2018年09月19日

自己完結しているオタクに捧ぐラブストーリー『君の膵臓をたべたい』(アニメ)



 君の膵臓をたべたい。奇妙なタイトルである。これがホラーなら違和感もないが純愛映画なのだ。食べたいほど愛してるのか?食べたいならまだわかる。これが「売りたい」だったら大変だ。金欲しかったら膵臓売れぇ!!昔そんな人がいました。あれは腎臓だったかな。

 住野よる原作によるライトノベルのアニメ化。2017年に実写化されて35億円のヒットを記録…したものの、実写版は原作とは一部を変更され、登場人物たちが大人になって12年前の物語を回想するという内容に原作者の住野先生が不満だったと言う。
 実写版の主演はDISH//の北村匠海に当時はまだ実写『あの花』や映画『咲-Saki-』の主演ぐらいでしか知られてなかった浜辺美波というキャスティングが弱いと思われたのか、それをカバーするために客の呼べるスター、小栗旬や北川景子を「大人になった現在の登場人物」として入れたのがいかにも東宝映画らしいね。アニメ版は実写より前に企画されていた上に住野先生自ら参加していたというので、実写版のような納得のいかない変更はなく原作に忠実につくられた。


 病院のロビーで偶然拾った一冊の本を拾った僕(物語の主人公。CVは高杉真宙)。「共病文庫」とかかれたその本は「僕」のクラスメイト山内桜良(CV:Lynn)がつづった秘密の日記。桜良は膵臓の病気により余命僅か。「僕」は桜良の両親以外では唯一病気のことを知る人物となる。それをきっかけに桜良と「僕」は仲良くなるのだが、「僕」は自分以外に興味のない「友人のいない」人間だった。
「僕」が友人をつくらないのは相手を見て「この人は自分のことをどう見ているのか?」が気になりすぎて友人ができない、という性格は友達がつくりにくい人間の内面を見事なまでに表していて、草食系という言葉では言い足りないほどの受け身野郎。「僕」は桜良に振り回され、どう見たってデートにしか見えない行為をし、挙句は一泊旅行にまで付き合わされる(「僕」はあくまで「付き合わされる」。ラノベオタクの人にわかりやすくいうとハルヒとキョンのような関係)。恋人同士でもなければやらないようなことを平気でしているのに二人は最後まで恋人にはならない。恋人にならない純愛映画!?なんだそれは!!

 象徴的なのが二人が劇中でやる真実か挑戦かゲーム。トランプを一枚ずつ引き合って数字の大きい方をめくった方が負けた相手に「真実か挑戦か」と聞き、負けた方は必ず「真実」と答え、勝った方は相手が答えにくい質問をする。負けた方は質問に真実を答えるか、答えたくない場合は「挑戦」を選ぶ。勝った方は相手に要求をし、負けた方はそれに「挑戦」しなくてはいけない。
 桜良は「わたしのカワイイと思うところをみっつ選んで」といい、「僕」は答えられないので「挑戦」を選ぶ。桜良は「わたしをベッドまで運んで」と要求。ヒロインにそこまで言われないとできない主人公!
 この「真実か挑戦か」ゲームは本作の最大の魅力。最後の最後まで恋人なのかどうかもはっきりしない二人の関係を表している。二人は他愛もない質問ばかりして桜良も「君はわたしのことが好き?」とか聞けばいいのに質問すらしなくてモヤモヤする。でもこれはそんなことをとても聞けないが、言わなくても自分の中ではわかっている自己完結しているオタクが好むラブストーリーなのだ。

 こんな話が多くの一般客に受け入れられているという真実。ビックリしました。時代がオタクに追いつこうとしている!

「僕」の声を演じた高杉真宙は『仮面ライダー鎧武』でヒーローになれないのならいっそ巨悪になってやる、と覚悟を決めながら小悪党にすらなれなかったよ…というひとり難しい役どころを演じていたが、今回も捉えどころのない自己完結する主人公を丁寧にきめ細かに演じていた。芸能人吹き替えと侮ることはできない。


  


Posted by 縛りやトーマス at 23:11Comments(0)映画アニメオタク