2013年09月23日

燃え尽きた火の鳥『ガッチャマン』

40年の時を経てついに実写化された『科学忍者隊ガッチャマン』の実写映像化作品『ガッチャマン』を観る。



「ついに実写化」と書いたけれどこういう表現には実写化が望まれた作品にこそふさわしい言葉であって2013年に生きるどこの誰がこの実写化を望んでいたんでしょう。
冒頭。謎の宇宙人ギャラクターが侵略を開始、地球上のあらゆる武器を無効化するシールドの前に地球の軍隊は歯が立たず、わずか17日間で地球の半分は壊滅状態に陥り、生き残った人間は肩を寄せ合い暮らしていた。そして17年の月日が過ぎた。
17年後の東京は高層ビルが立ち並び、人はみなおしゃれなカフェでお茶を飲み、剛力彩芽演じるジュンは「買いすぎちゃった~」とブランドものを詰めた紙袋を山ほど抱えていた・・・

・・・おい、地球の半分は壊滅したんちゃうんかい!!

そこに任務要請を告げるメッセージが届けられ、リーマン風スーツのケン(松坂桃李)、労働者風のリュウ(鈴木亮平)、ジュンとジンペイ(濱田龍臣)の4人が潜入捜査よろしくどこからともなく颯爽と現れる。そこに突如ギャラクターが出現、軍隊は応戦するもののシールドの前にことごとく無効化されてしまう・・・って通用しないのがわかっている武器をなんでまだ使ってるのか。「持ちこたえろ!」って無理だよ!
そこに現れたガッチャマンが
「俺が見えるか悪党ども。実態もなく忍び寄る、白い影が」
よくわからない決め台詞を吐いた後、ビルの隙間をぬって飛び回る爽快感ゼロのアクションを披露。ギャラクターを唯一倒すことができる『石』の力を引き出せる『適合者』であるガッチャマンだけがギャラクターに対抗できる戦士なのだ!『石』ってなに?『適合者』って?と疑問だらけなんだが特に説明もなく映画は進む。
自走する巨大車輪に仕掛けられた爆弾を解体しようと内部に侵入するジュン、赤と青のコード、どちらを切る?な『ジャガーノート』風解体に挑むも失敗、仕方なくジュンは怪力で爆弾をぶっ壊す(最初っからそうしろよ)。
五人目の『適合者』ジョー(綾野剛)の助けもあり無事任務を成功させたガッチャマンは基地で一休み。ジュンの頭にあるのは地球の未来とか、ギャラクター壊滅とかそういうことでもなんでもなく、一目惚れしているケンに「自分の手料理を食べてもらう」こと!だがジョーの口から幼なじみだったナオミ(初音映莉子)の存在を聞き居ても立ってもいられない。
しかもケンとジョー、ナオミはどうやら三角関係だったらしいことが匂わされ、ガッチャマンたちの間に動揺が走る。そんな中ギャラクター内部で権力争いに敗れた幹部のイリヤが亡命を求めているとの連絡が。ヨーロッパ解放を訴えるパーティ会場に現れるイリヤを迎えるために潜入するケンとジュン。仮面舞踏会風(なんで?)のパーティに偽IDで潜入するんだが、敵の組織でもないむしろ身内のはずのパーティに潜入しなければならない理由がわからない。
パーティ会場で無事イリヤ(中村獅童)と接触するも、ジョーが乱入しイリヤを攻撃。イリヤはジョーがプロポーズしたナオミを殺した相手だったのだ!ちなみにプロポーズしたのは適合者たちが戦地から撤退するバスの中で!戦場でイチャイチャ恋愛ごとにいそしみ、さらに「お前はナオミを殺したこいつを許せるのか!」「お前のせいでナオミは死んだんだ!」任務そっちのけ、個人的なイザコザで作戦を台なしにするジョー!
クライマックスはあと30分で地球が壊滅するという事態なのに「ジンペイを見捨てた」という理由で大げんかを始めるガッチャマン。あと30分しかないんで、喧嘩は後にしてください。

この映画のガッチャマンたちは最後の最後まで「地球を救う」という使命よりも個人的な諍いやメンバー内の恋愛ごとをなによりも優先する始末でこんなやつらを『適合者』にした『石』はどういう基準でこいつらを指名したわけ?まあ、石の考えることだしなあ。
最後に明らかにされるベルク・カッツェの正体もまったくつじつまがあってなくて、ギャラクターが一体なんのために地球を攻撃したのか、さっぱりわからないよ・・・

少なくともこれは『科学忍者隊ガッチャマン』でもなんでもない!監督の佐藤東弥(『ごくせん』『カイジ』が代表作の)はまるでガッチャマンがわかってない!
普通ガッチャマンを映画にしようと思ったらハードなアクション描写、ゴッドフェニックスなどのガジェット、バードミサイル狂いのジョー(「頼む!一発でいいから撃たせてくれ!」)、ジュンのパンチラ・キック・・・


アレックス・ロスによるジュンのパンチラ・キック


そういった要素をどれだけ再現できるかに心血を注ぐもんじゃないの?パンチラしないジュンなんてジュンじゃない!!
だが製作陣のやったことはガッチャマンを「現代風に」アレンジしスーツも設定もストーリーもすべてを変更して「ガッチャマンでない何か」を創り上げることに心血を注いでるのであった。
彼らにとってガッチャマンという素材は
「誰でも知っているタイトルで、宣伝費はかからないし元々あるキャラクターとストーリーを流用すればいいだけ。現代日本を舞台にすればセットを組まなくてもいいし、メインの登場人物は少年少女だから若手の役者を使えばギャラも抑えられる。お金も時間もかからない、宣伝の必要もない一石二鳥!」
という費用対効果だけを考えた企画だったのではないでしょうか。
マーベル・コミックが自前のヒーローを使った実写映画をビッグバジェットで製作するのとは大きな違いだよ(そのマーベルだってかつては『パニッシャー』『キャプテン・アメリカ』などガッチャマンレベルの作品を送り出してたんだけどね)。

そんな費用対効果も空しく、大コケ状態のガッチャマン。

実写版「ガッチャマン」火の鳥ならぬ火の車! 中途半端な原作要素にファン怒り

「ガッチャマン」は8月24日に307スクリーンで公開されたが、公開2日間の興行収入は1億1569万円。「製作費にもよるが、300スクリーン級で公開される邦画は打ち込み(公開2日間の成績)3億円以上でヒット。1億円台は…まずいですね」と邦画のベテラン映画プロデューサーは話す。このままでは、最終興行成績が10億円に届かない可能性も出てきた。「主演5人の特注スーツで2000万円。宣伝費込みで約6~8億円の製作費とみられるから映画興行だけで回収するのは厳しい。2次利用でトントンかな」(同)


http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20130902/enn1309021141003-n1.htm


跡形もなく燃え尽きたガッチャマン。火の鳥は飛ばなかった!  


Posted by 縛りやトーマス at 01:13Comments(1)映画