2019年12月04日

本当は怖い児童文学『小さい魔女とワルプルギスの夜』



 ドイツの児童文学作家オトフリート・プロイスラ―のヒット作『小さい魔女』の実写映画化。プロイスラーは宮崎駿監督にも影響を与えたとされる作家で、てっきり『魔女の宅急便』かな?と思ったら『千と千尋の神隠し』の方だという。

 森の小屋に相棒のカラス、アブラクサスと暮らす「小さい魔女」(という名前。小さいといっても127歳だけど)は年に一度、「大きい魔女」たちが集まるブロッケン山の祭り、“ワルプルギスの夜”に参加したいのだが、小さい魔女には招待状が送られてこない。どうしても行きたいのでこっそり忍び込むのだが、意地悪な大きい魔女のルンプンベルおばさんに見つかってしまい、一番偉い魔女の前に引き出される。えらい魔女は来年のワルプルギスの夜までに魔法辞典に載っている魔法、7892個の魔法を覚え、「良い魔女」になること、という試練を与える。小さい魔女はその日から魔法辞典の魔法を覚え、「良い魔女」になるための訓練を始める。

 なにしろ「ワルプルギスの夜」なんて言われると、僕みたいなオタクは瞬時にまどマギで世界を崩壊させる最強の魔女<ワルプルギスの夜>を思い出し、どんなに恐ろしい祭りなんだ!と観る前から心底震え上がったのだが、実際のワルプルギスの夜は、昔はともかく今ではせいぜい渋谷のハロウィン程度の騒ぎなので、この映画でもワルプルギスの夜は魔法使いのおばさんたちがふざけて騒いで踊っちゃうレベルの大きい魔女カーニバルなのだった。

 とはいえ児童文学を舐めてはいけない。グリム童話が本当は恐ろしいのと同様、凡百の安物ドラマより遥かに恐ろしい内容が含まれているときがあるのだから。この作品にも小さい魔女は「良い魔女」になるため、人間の子供たちを助けてあげたり、暴力を奮うお父さんと息子が仲直りできるようにしてあげたりするのだが、一年後の試験ではなんと良い魔女になろうとして行った行動のすべてがマイナス扱いになってしまう。えらい魔女曰く、

「人間を怖がらせたり、人間に悪いことをするのが良い魔女なんだよ!」

 なんというパラドックス!だから小さい魔女は子供たちに悪いことをしないといけなくなるのだ!ひどい!鬼や!

 どうしてもワルプルギスの夜に参加したい小さい魔女は、えらい魔女の命令に従ってしまう。カラスのアブラクサスは「それは良いことじゃない!」と小さい魔女を諫めようとするも、普段から彼女に「良い魔女にならなくてはいけない」としつこく言っていたので、小さい魔女はアブラクサスの言うとおりにしたのにこうなった、とカラスを責めてしまい、二人は仲違いしてしまう。このカラスが窮地に陥った小さい魔女を助けにやってくる場面が良くできていて感動のクライマックスになっている。

 強烈に残酷なオチがついて、強引にハッピーエンドにしているのもすさまじい。これってハッピーエンドなの??児童文学は恐ろしい!吹き替え版では小さい魔女役が坂本真綾、アブラクサスが山寺宏一という芸達者の二人の掛け合いも楽しめる。やっぱりオタクの人は観に行った方がよい。


  


Posted by 縛りやトーマス at 17:21Comments(0)映画