2015年04月09日

痛い人『悼む人』

痛い人『悼む人』

 今年最大の問題作!観終わった後、ガツンと頭をやられた気分になった。この映画は一体何を言いたかったんだ!

 電線の傍に右足を膝立ててしゃがみ込み、謎の仕草(右手を斜め上に上げ、そのままの高さで左に動かし、胸元に下ろす。次は左手を斜め下にやり、すくい上げるような仕草で左手の上に重ねる)を取り、

「あなたは◯◯(不慮の死を遂げた理由が述べられる)でしたが、あなたは、あなたを慕う多くの人たちに愛され、そして愛していました。そんななたが確かに生きていたということを私は憶えておきます」

 と死者を悼む言葉を捧げる男、静人(高良健吾)。彼は不慮の死を遂げた人々を悼むために日本全国を旅しているのだった。
 ある住宅の前で声を張り上げる男がいた。ゴシップ誌の記者、蒔野(椎名桔平)は「車のすぐ後ろに子供がいることに気づかず、バックして轢き殺してしまった」事故現場にやってきて、その事故をうんとえげつなく記事にするつもりだった(そういう記事を専門に書く男で、関係者からエグノと揶揄されていた)。そこに静人がやってきて例の悼む仕草をするものだから、こいつは金になるかも!と興味を持った蒔野はすぐさま取材。パフォーマーか何かだと思った蒔野は静人が無償で、貯金を切り崩してまで悼む旅を続けていると聞いて変なモノでも見るかのような目で彼を睨む。「なぜこんな旅を続けているのか?」と疑問に思う蒔野に静人はもうその質問は聞きあきた、とでもいいたげな態度で「僕は病気なんですよ」というのだった。

 この後静人の旅には夫が刺し殺されたという現場に花を手向けに来て、偶然悼む人旅を続ける静人と出会った倖世(石田ゆり子)がその旅に同行することになる。実は夫を刺殺した犯人は倖世本人で、それも世間的にはDVに耐え切れずに起こした犯行と思われているが、実は夫から「俺を殺せるのはお前だけだ!やってくれ!」と頼まれてやったのだ(?)。そして倖世は夫の幽霊が常に現れ、付きまとわれるようになるのであった…何がなんだかわからないよ!!

 静人が悼む旅を続ける理由は学生時代の親友が亡くなった時にショックを受け、彼のことを一生忘れまいと誓ったものの、就職するようになり日々の生活が忙しくなる中で命日を忘れてしまったことに自分で自分に腹を立て、「僕は最低の人間だ!」とひきこもるようになるのだった…意味がわからないよ!別にぐうたらしてるわけでもなく、仕事に忙殺されてうっかり忘れただけでしょう?悪いことをしてるわけでもないのになぜ罪悪感に駆られるのか。「健康に悪い」と母親(大竹しのぶ)に外に連れだされた静人は道に置かれた花束(交通事故の現場とかに置かれているの、ありますよね)に興味を持ち、その現場で初めて悼む行為をする。悼む行為に取り憑かれた静人は自腹を切って旅に出る。

 一方倖世は幼少時代に義父から暴力を受け、そのトラウマで異性をまともに見ることが出来ずにいたのだが、そんな彼女を不憫に思った男から求婚され、結婚するのだが、とんでもない束縛野郎でよりひどい暴力を受けてしまい、自殺を考えるがDV被害者の駆け込み寺で出会った朔也(井浦新)の元で働きはじめる。この朔也がやってるDV被害者だけが働く仕事場みたいなのが怪しげなコミュニティーで、朔也がDV被害者を良いように操ってやりたい放題しているようにしか見えない!もちろん倖世も「この人だけが私を救ってくれる!」(そんなこと言ってるから男に騙され続けるんだって!)と思って結婚するんだけど、結局「俺を殺してくれ!できるのはお前だけだ!」と迫られる。どこかおかしい人だったみたい。できないとなると「お前はどうしようもない女だ!それなら他のやつに頼む!お前は用済みだ!」と突き放され、男に捨てられることに耐えられない倖世は包丁で一突き!そして幽霊に悩まされる。何が何だか…
 
 ゴシップ誌記者の蒔野は愛人をつくって遊び呆け、母親を見捨てた、という理由で父親(上條恒彦)と確執、何年も会っていなかったが余命いくばくもないと父の愛人から聞かされるが、相手にしない。
 女衒のチンピラから女子中学生を買った(なんで急にこんな展開になるんだ?)蒔野はめちゃくちゃにしてやるが、直前に父親が死んだと連絡が来ていたのだった!葬儀の場で家庭の外では愛される人間だったことを知り、父親との思い出に触れて自分の愚かさを悔やむが、帰りに女衒のチンピラ連中から襲撃を受け、生き埋めにされてしまう。その現場に居合わせた自分が買った女の子に「君はこんな何のために殺されたのかわからないような死に方だけはしちゃいけなーい!人生をやり直すんだー!」一発やった後でソ ープ嬢に説教するクソオヤジなことを言い始める蒔野。しかしその絶叫が女の子の心に響いたのか、彼女の通報で間一髪命を取り留める。襲撃の傷が元で視力を失った蒔野は反省してこれまた末期がんで余命いくばくもない静人の母親の元を訪れ謝罪するのだった。


 誰にも愛されずに生きていた人たちが本当は愛されていることを知る、という救済の物語なんだが、登場人物たちの行動にまったく感情移入できず、誰一人いい人がいない!唯一感情移入できそうな人といえば偽悪的な椎名桔平なんだけど、意味もなく少女を買う時点でもう無理。女衒に仕返しくらってもいい気味だ、ぐらいにしか思えないし。
 高良健吾の行動自体、いいことでもなんでもないもんね。そんなことして何になるの?自宅では末期がんに苦しむ大竹しのぶがいるのにそれはほったらかして縁もゆかりもない他人の死を悼んでいるのだ。こんな人間の行動を物語上は崇高な人間の行為として持ち上げられていくのに大変しらけてしまった。何が悼む人だ。痛い人の間違いじゃねえのか。
 この物語はそもそも原作者の天童荒太がアメリカ同時多発テロにショックを受け、不条理な死を悼んで旅する人物という着想を得て、自ら各地で亡くなった人を悼んで歩き、その旅を小説の形にして出版。つまり静人は天童本人で、俺という人間の崇高な行為をどうぞ崇め奉ってください、というわけだ。いいかげんにろ。
 天童がそういう行為をしたければどうぞ勝手にやってください、なのだがその上で絶賛されたい、これこそ崇高な人間だと言われてもねえ…これを出版物として売ったり、映画にするのはもはや犯罪だとしか。こんなもんはチラシの裏にでも書け。





同じカテゴリー(映画)の記事画像
まったく笑えないコメディ映画『ジョーカー』
ツカマルシアター
スミーニャ軍曹の鬼解説T-34
犬が修斗する映画『ジョン・ウィック:パラベラム』
一行さんにツンツンされたい未来『HELLO WORLD』
秋だ一番!ジェイソン・ステイサム祭り!
同じカテゴリー(映画)の記事
 まったく笑えないコメディ映画『ジョーカー』 (2019-10-21 10:18)
 ツカマルシアター (2019-10-17 21:15)
 スミーニャ軍曹の鬼解説T-34 (2019-10-12 05:23)
 犬が修斗する映画『ジョン・ウィック:パラベラム』 (2019-10-10 13:56)
 一行さんにツンツンされたい未来『HELLO WORLD』 (2019-10-06 03:31)
 秋だ一番!ジェイソン・ステイサム祭り! (2019-10-03 10:50)

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。