2019年01月03日

覚えていれば、存在するヒーロー『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』



※文中に『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』のネタバレについて書かれています。気になる人は映画本編を見てから読んでください。


 最新作のジオウ、前作のビルドが共演するクロスオーバー作品であり、歴代ライダーも出演する、「平成最後の仮面ライダー映画」という位置づけにふさわしいオールスター映画だ。「仮面ライダーはテレビの中の存在で、虚構の存在なんだ!というあまりに衝撃的な内容である。
 仮面ライダージオウ・常盤ソウゴ(奥野壮)と仮面ライダービルド・桐生戦兎(犬飼貴丈)、それぞれの世界で仲間たちの記憶が改変され、失われていく。それはすべての記憶を消し去って自らが唯一のライダーとして君臨しようとするスーパータイムジャッカー・ティード(大東駿介)の企みであった。ティードは正体不明の少年、シンゴ(斎藤汰鷹)を追っており、ソウゴと仮面ライダーゲイツ・明光院ゲイツ(押田岳)は戦いに巻き込まれるが、そんな彼らに一般人たちが声援を送り、スマホのカメラを向け始める。二人の戦いはまるで遊園地のヒーローショーのように周りからみられていた。戦いの場に居合わせた高校生・アタル(福崎那由他)からもアトラクションのショーと勘違いされる。新世界からやってきた戦兎たちと合流する中で仲間たちの記憶が消え始める。やがてティードに洗脳された戦兎が敵に回る中、この世界では仮面ライダーが実在しない、「テレビの中のヒーロー」にされていることを知る。


 仮面ライダーが虚構の存在、という禁断の果実に手を出した内容。その世界をつくるきっかけになる高校生・アタルにはかつて行方不明になった兄がいて、家族がずっといなくなった兄のことばかりを気にかけていて、テレビで活躍する仮面ライダーが助けに来てくれたらいいのに、という思いをずっと抱いていたが、それは叶わない。仮面ライダーはテレビの中で活躍しても、現実世界の悩みを解決してくれるわけではない。というかなりきわどいテーマに挑んでいて、ライダー、特撮オタクのみなさんは痛いところを突かれてしまって、映画を観に行っても嫌な気持ちにさせられるのではないかと思ってた。そんな「現実に帰れ!」とか「気持ち悪い!」とか僕たち言われたくないんですけど!

 あの9.11テロの時にマーベルコミックのヒーローが倒壊するワールド・トレード・センタービルから人々を助け出したように、この映画は記憶を失っていく仲間たちを見ながらも、宣言する。「覚えてさえいれば、ライダーは存在する」と。映画『リメンバー・ミー』で死んだ人はあの世で元気に生きているが、現世の人たちが死んだ人のことを忘れた時に本当の死を迎えるように、記憶さえ消えなければライダーは本当のヒーローとして存在する。
 そう宣言するのが仮面ライダービルド・桐生戦兎というところがツボで、彼は本編でも存在自体があやふやな男で、彼が自身のアイデンティティを確立するまでの間、ずっと悩み続け、戦いにも迷い、敗れ続ける。それが今回の映画では不確かな存在に悩む仮面ライダージオウ・常盤ソウゴに「俺は俺で、ここに確かに存在する」とビルド本編の悩み続ける姿がウソのように堂々たる姿を見せつけるのだった。しかも雨の中で…(ビルド本編を見ていた人は「雨の中の桐生戦兎」が彼にとってあまりいい思い出のないシーンばかりだったことを記憶していると思われるが、それだけに感動もまたひとしおの場面になっている)


 さらに映画本編最大の盛り上がりを見せるポイントとなっている、仮面ライダー電王・野上良太郎を演じる佐藤健は役10年ぶりに同役を演じたわけだが、佐藤がライダー出演後、あまりに売れっ子になってしまい番組終了後も次々作られる映画版に出られなくなったので別の役者を使う羽目になってしまい、佐藤は電王には出ないのか?と言われてた。まさに存在自体が忘れ去られるというか、なかったことにされかけていて、そんな彼が再登場したのは「覚えてさえいれば、ライダーは存在する」というテーマともぴったり。
 現実の世界が辛くて虚構の中の世界に逃げ込んだ人物が、虚構の中の世界で救われたからこそ現実の世界でも救われたというのは『SSSS.GRIDMAN』にも相通じるものがあり、僕たち(誰よ)も救われた。

  


Posted by 縛りやトーマス at 20:35Comments(0)映画特撮・ヒーローオタク