選択を。3話にして感動的なエピソードではないですか。前作『けいおん!』の3話なんてギター買いに行ってムギちゃんが権力を利用して値引きさせる程度の話でしたよ確か。

 ゆるゆる展開のみに癒されがちだった前作に比べスポ根漫画の定番「過去のトラウマ」を上手く使ってきた『けいおん!Shuffle』からもう目が離せない。

  


Posted by 縛りやトーマス at 19:50Comments(0)アニメ漫画けいおん!

2018年08月08日

あ~るスタンプ

 31年ぶりの「最新刊」が登場したり、完全版の復刻が為されているという一体今は何年なんだ、といいたくなる『究極超人あ~る』ですが、この度LINEスタンプが登場した。

https://store.line.me/stickershop/product/4232522/ja

 漫画の名台詞、名場面がバッチリ再現されており、「まーかして!」「ぼくはとうだいにいかねばなりません」「無罪」など使用頻度の高そうな(?)スタンプが揃っているので毎日使いたい。LINEやってなくても使いたい。「ばるぱんさーの変身ポーズはこうだ!」「名付けて・・・超人野球!」「諸君!この続きは放課後にしたまえ!」などがないのが残念だ。

 しかし、このスタンプから発表からなかなか購入できなかったのだ。定められた時間に前後2時間ずつの幅をとる光画部時間を採用していたり、スタンプのひとつR・デコの「あなたは堕落しました」が「墜落しました」になっていて(こっちの方があってるかもしれない・・・)の漫画のネタを思い出してしまう、そこまで再現しているのか!ホントのところは間違ってただけなんだけど。



 色んな意味で年代物のオタクをワクワクさせてくれるあ~るLINEスタンプ。理屈じゃないんだ!スタンプなんだよ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 13:52Comments(0)アニメ漫画

2018年07月27日

本日炎上したので二度目の人生を異世界で

 まんがタイムきららMAXで連載していた『本日わたしは炎上しました』の作者、どげざが過去(2012年)にTwitterでつぶやいていた朝鮮民族への差別的なヘイトスピーチが発掘され、炎上したのが6月末のこと。『本日~』は女子校生の主人公が有名動画投稿者を目指して再生数を稼ぐために炎上させることも厭わない、というギャグマンガだが、作品そのままに炎上してしまったのだ。

 同月にはホビージャパン誌で連載し、アニメ化も決まっていた『二度目の人生を異世界で』の作者が中国、韓国に対する差別発言により炎上、連載終了、単行本全巻の出荷停止、アニメ化もナシという事態に陥っていたので第二の炎上作品として話題になっていたのだった。

 炎上騒ぎを受け今月号(7月号)のまんがタイムきららMAXの掲載は見送られていたが、本日7月27日、まんがタイムきらら公式アカウントにて「先月号で最終回」となったことが発表された。


まんがタイムきらら編集部
‏ @mangatimekirara
【お知らせ】まんがタイムきららMAX連載作品「本日わたしは炎上しました」に関しまして、連載再開を予定しておりましたが、先生との協議の結果、8月号の掲載分を以って最終回とさせていただきます。作品を楽しみにしていただいていた皆様には大変申し訳ございません。


https://twitter.com/mangatimekirara/status/1022777471601496066

 先月号で最終回…!まるで先週の放送で最終回になったラジオ番組みたい!(いうなや)海の向こうのハリウッドでは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督ジェームズ・ガンが過去のロリペド大好きツイートを掘り起こされてディズニー(ガーディアン~シリーズの配給)を解雇されており、Twitterの迂闊な発言が仕事や人生を左右する事態になっているのだ。

 ネット上での倫理観の欠けた発言や思想を咎められるのは仕方がないし、出版社がこんな作品は世に出せないと封印に至るのもわかるけど、世間には年がら年中ヘイトスピーチ的発言と思想を垂れ流していながら人気作家として仕事をして、周囲からその立場を守られている百田尚樹みたいな人間もいるのである。一方で作品の存在を丸ごと消されたりする人もいるのだ。どういう基準でこうなってるの?やっぱり…金?『二度目の~』のまいん先生や『本日~』のどげざ先生(なんでこいつらどっちも平仮名3文字のPNなの?)も『カエルの楽園』ばりのベストセラーを書いていたら首にならずに済んだはず。次回作で頑張ってください。世の中所詮銭!銭がなけりゃ何もできやせんのやで!





  


Posted by 縛りやトーマス at 22:56Comments(0)漫画ネット