2020年01月12日

てめえら、揚げてやる!『エクストリーム・ジョブ』



 実績ゼロで解散の危機を迎えた麻薬捜査班の男女5名は最後の大逆転に賭けてドラッグディーラーの取引現場を押さえようとアジトの前にあるフライドチキン屋に張り込む。が、その店が閉店の危機に!

「この店、買い取ります!」

 昼はチキン屋、夜は張り込み捜査の2重生活を強いられた上にそのチキン屋がまさかの大ヒット!営業が忙しすぎて尾行に失敗するという本末転倒に陥る捜査班。彼らはチキンを揚げる前に犯人を挙げることはできるのか?

 という韓国映画『エクストリーム・ジョブ』は2019年の韓国映画史上No.1の大ヒットのみならず歴代トップの興行収入を記録した。韓国の歴代興行収入、観客動員に並ぶのは『国際市場で逢いましょう』のような歴史ドラマか、『神と共に』のようなアクションなので『エクストリーム・ジョブ』のようなコメディがランク入りするのは珍しい。肩肘張らずに観られる作品というのも大きかったろうが、テーマがいい。韓国ではフライドチキンは60年代半ばの「漢江の奇跡」と呼ばれる日韓基本条約で得た無償提供資金によって為しえた経済復興に誕生したファーストフード商売で、国民食のひとつになるほどの人気商売だ。そこに警察が捜査のための副業として店を開いているというアイデアは笑えてしまう。

 実績ゼロで上司から解散を宣告される麻薬捜査班。そのリーダーであるコ班長(リュ・スンリョン)は傷だらけで現場から帰ってくる通称「ゾンビ班長」と呼ばれるベテランだが後輩の方が先に出世してしまう万年班長どまり。ラストチャンスに賭けて大物ドラッグディーラー、イ・ムベを捕らえようと彼のアジト前で24時間の張り込み態勢に入る。目と鼻の先にあるさびれたフライドチキン店に居座るが、店主から人気がないので店を人に売るといわれ、コ班長は退職金を前借して店を買い取ることに。買った以上営業しないといけないということで捜査班のトラブルメーカー、マ刑事(チン・ソンギュ)を厨房担当に。なんと彼は“絶対味覚”を持つ男だった!「俺にこんな才能があったなんて!」
 捜査班一の切れ者で紅一点のチャン刑事(イ・ハニ)をホールマネージャーに、情熱だけは人一倍の若手刑事ジェフン(コンミョン)を厨房補佐、「俺は尾行専門だから」という寡黙なヨンホ刑事(イ・ドンフィ)は店の外でアジトを監視する役目にしてフライドチキン屋を営業しつつアジトの監視をする24時間体制に突入。

 ところがこのフライドチキン屋がまさかの大繁盛。マ刑事の「カルビ漬けチキン」は「今までにない味だ」と絶賛されて連日行列ができてしまうほどのヒットに。コ班長らは店を切り盛りするのに大忙しで、外でアジトを見張っているヨンホ刑事から「アジトに動きが!尾行するので応援をお願いします」という無線にも出られない。ひとりで飛び出したヨンホ刑事が二手に分かれた車の尾行に失敗してトボトボ帰ってくると「この忙しいのに手伝いもしないで何をしていたんだ」と店長・・・いや班長に怒られる始末。

「分かれた車のどちらを追うか、究極の選択を迫られた俺の気持ちがわかりますか?」

 と愚痴るヨンホだが

「俺はずっと厨房で鶏と格闘していた俺の気持ちがわかるのか!」

 とマ刑事が吐き捨てれば

「私はホールマネージャーとして一日で78組の客をさばいたわ」

 とチャン刑事、

「毎日玉ねぎ80キロ、ニンニク500個の皮を剥く僕の大変さがわかりますか?」

 さらにジェフンからも反論されてしまう。俺たちは犯人を挙げるのが目的で、フライドチキンを揚げるのが仕事じゃない!しかし一日の売り上げ234万ウォンをたたき出すこのサイドビジネスは警察をやっているより儲かる。いっそチキン屋に鞍替えしようか・・・と弱気になるコ班長。だがその時アジトからフライドチキンの出前注文が。ついにこの瞬間が訪れた。捜査班は出前を装って突入する準備を整える。

 これは意外な才能があることを見出した者たちが副業に邁進しつつも、最後には正義の警察官としてあふれんばかりの才能の持ち主であったことに気づかされる(その才能を発揮できる機会がなかっただけなのだ)クライマックスの大アクションも最高で、先が見えない人生であってもその場その場で真面目に取り組む姿勢が胸を打つという感動的な物語だ。コメディというメインディッシュの中にこっそりとスパイスのように忍ばせた、最高に美味い作品。

  


Posted by 縛りやトーマス at 13:50Comments(0)映画食べ物