2012年12月18日

闇に隠れといて

『映画 妖怪人間ベム』を観た。

闇に隠れといて

日テレが興収30億円を突破するヒットとなった『映画 怪物くん』の二匹目のどじょうを狙った企画。怪物の次は妖怪だ!ということか?
しかし徹頭徹尾子供向けのコメディである怪物くんと違って妖怪人間ベムはシリアスすぎる。子供には受けないだろう。そこで子供と同じ視点に立てる幼児妖怪のベロを人気子役の鈴木福くんにして、事故で足を怪我した少女との淡い初恋エピソードを盛り込んでいる。
なんで怪我しているのかというと、実は少女の父親(筒井道隆)は巨大製薬会社の開発研究者だったが、開発途中の新薬に副作用があることを指摘し、開発中止を進言するのだが

「この薬で大勢の人が助かるんだ!副作用ぐらいなんだ!少しの犠牲はやむを得ない!」

と開発を強行、告発しようとした筒井道隆親子を事故に見せかけて消そうとするのだ!
虫の息となった嫁さん(観月ありさ)に

「これは、昔妖怪人間にもらったふしぎなやくそうだ!」
(説明すると筒井は子供の頃にベムたちに助けてもらって、その時ベムの返り血を浴びた枯れ草が艶々になるのを見てこっそり持ち歩いていたのだ。何十年も・・・)

とポケットに入れてた葉っぱを煎じて飲ますと観月ありさが蘇った!しかしふしぎなやくそうの副作用で観月ありさは植物と同一した人間妖怪になるのだった!
自分をこんな姿にした製薬会社の社員たちを手にかけていく観月ありさ。嫁さんの仕業と分かっていながらもどうすることも出来ない筒井道隆。そのころ少女は運動会の徒競走に出場するためベロと必死の特訓の真っ最中(怪我してギプスはめてるのに)。観月ありさに人間の心を取り戻して欲しいベム(亀梨和也)は運動会で娘さんの応援をするようにお願い。「こんな姿じゃ人前に出られないわ」(そりゃそうだ)と拒否る観月ありさだが、ベムの説得に折れて全身に布を巻いて現れる(それだけでいいのか・・・)。
見事最下位で完走する娘を見届けて人間の心を取り戻したかに見える観月ありさらの前に製薬会社の社長が現れて親子を拉致、「会社のためにおまえらには犠牲になってもらうぜ!」と証拠隠滅を目論む社長。
実はふしぎなやくそうの力でベムたちは妖怪人間の力を失う代わりに人間になれるのだが、「妖怪人間のまま人間たちに蔑まれるより、人間になりたい」と願うベロを説得して「人間のためにこの力を使う」ことを決意したベムたちは社長の悪事を止めようと駆けつける。

姿形が違うだけで妖怪人間を差別し、金のために平気で無実の人を殺そうとするような人間なんか守る価値があるのか?答えの出ない問いに延々と悩まされる妖怪人間だが、だったら同情の余地もないような悪党を出してベムたちがそいつをボッコボコにするような展開にすればいいのに、この製薬会社の社長の悪党ぶりが中途半端でねえ。いちいち少しの犠牲で多くの人間が救えるんだ、とかせこい言い訳するのがもうダメ。「弱いヤツは死ね!金持ちだけが生き残る資格があるんだ!」ぐらいのこと言わせて最後に逃げようとしたところを瓦礫が落ちてきてペシャンコ、みたいな因果応報的オチにしないと。悪党にも理由がある、みたいなフォローいらんし。
大体この開発途中の新薬がどんな効果があるのか、どんな副作用があって使わない方がいいのか、その説明は一切ない。社長が筒井一家を消そうとしたのに始末できたのが嫁さんだけで二人が生きてるのに放置している理由もわからんし、副作用とか適当なキーワードを盛りこんで、「愛ゆえに犠牲になる、犠牲が産まれる」という重要なテーマを軽く描いて観客にあまっちょろい感動を与えようというストーリーは底が浅過ぎやしないか。

さらにクライマックスは妖怪人間が警官隊に取り囲まれて絶体絶命!の場面。予告編でも流れてるこれ、どう考えても蜂の巣にされてしまうラストに思えるんだが、なんとスローモーションで突っ込んでいったらそれを飛び越えて逃げていくのだった。逃げていくのがクライマックス(笑)そんな思わせぶりにエモーショナルに描く必要あるの?最後は大立ち回じゃなきゃ盛り上がらんだろうに。

こうした底抜け映画のプレスシートにベムを演じる亀梨くんの
「おは妖怪!」
というフレーズが載っていて脱力するにも程がある。
エンドロールには日テレ系列のローカル全局の関係者名がズラリと並び、この人たちが何を思って出資した(させられた)のか、想像すると涙が溢れてくる。暗いさだめを吹きとばせ!この人たちのためにも劇場に駆けつけた方がいいと思うよ!



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Posted by 縛りやトーマス at 00:55│Comments(1)映画
この記事へのコメント
ホームドラマやりたいのか『フランケンシュタイン』的悲劇やりたいのかわからない映画の凄いレビューありがとうございます。

それにしてもあのシーンが逃げるために用意してただなんて脚本家の西田悦史さん実写になるととことん駄目な方向に行きますね。

西田悦史はおとなしくアニメの脚本書いてろとしか言いようが無いですね
Posted by ダーク・ディグラー at 2012年12月19日 08:43
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