2014年11月02日

でっかくなっちゃった!『戦慄!プルトニウム人間』



 バート・I・ゴードンは巨大イグアナが人を襲う『キング・ダイナソー』、巨大イナゴが人を襲う『世界終末の序曲』のヒットで知られる。巨大生物と言ってもSFXを使うとかそういうのではなく、本物を持ってきてそのまんま写しちゃうだけなのだ。『キング~』ではトカゲを写すだけ(トカゲにゴムで作った背ビレやしっぽをつけて怪獣のように見せかける)だし、『世界終末~』ではバッタを持ってきて、ビルの写真の上を歩かせて巨大イナゴがビルに取り付いているように見せる…という種明かしすれば「アホかお前は」レベルの技術。
 この次に『The Cyclops』なる一つ目の巨人が出てくる映画でバート・I・ゴードンは人間の役者の顔に特殊メイクをさせるのだが、これで「人間にメイクをさせればトカゲ怪獣を作ったりするよりも安上がりだ」と気づくのだった。あと爬虫類では演技をつけられないが、人間の役者にはつけられる!そうして出来上がったのが『戦慄!プルトニウム人間』だ。

 ネバダ州で行われた水爆実験の最中に墜落したセスナ機のパイロットを救おうとしたマニング大佐(グレン・ランガン)はうっかり放射能を浴びてしまい全身やけどを負って虫の息。水爆実験なのに防護服も着ないで軍服にヘルメットだけというあたりがアメリカ人の放射能に対する無知っぷりを表していますね。
 しかし翌日にはマニング大佐は全快しているのだった。駆けつけた婚約者も安心するのだが、その夜に入院先の病院からマニング大佐は姿を消してしまう。やっとのことでマニング大佐の移送先までやってきた婚約者が見たのは、被爆の影響で巨大化したマニング大佐だった…

 医者や科学者がマニング大佐の巨大化を止めようとするが、決め手はなく、マニング大佐は巨大になるとともに人間性を失っていくのであった。
 放射能を浴びて巨大化、人間としてのアイデンティティを失うことに苦悩する…というマーベル・コミックの『超人ハルク』の元ネタともいえる。ハルクで気になるのは超人化した際に着てるシャツが破けてしまうのだが、なぜかズボンだけはそのまんまという部分。『戦慄!プルトニウム人間』ではマニング大佐は布みたいなやつをふんどしのように巻いているのだが、これは米軍が考案した伸縮自在の布なの。



 放射能を浴びて人間が巨大化するのもビックリだけど、伸縮自在な布を米軍自らが開発しているのもビックリだ。


「おれはピエロだ!アッハッハ!」


 と壊れていくマニング大佐は逃亡、細胞の研究をしているクルター医官が巨大化を抑える薬品を開発、こいつを大佐に打ち込むわけだが、巨大化した大佐に普通の注射はダメだからと専用の巨大注射器を使う。これも米軍の考案したブツですか?しかし狂い始めた大佐は注射器を投げつけ、針が突き刺さったクルターは即死


コントのように死んでいくクルター医官

 本作には『巨人獣』という続編もあるのだが、マニング大佐は人間性を完全に失って片目を失い、頭部の一部から頭蓋骨が露出しているというタイトル通り完全に怪物、怪獣扱いなのだ。「これじゃ怪獣と同じじゃないか!」という事に気づいたのだろう、マニング大佐を演じたグレン・ランガンは続編では降板し、『The Cyclops』で一つ目の巨人を演じたディーン・バーキンが大佐役を演じている。
 『戦慄!プルトニウム人間』とは特殊メイクのない怪獣映画だったのだ。
 バート・I・ゴードンは巨大生物モノばかり作ったので、その名前を略してミスターBIGと呼ばれ、その後もクモを大写しにする『吸血原子蜘蛛』とかねずみ出てくる『巨大生物の島』(ハリーハウゼンの『SF巨大生物の島』とは別)、アリを大写しにする『巨大蟻の帝国』などをつくり続けた。今の技術からすれば噴飯ものの低レベル映画だが、『パシフィック・リム』や『GODZILLA』といった巨大生物映画が未だ作られているのにはミスターBIGの影響力があったに違いないのです。



  


Posted by 縛りやトーマス at 04:43Comments(0)映画旧シネマパラダイス