2014年02月05日

難病映画という病巣『抱きしめたい -真実の物語-』

『抱きしめたい -真実の物語-』を観た。



この映画のストーリーは1分で説明できる。
交通事故で左半身が麻痺し、車椅子生活を余儀なくされさらに軽度の記憶障害を抱えるヒロインが健常者の夫と結ばれ子を宿し、障害に負けずに最後まで一生懸命生き抜きました。おしまい。それ以外に何も無い。

邦画で障害者をテーマにすると必ずといっていいほど障害者はピュアでまっすぐ、純粋無垢として描かれ、それ以外の描写を絶対に許さない。海外の『メリーに首ったけ』でおなじみ、ファレリー兄弟の映画みたいに様々な役(時には悪役として)で登場したりなんてことはまずない。
そこには障害者を「かわいそうな人」としてしか見ないある種の逆差別があるとしか思えない。障害者と彼を障害者ともなんとも思わない態度を取る介護士との交流を描いた『最強のふたり』みたいな映画は日本では絶対に作られないだろう。
劇中には脳性まひブラザーズという障害者によるバラエティ番組『バリバラ』(NHK)などに出演している脳性麻痺を売りにしているお笑いコンビが障害者の役で登場もしている、彼らは医者コントの
「どうしました?」
「頭がぼーっとして・・・熱っぽくて・・・ろれつが回らないんですよね」
「それは脳性麻痺ですね」
「風邪だよ!」
というネタで笑いを取るコンビなんだが、そんな二人を単なる一障害者としてしか扱ってない(そのネタを披露する場面もあるんだが、単にお笑いコンビだということを説明するための扱われ方)あたりにこの映画の企画意図を透けて見える。
そしてこういう批判をすると「本当の話なんだから当人に対して失礼だ」とか言い出す人が出てくるんだ。障害者に対しては「かわいそう」以外の意見を許さないという凝り固まった意見が出来上がってしまっている。
誤解のないよう言っておくが映画化のモデルになった実際の人物やその人生を批判しているわけではない。批判しているのはそれを題材にして製作された映画の方である。実在の人物をモデルにしたドキュメント番組の方には何もいうことはない。それはそれでいい話だからそのドキュメント番組をそのまま流せばいいだけで、劇映画化するのであれば映画にするだけの新たな視点が必要ではないのか。でもできあがった映画には「かわいそうな障害者の人が一生懸命頑張って生きました」ぐらいの視点しかなく、企画者の平野隆と脚本の斉藤ひろしは『Life 天国で君に逢えたら』『余命1ヶ月の花嫁』といった実話難病モノを手がけているコンビなので「難病映画」のひとつとして企画されてるとしか思えない。それでいいのか?

ヒロインを演じた北川景子は劇中のリハビリ映像など本物のように見える熱演で、その熱演が下らない企画で台無しになっているのがなんとも残念。  


Posted by 縛りやトーマス at 15:59Comments(3)映画