2015年08月18日

ユニバーサル第六の怪物『大アマゾンの半魚人』

ユニバーサル第六の怪物『大アマゾンの半魚人』


 ハイ、今回ご紹介しますのは『大アマゾンの半魚人』(1954)ですね。1930年代にドラキュラ、フランケンシュタイン、ミイラ男、透明人間、狼男などのモンスター映画で傑作を生み続けていたユニバーサル映画が新たに考案したモンスター、怪物映画ですよ。

 オーソン・ウェルズの劇団に居たプロデューサーのウィリアム・アランドがウェルズ邸でディナーに誘われた際、カメラマンのガブリエル・フィゲロア(ジョン・フォードの『逃亡者』(1947)、ドン・シーゲルの西部劇『真昼の決闘』(1971)などで知られるメキシコの名カメラマン)から「アマゾンの村でいけにえを要求する半魚人」の話を聞いたことから着想を得る。アランドは3ページのシノプシスを書き、レイ・ブラッドベリ(!)に脚色を依頼したという。前年にブラッドベリの原作を元にした『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース それは外宇宙からやってきた』の製作をアランドが手がけた関係だと思います。

 アマゾンの奥地で化石を発掘しているカール・マイア博士(アントニオ・モレノ)ら一行はデボン紀の地層から水かきのついた手の化石を発見する。「調査隊が必要だ」と考えたマイア博士は手の実物をもってブラジルの海洋生物研究所のデヴィッド・リード博士(リチャード・カールソン)、助手のケイ・ローレンス(ジュリー・アダムス)、所長のマイク・ウィリアムス(リチャード・デニング)に調査を依頼。研究所の維持費を欲しがるウィリアムスはこれが世紀の大発見になると快諾。だがその頃現地に残した発掘隊のキャンプは半魚人・ギルマンに襲われ全滅していた…

 アランドが書いた話を元にモーリス・ジムが脚本にした話は科学者たちがアマゾンの奥地で捕らえられた半魚人を都会に連れていこうとする。しかし半魚人に同情した美女の助手が逃がそうとするも科学者がギルマンを追跡、射殺しようとしたので助手は科学者と袂を分かつ…
 アランドとジムの作った話は『キング・コング』(1933)に影響を受けた、というかほとんどそのままでユニバーサルは製作を渋り、次に雇われた脚本家アーサー・ロスも「ドラキュラやミイラが半魚人に変わっただけで25年も前の恐怖映画の焼き直しだ!」と今更『キングコング』をやってる原案にダメを出し、科学者を英雄的な立場に書き直し、製作がスタートした。

 キャンプが全滅したためブラジルからやってきた調査隊のメンバーが発掘をするハメになるが成果は上がらず、リードの判断で入江で発掘をすることになるが、現地人ポーターで船長のルーカス(ネスター・パイヴァ)はそこがブラック・ラグーンと呼ばれる場所で帰ってきたものは誰もいないという。
 入江に向かう船の上でリードとケイが仲睦まじくしているところに水中銃を持ったウィリアムスが現れる。ルーカスに「何を捕るんだ?」と聞かれ水中銃を船の帆柱にぶっ放しながら「なんでもいい」というウィリアムス。後々の対立を予感させるシーン。


 水中シーンの撮影はフロリダ・ワクラスプリングス州立公園の泉で行われ、水中ショーの経営者だったN・ペリーが雇われる。ロケハン当日に都合が悪くなったペリーはショーのメンバーだったリコウ・ブラウニングに撮影隊の案内を任せる。ジャック・アーノルド監督と水中撮影担当のチャールズ・S・ウェルボーンはブラウニングに「魚の大きさと人の体を比較したいから」と試しに泳がせてみた。ブラウニングの泳ぎに満足した二人はギルマンのコスチュームを着て水中で泳ぐ役を任せようと思った。ブラウニングは飛行機のチケットを渡され、LAへ飛んだ。

 リードとウィリアムスは入江の底に潜る。底で見つけた水草をケイに渡していちゃつくリードに「おままごとは後にしろ」と嫌味を言うウィリアムス。「彼は野心むき出しで、他人の功績を横取りしてばかり」とぼやくリードに「彼はああいう人だから」とかばうケイ。


ユニバーサル第六の怪物『大アマゾンの半魚人』
ここで本作の見どころであるジュリー・アダムスの水着シーン
ユニバーサル第六の怪物『大アマゾンの半魚人』
ユニバーサル第六の怪物『大アマゾンの半魚人』
とリコウ・ブラウニングによるギルマンが水中を泳ぐシーン

 手持ちカメラによる水中シーンの撮影は当時、初ともいえる試み。ブラウニングが演じるギルマンは「着ぐるみのモンスター」ではなく本当に半魚人が存在している!半魚人が泳いでいる!と疑わせるに充分な迫力に圧倒される。
 ブラウニングはこれで一躍名を知られるようになり、後に『007 サンダーボール作戦』とそのリメイク『ネバーセイ・ネバーアゲイン』で見事な水中アクションを監督する。日本のファンにはタモリ倶楽部でタイトルをつけられたZ級映画『グルメホラー 血まみれ海岸・人喰いクラブ/地獄のシオマネキ・カニ味噌のしたたり』の脚本家としても有名かも(?)
 しかしケイはよくこんなところで泳ごうと思ったな。現地人から「人喰いナマズ(?)がいるぞ」と言われてるのに。

 ケイが船に上がったあと、ギルマンが水中に下げた網をひっぱり船を傾ける(すごい怪力だ!)。網が破られているのを見た調査隊は水の中に何かが居ると思い、リードとウィリアムスが水中カメラと水中銃を手に潜る。ギルマンを発見したウィリアムスは迷わず銃を撃つ。「なぜ撃ったんだ!?生け捕りにすべきだ」というリード。どうやってだよ?写真を現像するもタイミングを逃して何も写っていない。船に上がってきたギルマンは船員を襲う。陸上でのギルマンはベン・チャップマンが演じた。「半魚人は陸上でものろのろ動く」ということで足には5キロの錘がつけられた。だからギルマンは陸地を歩く時は足を上げずにすり足のようにする。でも船に残ったギルマンの足あとは歩き方とまったく一致してないのが微笑ましい。

 魚を麻痺させる薬物ロテノンを使って半魚人を捉えようとするも効果なし。捜索は夜中まで行われ(そりゃ半魚人なんかがいるとわかったらおちおち寝ていられない)船に上がろうとした半魚人をケイが見つけ、闇の中ついにギルマンの全身像を見る調査隊。リードとウィリアムスが勇ましくもギルマンを追って水底からつながっている洞穴へ。しかし辿り着いたころには反対側から抜けだしていたギルマンがケイを襲う!ケイを助けようとした現地人がクビを締めて殺される。ギルマンはケイを抱っこしてどこかへ去ろうとするがロテノンが効いていたのか、力尽きてしまう。
 ギルマンを船底に檻に閉じ込めてこれで一安心、と思ったがリードが「洞穴を調べるべきだ」と言い出し、ケイと見張りを一人残して調査へ。見張り役が退屈なので寝てしまう(まあ夜だしね)。寝こけたところ、突然物音がして目を覚ます、がそれは様子を観に来たケイが立てた物音だった!という微笑ましい場面
 しかし二人がおしゃべりに夢中になっていた隙に檻からギルマンが脱け出す。見張りは襲われてしまうがケイがランプを投げつけ、全身に火が回ったギルマンは水中へ逃れる。感染症の恐れがある見張りは寝たきりになり。残されたメンバーはリード、ケイ、ウィリアムス、マイア、船長のルーカス。これでは何もできないとリードが帰ろうと言い出し、手ぶらでは帰れないというウィリアムスとまたまた諍いを起こす。「誰のせいでもないわ」ってケイが言うんだけど、あんたが余計なおしゃべりしてたからこんなことになったんじゃあ…

 結局帰ることになり、一人半魚人を捕まえるべきだと主張するウィリアムスにルーカスがナイフを喉元に突きつけ「何か言い分がおありで?」渋々承諾するウィリアムス。なんか、ウィリアムスが悪役にされてるんだけど、捕まえた時に早く帰ろうって言ってたのウィリアムスなんですけど!リードがもっと調べようとか言い出さなきゃ何も起こらず帰ることができたのに。

 入江の出口に木々を組んだ仕掛けがしてあり、どうやら怒り狂った半魚人のしわざらしい。ワイヤーで外そうとするも失敗。もはや半魚人を始末するしかないとするリード。しかしウィリアムスはどうしても生け捕りにしたいらしく「俺がおとりになるぞ」とまで言い出す。「どうかしてるぜ!」と殴り合いを始める二人。その部屋には感染症にかかった患者が寝てるんだけど。そんなところで殴り合いするなよ…

ユニバーサル第六の怪物『大アマゾンの半魚人』
ユニバーサル第六の怪物『大アマゾンの半魚人』
病人がいるところでは静かにね

 まず仕掛けを外して船が勧めるようにしようとするリード。そこにギルマンが襲いかかるが懲りずに潜ってきたウィリアムスがギルマンを攻撃。水中銃の矢が見事ギルマンの腹に命中するが、ギルマンの反撃に遭ったウィリアムスは水底に引きずり込まれ、アクアラングのホースを噛みちぎられ、溺死。リードはギルマンを撃退する秘密兵器を作り出し、最後の決戦に挑む。

 クライマックス、瀕死の傷を負ったギルマンは洞穴を出てよろよろと沼に向かって歩いて行く。背後から止めの銃撃を浴びせようとするマイヤー博士をリードが「もういい」と止める。ギルマンは力尽き沼にゆっくりと沈んでいく(またもブラウニングの名演技!)。

 キングコングのようにギルマンは純粋に人間のケイに一目ぼれして愛しただけかもしれないのに、見た目が化け物というだけで排除されるなんて悲しすぎる。ホラー、モンスター映画の括りで作られたのだからしょうがないけど、これは人と異形の愛についての物語でもあるのだから。
 ギルマンの最期については色々な結末が考えられ、「斧で頭を叩き割られる」案が残ったそうだが、その死は曖昧にされた。なぜかって?続編を作るためさ!!
 制作費1万8000ドルを大きく上回る130万ドルを稼いだ作品の二匹目のドジョウを狙わないはずもなく、翌年にはすぐさま『半魚人の逆襲』が公開され、さらに翌年、3作目の『The Creature Walks Among Us』が公開されるのだった。
 そして現在、ユニバーサルが何を思ったのか本作のリメイクを計画中で、なんと助手のケイ・ローレンス役をスカーレット・ヨハンソンにオファー中!正気か?


スカヨハ、SF怪奇映画『大アマゾンの半魚人』リメイクに主演?
http://www.cinematoday.jp/page/N0072401


 スカーレット・ヨハンソンって最初はコーエン兄弟の『バーバー』とか『モンタナの風に抱かれて』、そしてなにより『ゴーストワールド』といった文芸作品、ミニシアター系作品に出ていて評価されたのに、ダメな方の『GODZILLA』の脚本家、ディーン・デヴリンのB級モンスター映画『スパイダー・パニック!』に出た時にインタヴュアーから
「なんでこんな映画に出てるの?」
 って聞かれて
「いつもはお高く止まってる映画に出てるから、たまにはバカな映画に出たくなったんだよ!」
 ってファンを唖然とさせてた嫌な女だったけど、久々にB級モンスター映画魂に火が点いたのか。またインタヴュアーに答えて欲しいな。
 「たまにはバカなモンスター映画に出たくなったんだよ!」





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