2013年11月08日

壊す前にきちんと作ってください『R100』

松本人志監督作『R100』を観る。

壊す前にきちんと作ってください『R100』

この映画の公開数日前にニコニコ動画の企画で松本人志と岡田斗司夫が対談する、みたいな番組があったんだけど、直前で話がなくなり岡田さんのゲスト出演は取りやめに。Twitterで「映画のコメントを求められるなんて聞いてないよ」と岡田斗司夫がつぶやいてた。嫌な予感がした(その後映画を見た岡田さんは「面白い」と言ってたけど・・・)。

トレンチコート姿の女、『デビルマン』に出てた冨永愛がトイレから喫茶店の席に戻ると待っていた大森南朋がベートーベンについて薀蓄を語り出す。聞いているこっちが耐えられないほどうっとうしい語りが続く。すると冨永愛が立ち上がっていきなり蹴りを喰らわせる。ここでタイトル。
外へ出ると冨永愛がいきなり大森を階段から突き落とす。理不尽な暴力を受けるたび大森南朋の顔はほわ~んと歪んで得も言われぬエクスタシーを感じるのであった。
大森は普通のサラリーマンだったが事故に遭い、意識不明のまま入院している妻・YOUの看病に疲れ果て、息子の世話は義理の父親の前田吟に押し付けていた。大森はストレス解消のためにSMにのめり込み、謎のSMクラブ『ボンデージ』に入会していた。
その店ではプレイルームはなく、日常生活のあらゆる場面でプレイが楽しめるという。寿司屋に入ればやってきたSM嬢のサトエリが注文されたネタを手でたたき潰して「食え!」と強要し、路上ではいきなりヒールで蹴り飛ばしてくる。最初は楽しんでいたものの、行為は次第にエスカレートし、しまいには仕事場にまでやってくるSM嬢にウンザリした大森は解約を求めるがクラブの支配人、松尾スズキは「一度入会したら途中退会はできないと申し上げました」と突っぱねる。
困り果てた大森は警察に相談に行く。窓口で話を聞いてくれるのは警官の松本人志なんだけど・・・

「あんたねえ、その変態倶楽部?に自分が望んで入ったんでしょ?それでやりすぎやからどうにかしてくれ言われてもねえ・・・僕はそういうのわからんけどね、プロレスラーが技かけて相手が痛いから訴える、いうようなもんでしょ?そんなんを警察に相談されてもねえ・・・」

と『伝説の教師』で道交法違反を咎められた時の反論みたいなやりとりがあって、ここだけは妙に納得した。

一体なんなんだこれは・・・
と思ってると再びタイトルが出てきて男たちがどこかの廊下でソファに腰掛けてしかめっ面で話し合う。
「で?この映画どうすんの?」
「このSMクラブって一体なんなの?」
「いやあ、監督曰くそのシーンはですね・・・」
なんと、この映画は100歳の映画監督が生誕100歳を記念して作られた映画なのだという説明が・・・今までの内容はすべて劇中劇で、男達は映画会社の重役たちと監督のマネージャーらなのだ。
この時点で嫌な予感が的中したような・・・
重役らは続きを見ましょうと渋々試写室に戻る。

自宅にまで現れたSM嬢らは大森とその息子を拘束し、プレイを続行。
しかしプレイの最中にSM嬢の「唾液の女王」こと渡辺直美が死んでしまい、松尾スズキから電話が。
「どうしてくれるんだ!とんでもないことをしてくれたな・・・落とし前はつけてもらうぜ!」
とクラブから大量の女王様が送り込まれることに。息子を連れて車で逃亡する大森。その間息子役の子供が目隠しにボールギャグを噛まされたままでヨダレをダラダラ垂らしているのでその跡をつけられてしまう・・・ってなんのギャグだよ。
女王様に追われて大ピンチの大森の前に現れたのが渡部篤郎!どっから出てきたんだよ渡部篤郎!
「俺は正義の秘密警察でうんぬん」みたいなセリフがあるんだが、『スワロウテイル』でいきなり麻薬取締官みたいな素性が発覚した時以来の衝撃だわ。
「義理のお父さんが心配だ!子供は俺に任せて君はお父さんのところへ行け!」と言われた大森はこの怪しい渡部篤郎に息子を任せて前田吟の家へバイクで向かう。
その頃『ボンデージ』では「本社からCEOがやってくる」との報に松尾スズキがあわてふためいていた・・・
息子を見失った(何のためにお前に息子を預けたんだよ・・・)渡部篤郎はとりあえずYOUのいる病院へ。しかしYOUはすでに「丸呑みの女王」こと片桐はいりに飲み込まれていたのだった・・・

ここで再び映画会社の重役たちの場面になり、頼むからいうなよ、それ!と思っていた一言をズバリ。

「これ・・・何が面白いの?」

言うなよ!わかってるけど言うなよ!お前らが言うなよ!それはこっちのセリフだよ!!

「大体なんだよCEOって。SMクラブのCEOってなんだよ」
「丸呑みの女王ってどういうこと?わけがわからないよ」


この映画がどうしようもなく最低で擁護する意味もない駄作なのはさんざん説明したが、『大日本人』や『しんぼる』の時は少なくとも作品にしようと頑張っていた松本人志は『R100』では作品をつくろうとすることを完全に放棄した上に今までさんざん映画界の中で行われてきた劇中劇などの描写を

「こういうことをやってる俺ってええセンスしてるやろ?」
「自らおもんないってセルフツッコミできる俺って頭ええやろ?」

とドヤ顔しているわけだが、こんなダサいことってないよ!
今時自分のやってることに自分から突っ込むという、セルフツッコミなんてやってるのは自意識に目覚めたオタクが脱オタクを計って周囲のオタクめいたものをバカにする時ぐらいにしかやらないよ。
どうせ客からつまんないだのわけがわからんとか言われるのがわかってるのでこっちから先に言ってやれ、っていうのもあるだろう。他人にツッコミをさせないための自分からのツッコミ!
映画の主役である大森南朋は他人から突っ込まれて喜んでるのに、監督である松本人志は他人からのツッコミをよしとせず、自分からツッコミ入れてるって・・・

『大日本人』の時から「映画を壊す」と言い続けてる松本だけど、『R100』を観てもわかるとおりきちんと作ることすら出来てないんだけど。きちんと出来てないものを壊すって言われてもねえ。
筋の通ってない話、いきあたりばったりのギャグ、ダサ過ぎるセルフツッコミ。映画をダメにする要素がこれでもかと詰まってる上に監督自身の「映画を撮っているつもりもない」「ムチャクチャにする」「いつやめてもいい」「卑怯な映画やと思ってる」と自意識過剰なドヤ顔コメントをたっぷりまぶせていっちょうできあがり、である。
映画監督・松本人志に必要なのはセルフツッコミではなく、他人からのツッコミであろう。

「監督、これ本気で面白いと思ってます?」
「壊すとか言ってますけど、ちゃんと作り上げてから言ってください」

という人間を傍に置いたほうがいい。メタを扱う前に他人から突っ込まれてメッタメタにされた方がいい・・・ってそれ言うなよ!



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Posted by 縛りやトーマス at 16:12│Comments(1)映画
この記事へのコメント
全然関係ないんですけど、友近がバラした小雪の盗み癖ってサイキック的なネタでしたね。
答えの言えないクイズみたいな。
Posted by Hirokichy at 2013年11月08日 18:22
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