2018年03月10日

信者にひどい目に遭わされる北原里英『サニー/32』



 『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』で邦画界一、ノリにノッている白石和彌監督が出世作『凶悪』で組んだ脚本家、高橋泉と再び組んだ実録映画路線が『サニー/32』だ!

 NGT48の北原里英演じる主人公の藤井赤理は東北で中学校教師で情熱をもって生徒の指導にあたるが、なにもかも空回り、いじめられてるかも知れない生徒の純子(蒼波純)の相談に乗ろうとしても相手にされない。そんな彼女は24歳の誕生日に誘拐される(突然!)。犯人はピエール瀧とリリー・フランキー。『凶悪』の二人組!ただ『凶悪』と違ってピエール瀧の方がリリーよりも立場が上ですぐに暴力を振るって相手を支配する男だ。一方リリーはちょっと頭のおかしい男でいつも股間をいじっているだが焼きそばの腕前は絶品だ(そんなやつのつくる焼きそば、食いたくねえ)
 二人は赤理を「サニー」と呼んでかわいがる。サニーとは14年前に起きた小学生女児による同級生殺害事件の犯人で、ネット上で出回った犯人特定画像に加害者が左右の指を3本、2本で独特なピースサインを作るポーズから「サニー」というあだ名をつけられネット上で神のように崇められている少女だ。ピエールとリリーは赤理こそが大人になったサニーだと決めつける。

 長崎で起きたNEVADAちゃん事件をモチーフにするという凶悪さに身震いするが、『凶悪』コンビなのでただ実際にあった事件をなぞりはしない、もっとどぎつく事件をえぐる。
 監禁場所はネットで中継され、ピエールが集めたサニー信者たちが集まってくる。「サニーによって人生を救われた」という杉崎(奥村佳恵)のような狂信的信者もいれば単に卒論のテーマにしたいという田子(大津尋葵)のような男もいる。中にサニー事件の被害者遺族がおり、勘違いして復讐の刃を赤理に向ける。混乱の中、医師の男(山崎銀之丞)は刺されて死に、死体は打ち捨てられ仲たがいの末、田子は監禁部屋の外に放り出されて凍死する。この過程はまるで連合赤軍あさま山荘の内ゲバのように描かれる。師匠の若松孝二的スタイルを踏襲したということか。

 その場にドローンを飛ばして現れた少年・百瀬はスタンガンでピエールたちをあっという間に片づけてしまう。そして自分のshowroomでサニーを配信してネット上の神になろうとする。これってドローン少年じゃねえか!演じた加部亜門の演技がハマりすぎで本当のドローン少年がスタイリッシュな革命家に思えてくる(バカな)。
 電気ショックで覚醒した赤理は信者たちを説教し、さんざん暴力を振るわれたピエール瀧を逆に足蹴にする。「オラ!こういうのが嬉しいんだろうが!」「あぁ…サニーさま、もっとやってください!」showroomの画面上に流れる「サニー!神!」の文字。「みんながわたしにサニーを求めるのなら、本当のサニーになってやる」と堂々宣言した赤理=サニーはネット配信の辻説法で神として崇め奉られるのだ。その内容も「パチンコがやめられない」という主婦に「お前が吸われた金は北の国からミサイルになって飛んでくる」というアレなやつ。

 監督による北原里英への責められ方は半端ではない。家の二階の窓から豪雪の上に放り出され、裸足で延々と歩かされる。途中で疲れ切って倒れるシーンはカットのタイミングを計っておらず、北原も倒れるタイミングがわからないから声を掛けられるまで歩いて行って、本当に力尽きて倒れる。追い込みすぎだろ!熱狂的な信者(ファン)にひどい目に遭わされるというのは、AKB時代にも体験してるだろうけど、ここまでの目には遭ってないはず。白石和彌の凶悪ぶり、おそるべし。

 そんな女優イジメを経て物語は第二のサニー(門脇麦)が現れ、「わたしが本物のサニーです」とネット配信で自分の指を自らへし折ったりする過激番組を配信。赤理は自身の番組に純子が書き込みをしてるのを見る。「先生、昔同級生をカラオケボックスで殺したんでしょ。すごいね。わたしも負けないで頑張るよ」といじめっ子の同級生に復讐しようとする純子を赤理は止められるのか?

 門脇麦演じる第二のサニーとの対決を経て赤理はようやく教師としての使命に目覚める。なんだか最後は温かいムードで完結するじゃないか。この実録路線でハートウォーミングなオチをつけようとは白石・高橋が一番の凶悪だろ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 11:34Comments(0)映画アイドル映画