2015年09月11日

地球のエネルギーをいただくぜ!『クロノス』

 ハイこんばんは。今回ご紹介する作品は『クロノス』。あのロビー・ザ・ロボットが出てくる『禁断の惑星』の原作、アーヴィング・ブロックの原作・製作作品ですね。1957年公開作品ですよ。





 『禁断の惑星』(56)では、人間の潜在意識の底にあるものが具現化するといういわゆる「イドの怪物」をテーマにしたもので潜在意識とはなにか?自我とは?という心理学をSFというジャンルに落とし込んだ金字塔的作品でしたが、こちらの『クロノス』では宇宙人のロボット兵器が街を破壊するというシンプルな侵略モノとして作られています。


 人気のない真夜中のハイウェイを一台のトラックがひた走る。が、トラックは突然エンストを起こして止まってしまう。修理を始める運転手に謎の光が襲いかかる。光を浴びた運転手は無表情になり、トラックに乗り込むと先ほどまで来た道を逆戻りしていく…

 ラボ・セントラル(中央研究所)にやってきたトラックの運転手は警備員を殴り倒して侵入。責任者であるエリオット博士(ジョン・エメリー)に運転手から飛び出した光が取り憑くと運転手はそのまま気を失ってしまう。
 「さっきこの男に頭を殴られて…こいつは死んでいる!」
 運転手は心臓発作を起こしていたのだ。驚く警備員らにエリオット博士は「連れて行け」と冷たく言い放つ。普通不審者が死んだりしたら色々ややこしいと思うのだけど警備員は博士に言われるがままに死体を運び出すのだった。以後、この運転手のことは一切話に絡みません。この研究所、大丈夫?そもそも何を研究しているのか。

 研究者のアーノルド・カルバーはスーパーコンピュータが計算した小惑星の軌道データを同僚のレスリー・ガスケル(ジェフ・モロー)に持っていく。ガスケルは小惑星M47を研究している(ここで天体望遠鏡の存在が明らかになることから、ラボ・セントラルは天文研究所であると思われる)。
 M47が軌道を変え動いていることを発見したガスケルは写真を現像することに。現像室の助手、ヴェラ・ハンター(バーバラ・ローレンス)のもとへ。大発見に沸き立つガスケルだが、ハンターは「映画の約束がおじゃんね」とご機嫌斜め。この二人、付き合っているようだ。「元気だしな」と彼女を慰めるカルバー。イケメンで助手とヨロシクしている(死語)ガスケルに比べ、カルバーはスーパーコンピュータに【スージー】なんて女の子の名前をつけて可愛がっているのであった。擬人化マニア、こいつ、ナードやん!

 「でもなんでスージーなの?」
 「単純明快さ。シンクロ・ユニファイング・シノメトリック・インテグレイティング・エクイテンサー。頭文字を合わせてSUSIE」



めっちゃ自慢げに語ってますけど、聞いてるハンターの方は「ああ、そう」ぐらいの反応です。オタクはいつの時代もこんな目に遭うのか


 コンピューターオタクがリア充から冷たい扱いを受けている様を見ながらなぜか涙が溢れて来ますが、【スージー】はエラーを起こして停止。彼女が復帰するまですることがないので二人は映画を観に行こうとしますが仮設証明のチャンスが目の前にあるガスケルは気もそぞろ。デートよりも研究の方にご執心。この人もある意味研究オタクなのです。結局デートは中止。写真の現像をしながらいちゃついていると、【スージー】は再び起動。M47は軌道を変え、地球に激突することが判明する。


 「直径4.9マイル、質量6,000メガトン、秒速1,750マイル、方角:地球…」

 16時間以内に小惑星が地球に激突する。止めるには核弾頭で破壊するしかないと、米軍の作戦が決行されます(V2ロケット発射映像の流用)。しかしM47は傷ひとつない。しかし軌道を変えることには成功したので都市部ではなくメキシコの海に落ちたのだった。地球は土地よりも海の面積の方が大きいから、隕石が落下してもまず海に落ちると言われてますけども。
 この時点でもみんなアストロイドと言い張るM47の正体は画面上をどう見てもUFOにしか見えないんだけど。



 なぜかM47が核弾頭を受けた瞬間、激しくショックを受けたエリオット博士、気を失って病院に運ばれるのだった。
 M47を単なる小惑星と思うことは出来なくなったガスケルは「もしこれが何かの陰謀だったら?」とカルバーを炊きつけてメキシコへ単独乗り込むことへ。「エリオット博士の許可はどうするんだ?」と聞くカルバーに「博士はそのような立場にない」と。博士の立場って…
 その後ハンターも合流してメキシコ人の家に居候する3人。ビーチでいちゃつくガスケルとハンター。その時海から光が溢れ、翌日巨大な物体が出現した!



これがクロノスだ!


 ヘリで乗り込もうとするも勝手がわからないため、そのまま引き上げるガスケルたち(何しに来たんだ)。一方、入院したエリオット博士は医者に「時間がないんだ。私の話を聞いてくれ」と告白を始める。自分は宇宙人に乗っ取られていること、その宇宙人はエネルギー不足で滅び行く母星からやってきたこと、地球のエネルギーを吸い尽くして母星を救おうとしていること…それらを統合失調症患者の妄想として処理しようとする医者だったが、メキシコに現れたクロノスを見て「まさか…」と思っているところにエリオット博士がやってくる。症例報告を録音したテープをよこせ!と揉み合いになり、むき出しの高圧電流(なんでこんなところにあるんだよ!)に医者を押し付け殺し、テープを奪ったエリオット博士は自主退院。エリオット博士は完全に乗っ取られている状態ではなくて、精神を支配される力が弱まると元のエリオット博士の精神が表に出てくるんだね。

 エリオット博士(宇宙人)の指示を受けたクロノスはピコピコ音を出しながら移動。足の部分に相当する円筒を出したり引いたりしながら横移動。クロノスの移動シーンはアニメーションで処理され、『宇宙戦争』(53)でおなじみのSFXマン、ジョージ・パルのスタッフ、ジーン・ウォーレンとウォー・チャンがそれぞれアニメーション、モデルを担当している。なかなかに味わい深い動きをしているのだが出したり引っ込めたりするだけで移動はできるのだろうか?走行用の足をつければよかっただけのような…偉い人にはそれがわからんのです。

 次々発電所を襲ってエネルギーを奪い尽くしていくクロノス。ちなみにクロノスとはギリシア神話に出てくる天空神ウラノスと地母神ガイアの間に生まれた子供で、ウラノスを阿部定にして権力を奪い取るも「生まれてくる子供に権力を奪われる」と予言されたのでクロノスは生まれてきた子供(ハデスとか)を飲み込んでいったが末子のゼウスだけが難を逃れ、やがてゼウスに討たれるのであった、という神話からの引用だ(この辺のエピソードは『強殖装甲ガイバー』でも引用されてる)子供を飲み込むエピソードを「地球のエネルギーを吸い取る」という風に解釈しているわけ。

 軍隊の攻撃も効かないクロノスは人間には打倒できないのか?その頃病院からの連絡を受けた(であろう)ハンターがことの発覚を恐れたエリオット博士に襲われる。ガスケルによって間一髪救われるハンター。そして高圧電流に触れたショックで正気に戻った博士は宇宙人の目的について話しだす。「なんとかして止められないのか?」というガスケルに

 「わからん。なんとかしてプロセスを逆にするんだ」

 と博士。クロノスは最初にすぎない、もし成功すればもっと後に続く地球のエネルギーを搾り取りにくるのだと!
 宇宙人は地球人の体を長い間乗っ取ることができないらしく、死に絶えるのが目前のエリオット博士の肉体を捨てて誰かの体へ移動しようとする。それを察した博士は残された力を振り絞り、断熱室に閉じこもり己を抹殺する。死にゆく博士から這い出した宇宙人は火花を散らして絶命。

 残されたガスケルたちは対策を考えるが名案は浮かばず、苦悩を続ける。クロノス撃退のヒントを得るきっかけは【スージー】だった。

 「どうしたんだスージー!無理強いしていることはわかってる。頼むからノイローゼにならないでくれよ」

 計算途中でエラーを起こす【スージー】を思いやるオタクのカルヴァ―。後の『2001年宇宙の旅』でもHAL2000がノイローゼに近い症状を起こして宇宙船の乗組員を殺し始めたから、それに何十年も先駆けてるんだ!
 カルヴァ―は「論理回路がパンパンになって詰まりパニックを起こすんだ」とボヤく。「それだ!」と何かを思いつくガスケル。「それをクロノスに適用するんだ」



 クロノスの頭から突き出た二本のアンテナは+と-ではと見抜いたガスケル(そんな単純なの?)、ここにエネルギーを落として逆流させれば処理能力の限界を超えたやつは内部崩壊を起こすはず…
 米軍機が放射性物質をパラシュートで投下、クロノスの上部で破壊されたそれはやつの処理能力をオーバーさせ、内側からクロノスは破壊されていった…

 「これで僕は【スージー】のもとへ帰れる。君らは映画を見に行ける」

 そうそう、ガスケルとハンターは映画を観に行く約束してたんだった!(どうでもいいよ!)けれどハンターの表情は不安そう。

 「まだ他にも送ってくるのかしら?」
 「その時のために準備しておけば大丈夫さ」

 あのクロノスは最後の一体とは思えない。手にしたエネルギーを破壊のためだけに使うようなら、第二、第三のクロノスが現れるかも知れない…

 『地球の静止する日』(51)のゴートという先例はあれど、「侵略、破壊する」巨大ロボットとしては初のケースと思われる『クロノス』は50年代のSF映画全盛の時代のみならず、今もなお眩い光を放つ後世に語り継がれるべき作品なのです。ナードというものを肯定的にとらえたパイオニアとしても!


  


Posted by 縛りやトーマス at 10:17Comments(0)映画旧シネマパラダイス