2014年12月30日

怒りの一撃『フューリー』

怒りの一撃『フューリー』

 舞台は1945年4月、連合国がナチス・ドイツに最後の攻勢をかけようとしている時。翌月にはヒトラーが自決し、8月には日本が降伏する終戦の年だ。
 陥落寸前のドイツだったが、非戦闘員の子供、女性らを借りだす総力戦がヒトラーによって命令され、連合軍が思わぬ抵抗に遭う。終戦寸前の時期なので連合軍側の兵隊も疲弊しきっている状況。M4A3E8シャーマン戦車「フューリー」号の車長ウォーダディ(ブラッド・ピット)は戦闘で死んだ副操縦士の補充を受ける。やってきたのはまだ18歳のノーマン(ローガン・ラーマン)で、彼は後方勤務のタイピストで前線の経験もない、戦車すら初めて見た男だった。
 戦車はクルー全員が完璧な連携、鋼鉄のスクラム(@バトルフィーバーJ)を組まないと何の役にも立たないし、ブラピ車長と他3名のクルーは歴戦の強者たちなので戦争も知らん若造に輪を乱されちゃかなわん、一刻も早く一人前になってもらうためノーマンに戦車内に飛び散った副操縦士の死体を掃除させ、「戦場で動いてるナチは全部撃ち殺せ!ためらうな!」という。
 小隊が行軍中、少年の姿を見つけたノーマンは発泡をためらい見逃す。すると少年兵はパンツァーファウスト(対戦車砲)を撃ち込み、味方の戦車が吹っ飛ぶ。小隊はなんとか敵を全滅させるが、ウォーダディは命令通りにせず味方を犠牲にしたノーマンに激怒。「今度はちゃんとやります」というノーマンにウォーダディは捕虜にしたドイツ兵を連れてきて、射殺するよう命じる。丸腰で「国に家族がいる」と命乞いをするドイツ兵を殺せないノーマンに無理やり銃を持たせて射殺させる…


 「ブラッド・ピット主演の戦争ドラマ」ということで女性ファンが感動モノと思って観に来ることを想定したらしいが、日本で監督らを交えて行われたプレミア試写会では上映後、顔を真っ青にして帰っていく女性客が多くいたという…配給会社でも「ブラッド・ピット主演作なので女性ファンにもアピールしたいのですが、この内容では中々難しい。いい作品なんですが」と宣伝に苦労していた様子。なにしろ『フューリー』で描かれるのは戦場の悲惨な現実ばかりだからだ。
 監督のデヴィット・エアーは元海軍経験者で祖父が第二次大戦に従軍しており、戦争の話を聞こうとすると口をつぐんで話したくない態度を取られることがあったという。孫に聞かせたくない話もあったろう。エアーは昨今の戦争映画が現実を描いていないことを不服に思っており、徹底したリアリティを持ち込んだ。
 そのひとつが戦車だ。劇中小隊がドイツの誇る世界最強の戦車、ティーガーⅠと対峙する場面。ここに出てくるティーガー戦車は現存する本物を使っている。世界に六台しか現存せず、イギリスのボービントン戦車博物館にある世界で唯一の走行可能な一台をこれまた世界で初めて映画の撮影に使用した(シャーマン戦車もボービントン戦車博物館からの提供)。
 「本物が動いてる!」とミリオタがヨダレ垂らしまくりのタンクバトルはティーガーⅠの88mm砲弾が横を通過しただけで兵隊の首がすっ飛ぶ(!)戦車アクションとしての見ごたえも充分。
 しかし『フューリー』のリアリティはやはり「戦場での現実」を描いている部分にある。戦争も知らない、初な少年だったノーマンはウォーダディのシゴキによってドイツ兵を殺せる鋼鉄の男に生まれ変わっていく。戦場ではそうしないと生き残れないからだ。ウォーダディは「有能な殺し屋」として周囲の信頼を集めるが占領下の街で二人のドイツ女性と出会う場面などではノーマンに父親のような愛情を見せ、本当はあったけえ心を持った男であることが描かれる。そんな人間を「有能な殺し屋」にする戦争の異常さが描かれるのだ。
 かつてアメリカ戦争映画は勝者の余裕で描かれる英雄譚ばかりだったものの、今や「第二次大戦はやはり悲惨な戦争だった」ということを描く段階に入っているわけだが、日本では『永遠の0』みたいに負けた戦争にも意味があっただの、兵隊の中にも英雄はいただの、真逆のことばかり書いてるのだから。
 『フューリー』は文字通り、そんな連中への怒りの一撃である。





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Posted by 縛りやトーマス at 02:08│Comments(0)映画
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