2013年09月08日

日本のオタクよ立ち上がれ『パシフィック・リム』

ギレルモ・デル・トロの怪獣映画(!)『パシフィック・リム』を観る。

日本のオタクよ立ち上がれ『パシフィック・リム』

この映画ほど公開前からドキドキワクワクさせてくれたものはない。
漏れ伝わる「日本の怪獣映画へのオマージュ」「日本のアニメ、特撮に多大な影響を受けている」「本多猪四郎、円谷英二、富野由悠季、押井守といった人たちへのリスペクトだ」というデル・トロ監督の発言、巨大生物をこれまた巨大なロボットが迎え撃つという動画から否が応にも高まる期待。俺は2013年という年をこの映画を観るためだけに生きてきた!これを見ずに死ねるか!

太平洋の海溝から現れた超高層ビルなみのサイズを誇る巨大なKAIJU(ちゃんとセリフでカイジュウ、っていう)が三つの都市を破壊した。軍隊が決死の活動の元しりぞけることに成功したものの、多くの人命が失われ軍隊も多大な被害を被った。この事態に世界各国はKAIJU退治を目的とした組織PPDC(環太平洋防衛軍)を設立、人類の叡智を結集した人型巨大兵器“イェーガー”を開発。人間が直接乗り込み操縦するこのロボットはKAIJUたちを次々撃破。人類の勝利は目前と思われたがかつてない巨大サイズのKAIJU“カテゴリー4”の登場により戦況は一変。アンカレッジで初めての敗北を喫したイェーガーは以後次々とKAIJUに破壊され世界各国の首脳陣はついにイェーガー計画を諦め、巨大な壁を築いてKAIJUの侵入を防ごうとする。だが「KAIJUの全滅以外に人類の生き残る道はありえない」とするPPDCの司令官ペントコストと隊員たちは残された4体のイェーガーで最後の反撃を試みる。
壁の建造に携わっていたローリーの前にペントコストが現れ作戦に参加するよう促す。ローリーはアンカレッジでKAIJUに初めて敗北を喫したイェーガー『ジプシー・デンジャー』の元パイロットだった。敗北でイェーガーに同乗していた兄ヤンシーを失ったショックが未だ癒えないローリーは作戦を拒否するが
「壁の内側で死にたいのか。お前に死に場所を与えてやる!」
というペントコストの説得に折れPPDC基地へ。そこで出会ったのは日本人研究者の森マコであった。


こういう映画ではまず平穏な日常生活が怪獣の出現により破壊され、蹂躙されるという様を最初の30分ぐらいにかけて描かれるはずだが、デル・トロはそんなヌルイ演出などしない。始まって2分で怪獣がサンフランシスコを破壊する!そしてイェーガーの誕生、連戦連勝、アンカレッジの敗北までがプロローグとして描かれる。序盤の無駄のなさに早速鷲掴み。
この冒頭からでも伝わってくるのは『パシフィック・リム』が従来のハリウッド映画とは「ちょっと違う」ということだ。地球外生命体の侵略に立ち向かう人類という設定はありがちだけど、そこには『インデペンデンス・デイ』のようなクライマックスの独立宣言に繋がるといった対戦争をイベント的に捉える脳天気さがある。『パシフィック・リム』でも冒頭にKAIJU相手に戦うイェーガーのパイロットたちが英雄的扱いを受け、「KAIJUに立ち向かえ」という言葉が戦意高揚のキーワードと化し、KAIJUの玩具で子供たちが遊ぶというシーンにそれらが揶揄されている。しかしプロローグ後の世界で描かれるのは絶望なのだ。イェーガー計画が打ち切られる中最後の望みを託した壁は作るなり破壊されてしまう!その壁を作る作業に従事しているのがかつてイェーガーで戦って敗北した主人公というこの圧倒的な絶望感!脳天気なハリウッド映画の文法からは絶対に出てこない描写だ。

こんな文法はアメリカではなく日本からもたらされた。『ゴジラ』(怪獣が海から現れる)『マジンガーZ』(パイロットが直接乗り込む)といった作品から。
『ゴジラ』『マジンガーZ』は当時の子供たちが熱狂し、後にオタク中年たちが子供時代を思い出して熱狂することになった作品群でそれらに影響を受けたとデル・トロ監督が公言する『パシフィック・リム』が子供も大人も熱狂できる映画になっているのは当然といえよう。
日本でもかつて子供を沸かせた漫画アニメ作品をリメイクする動きが盛んだが、そういった作品のほとんどが偉大な先達の仕事に尊敬の念がまったくなく、人気を利用しただけの便乗作品でおまけに独自の概念を取り入れて失敗するのに比べデル・トロ監督はオタクとして先達の魂に畏敬を忘れず、一般層に受けるように媚びようなどとは一切考えなかったようだ。ゴジラをマジンガーZを現代の技術で蘇らせようとしたのだから。

そして本作に強く影響を与えたのが永井豪であり『真ゲッターロボ 世界最後の日』だ。

日本のオタクよ立ち上がれ『パシフィック・リム』

『パシフィック・リム』の設定、ストーリー展開などの一部は『真ゲッターロボ 世界最後の日』の影響と思われる。
作品全体を覆う凄まじい絶望感の影響も然ることながら、ペントコストと神隼人がかぶって見えたり(かつて地球の危機を救うためにロボットに乗り、その後防衛軍の司令官になる)、KAIJU研究に勤しむ研究者のガイズラーとゴットリーブがほとんどコーウェンとスティンガーだったり、途中で搭乗機を換えたり、ラストのアレはアレじゃないですかとか・・・
別にパクリだ、とか言いたいのではなく影響を受けたことをまったく隠そうとしないところが男らしいじゃないか。
影響を受けたことを堂々と表明し、膨大な設定と世界観をわずかなセリフと演出で描写(おかげで各ロボットの活躍があまり描かれないのが残念)、そしてロボットとKAIJUの激突は凄まじいの一言で「目の前で物凄いことが起きているぞ!」と実感できる映像体験。生きててよかった!!
あと凄まじいといえば菊地凛子さんの棒読み日本語も凄まじかったですね!あんた、日本人なのになぜ棒読み?

オタクの仕事はやっぱり信用できると唸らされた一本。
海外のオタクにこんなスゴイものを作られて日本のオタクなクリエイターたちは悔しくないのか!?もっと頑張ってくれ!



同じカテゴリー(映画)の記事画像
まったく笑えないコメディ映画『ジョーカー』
ツカマルシアター
スミーニャ軍曹の鬼解説T-34
犬が修斗する映画『ジョン・ウィック:パラベラム』
一行さんにツンツンされたい未来『HELLO WORLD』
秋だ一番!ジェイソン・ステイサム祭り!
同じカテゴリー(映画)の記事
 まったく笑えないコメディ映画『ジョーカー』 (2019-10-21 10:18)
 ツカマルシアター (2019-10-17 21:15)
 スミーニャ軍曹の鬼解説T-34 (2019-10-12 05:23)
 犬が修斗する映画『ジョン・ウィック:パラベラム』 (2019-10-10 13:56)
 一行さんにツンツンされたい未来『HELLO WORLD』 (2019-10-06 03:31)
 秋だ一番!ジェイソン・ステイサム祭り! (2019-10-03 10:50)

Posted by 縛りやトーマス at 05:24│Comments(0)映画
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。