2015年03月01日

一生に一度、この原作に出会えた奇跡『幕が上がる』

一生に一度、この原作に出会えた奇跡『幕が上がる』

 「いま、会えるアイドル」ももいろクローバーZ初主演(Z以前の6人時代にモキュメンタリー『シロメ』という作品があるが、Zになってからは初)映画。こいつがアイドル映画の新たな指標になる!

 県立富士ヶ丘高校演劇部は演劇大会地区予選を優良賞(参加賞と同じ意味の一回戦敗退)で終え、2年生のさおり(百田夏菜子)は部員たちから押し付けられるように部長にさせられる。
 新年度の新歓オリエンテーションでさおりは初めて演出した『ロミオとジュリエット』の抜粋版を発表するが、惨憺たる出来と観客の反応に落ち込み演劇に楽しさも目標も見いだせなくなったさおりは部長、演劇そのものを辞めようと言い出そうとした時、新任美術教師の吉岡(黒木華)にアドバイスを受ける。役者一人一人が自分自身のことを芝居にする『肖像画』というのをやってみたらどうか、と。「シェークスピアよりは簡単」だという吉岡に簡単なことが出来ないから悩んでいるのに、とむかついたさおりは逆切れ気味に「簡単なら先生がやってみせてください」と言い放つ。「わかった」と即興で芝居をしてみせた吉岡にさおりら部員は目を奪われる。
 この場面、「黒木華が演技をすると風が吹く」という描き方でそりゃあ「凄い演技をいきなりする」って描くのは難しいだろうけど、ちょっと笑ったわ。

 吉岡が元学生演劇の女王と呼ばれた存在だとスマホで検索して知った(笑)部員らはなんとしても顧問になってもらおうと吉岡を追いかけまわし、「見学だけなら」と言わせてしまう。
 部員のがるる(高城れに)のクラスに演劇で有名な名門校から中西(有安杏果)が転校してくる。(ここでれにちゃんが「ヤバいヤバいよー!」と出川哲郎ばりの奇妙な動きを見せる、いかにもな場面)彼女が入部してくれればプラスになる、とがるるらは盛り上がるが、演劇部の看板女優であるユッコ(玉井詩織)は自分の居場所を奪われるかもと不機嫌になる。ちなみに玉井詩織の父親役がプロレスラーの天龍源一郎なんですけど(ジャンボ鶴田をもじったニックネーム、ジャンボ玉井の父親だからか)例によってまったく何をしゃべってるのかわかりません。こういうくすぐりネタもたくさんあるのでモノノフは笑ってください。

 吉岡の指導のもと、『肖像画』の自主公演を成功させたさおりらは確かな自信を掴み、吉岡も「君たちと全国に行きたい」と本格的に演劇部に関わるようになるのだった。
 さおりは演出に専念するため、最後の大会に役者としては出ないことを選択。脚本を任されるも題材を何にしていいか悩む。この悩む場面の演出、それまでは普通の高校生の生活が描かれるのに一転ファンタジーになって見てるこっちが気恥ずかしくなった。こういうシーンいらないのに…

 夏休み、演劇全国大会のボランティアに中西とともに参加するが全国のレベルを目の当たりにし、ますます落ち込むさおり。帰りに駅のホームで中西が転校した理由を告げられ、はっきりと演劇部に誘う。ホームにやってきた電車を見て中西がつぶやいた一言からさおりは題材を『銀河鉄道の夜』にすることを決める。主人公のジョバンニはユッコ、親友カンパネルラは中西。その決定にユッコはぎこちない態度を取るのだった。
 東京での合宿を終え、万全の状態で挑んだ地区予選。だが、始まった途端に二年生の明美(佐々木彩夏)が小道具を取りこぼすというアクシデント。それをきっかけに細かいミスが連発、大きなミスはなかったものの芝居を終えた後の部員たちは完全に意気消沈。しかしなんとか3位に滑りこみ、県大会突破を目指す部員らに一通の手紙が届く。


 物語は「高校の弱小部活が教師の指導のもと全国大会という目標を目指しつつ、その中で衝突、友情が描かれ人間的成長を遂げる」という王道の青春映画であり、何よりも青春時代に打ち込めるものを見つけたとき、その人がキラキラ輝く瞬間を鮮やかに切り取った映画だ。
 主演はももクロの5人だが、ポスタービジュアルからも伺えるように部長役のリーダー、百田夏菜子が実質的な主役で、彼女は序盤までは何かにイライラするような、ふてくされた表情ばかりしているが黒木華演じる吉岡と出会って自分のイライラの原因が何だったかわかる。演劇の楽しさ、面白さを見つけられなかったからだ。それを見つけた時の夏菜子のキラキラ感、背後に星を背負っているのが見えた!彼女は途中からももクロのリーダーにされ、やりたくないのを押し付けられてまったく楽しくなかったのだがやがてリーダーとしてのやりがいを見つけてグループの中で輝き出す。
 映画のストーリーとももクロのストーリーは完全にリンクしていて、平田オリザの原作はももクロの存在を知らずして書かれた物なのに、当て書きしたかのようなのだ。中西が前の高校を辞めた理由は原作とは違っていて、演じた有安杏果のキャラクターを知っていれば冷静ではいられない。玉井詩織、高城れに、佐々木彩夏のいずれも本人らしさが滲み出ている描かれ方で、演じている本人も自分たちのことだと思って演じているのでなんとも自然な演技になっており、モノノフ(ももクロファンのこと)は普段見ているももクロをオーバーラップして見るし、ファンでない観客はあまりの自然さに違和感を感じることもない。
 このような原作にももクロが出会えたことは一生に一度あるかないかの奇跡でそんな奇跡を掴んでモノにするあたりもたまらなく「ももクロ」なのだった。
 ここで終わりじゃない、これから彼女たちの幕が上がる!というラストシーンも涙が止まらない、が「この後は舞台版でお楽しみください!」的な幕引きだけは気になった(5月のももクロが同じ役を演じる舞台版がある)。





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