2011年12月31日

行く年来る弾

以下読売新聞より。

未明のスナックに銃弾3発…けが人なし

31日午前1時35分頃、前橋市千代田町のスナック「夜来香(いえらいしゃん)」の女性従業員(43)から「ドアに拳銃で撃たれたような痕がある」と110番があった。


 前橋署員が調べたところ、店舗出入り口の木製ドアに弾痕とみられる穴があり、店舗内と路上で銃弾3発が見つかった。けが人はなかった。同署は発砲事件として調べている。

 発表によると、女性従業員は30日午後10時頃から、1人で閉店作業をしていた。31日午前1時頃、「パン、パン、パン」という音を聞いたが銃声とは気付かず、帰宅しようとした際に弾痕を見つけたという。

 現場は、JR前橋駅から北に約800メートルの飲食店街の一角。

(2011年12月31日12時22分 読売新聞)


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111231-OYT1T00290.htm


年の瀬ですからね、三本締めの代わりだったのではないかと・・・
「いよぉー、パン、パン、パン」
あるあ・・・ねーよw

  


Posted by 縛りやトーマス at 17:33Comments(0)日記

2011年12月31日

ぼくのかんがえたけいおん!げきじょうばん

【1】

「起立、礼ー」

日直の凛とした声に続いて生徒らが席を立ち、教壇の担任に頭を下げる。挨拶が済むと生徒らはそれぞれ部活動に向かうもの、まっすぐに帰宅するもの、教室に残って友人と歓談するものと様々だ。
中野梓はバッグを肩にかけ、教室の角に立てかけてあるギグバッグを取りに行く。
「おっ、今から音楽室?」
声をかけてきたのはクラスメイトの鈴木純。いつ見てもどうやってセットしているのか想像に苦しむ髪型が特徴だ。純は机に向かったまま真向かいに座っている生徒と何かを話し合っていた。
「うん、今日は先輩たちも来てるから」
小柄な体にはやや大きすぎるギグバッグを学校のバッグとは反対側の肩にかける。
「そっか、今日登校日なんだよね」
「お姉ちゃんによろしくね」
純の真向かいに座っていたのは同じくクラスメイトの平沢憂。同年代とは思えないほどしっかり者で同級生からも頼られる存在。見た目が幼すぎる梓と何かにつけ対照的だ。
「わかった。じゃあね」
二人に手を振って梓は教室を出る。憂の言う「お姉ちゃん」は今から向う先、桜が丘高校音楽室に居る。
梓は桜が丘高校の軽音部に所属する二年生だ。校舎の最上階に位置する音楽室が軽音部の部室となっており、そこに向うまでの道すがら、最初に音楽室を覗いた時のことを思い出す。
(真面目な部活じゃない、って思ったんだよね・・・)
中学3年の時、クラスメイトが興奮しながら教室でMP3プレイヤーから伸びたイヤホンから流れる何かをみんなに聞かせていた。そのクラスメイトはある高校の学園祭に行ったのだが、その学校の軽音部の演奏が本当にすごかったというので、手持ちのMP3で録音したらしい。両親がジャズをやっていた影響で子供の頃から音楽に親しんできた梓は眉唾だな、と思いながらイヤホンを耳にした。あまりいい録音状況とはいえなかったが、聞こえてくる音は一瞬で梓を虜にした。お世辞にも上手いとはいえない演奏だったが、上手いとか下手とは違う、魅力があった。自分がギターをやっていたからかも知れないが、リードギターの奏でる音は梓の心を鷲掴みにして離さなかった。あまりの衝撃にクラスメイトからもらった音声データを二度聴き返さなかった。きっと最初に感じた衝動は、二度目には味わえないだろうな、と思ったから。今でも自室の机にしまい込んだメモリーカードを眺めることはあっても聴くことはない。
その桜が丘高校に入学し、向かった音楽室の窓から中を覗くとジャージ姿の部員らしき生徒がふざけあっているように見えた。脳内で勝手に抱いていたイメージが音をたて崩れた。
それでも新入生歓迎会でのライブ演奏はあの時の衝動を思い起こさせるものだった。次の日、梓は音楽室にやってきていた。
そして目の当たりにしたものは“儀式”と称して猫の耳をつけさせられたり、「とりあえず」と高価そうなティーセットでお茶を飲んだり、それを顧問が率先して行ってたり、挙句は“あずにゃん”などという珍妙なニックネームをつけられたのだった。
それら一連の奇行を見せられ、一度は部を離れようとしたけれど、なぜか惹かれるものがあって部に残った梓だった。
(よく考えたら、なんで私軽音部に残ったんだろう)
今では唯一の後輩及び書記という扱いであり、3年生が卒業すれば必然的に部長という扱いになる。それを受けて部には“ぶちょー”と書いた襷が作られた。4月になれば大掃除を名目に捨ててしまおうと思っている。
2年生の教室から離れ、人通りのめっきり少なくなった3年生の教室が並ぶ廊下を歩く。この季節になれば3年生は学校にはほとんど出てこないからだ。軽音部の上級生らも登校日以外は滅多に部室に顔を見せない。
(久しぶりに先輩たちと会うんだから、今日こそは練習・・・)
と思い、何度同じ過ちを繰り返すのだろうと梓は思う。この2年間、部で練習をしたことなどほとんどないのだ。
来年度の新入生勧誘のためのPRビデオを作ろうということになり、梓自身が普段の軽音部ありのままの姿を写そうという提案をし、撮影が始まったがその手伝いをした純が言った一言
「で、軽音部っていつ練習してるの?」
は梓の耳に痛かった。撮られた内容は部室で飼っているスッポンモドキのトンちゃんの世話をするシーンや、お茶菓子を食べたりする場面ばかりだったから。
何度となく
「こんなんじゃダメです!もっと真面目に練習しましょう!」
という軽音部改革案を主張した梓だったが、尽く却下された、というかなし崩しに梓もお茶を飲み菓子を頬張っていたのだから大きな事は言えない。
「でもでも、久しぶりの登校日ぐらいは、練習するもん」
とひとりごちても、それが一度もなされなかったことを一番よく分かっているのは梓自身だった。
(・・・気が重い・・・)
愛用のギター、ムスタングがずっしりと肩に重く感じた時、悪寒を感じた。そう、これは・・・
「あぁぁあずにゃぁぁぁんっ!」
背後から音も無く忍び寄った何者かが梓に抱きついてきた。つい、気を抜いてしまった・・・そう思った時にはすべてが手遅れだった。
「ゆ、唯せんぱいやめてくださいっ」
「あぁーあずにゃぁぁんは今日もかわいいねーぇ」
頭を撫で回され、頬を指で弄られ、羽交い絞めにされる強烈なセクハラを繰り出す相手を梓は知っている。今日こそはそれを回避すべく憂から習った護身術を披露する時だと密かに決めていたのに。
「もう、止めてくださいっ」
強引に抱きついてくる両手を振りほどき、振り返る。そこには頭をかきながら「申し訳ない」みたいな顔をしながらその実そんなことは一切思っていない、不抜けた飼い犬のような顔をしている相手、軽音部の上級生であり、梓が学園祭ライブで衝撃を受けたギター担当の平沢唯が居た。梓は何故か唯の「可愛い物好き」の琴線を刺激するようで、事あるごとに抱きつかれているのだった。
いつものようにセクハラについて抗議すると
「いやぁ~今日は一段と寒いからねぇ~人恋しさに飢えていたんだよぉ~」
とのたまうのだった。
「それなら律先輩とかにしてください」
「律っちゃんはダメだよーあずにゃんの人肌がちょうどいいんだよっ」
「そんなこと言われても・・・」
「おーっす、梓、まーた唯に抱きつかれてたのかー?」
廊下で言い合ってるところに現れたのは軽音部の部長、田井中律だ。「チマチマ弦や鍵盤をいじるのが性に合わない」という理由でドラム担当の、いいかげんで大雑把な性格の人間、というのが梓による律の人物像だった。
「律先輩、いいかげん唯先輩にセクハラやめるように言ってください」
「ひどいんだよぉ律っちゃぁ~ん、仲良くしようよっていう、せっかくのスタンダップをあずにゃんが拒否するんだよ」
と唯が唇を尖らせる。訝しげな顔をする律。
「スタン・・・なんだって?」
「きっとスキンシップって言おうとしたんだと思います」
不意に梓の方に向き直り、両手の人差し指を突きつけるポーズを取る唯。
「そのとおりだよあずにゃん!」
「梓は唯の言語翻訳マシーンだよな」
また、つけいる隙を与えてしまったと嘆く梓。すかさず抱きつこうとするのは阻止した。
「律先輩は部長なんですから、部長権限でセクハラさせないようにして欲しいんです」
「それは・・・できないんだ・・・梓」
急に真剣な顔つきになると、廊下の窓に近寄り芝居がかった口調で話しだす。
「軽音部の血の掟では・・・後輩は先輩のセクハラを拒否できないことになっている」
「それ、学園祭の演劇の影響ですよね。ってあんまりうまくないですから」
「・・・それに逆らえば、生徒会が軽音部を潰そうと刺客を送り込んでくることに」
「律っちゃんはすでに自分だけの世界に入り込んでいるんだよ」
「おいてかないでください」
「軽音部の未来のため、梓には犠牲になってもらわないと・・・」
「いいかげんにしろ」
着地点の見えない三文芝居を断ち切ったのは律の頭上に落ちた拳骨だった。律の幼なじみにして才色兼備のベース担当の秋山澪がうずくまる律の背後にすっくと立っている。
「もう部室に行ってると思ったら・・・」
うずくまったままの律とふざけている唯を窘めている澪を見て、どうしてこの人は軽音部にいるんだろうと、梓は何度目かわからない疑問を抱いていた。普段の態度や言動、外見とは裏腹に繊細で乙女チックな一面を持つ澪は部の中で梓が普通に尊敬できる存在であるが、そう考えれば考えるほど、なぜ軽音部なのかと。あの乙女チックな詩の世界観を許容できるのが軽音部だけなのかと。そして、
「・・・で、ムギ先輩は何してるんですか・・・」
廊下の影からずっとこっちを伺っている琴吹紬に目をやる。その手にはしっかとビデオカメラが握られていた。かすかに息を弾ませながら、頬を桜色に染めている紬が余った一方の手だけで、合掌するような仕草をした。
「・・・ごちそうさま」
「はぁ・・・」
才色兼備ということでは澪をも凌ぎ、高額ティーセットの持ち主であり軽音部の大スポンサーである紬には未だ測りかねている部分の多い、謎の存在であった。前に撮影したビデオをどうしているのかと聞いてみたが、天使のような微笑みを浮かべるだけで教えてはくれなかった。
こういった個性豊かなメンバーによって構成されている桜が丘高校軽音部、通称“放課後ティータイム”は、今ここに集った。
4人の後を歩きながら梓はどうして自分は軽音部にいるのだろうと、入部以降何度も思い悩んだ疑問をまた繰り返していた。

部室に上がる階段の手すりにある亀を眺めながら、梓の耳に届くのは先輩たちの「今日のお菓子は特製のクッキーで」とか「澪はノーパンで寝る」とか「靴下だ!」とか「あずにゃんが居ないと寂しいのでいっそ留年しようか」といった音楽に関する話題は一つもなかった。私が求めていたものはこれじゃない、と思う一方でああ、いつもの軽音部だ、と寂しくもある梓だった。
何しろ唯達が卒業するまで一ヶ月もない。いつまでも続くと思っていた放課後ティータイムも終わりが来る。先輩たちとティータイムを過ごすこともなくなるのだ。考えまいとしていた思いが、また胸の内をよぎる。けれどもそんな思いは唯のセクハラによってすぐかき消されるのだ。
「そういえば、パスポートっていつ出来るんだっけ?」
唯が言っているのは、この間全員で申請した海外旅行用のパスポートだ。卒業旅行で行くかも知れないから、といった理由で旅行に行くとも海外に行くとも決めていないのに、全員でパスポートを申請した。
「確か一週間ぐらいかかるんじゃなかった?」
「海外旅行、行けるかなー?」
「行けるだろー、沖縄とか」
「それ、さわちゃんが行ったことだよね」
「沖縄は海外って言うんでしょうか・・・」
「私は本当は温泉に行きたいんだけど」
「海外に温泉ってないのかな」
「そういえば梓、登校日じゃない間、さわこ先生って部室に来る?」
「毎日来ますよ。憂にお茶菓子用意させて・・・」
「じゃあ今日も来るんだね」
「やっぱりさわこ先生の分もお菓子用意しておいてよかった~」
他愛もない会話を続けていると、最上階にある音楽室にたどり着く。

この時5人のうち、誰一人としてこの後軽音部に振りかかる悪夢のような出来事を想像していたものはいなかった。
「到着しましたぁ~」
列の先頭に居た唯がすり足で扉に近づきドアノブに手をかける。
「ようやく着いたねえ~」
「ここに来るまで、ものすごく長かった気が・・・」
「ささ、あずにゃん早く入って入って~」
怪しい手つきで手招きする唯。
「中では楽しいことが待ってますよ~」
「楽しいこと?」
「そう、それはもちろん・・・」
同時に言った。
「練習!」
「ムギちゃんのお菓子!」
「少しは練習も楽しみにしてください・・・」
唯が後ろ手に扉を開く。

「・・・?」
「・・・さわちゃん!?」

(続)  


Posted by 縛りやトーマス at 17:27Comments(0)けいおん!