2018年07月10日

生きてる人間の方が怖い『ルームロンダリング』



 普通のOL(光宗薫)が帰宅した途端、暴漢に襲われて文化包丁で二回ぶっ刺されて死亡、死体袋に包まれるという衝撃のオープニング!何これ怖すぎ

 ところ変わってアパートの一室に若い女性が引っ越してくる。その女性、八雲御子(池田エライザ)は5歳の頃に父親を亡くし、やがて母親(つみきみほ)も彼女を置いて去り、祖母(渡辺えり子)に引き取られ育つが18歳の時に祖母も亡くなり独りぼっちに。祖母の葬儀に現れ「ババア!先に死んでんじゃねえよ!」と声を荒げる派手な服装の男、雷土悟郎(オダギリジョー)は御子の叔父で、強引に彼女を引き取っていく。
 不動産業を営む悟郎は引っ込み思案で他人と口を利くのが苦手な御子にワケありの仕事を紹介する。それは物件に以前住んでいた住人が自殺、孤独死などした事故物件に一度住んでまた引っ越し、履歴を綺麗にして次の住人に渡すというルームロンダリングだった。

 事故物件には告知義務というのがあって新たに借りる住人には過去に自殺、火災などの事件があったことを告知する義務が物件所有者にはあるが、一度誰かに貸した後なら説明しなくてもよくなるわけだ(実際には明確なガイドラインがないことが映画の中でも示される。数年後、二人目、三人目の入居者にも告知義務が生じるケースがある)。人と話さなくてもよいというのは、他人と目を合わせて会話できない御子にはうってつけの仕事だが、彼女には厄介な特殊能力があった。この世に未練を残して死に、物件に住み着く幽霊が見え、会話できるのだ。かつて母親にもらったアヒルのランプが明滅を繰り返すと幽霊たちがあらわれる!

 デモテープをレコード会社に送ることすら出来ず手首を切ったパンクス(渋川清彦)、学芸会の当日朝にダンプにはねられたため、ずっと「猿蟹合戦」のカニの扮装をしている小学生といった死んだ人たちとはそれなりに話せるが、生きている人間とは誰一人まともに話せない。叔父の悟郎にも「挨拶ぐらいしろよ」とぼやかれるのだった。

 御子は他殺の事故物件に引っ越してくる。それが冒頭のマンションなんだが、マンションの床からせり上がり、「殺してやりたい…殺してやりたい…」背中に文化包丁を差したまま恨み節を炸裂させるOL悠希こと光宗薫。冒頭もそうだけど、彼女だけ必要以上に怖く描かれるの、なんなの。「私を殺した相手を見つけたい」という悠希。面倒事に巻き込まれたくない御子は「私には何もできない」と突き放す。
 となりの部屋の住人・虹川(伊藤健太郎)が御子を訪ねてくる。当初は彼が怪しいと感じる御子だったが、話を聞けば彼は事件当日に悠希の助けを呼ぶ声を聴いたものの、面倒に巻き込まれるのが嫌で聞こえないフリをしたという。自分が勇気を出して駆け付けていれば悠希を助けられたかもしれない…虹川は御子が何かトラブルに巻き込まれることがあったら今度こそ助けようと。そんな虹川や、デモテープに取り憑いてマンションまでやってきたパンクスらの声に応じて御子は殺人事件を解決しようと決意する。


 今流行りの事故物件をテーマに、幽霊が見える根暗女子が「なぜ見えるのか?」という自身のルーツに迫っていく内容は荒唐無稽な話ながら伏線がきっちり張られて、衝撃のラストを迎えるころには不思議な感動が待っていたのだった。「死んでる人より、生きている人間の方がよっぽど怖い」というぼっちでコミュ障の女子、御子のセリフは他人事とは思えません!
 「すこし不思議」というか、「すこし怖い」なテーマを扱いながら、さわやかさを感じさせる本作は、周囲の人間に置いてけぼりにされた御子や、成功を夢見ながら勇気が出せなかったミュージシャン、なりたい自分になりたかったのに勘違いされたOL、世間の理不尽に微力ながら反抗し続ける青年といった、世間から爪弾きにされがちな登場人物に対して優しい目線があるからでしょう。忌避されがちな事故物件にもそこに住んだ人たちの物語が存在するわけです。
 特筆すべきは主人公を演じた池田エライザが醸し出す全開のフェロモン!「服を着て立っているだけでセクシー」と言われているエライザ、もう事故物件に住んでいるだけである種のアレがギンギンですわ!物件じゃなくて、エライザのフェロモンに幽霊も引き寄せられているんじゃないかと…この物件、エライザさんついてこないんですか!?


  


Posted by 縛りやトーマス at 19:55Comments(0)映画