2013年04月23日

偏屈には支える人間が必要だ!『ヒッチコック』

『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』で夢を諦めきれない男たちのあがきを描いたサーシャ・ガヴァシ監督によるヒッチコックの伝記映画『ヒッチコック』を観る。



60歳にして『北北西に進路を取れ』を完成させたものの、口うるさいマスコミからは
「そろそろ引退ですか?」
なんて質問をされムッとするヒッチコック(アンソニー・ホプキンス)。
「私が現役でなくなる時は、上映が終了した時だ」
ヒッチコックは映画会社パラマウントのオフィスで実在した殺人鬼エド・ゲインをモチーフにした小説『サイコ』を見つける。「誰も手をつけたがらないんです」と秘書に言われたヒッチコックは『サイコ』の映画化に向けて動き出す。
仕事でもプライベートでも長年のパートナーだった妻アルマ(ヘレン・ミレン)には「内容が陰惨すぎる」と難色を示されるも最終的にはヒロインが中盤で殺される展開を「最初の30分で殺すのよ」とアドバイスし、60歳の映画監督の意欲作をバックアップする。
しかし製作発表の場での評判はさんざんで、パラマウントの社長からも出資を断られたヒッチコックは自分の豪邸を担保に入れて自費制作することで同意する。
こうして始まった『サイコ』の現場はトラブルが続出し、制作の遅れを危惧した社長は撮影中のフィルムを見せろと迫るも現場をコントロールされたくないヒッチコックはスタジオの扉に鍵をかける。これまでも作品に的確なアドバイスをくれていたアルマは脚本家ウィットに頼まれた脚本の共同執筆に夢中で、ヒッチコックは妻の浮気を疑いだす。
何もかも最悪な中で完成した映画の初号試写。評価はさんざんで敗北感に打ちのめされるヒッチコック。
「君がいないと何もできない」
と嘆くヒッチコックに「解決策は一つよ。あなたと組んでやり直すの」というアルマとともに『サイコ』の再編集に乗り出す二人。どん底からの大逆転なるか?


世界一有名な映画監督の活動の陰に、仕事でもプライベートでも愛妻の支えがあった、というのはおっと思わせる事実で、偏屈極まりないオッサンが嫁に弱音を吐くというのは割とある光景だね。だからといって「ヒッチコックの凡人性」をさらけ出すような映画でもないのだ。なにしろヒッチコック本人を演じているのはレクター博士ことアンソニー・ホプキンスだから。
そっくりとまでは言わないけど、ヒッチコック本人に相当似せようとしていたホプキンスの演技が傑作で、あのシャワーシーンの撮影場面ではアクションがぬるいスタントマンからナイフを奪い、自らナイフを奮うと女優が本気でビビって泣き叫ぶ!なにしろレクター博士がナイフ振り回してるんだからね!マジで殺してるように見えるし。
かと思うと当初、シャワーシーンにBGMをつけることに反対したがアルマから「迫力が違う」と説得され、(あのバーナード・ハーマンのあまりにも有名すぎるBGMが最初はなかったという事実!)再編集でBGMを追加した後はすっかりお気に入りになり初日の上映時には劇場の外でBGMが鳴る瞬間を今か今かと待ちわびてステップ踏んだりするあたりがチャーミング(淀川先生風に)。
巨匠の側で寄り添うどころか旦那をリードする勢いの大活躍を見せる妻アルマ役のヘレン・ミレンの姿よ。『アンヴィル!』で変人リップスの活動を陰で支える姉や隣近所の人たちを愛情を込めて描いたサーシャ・ガヴァシがまったく同じ部分に注目したわけ。
劇中でわずかに描かれるエド・ゲインにも偏屈野郎のゲインを理解してくれる実兄の存在をさりげなく混ぜたり(すぐ殺されるけど)、監督の「偏屈には支える人間が必要だ」という主張、よくわかるよ!俺も誰か支えてくれる人を募集中。  


Posted by 縛りやトーマス at 18:51Comments(0)映画