2016年02月01日

ブラック捕鯨ビジネスとの闘い『白鯨との闘い』



 メルヴィルの『白鯨』の元になったエセ ックス号遭難事件の映画化。作家としてイマイチ目が出ないメルヴィル(ベン・ウィショー)はある捕鯨船が巨大な鯨と格闘、遭難の後にわずか数人が生き残った…という話を聞き、「その話を元に小説を書きたい!」と思い、生存者が住んでいるという港町に向かう。そこでひっそりと世捨て人のような暮らしをしているすでに老人となった生存者二カーソン(ブレンダン・グリーソン)に話を聞こうとするが、「あの話はしたくない。誰にも話したことはないから帰ってくれ」と拒否される。そこをなんとかと食い下がったメルヴィルに重い口を開く。ニカーソン。だがある部分まで話しだしたニカーソンは「これ以上は言いたくない」と席を立つ。それは『白鯨』にも描かれなかった海の上で下した決断だった。

 この映画で描かれるのは当時(1819年)における捕鯨というビジネスのえげつなさである。捕鯨船の船員たちは階級社 会に縛られており、捕鯨一族の出でない者は船長にすらなれない。捕鯨会社は実績よりも血筋を重んじ、どうやっても出世出来る者と出来ない者が存在する。出来ない者は極限まで絞り取られ会社の幹部たちは肥え太る。1800年代、すでにブラック企業が存在しているという事実!彼らの前に立ちはだかるのが白鯨(ホワイト)というのはなかなかに対照的である。

 捕鯨一族の名 門に生まれたが才能も経験もないポラード船長(ベンジャミン・ウォーカー)と経験も豊富で船員の信頼も厚いが捕鯨一族の出ではないので一等航海士にとどまっているチェイス(クリス・ヘムズワース)は対立する。鯨と戦う前に二人、そして船員らは階級社会と戦わされる。巨大な白鯨は人間同士の争いを嘲笑うかのように船を破壊し蹂躙する。

 遭難した彼らを待つのはさらに過酷な運命だった。そらメルヴィルが『白鯨』に書かなかったのもわかるわ!というものでネタバレなので未見の方は読まないでください!


ここからネタバレ






 白鯨にエセッ クス号を破壊され、救命ボートに乗った船員たちは何十日も遭難し、食料は尽きてしまう。さらに船員の一人が衰弱死してしまう。彼を弔おうと海に遺体を流そうとする船員をチェイスは「船乗りは大事なものを海に捨てたりしない」と押しとどめる。カニバル!!泣く泣く仲間の死体を食っちゃった彼らは食料が手に入らないまま遭難が続き、「く じ引き」をして仲間に自分の肉体を捧げることにするのだった。
 せっかく鯨取ったんだから、それ食えばええやん!と思うんだけど、当時の捕鯨って鯨油だけが目的なので頭に穴開けて油取ったらもう捨てちゃうの。もったいない!鯨肉さえ保存しとけば人肉食わずに済んだのに…
 白鯨よりも本当に恐ろしいのは人間だった!



  


Posted by 縛りやトーマス at 23:19Comments(0)映画