2019年02月27日

ゾンビファンの脳みそを破壊する『トウキョウ・リビング・デッド・アイドル』



 当時、SUPER☆GiRLSのメンバーだった浅川梨奈主演のゾンビアイドル映画。「ゾンビ」と「アイドル」というローバジェット映画の定番要素二つがドッキングしたらどうなるか?華やかなカップルとなるか、それとも最悪の組み合わせになるのか!?


 3人組の地下アイドルユニット「TOKYO27区」(3人組なのに27区というこのネーミング)のセンターであるミク(浅川)は今日も満員のライブをこなしたが、メンバーのモエ(スパガの阿部夢梨)、ルナ(尾澤ルナ)のドヘタな歌と合わないダンスにブチ切れ。
「やる気あんの?わたしらもうすぐメジャーデビューで、もう地下アイドルじゃあないんだよ!」
 そんなミクの態度に少々ウンザリな二人。地下アイドルにありがちな無駄に意識高いケンカ、よくありますね。観客もちょっとイラついたところで、エレベーターから現れたゾンビ(突然)に噛まれるミク!騒然となる楽屋裏!周囲は突然のことにおびえるばかり(そりゃそうだよ…いくらなんでもゾンビの出現、突然過ぎ)で、誰もミクのことを助けない(これまでの態度が悪いせいもあるんじゃない?)。彼女を助けたのはゾンビハンターの男(また突然だなオイ!)

 腕の噛まれた後を包帯で隠したミクは人で溢れかえる真夜中の街を疾走…って、ゾンビが出てるのに普通に人が暮らしてるの?
 そう、この世界では人々が普通に生活を送っているのだ。ゾンビといえば発生した瞬間に無法地帯になったり、文明、日常が崩壊する様が描かれるのだが、この映画では通り魔が出てきたぐらいの騒ぎで済んでいる。なんて斬新な世界観なんだ。役者の後ろをよく見ると通行人が通っていたり、道路を車が走ってる。決して低予算すぎてポスト・アポカリプスな世界を描けないわけではない。

 ゾンビ化するまでのタイムリミットは72時間。噛まれた人間は警察によって専門の施設に強制収容される。のだが、捕まえた警察の偉い人がアイドル・ミクのファンなのでこっそり彼女を逃がしてあげるのだ。なお、低予算映画なので細かい設定についてはすべてセリフで説明される。
 なぜミクは逃げ出すのか?それは都市伝説として伝わっているゾンビ状態から回復する血清を探し求めるために。
 偶然見つけた「ワンダフル探偵事務所」の男、犬田満男(『ハルサーエイカー2』の田畑ジョー役やってた尚玄)に助けを求めるミク。

「わたし、どうしても夢を叶えたいの…アイドルの聖地、中野サンプラザでコンサートをやって国民的アイドルになるまで死ねないの!」

 ずいぶん小さい夢だな!中野サンプラザは確かに聖地かもしれんが、そこから国民的アイドルまでかなり遠いぞ!そこは嘘でも武道館っていおうよ!ミクは血清に関する噂が書かれたムーのまがい物じみたオカルト雑誌を見せて「ここに書いてる」そんなもん信用すんなよ。

クラーケンとネッシーの戦いは気になる

 逃亡したことで全国指名手配された彼女を助けるのは面倒だと手を引こうとする犬田だが、ミクが頭を下げてまで懇願するのに気が咎めて、この依頼を受けることに。

 翌日、高田馬場あたりにある雑誌編集部を訪ねていくと、建物があった場所は更地になっていた。なんと、数日前に謎のガス爆発を起こして編集部員は全員死んでいた。オカルト雑誌に真実を書いたから消されたのか?陰謀論が渦巻く中、タイムリミットは迫る。公園の草むらから突然現れた(ホント突然)ゾンビの頭を金属バットでカチ割り、逃亡する二人。
 一方、逃亡したミクを捉えんとゾンビハンターらも二人の足跡を追っていた。そのうちの一人、日本刀が武器の女子高生ゾンビハンター・如月が悶絶するほどカッコいい!襲い来るゾンビをバッタバッタと切り捨てるアクションは演じた星守紗凪、本人自ら挑んでます。公式プロフによると「特技・殺陣」とあり、ヘナチョコな剣の振り方じゃありません。こんな映画(失礼)で本格的な剣術アクションが見られるとは…僕は彼女のファンになるぞ!

本物の剣術ができるうえにカワイイぞ

 公園での撮影の間、ずっと小雨が降っている。別にじめじめとした世界観を描きたいとかいうわけでもなく、ただロケ日が雨で日程を変更するほどの余裕がなかったんだろうな…

 ミクたちはオカルト雑誌に記事を書いた男の家で「A」と呼ばれる感染少女がゾンビから回復する血清を作り出すことができる情報を入手、情報屋からA=アリシアと呼ばれている少女が実験のためどこかに監禁されていることを知るが、どこにいるのかわからないままタイムリミットは迫る。童顔巨乳好きゾンビ(どういうこと)に襲われるが、熱心なミクファンのオタクによって助けられ、というかオタク二人が勇ましく立ち向かうもあっさり犠牲になってる間に逃げたんだけど!アイドルはオタクを犠牲にして生き延びるんだ…彼らこそドルオタの鑑として語り継がれるべきだ。

 しかしミクらの前にゾンビハンター・如月が立ちふさがる…が、如月はゾンビを切り捨てると

「わたし、ミクちゃんの大ファンなの!」

 如月はTOKYO27区の古参(初期からのファン)だった!如月はアリシアの監禁場所を知っており、かつて感染した時に血清によって回復していたのだった。ミクのためにゾンビを人体実験に使っている組織を裏切ることにした如月、ミク、そして元刑事という過去も判明した(またまたまた突然!)犬田の3人は地下実験施設へ向かう。


 あらゆる意味で従来のゾンビ映画の埒外へ飛び出しており、予想以上の面白さがある。低予算ながら本格的な剣術、パルクールなどの大胆なアクションがあり、なによりゾンビが現れてるのに特に文明が崩壊していないとか、何もかも斬新すぎる。ゾンビ映画という枠に囚われがちなゾンビファンの脳みそを気持ちよく破壊する一本です。




  


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2019年02月27日

猫がいればそれでいいんだ『猫とじいちゃん』



 世の中には「猫に癒されたい」という人がいっぱいいるので、日本では猫を主役にした映画が結構あります。猫にはセラピスト効果があるだの、「アケメネス朝ペルシアのカンビュセス二世は神聖とされる猫をエジプト人の立てこもる城の中へ投げ込んで、神聖なる猫を傷つけられないと恐れおののいたエジプト人は城を捨て逃げ出した」だのなんだのと猫がいかに素晴らしいかというもっともらしいエピソードを語りだすが(その前に猫投げるなよ)、その実、猫で搾取しようとたくらんでる猫エクスプロイテーションではないのか?

 この『猫とじいちゃん』もそんなたぐいの猫エクスプロイテーションなんですが、そんじょそこらの猫エクスプロイテーションと一味違うのは猫写真の巨匠、岩合光昭の初監督作品という看板がついてるところ。
 僕も岩合光昭の猫番組はテレビとかで観たことある。まるで猫の目線になったような写真とか、ありとあらゆる角度から押し寄せる猫写真には大層興奮させてもらった。猫の方も演技をつけられたかのような動きをする。「猫に演技をつけたような映像が撮れるのなら、人間の演技もつけられるのではないか?」ということか?そんな無茶な…

 とはいえ無理なことは無理だと思ってるのか、制作側も無駄な演技指導の時間を避けるために、初めから演技がそれなりにできる人たちを配置してるのがなんとも。出演陣が立川志の輔、柴咲コウ、柄本佑、小林薫、銀粉蝶、田中裕子ときたもんだ。この人たちはともかく、若手の役者もいるけど、その子たちは難しそうな顔して会話してるだけ、いてもいなくても構わないような役なのが露骨です。

 老人ばかりが暮らす離れ小島に暮らす元教師の大吉(志の輔)は2年前に妻(田中裕子)に先立たれ、妻が可愛がっていた猫のタマとのんきな二人暮らしをしている。都会からやってきた美智子(柴咲コウ)が開いたおしゃれなカフェで仲のいい友人たちとおしゃべりする毎日だったが、ある日タマがいなくなってしまい…

 って、イッセー緒形が出ていた『先生と迷い猫』(2015)と似たような話だなあ…あれもイッセー緒形が元教師で、妻に先立たれて猫と暮らしてて、島が舞台なの。話も似てて、色々なことがあって疲れた人たちが猫によって癒されて、人と人との仲を紡いでいくんだけど、なにしろ猫は気まぐれなので人の思ってるようにはならなくて、、ただ寝転んでるだけだったり。だから猫はいいんだ、という人の気持ちはわからなくもない。

 役者たちはみんな複雑な演技を求められていないので、ただの役目としてそこにいるだけ。何か問題を抱えて田舎に逃げてきた柴咲コウは一体何があったのかまったくわからない。医者の柄本佑も「魚の目が怖い」とかおびえているのもなんでそうなのかわからない。

 まあ、人間のことなんてどうでもいいんですよね。猫がいればそれでいいんだから。

  


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2019年02月26日

翔んでスタート!埼玉県の動員がスゴイ

 魔夜峰央の埼玉ディスり漫画の実写映画『翔んで埼玉』が異例の大ヒットを飛ばしているぞ。




『翔んで埼玉』1位スタート!埼玉県で驚異的な数字記録
https://www.cinematoday.jp/news/N0107071

>土日2日間(2月23日~2月24日)の全国映画動員ランキングが興行通信社より発表され、GACKTと二階堂ふみがダブル主演を務めた映画『翔んで埼玉』が1位を獲得した。初日22日からの3日間で興行収入は3億3,094万9,400円、観客動員は24万7,968人に達している。

>都道府県別興収シェアで埼玉県は、東京をおさえて全国1位に。同県内における興収で、2000年以降に公開された東映配給の実写映画でこれまでの記録を保持していた2005年公開の『男たちの大和/YAMATO』(最終興収:50.9億円)の公開3日間対比414.35%という驚異的な数字をたたき出した。


 確かに面白い映画なのだが、この漫画丸出しのデフォルメされた世界観がどれだけ受けるのか?この面白さが観客に伝わるのか?という不安があったのだけど、蓋を開ければ3億越えのスタートだ。この数字は2019年公開の実写映画で国内No.4の成績。


〇マスカレード・ホテル 動員61万人 興収約8億円
〇七つの会議 動員35万1000人 興収4億3400万円
〇十二人の死にたい子供たち 動員26万3398人 興収3億3921万8900円
〇翔んで埼玉 動員24万7968人 興収3億3094万9400円
〇雪の華 動員23万0012人 興収2億8475万2200円
〇フォルトゥナの瞳 動員19万人 興収2億5000万円
※いずれも公開三日間の成績


 6作品のうち『マスカレード~』『七つの~』『フォルトゥナ~』は東宝映画、『雪の華』『十二人の~』はワーナー配給。『翔んで埼玉』だけが東映映画。東映でヒットする実写は仮面ライダーとスーパー戦隊シリーズだけ(あと吉永小百合映画)、といわれている中でのこの大ヒットは例年にない勢い。特に舞台となった埼玉県で動員を稼いでおり、普通興収で各劇場のトップは当然ながら東京都なのだけど、この映画だけは全国トップがMOVIXさいたま!なんでひらがな?漢字が読めないのかな?(はなわの『埼玉県のうた』より)
 東映の公開作品でも2005年の『男たちの大和/YAMATO』以来14年ぶりのヒットという、東映さん、どれだけ当ててないんですか!!

 これから話題作が集中する三月の興行大戦をどれだけ乗り切るのかも楽しみです。あと、映画で埼玉以上にディスられてる栃木県(劇中でプテラノドンが飛んでたり、ビッグフットの足跡がある人外秘境として描かれている)の動員はどれぐらいなのか、気になります。


  


Posted by 縛りやトーマス at 10:36Comments(0)映画漫画映画興収関連

2019年02月25日

「本当に凄い日本」が観られる映画『サムライマラソン』



 1855年の幕末、黒船到来に揺れる日本。安中藩(現在の群馬県)の藩主、板倉勝明は藩士たちを鍛えるために七里あまりの距離を徒歩競争させる安中遠足を実施。これが日本初のマラソン大会であるとされている。
 これを『超高速!参勤交代』の土橋章宏が『幕末まらそん侍』として小説に。それを実写化した『サムライマラソン』だ。『超高速~』は参勤交代を期限までに成功させないと藩が取りつぶしになる、というシリアスな一面を笑いに変えた傑作だったので、今回も笑いありのコメディかな?と思ったらてとつもないハードな作品だった…


 幕末。江戸幕府は来航したペリー提督らによって開国を迫られる。安中藩主の板倉勝明(長谷川博己)は「アメリカは口では和平を唱えていても、日本の侵略が目的だ」と疑い、やがて起きるであろうアメリカとの戦いのために藩士を鍛える必要があるとし、心体を鍛えるという名目で七里あまりの中山道を往復する「安政遠足」の開催を決定。その距離約60キロ!さらに勝明は「優勝者にはどんな望みもかなえよう」とし、藩士たちは色めき立つ。
 重臣の息子、辻村平九郎(森山未來)は板倉の娘、雪姫(小松菜奈)の婿となって藩を治める野望にとりつかれる。その雪姫は江戸に出て絵の勉強をしたいという夢があったが、勝明に反対されている上に傲慢な平九郎との結婚を拒むため屋敷を抜け出し、男装して遠足にひそかに参加する。藩で一番足が速いとされる足軽の上杉広之進(染谷将太)は両替商の留吉に「1着を譲れば10両をやる」と八百長を持ちかけられる。あばら家で暮らす妻子を見て名誉と金のどちらを取るかで悩むのだった。藩から解雇されたばかりの侍、栗田又兵衛(竹中直人)は隠居する前に一花咲かせようと亡くなった友人の息子と二人で遠足に参加する。

 様々な思いを持つものたちが遠足に参加する中、勘定方の侍、唐沢甚内(佐藤健)は平凡な家庭人であった。しかしその正体は代々幕府から遣わされた隠密。安中藩の動きを怪しく感じた甚内は幕府に密書を送る。受け取った家老の五百鬼(豊川悦治)は安政遠足を謀反ととらえ、刺客を安中藩へ送る。遠足の復路で疲れ果てた藩士たちを討って安中藩をつぶすために。
 甚内は安政遠足に謀反の疑いがないことに気づくが、時すでに遅し。遠足の道中で勘定方の上司、植木(青木崇高)と出会い、彼もまた幕府の隠密であることを知る。植木は幕府の命令に従って藩をつぶそうとするが、長い隠密生活の中で、妻(門脇麦)をめとり、子供を授かり、仲間たちもできた。かけがえのない者たちを藩で見つけた甚内は「これはただの遠足でございます。謀反ではありません」と植木を説得するが聞き入れられず、やむなく植木を斬ってしまう。藩を救うために戦うことを決意した甚内は雪姫、平九郎、広之進ら藩士たちとともに刺客と対峙する。


 日本の幕末を舞台にし、出演者も日本人の映画だけど、なぜか制作側には多くの海外勢が勢ぞろい。プロデュースはイギリス人のジェレミー・トーマス。日英合作映画をニュージーランドで撮影(出資の都合で)した『戦場のメリークリスマス』や中国の清朝・最後の皇帝を描いた『ラスト・エンペラー』を手掛け、異文化の人々をミックスさせることに躊躇しない男は日本の侍の映画をオカルトホラーの『キャンディマン』や文芸作品『アンナ・カレーニナ』まで幅広い作風のイギリス人監督バーナード・ローズに任せ、音楽をミニマル・ミュージックの巨匠、フィリップ・グラスに担当させた。

 日本の映画なのにスタッフの多くはハリウッドで仕事をしている人たちなのだ。黒船の襲来で揺れる幕末の日本を描写したかのような制作によってこの映画は化学反応が産まれることになった。『るろうに剣心』シリーズで迫力ある殺陣を見せた佐藤健のアクションや面構えは「ハリウッドで仕事をしている」ような風格がある。これまでは「顔の綺麗な兄ちゃん」ぐらいのイメージしかなかった佐藤健が30代になって実にいい役者になってきたではないか。舞台でたぐいまれな身体能力を発揮している森山未來も只者ではない迫力がある。
 日本の時代劇なら血の一滴も流れないところ、この映画では首が飛び、斬られた首の口がぱくぱくと動き、死体の上をカマキリが這いずる。役者たちはぬかるんだ山道で泥に塗れ、息を切らして駆けずり回る。


 外国を恐れて閉じこもった国が変革していく話をその外国人スタッフによって制作され、日本では出せないような魅力を引っ張り出せた、というこの事実。
 昨今のテレビ番組では「日本凄い」と凄くもないことを声高に主張することが多いが、本当に凄いのは外国と仕事して、お互いのいい部分を引き出すことなんじゃないでしょうか。本当に凄い日本はこの映画の中にある。



  


Posted by 縛りやトーマス at 06:34Comments(0)映画

2019年02月23日

第91回アカデミー賞予想

 日本時間2月25日に第91回アカデミー賞が発表されます。一応、映画の仕事をしているのでアカデミー賞予想(主要部門だけ)などしようかなと思います。

 去年はノミネート作品の中からある程度予想が絞れたのですが、今年は大混戦の模様。 なにしろ票が割れており、前哨戦になる各業界の映画賞も全部バラバラなんですよ。監督組合賞を『ROMA/ローマ』が受賞したら、俳優組合賞は『ブラックパンサー』を選んでいたりと、かぶってるものがほとんどありません。

全部門ノミネート
https://eiga.com/official/oscar/all.html



 まずは作品賞から。

・ブラックパンサー
・ブラック・クランズマン
・ボヘミアン・ラプソディ
・女王陛下のお気に入り
・グリーンブック
・ROMA/ローマ
・アリー/スター誕生
・バイス


 アメコミ映画で初のノミネートとなった『ブラックパンサー』、Netflix配信映画でこれまた初の作品賞ノミネートを果たした『ROMA/ローマ』は最多10ノミネート。同じく最多ノミネートの『女王陛下のお気に入り』は助演女優賞に二人(レイチェル・ワイズ、エマ・ストーン)も入ってます。
 この作品賞が大混戦の模様。日本でも大ヒット中(!)の『ボヘミアン・ラプソディ』はブライアン・シンガー監督の途中降板・過去のロリホモ疑惑が発掘されて悪評に塗れ、『グリーンブック』のピーター・ファレリーも過去の性暴力を告発され、主人公となった黒人ピアニストの遺族に無許可で映画化されたと抗議を受けて勢いに陰りが出たとの報道が。
 いずれも映画の出来、内容とは全然関係ないところで難癖がつけられるという話で、こんなことで受賞が左右されるなら本当にアホらしいとしかいいようがありません。この辺が各業界の映画賞で評価が割れた原因なのかも。

 下馬評では『ROMA/ローマ』が圧倒的なのですが、Netflix配信映画というのが保守的なアカデミー会員の反発をどうしても買ってしまうところが不利に働くかも。アメコミ初のノミネートである『ブラックパンサー』もそれだけでは受賞するに弱い気が。トランプ政権を揶揄してみせた『女王陛下のお気に入り』『バイス』もちょっと露骨すぎるかなと。
 そうすると黒人と白人が南部の旅を続けるうちに人種の壁を乗り越えて友情を育むという、ある意味ベタな『グリーンブック』が評価を集めるかなと。

作品賞 グリーンブック


〇監督賞

・スパイク・リー『ブラック・クランズマン』
・パヴェウ・パヴリコフスキ 『COLD WAR あの歌、2つの心』
・ヨルゴス・ランティモス『女王陛下のお気に入り』
・アルフォンソ・キュアロン『ROMA/ローマ』
・アダム・マッケイ『バイス』

 無冠の帝王、スパイク・リーの受賞が噂されていますが、『ROMA/ローマ』が圧倒的すぎて、今回もリーは悔し涙に暮れる感じ。


監督賞 アルフォンソ・キュアロン


〇主演男優賞

・クリスチャン・ベール『バイス』
・ブラッドリー・クーパー『アリー/ スター誕生』
・ウィレム・デフォー『永遠の門 ゴッホの見た未来』
・ラミ・マレック『ボヘミアン・ラプソディ』
・ヴィゴ・モーテンセン『グリーンブック』

 増量で別人になったクリスチャン・ベール、ヴィゴ・モーテンセンの二人が有力候補。オスカーは体重を減らしたり増やしたりするか、病気の人を演じると評価されやすいというセオリーがあるのでこのどちらかな?と思われるのですが、クイーンのフレディ本人にほぼなり切った、ラミ・マレックに軍配か。


主演男優賞 ラミ・マレック


〇主演女優賞

・ヤリッツァ・アパリシオ『ROMA/ローマ』
・グレン・クローズ『天才作家の妻 40年目の真実』
・オリヴィア・コールマン『女王陛下のお気に入り』
・レディー・ガガ『アリー/ スター誕生』
・メリッサ・マッカーシー『ある女流作家の罪と罰』

 計7度ノミネート、無冠の女王グレン・クローズがついにオスカー獲得か!?との前評判ですが、無知で癇癪持ちのわがまま女王陛下を見事に演じたオリヴィア・コールマンを推したい。

主演女優賞 オリヴィア・コールマン


〇助演男優賞

・マハーシャラ・アリ『グリーンブック』
・アダム・ドライバー『ブラック・クランズマン』
・サム・エリオット『アリー/ スター誕生』
・リチャード・E・グラント・『ある女流作家の罪と罰』
・サム・ロックウェル『バイス』

 この部門で最大の話題が『ムーンライト』で助演を受賞したマハーシャラ・アリが二度目のオスカーなるか、というもの。『グリーンブック』におけるアリの「エリート黒人」は本人も実際すごい才能持ったエリートなので「本人そのままなんだから演技なんかしてないじゃないか!」という意見がバカバカしく思えるほどの名演技なので議論の余地なしでアリに決定!


助演男優賞 マハーシャラ・アリ


〇助演女優賞

・エイミー・アダムス『バイス』
・マリーナ・デ・タビラ『ROMA/ローマ』
・レジーナ・キング『ビール・ストリートの恋人たち』
・エマ・ストーン『女王陛下のお気に入り』
・レイチェル・ワイズ『女王陛下のお気に入り』

 同作品から二人ノミネートの『女王陛下のお気に入り』ですが、二人のうち一人を選んだら角が立つじゃないか!だからエマもレイチェルも候補から外れます。となるとブッシュ政権の影の黒幕の黒幕といわれていたチェイニー副大統領の嫁を演じたエイミー・アダムスかな!


助演女優賞 エイミー・アダムス


 あと気になるところは外国語映画賞。日本から『万引き家族』がノミネートしていることで、国内で注目を浴びていますが、これは『ROMA/ローマ』に決まりでしょう。『ROMA/ローマ』は作品賞と両方にノミネートしているので、どちらかは受賞するのではないかと。発表の順番は外国語映画賞が先なので、ここで『ROMA/ローマ』が受賞したら作品賞はナシで。もし『万引き家族』が外国語映画賞を受賞したら、作品賞の発表は俄然盛り上がることになりますよ!

 そして長編アニメーション部門には『未来のミライ』が入っています。本選にノミネートする前に全アカデミー会員が条件を満たした(米国で劇場公開した、上映時間が70分以上、など)出品作品に投票してノミネートを決める。今年は『リズと青い鳥』『夜明け告げるルーのうた』『夜は短し歩けよ乙女』『さよならの朝に約束の花をかざろう』などを押しのけて細田守が選ばれており、なんで一番つまんないのがノミネートされたんですかねえ…毎年、幸福の科学の作品が入ってるのはアメリカの信者向けに公開されたからなんでしょうけど、さすがカルトに厳しいアメリカは出品までが限界ですね。
 で、こちらは『スパイダーマン:スパイダーバース』で決まりでしょう。

 以上第91回アカデミー賞主要部門の予想です。発表は日本時間25日10時から!  


Posted by 縛りやトーマス at 00:25Comments(2)映画

2019年02月20日

東映にしかできない!『女番長』シリーズの系譜『BACK STREET GIRLS ゴクドルズ』




 誓いの盃を交わした犬金組・三人の極道、健太郎(白洲迅)、和彦(柾木玲弥)リョウ(花沢将人)は身も心も立派な極道として生きていくことを誓ったが、慕っていた若頭の永田が対立組織の罠にはめられ服役。三人は敵討ちのため敵対組織に乗り込むが返り討ちに。命だけは助かったが、敵対組織のボス、小黒田(小沢仁志)は犬金組に手打ちを要求。大金を失うことになった組長の犬金鬼万次郎(岩城滉一)は「東京湾に沈むか、臓器を売るか、それとも…」と三人に迫る。「命だけは勘弁してください!それ以外はなんでもしますから!」と土下座する三人に犬金は

「てめえら明日からアイドルになれ!アイドルになって稼いで来い!」

 選択の余地などない三人はすぐさまタイに渡って性転換手術。アイリ(岡本夏美)マリ(松田るか)、チカ(坂ノ上茜)の見目麗しい美少女に生まれ変わってアイドルグループ「ゴクドルズ」(極上のアイドル、の意)としてデビュー。

「売れちまったよオイ!!」

 三人の予想を裏切ってゴクドルズは売れまくり、小さなライブハウスを満杯にするほどに。三人は身も心も立派な極道のはずが、アイドルとして乙女な生き方を強要され、ギャップに苛まれていく。


 週刊ヤンマガに連載された漫画の映画化で、奇想天外かつ破天荒な内容に挑んだのは△マークの東映だ!極道はともかくアイドルって!東映のアイドル映画っていったら『ときめきメモリアル』ぐらいしか浮かばないぞ。
 しかし東映ではかつて杉本美樹、池玲子といった女優らが主役のバイオレンス・アクションを70年代に量産していたではないか。そう、あの『女番長』シリーズ、野獣のような女たちが愚かな男たちを手玉に取って大暴れする様子はまさしく『女番長』シリーズだ!
 さらに東映ならではの要素をミックスさせた。特撮ヒーロー番組からの起用だ。アイリ役の岡本夏美は『仮面ライダー1号』で立花藤兵衛の孫として藤岡弘、をビンタして「老人虐待では?」と言わしめていた。マリ役の松田るかは『仮面ライダーエグゼイド』のポッピー、チカ役の坂ノ上茜は『ウルトラマンX』のアスナ隊員!三人を導くよきライバルであり同志であるアイドル役に元スパガ、『スーパー戦隊最強バトル!』にでている浅川梨奈、外道のようなIT企業のヤク中社長はNEW電王の桜田通。あと、『仮面ライダー電王』の秋山莉奈さんも出てます。

 極道とヒーローの華麗なミックス。東映でなければできない映画だ。最後のカチコミシーンでは人見早苗(元ジャパンアクションエンタープライズ)さんがスタントに入ってるぞ。

 岩城滉一組長が真面目な顔して作詞したアイドルソング『恋のサカズキ』の切って切って切って指切って~にはもう爆笑。大杉漣さんも居酒屋の大将役で友情出演だ!ひょっとしたらこれが遺作!?

 シリーズ最終作から45年。女番長の系譜は生きていた!



  


Posted by 縛りやトーマス at 01:13Comments(3)映画アイドル映画

2019年02月15日

有安杏果ファンはもう少し冷静になろう

 元ももクロの有安杏果さんがソロ活動開始を発表したのは1月15日。奇しくもグループ脱退を発表したのは去年の同日。きっちり一年間休養した後での活動再開報告にはファンも胸にこみ上げるものがあった。
 その後新たに個人事務所の立ち上げ報告が2月6日にインスタ、Twitterで。しかしこの報告には続きがあった。それは突然雑誌記者に取り囲まれたことと、現在結婚を前提にした一般人男性との交際をしていることだ。
 二日後の金曜日に発売されたFRIDAYに杏果を直撃した記事が掲載される。週刊誌の前に先んじて自ら発表したということだが、これをめぐって各マスメディア上では喧々諤々の論争となった。





 それは交際相手がメンタルクリニックの院長で、独身の48歳、そして二年ほど前から杏果の相談を受けていたということ。つまり自分の患者と交際していたわけで「医者が患者に手を出すってアリなの?」と批判が続出した。

 多くのファンは彼女の復活、交際宣言も好意的に受け止めていて、インスタやTwitterには応援メッセージが寄せられているが、中には納得できない人が「これってどういうことなの?」と不満タラタラの様子。

 僕は杏果ファンだし、卒業に至るまでの決断は理解できるし、以前から必ずソロで復帰するだろうと予想していたので活動再開は待ってました、というところ。クリニックに通っていたということに関してもグループ一メンタル弱めなのが杏果だったし(メンタル怪しげなのは、れにちゃん)、クリニックぐらい通っていても不思議ではない。その医者が交際相手というのは若干モヤっとするが、担当医と交際したのではなく、交際したのがたまたま担当医だっただけではないか。何ら騒ぐことではない。

 なのに世間にはグループ脱退までの経緯に納得できず、今回のことに絡めて文句を言い出すやつの多いこと!その典型が以下だ。


元ももクロ・有安杏果“結婚前提交際宣言”に感じる「割り切れなさ」の正体
https://www.cyzo.com/2019/02/post_193013_entry.html


 この記事には、脱退後の杏果に対して文句言いたがり連中の果てしなくダメなところが全部凝縮されている。

 まず冒頭に杏果ファンであることをチマチマ説明して、ただのゴシップ的興味本位の記事ではないのだアピールしていますが、ファンならグダグダ言わずに彼女の決断を支持して応援してやれ、というのが第一。

>私は、好きなアイドルがすることはすべて肯定しようという考えを持っている。本人が望んでいないのに、周りにやらされているようなことは別だが、卒業も、解散も、最終的に本人が決めたことであれば、応援するのがファンだと思うからである。

>そのため、昨年、彼女がグループを卒業したことも、(発表から卒業までの期間が短すぎるなどの不満はあるものの)納得はしてきたつもりだ。

>ただ、今回の件については、何か心から祝福できない気持ちが先立ってしまう。この正体は一体何なのだろうか?


 本人が決めたことであれば応援するのがファンだと言いながら、その決心が揺らいでいるのである。この後にはまるで関係がない秋篠宮家の眞子さまと小室圭さんの結婚問題と杏果の件を強引に結び付け、こんなことを言い出す。

>違う分野での2つのニュースであるが、根底に感じる割り切れなさには、共通しているような感覚を覚える。

>それは、アイドルを応援するファンも、皇室の安寧を願う国民も、みんなが考えているのは、「当人が将来的に幸せな人生を送ってもらいたい」という思いだということだ。


 ほっといたれよ!はっきりいって大きなお世話ですよ。彼女からしたら。
 こんなもん、水泳の池江璃花子が白血病であることを告白したら、民間療法を勧めてくるやつと一緒で池江のことなんかどうでもよくて、困っている人(とそいつが思っている)にアドバイスできる自分に酔ってるだけなんだから。僕だって杏果のことをどうこういうけど、自分の言ってることが戯言だってわかってますから!
 このライターは愚かにも杏果にアドバイスすることでエクスタシーを感じてる変態で、説得力を持たせるために

>今回のニュースで、私を含めた多くのファンが、「将来的に苦労をするリスクがあるのではないか」と感じているのではないだろうか。

 個人の意見ではない、「みんな」が「そう感じている」というのだ。みんなって誰だよ?5ちゃんか?



 先に卒業した早見あかりと比較して、「普通の女の子の生活を送りたい」といいながら復帰した杏果を「ブレている」などと批判し始める。こうなったらもはや意見ではない。「批判」だ。
 僕はももクロ時代の杏果のソロコンを見て、ももクロではできないグレードや、アーティスティックなステージに興奮した(別にももクロのライブにグレードやアーティスティックさがないというわけではない)。彼女の目指す方向性が間違いなくソロライブでやっていることにあると。そのステージをももクロの活動と並行しながらやるというのもアリなんだろうけど、杏果のストイックな性格からしてそれは無理だと。だから脱退なんだというのはソロコン見てたらわかるので、それをブレてるといわれてもねえ…


杏果ソロコン

 年齢も不安要素、までいくとただのいちゃもん、難癖のレベル。

>48歳で独身というと、いろいろな過去や事情を抱えていることが多く、それらのものを若い女性が背負っていくのは大変だろうという気持ちになる。事実、結婚後さまざまな問題が露呈し、別れてしまった例も多く聞く。


 ほっといたれよ!!

>今、もし彼女に伝えられることがあるとすれば、「できるだけ冷静になって、自分が何をしたいのか、どうすべきなのかを見つめ直してほしい」ということだ。できれば、世間の反響やファンの声にも耳を傾けてほしい。

>その上で、彼女自身が、誰の影響も受けることなく決断したことなら、納得するだろう。とにかく、自分が少しでも応援し、幸せをもらった相手が、後々後悔するようなことにだけはなってほしくないのである。


「できるだけ冷静になって、自分が何をしたいのか、どうすべきなのかを見つめ直してほしい」だって?これはこのライターをはじめ、杏果批判をしているファンすべてに相通じる言葉だ。多くのファンは杏果の復帰や担当医との交際という事実を受け入れられず、精神崩壊に近い状態になっている。だから彼女や交際相手を批判することで自我を保っているのだろう。杏果本人がどう思っているかなど、考慮していない。ファンなら「彼女が選んだ人なんだから、いい人に違いない」と思えばいいのに。そう思えなくとも、そっと見守ってやるぐらいのことができないのか。
 ファンはできるだけ冷静になって、自分が何をしたいのか、どうするべきなのかを見つめなおしてほしい。



※サイゾーと比べて杏果のことがよくわかっている良い記事。
元ももクロ有安杏果、“洗脳報道”に古参ファンの複雑な心境
https://bizspa.jp/post-123778/

  


Posted by 縛りやトーマス at 23:02Comments(2)ももいろクローバー

2019年02月15日

ウドーフェスを超えた『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』

 2006年に行われたウドー・ミュージック・フェスティバルは今も多くの人の胸に刻まれている。悪い意味で。
 富士スピードウェイと泉大津フェニックスの二か所で開催され、「ウッドストックの興奮がよみがえる」「大人の夏フェス」と、とにかくすごい自信だけは伝わってきた。
 ふたを開ければ人はガラガラで、メインステージに大物が登場しても客はせいぜい数百、小さいステージで5人という有様で、学園祭の学生バンドでも、もう少し客呼べるよ!大阪会場の泉大津ではステージ内を犬を散歩させてる人がうろついてたりしていた。富士でもエリア前方でレジャーシートが敷かれていたり、持ち込み禁止の缶ビールを開けまくり(クーラーボックス持参で)、寝たりしていたという。
 スタッフもまるでやる気がなくて、会場の端っこで椅子に座って寝ている画像は拡散された。物販の奥で偉い人がやけ酒をあおっていた、などという噂も信じられるレベルの悲惨さ。「泉大津の集客は初日2千、二日目3千の計5千」(公式発表1万5千)という結果に終わり、ウドーの夢は砕け散った。以後ウドーミュージックフェスティバルは「大失敗した音楽フェス」の代名詞として伝説となった。しかし世の中は広い。ウドーを超える失敗を記録したフェスもある。




 ネットフリックスで配信中の『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』は2017年にバハマの島で2週間にわたって行われる予定だったファイヤ・フェスティバルのドキュメントだ。
 起業家のビリー・マクファーランドはラッパーのジャ・ルールをあるイベントに呼ぼうとしたが、コネがない。そこでジャとコネがあるという人物に話をすると「500ドルがいる」と言われ払った。別の人が「さらに1000ドル必要」と言われそれも払う。すると「ジャ・ルールが嫌がってる」…そんなやり取りを経てビリーはようやくジャと会うことができた。アーティストと出演交渉するだけで金も時間もかかる。なんて面倒なんだ!そこでビリーとジャは画期的なサービス「FYRE」を共同で立ち上げる。アーティストに出演交渉する際は「FYRE」で検索して予約をして金を払う。それだけでアーティストが出演してくれる!仲介人を通さないので余計なお金も無駄な時間もかからない。画期的なサービスだ。
 それをウェブ・サミットで発表したときはそれほどの話題にもならなかった。FYREのスタッフは宣伝するためにコンサートを開いては?とアイデアを出し、ビリーが「音楽フェスにしよう」と言い出す。そしてファイヤ・フェスティバルの企画がスタートする。

 バハマの島をひとつビリーは買い取り、ここで1万人規模の音楽フェスを開こうとする。そのためには何をすればいいか?まず宣伝だ!

 彼らはネットで宣伝するためのPV撮影を始める。スーパーモデルたちを10人以上も集めて会場となるパブロ・エスコバル・アイランド(ビリーが麻薬王エスコバルが所有してた島なんだ、とデタラメをいった)でモデルたちとビリー、ジャたちがパーティーを開いて酒を飲んでジェットスキーをしたりする動画がつくられた。焚火をし、モデルたちが豚と戯れる。なんで豚が必要なんだ?スタッフらにジャは「俺が豚が必要だといったら、必要なんだ!」コンセプトもターゲットもよくわからないパーティーの映像が延々と撮影され、モデルたちはなんで呼ばれてるのかわかっていない。撮影は進む。PVは完成。ビリーとジャはモデルたちに「ハッシュタグをつけて拡散しろ。とにかくバズるんだ!」
 映像はたちまち話題になりPV数はうなぎのぼり、広告代理店もFYREに投資しはじめ、著名人たちを数百人かき集めて同じ時間帯に一斉に投稿する一大キャンペーンも大成功。ファイヤ・フェスに誰もが注目した。このイベントの成功は約束されたも同然!

 しかし問題はここからだった。PVをつくって宣伝もした。ファイヤ・フェスはそれ以外何も決まってなかった。

 まず島には1万人も入れない。泊まる場所もない。豪華なヴィラに泊まれ、ヨットで専用シェフによる食事も楽しめる。とにかく豪華で、夢のようなフェスというのが売り文句だったが島には客のためのトイレもネット環境もない。テントを立ててそこに泊まるアイデアを出すが、ためしに一日泊まったスタッフは「うるさいし安全じゃないし蚊もたくさんいるし…」指摘されてもビリーは意に介さず「クルーズ船を借りてきて、そこに泊まればいい」絶句するスタッフに笑顔で「本気だよ!」と笑うビリー。一部のまともな人間たちは「このフェス、何かがおかしい!」と思い始めていた。

 現実的に島に入れる客は1000人までだと問題点を指摘したスタッフは翌日クビに。この時点でフェス開催まで45日。あと一か月半しかないのに、ようやく舞台設定のスタッフを雇っている有様。スタッフの多くはフェスもやったことのない素人ばかりだった。
 開催予定の島を完全に購入していないことがわかり、島の持ち主はエスコバルの名前をつけられて「イメージが悪くなる」と彼らを追い出す。近くに別の島を買うが規模は縮小。さらにその島で行われるレガッタの大会の開催時期と重なってホテルはほとんど抑えられている。フェス参加者が泊まる場所、トイレ、食事、ネット環境、ステージ…何もかも一からやり直し。
 毎日、毎時、毎分なにか問題が起き、資金は湯水のように消えていく。資金調達のためにチケットを購入した参加者に「特典を利用したいならさらに追加の料金を振り込んでくれ」高額のチケットを売った後なのに!
 客も何かがおかしいと思い始め、フェスの公式サイトに説明を求める書き込みが溢れたがビリーは都合の悪い意見は削除しろと担当に命令。
 出演予定だったメジャーレイザーのメンバーのひとりはたまたまバハマに休暇で来ていて、現場を観に行って「これ大丈夫?」と不安がるがビリーは自信満々に「大丈夫」というのだった。

 開催まで10日を切り、現場作業員とスタッフらは現実的にフェスの開催は無理だとわかったので、ビリーに警告し続ける。「中止しかない」資金繰りに行き詰まり、フェスを開催しなければ破産に追い込まれることになるビリーは開催を決行する。

 ほぼ素人のスタッフらは次々起こる問題を可能な限り解決する。「止められなくて、あの怪物を生み出してしまったんだ」。フェスのために用意した大量のエビアンを税関に抑えられ「17万5千ドルを現金で払え」と言われたとき、彼らはそれをどう解決したか?スタッフはいう。

「ビリーは…“チームのために犠牲を”と。“毎日してるのにまた?”」
「彼は“我らのゲイリーダーとして自分を売ってもらえないか?”“男のアソコを舐めてくれ”“水のために”と」
「“税関長とヤッたら水のコンテナが返ってくる”」


 正気を疑うビリーの発言だが、このスタッフは覚悟を決めて税関長に会いに行ったというのだ。フェスのために!実際は冗談だったみたいで水は返してもらえたのだが、なんなんだ?これは!


 開催前日の夜に雷雨がやってきて、ここまで悪いことが重なるものかと。完成していない避難用テントが雨水にさらされ、マットレスは水浸し。スタッフらはただ茫然と夜空を眺めつぶやく。「もう逃げられない…」

 開催日。島にやってきた参加者は夢の楽園に来たはずが地獄絵図のような光景に直面するのだった…

 これが初めから客をカモにしようとか、詐欺目的だったらわかるんだけど、ビリーは本気でものすごいフェスをやろうとしてたんだよね。情熱以外のすべてが足りなかっただけで、ってそれ一番問題だよ!

  


Posted by 縛りやトーマス at 05:24Comments(0)映画音楽ネットフリックス

2019年02月14日

若い声優オタクは大体厄介

 イキリピンチケばかりでおなじみのラブライバーがまたやらかしましたよ。

「ラブライブ」イベントで声優サイン上に書き込み 過激ファンツイートが炎上

https://www.j-cast.com/2019/02/11350063.html

 聖地沼津で行われたイベントに参加者が寄せ書きできる応援フラッグが用意されており、出演した声優陣もサインをしていたのだが、ひとりのファンが推している声優の諏訪ななかが書いたサインの余白部分に重なるようにメッセージを書き、自分の名前も横に書いた。その画像をツイートにアップしてアピール。要するに推しの声優に認知してもらおうという認知厨だったわけだ。


そのサイン

 当然のごとく炎上して本人はツイ消し逃亡。噂では諏訪さん本人も人づてでこの事を聞き、大変ご立腹だったという。サイン書いた人よかったね。認知してもらえたよ。
 目立って認知されれば何やってもかまわない、という人間なので、きっと今頃は反省もせず自慢げに吹聴することでしょう。
 この件で「どうしてラブライバー(特にAqoursファン)は厄介ばかりなの?」という意見を見かけたが、そりゃあ支持層が若い連中だからでしょ!
 若い連中には「オタク=知識のインプット→アウトプット」という考えがないので単に騒げればなんでもいい人がほとんどで、まだ歴史の浅いラブライブ!は恰好の材料。さらにAqoursは構成メンバーが20代だから、ファンも10代が多かろう。そりゃあ厄介になるわな。それに比べてμ'sはナンジョルノやみもりん、えみつんにうっちーなど3(ピー)な世代ばかりなのでファンもおとなしいでしょう(それはどうかな)。
 とりあえずみんな頭冷やそうか。

  


Posted by 縛りやトーマス at 03:25Comments(0)声優アニメオタク

2019年02月12日

80年代の失われた風景が今『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>



 シティーハンターが連載していた80年代は僕がジャンプ読者だったど真ん中の時代であり、僕にのってのジャンプは『キャプテン翼』『キン肉マン』『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』『シティーハンター』であった(あとは巻来功士と黒岩よしひろ)。90年に公開された二本立て以来となる29年ぶりのシティーハンター映画。テレビスペシャルも99年以来なので新作アニメ自体が20年ぶり。「なぜ今シティーハンター?」などと野暮なことは聞かなくてもよろしい。いいものはいつ観てもいいのだ。

 しかし20ン年ぶりといわれると気になるところはふたつある。シティーハンターといえば新宿駅の掲示板に「XYZ」と書き込むとそれがシティーハンターへの依頼になるわけだが、とっくの昔の掲示板など無くなっている。今回は駅の掲示板のあった場所でスマホを起動させるとAR掲示板が出てくるのだ。
 もう一つは主人公、冴羽獠の「もっこり」である。美女の依頼は必ず遂行するが、美女と見れば見境なくナンパする男。もっこりを見せつけたまま美女を駅のホームで追いかけまわし、電車のドアにもっこりが挟まったまま山手線を一周させられる話は傑作なんだけど、現在の表現ではギリギリアウトといったところかもしれない。厳しい時代になったもんだ。

 しかし復活した今回の映画でも、もっこりネタは健在だった。美女のお尻を触ろうとし、シャワーを覗こうとし、更衣室を覗こうとピンク色に染めたドローン、その名もエローンを飛ばす。もっこり魂は2010年代にバージョンアップされていた。これがなきゃシティーハンターじゃない!!


 さらにシティーハンターのテレビアニメで思いだすのは作品を盛り上げた楽曲群だ。当時テレビアニメを見ていた視聴者の度肝を抜いたのは劇中のラストからフェードインする形でシンセサイザーのイントロが流れ、ドラムが鳴り響いて最高潮のリズムに達したときにEDに突入するTM NETWORKの『Get Wild』!劇中フェードインして流れだすEDテーマなんて前代未聞だった。この曲とともにTMはヒットチャートを駆け抜けた。1~3とシリーズを重ねる中で小比類巻かほる、大沢誉志幸、PSY・S、岡村靖幸、FENCE OF DEFENSEといったEPICソニー(CBSソニー)系アーティストの主題歌、挿入歌も話題になった。80年代はソニー系アーティストの時代だった。
 今回の映画では『Get Wild』が当時のバージョンで使用される、と宣伝されていたが、蓋を開ければアニメ1~3までの主題歌はほぼ全部使われていた。定番挿入歌の『MR.PRIVATE EYE』『FOOTSTEPS』まで使う大盤振る舞い。当時の視聴者は懐かしさが胸にこみ上げてくるだろう。

 声優陣もレギュラー陣は全員当時のメンバーが再結集。72歳の神谷明さんをはじめ、60代に達したベテラン勢が欠けずに全員集合したのは凄いこと。教授とかずえさんという映画でちょっとしか出ないキャラクターまで当時の声優だった茶風林さんと山本百合子さんをキャストしていたのでこのこだわりたるや!当時はモブの声が多かった山寺宏一さんが重要なキャラクターの声を当てたりしているのもグッとしますね。


 このように当時のファンが懐かしさに浸るための復活なので、シティーハンターファン、あなたのための映画ですよ!2のED、『STILL LOVE HER (失われた風景)』に合わせて現在の新宿の風景が流れてゆく場面…本作最高のエモーショナルなシーン。失われた風景は今も僕らの胸の中で生きている。



  


Posted by 縛りやトーマス at 00:12Comments(0)映画アニメ漫画音楽