2015年11月07日

犬を殺すやつは死ぬべきなんだ!『ジョン・ウィック』




 ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)は最愛の人ヘレン(ブリジット・モイナハン。『アイ、ロボット』のオールドミス博士、カルヴィン役の女優)を失った悲しみに暮れていた。ヘレンは自分が居なくなった後の悲しみをジョンが克服できるようにと一匹のビーグル犬、デイジーを死後自宅に届けさせる。
 愛車マスタングを乗り回すぐらいしか趣味のないジョンだったが、犬と暮らしていくうちに生きる希望を見出し始める。しかし高級車マスタングに目をつけたロシアンマフィアのヨセフ(アルフィー・アレン)とその仲間はジョンの家に押し込み、暴行を加えた上に目の前でビーグル犬を殺してしまう。

 ヨセフは盗難車を扱う解体屋のオーレリア(『スーパーマリオ』のジョン・レグイザモ!)に盗みを自慢するが、「もう二度とここに来るな」と追い返される。「僕を誰だと思ってるんだ!僕のパパのおかげでこんなしけた店が持ててるんだろ!」とボンボンのヨセフは店を飛び出してパパであるロシアンマフィアのボス、ヴィゴ(ミカエル・ニクヴィスト)にチクリに行く。

 「パパ、解体屋の野郎が生意気なんだ。こらしめてやってよ」

 と泣きつくヨセフ、ヴィゴに顔面パンチを食らって本当に泣きを入れるハメに。

 「自分が何をしたのかわかっているのか。お前はジョン・ウィックの車を奪って、やつの犬を殺したんだぞ!」

 ジョン・ウィックの正体は裏の世界では知らないものはいないほどの殺し屋で、かつてはヴィゴの組織に属していたがヘレンと暮らすために足を洗おうとし、才能を惜しんだヴィゴに「自分の元を離れるのなら、いっそ死んでくれた方がありがたい」とばかりに当時ナンバー1の殺し屋、バーバ・ヤーガを殺すのが最後の仕事だと告げる。ヴィゴはジョンがバーバ・ヤーガに殺されるか、相打ちになってくれればいいと一石二鳥を企てるが、後日ジョンはバーバ・ヤーガを仕留めてしまった!そして代わりにジョンがバーバ・ヤーガ(ブギーマン)と呼ばれるようになり、文字通りの伝説となるのだった…


 こりゃカッコいいね!!
 殺し屋、復讐、そしてとむせるようなハードボイルドの臭いが漂う『ジョン・ウィック』はこの導入部分が完璧!ヒリヒリする男どものドラマが展開され、愛する女のために裏の顔を捨てたはずのキアヌ・リーブスが再び殺しの世界に舞い戻ってくるのだ。犬の仇討のために!

 最初は「凄腕なのに、なんでボンボンの強盗にあっさりボコボコにされちゃうの?」と思うだが、カタギの世界に身を落としてすっかり体つきもダブダブになったジョンだったが、復讐の道を行きながら次第にバーバ・ヤーガと呼ばれた頃の血が目覚めていくと、自分がカタギの世界に戻ることなど出来ないのだと思い知らされるのである。

 ジョンの殺しは一発必中のワンショット・ワンキルスタイルで、一発で急所をぶち抜き、念を入れて止めの二発目を打ち込む。このガンアクションにカンフーを取り入れたガンフーなるアクションも流れるようなキアヌの動きと芸術の域に達したかのような銃捌きで『リベリオン』のガン=カタに匹敵する新しいアクションを確立している。

 そしてシリアスな面だけでなく、真剣な顔して笑いを取り入れているところも楽しい。ヴィゴはジョンには敵わないと思っているが、一気にかたを付けようと手下を30人ほど送り込む。が、ジョンはこの人数をあっさり返り討ち。全員を仕留めた後で玄関のチャイムが鳴って警察が「銃声がしたと通報があったのですが…」とやってくる。すると玄関から見えるジョンの真後ろで今さっきジョンが殺したマフィアの死体が転がってるんだけど警察は「あ、特に問題ないみたいですねウィックさん。それじゃあこの辺は物騒ですから戸締まりの方確認してお休みください」と何も言わずに帰っちゃうの!
 自宅は危ないからとホテル住まいをするジョン。ホテル・コンチネンタルという高級ホテルに泊まるんだけど、マネージャーが「ウィックさま、お久しぶりですね」と挨拶。ロビーやバーではみんなが「ようジョンじゃねえか。引退したんじゃなかったのか?」と声をかけてくる。このホテルなんと殺し屋御用達でみんなが顔なじみ。
 ジョンの存在があまりに伝説化していて警察も手を出さないとか、そういうシーンなんだけど、絶対笑わせようと思ってやってるね。でもキアヌの顔がマジなのでギャグに見えない!

 支配人は「ホテル内の殺しは絶対厳禁」と鉄の掟を敷いていて、破ったやつは問答無用で抹殺。しかしヴィゴの雇った殺し屋をジョンがかろうじて返り討ちにするとドアから顔を出した殺し屋仲間が「なんか音がしたんだけど…大丈夫?手伝おうか?」殺しの現場でいうセリフじゃない(笑)このシリアスとコメディがギリギリのバランスでせめぎあっているのもなんとも言えない作品の持ち味になってる。

 笑いの部分だけでなく深刻な部分もきっちりと落としている。クライマックス、「なんで犬を殺しただけでこんな目に」と嘆くヴィゴに

 「てめーの敗因は…たったひとつだぜ………たったひとつの単純な答えだ………『てめーはおれを怒らせた』」

 と復讐を遂げるが…


※この後ネタバレが書いてありますので、未見の方はご注意!




 死体の山を築き上げ、友人の殺し屋(ウィレム・デフォー)を失い、結局カタギの生活に戻れないことを思い知らされ絶望のドン底に突き落とされる。元凄腕の殺し屋がひょんなことから裏の世界に引き戻されるという同じ内容だった『イコライザー』は主役を演じたデンゼル・ワシントンの周囲の人々がみな救われハッピーエンドになるが、『ジョン・ウィック』はそれとは程遠い絶望だけが雨のように静かにジョンの体を浸していくが、亡き妻との約束を思い出し、動物病院で薬品と檻の中の犬を一匹連れ出して帰路につく…

 けど、この連れ帰る犬が…ビーグル犬じゃないんだよ…えっ、そこは同じ種類の犬を連れて帰るだろ、普通は!!

 ジョン、お前犬だったらなんでもええんかい!犬への愛は偽物だったのかよ!!許せねえ。てめーはおれを怒らせた!


  


Posted by 縛りやトーマス at 23:11Comments(0)映画