2020年02月02日

永遠に閉じ込められるミステリー『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』



 ダン・ブラウンのベストセラー、『インフェルノ』(『ダ・ヴィンチ・コード』のシリーズで映画にもなった)の原作小説が世界同時発売されたとき、出版社は海賊版や内容の流出を恐れて各国の翻訳者を一同に集め、翻訳作業が終わるまで外に出さない、軟禁状態に置いたという。
 そんな実話にインスピレーションを受けて作られたのが『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』だ。


 正体不明の作家、オスカル・ブラックの人気小説、『デダリュス』シリーズの最新作の独占出版権を獲得した出版社社長のアングストローム(ランベール・ウィルソン)はこの話題作を9か国で同事発売する計画を発表。そのために9人の翻訳家を郊外の洋館へ集め、翻訳が終わるまでの二か月間、閉じ込めてしまう。海賊版の流出を恐れての措置だ。
 9人の翻訳家には一日20ページ分が渡され、全員同じ一室でピストルを持った警備員に見張られながらの翻訳作業に戸惑いながらも彼らは次第に打ち解けあい、クリスマスにはアングストロームの助手ローズマリー(サラ・ジドロー)らを交えてパーティに酔いしれるほどに。その夜、アングストロームの携帯に謎の相手からメッセージが。「『デダリュス』の冒頭10ページをネットに公開した。残りのページを流出されたくなければ24時間以内に500万ユーロ(約6億円)を振り込め」と。
 確かに『デダリュス』の冒頭は流出していた。原稿を所有しているのは作者のブラックとアングストロームしかいない。作者が流出させるわけもない。となれば犯人はこの9人の中の誰か。個人所有のスマホやノートパソコンを取り上げられ、作業中は常に見張られている彼らは潔白を主張。だがアングストロームは9人を下着だけの格好にさせメールのタイムリミット24時間が経過するのを待つ。これで流出はできないはず。しかし24時間経過後に次の100ページも流出してしまう。犯人は一体誰なのか。

 レジス・ロワンサル監督(『タイピスト!』監督)によるクリスティ風のミステリーは正攻法の演出で物語を盛り上げる。画面の中には観客が必ず真犯人に到達できるヒントが散りばめられており、「そんなの、絶対予想できないだろ!」と声を荒げたくなる無理な展開やずるい謎はない。が、観客を誤誘導する仕掛けが巧みに配置されていて、この映画のキャッチコピーでもある

「あなたは、この結末を“誤訳”する」

 そのままにラストシーンではうっかり騙されてしまうだろう。
 最後には真犯人と謎がすべて明らかにされるが、ひょっとしたらそれは真相ではないのかも・・・というオチになっていて、2重3重に観客は頭をひねることになる。

 それにしても流出を恐れて翻訳家を軟禁状態に置いてしまうって、法律的に大丈夫なのかなと思う(『インフェルノ』のケースでは映画ほどにきつい拘束ではなかったようですが)。この映画の脚本は流出しなかったのかな?それを恐れ流出を防ぐために脚本家を閉じ込めて・・・って映画が完成するまでじゃないか!それじゃ役者もスタッフも閉じ込めないと!

  


Posted by 縛りやトーマス at 23:42Comments(0)映画世界のとんでもニュース