2014年08月21日

現実の女には愛がない!『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』

現実の女には愛がない!『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』


 1830年イタリア、オペラの幕間に異常なスピードでヴァイオリンをかき鳴らす男ニコロ・パガニーニ(デイヴィット・ギャレット)。観客は誰も彼の演奏を聞かず、無視するか野次を飛ばすか。
 「こんな連中に俺の才能は理解できない!」
 そう吠えるも手持ちの金は付き、生活は行き詰っていた。そんなパガニーニの前にウルバーニ(ジャレッド・ハリス)と名乗る男が現れる。
 「俺と契約すれば、お前を世紀のヴァイオリニストにしてやろう。代償は、あの世で会えたら恩を返してくれ」
 パガニーニはこの怪しげな男と悪魔の契約を結ぶことにする。

 『悪魔に魂を売り渡した』『愛人を殺して監獄に放りこまれた』『あまりの激しい演奏に弦が切れ、一本だけになっても弾き続けた』
 ウルバーニはそんなセンセーショナルな伝説をパガニーニの売り文句に使い、好奇心を掻き立てられた大衆はパガニーニの公演に押し寄せた。「一ヶ月以内にミラノで公演する」という約束も果たされ、パガニーニは本当に世紀のヴァイオリニストになった。
 だが成功で得た名声、金銭とは裏腹にパガニーニの私生活は荒れた。酒と女、ギャンブルに溺れいくら稼いでも懐は満たされず公演前日に自分のヴァイオリンを賭けて、負けてしまう。確実に儲かるロンドン公演は「愛する息子と離れたくない」と言い出すパガニーニ。
 ヨーロッパ制覇の野望を持つウルバーニはパガニーニを酒で酔いつぶれさせ無理矢理ロンドン行きの船に乗せる。ロンドン公演を企画した指揮者のジョン・ワトソン(クリスチャン・マッケイ)はパガニーニが来ることを信じて大金を振り込み続け、家財を差し押さえられており、ようやくやってきたパガニーニの姿に興奮を隠せない。
 だがロンドンでは道徳向上女性同盟を名乗る女性たちの団体が女たらしで知られるパガニーニを敵視して排斥運動を繰り広げる。騒ぎのためホテルから逃げ出した一行。ワトソンは仕方なく自宅にパガニーニらを招き入れ、一人娘のシャーロット(アンドレア・デック)をメイドを偽ってパガニーニの世話をさせる。パガニーニは美しいシャーロットにすぐ言い寄るが、高名な指揮者の娘で、自身も歌手として成功を夢見るシャーロットは「うぬぼれ屋」とパガニーニをはねつける。

 傲慢で練習もせず、チケットが高額すぎて売れなくても何処吹く風のパガニーニに我慢の限界を感じるシャーロット。ある日歌の練習をしていると、その歌声に心を打たれたパガニーニは自作のアリアを贈り、互いの才能に感服した二人は心を通わせあうのだった。だが自分の野望のためにシャーロットが邪魔だと考えたウルバーニは二人の仲を引き裂こうとする。


 1800年代に活躍したヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニの半生を綴った伝記映画である本作は一部に創作を交えたフィクションだ。映画内に登場するウルバーニは実在した従者フランチェスコ・ウルバーニと、ロンドン公演に関わった興行師ピエール・ラポールを混ぜあわせた人物で、彼はパガニーニに悪魔の契約を迫り、代わりにこの世では味わえないほどの享楽を与えるが、女性との愛に溺れて破滅する…
 これはゲーテの『ファウスト』だ。『ファウスト』は悪魔メフィストフェレスと悪魔の契約をしたファウストがこの世のあらゆる享楽を得るが、グレートヒェンとの恋に溺れ、破滅する。まったく同じだよ!
 『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』はパガニーニの半生を『ファウスト』的解釈にして再構成した物語だ(ゲーテは実際にパガニーニに会ったこともあるという)。
 ちなみにゲーテが『ファウスト』を書いたのは現実世界の女性に失望させられ続け(何度も婚約、結婚寸前までいって破談になるのだが、きっと直前で女の残酷さを見せられたに違いない)、「現実の女には愛がない!」と絶望の淵で生み出した作品で、『パガニーニ~』でも出てくる女ってパガニーニの外面や名声や金だけが目的の不埒な女やフェミニスト、スクープだけが目的の女性記者とか、イヤーな女ばっかなの!シャーロットぐらいしかまともな、真実の愛を知る女がいないんだ!繰り返すが、現実の女には愛がない!!
 パガニーニの物語にファウスト的解釈を加えたバーナード・ローズ、さすがとしか。





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Posted by 縛りやトーマス at 14:46│Comments(0)映画
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