2015年11月03日

猫より可愛いイッセー尾形『先生と迷い猫』

猫より可愛いイッセー尾形『先生と迷い猫』


 動物映画は鬼門だ。犬や猫がうろうろしているだけで「癒される」という人達にはいいかもしれないが、ひねくれているやつにはあの『子猫物語』みたいに観客の見えないところで猫が何匹用意されているのか…などと勘ぐったりしてしまう。『ドン松五郎の生活』みたいに「犬は人間の言葉がわかるんだぞ」と上から目線で説教されてもなあ。あんたらペットだし。逆に可愛がれば動物と心が通じ合えるんだ!などと言い出す映画もあって『ひまわりと子犬の7日間』では堺雅人がまばたきしない目で子犬の人生(いや、犬だから犬生か)を勝手にプロファイリングし始めた時には狂気を感じた。人はなぜ犬や猫を前にすると正気ではいられないのか。

 『先生と迷い猫』は埼玉県で起きた野良猫を可愛がっていた親子が急に姿を消した野良猫の行方を探す中で出会った町の知らない人たちがその野良猫を気にかけていたことがわかり、人々が一匹の野良猫を通じてつながっていくという『迷子のミーちゃん』を元にした映画だ。

 定年退職した元校長先生・森依恭一(イッセー尾形)は妻・弥生(もたいまさこ)に先立たれ一人暮らし。元教師らしい堅物&偏屈さで周囲のコミュニティからは断絶している。訪ねてくるのは森依が趣味で何十年も撮りためていた写真を町のHPの資料として使いたい市役所の青年・小鹿(染谷将太)と亡妻が可愛がっていた野良猫のミイだけだ。今時の青年である小鹿とはほとんど会話が噛み合わず、いくら追い払ってもちゃっかり仏壇の前に居座っているミイにイライラさせられる毎日。

 ところがある日ぱったりミイが来なくなってしまう。そうすると森依は何故来ないのかと気になってしょうがない。今までさんざん追い払っていたくせに!弥生が通っていた美容室に「迷い猫のタマコをさがしています」という張り紙を見つける森依。店主の容子(岸本加世子)は昼寝にやってくる猫にタマコと名前をつけて可愛がっていた。タマコとはミイのことだ。

 ミイを探して町をうろつく森依はミイが様々なところで可愛がられている事実を知る。実家のクリーニング屋を手伝っている元教え子の大学生・真由美(北乃きい)はミイをソラと名づけていた。バス停で寝ているミイをちひろと名づけていた中学生のさぎり(久保田紗友)はいじめにあっていて、ちひろに話かけることで勇気をもらっていた。

 あっちこっちで違う名前をつけられて可愛がられているミイを「あんなにしてやったのに、なんてやつだ」と機嫌を悪くする森依。先生、今や完全にミイが気になってしょうがない!ちょっとでも町中で猫が見えたらミイと勘違いして追い回し、猫撫声で惹きつけようとする森依先生、おかしすぎる。自動車工場を経営している松戸(嶋田久作)には「かわいがるだけかわいがって、後は知らんぷりする。猫好きとか言ってるやつらは無責任だ!」と一喝される。実は松戸は猫が大好きで工場は猫まみれなのだ。それを演じてるのが嶋田久作って…久作には猫を捕まえる仕掛けを渡される。

 「これで捕まえられるだろ。ちゃんと面倒を見ろ!」
 「あの…私…叱られてるんですかね?」


 校長先生にまでなった先生、猫のことで叱られる(笑)。しまいにゃ屋根の上にいる猫を求めて電柱をよじ登ろうとする先生、警官に職質されて連行。引取人がいないため市役所の小鹿に連絡するハメに。「先生、何やってんすかw」と笑われる。
 もう猫よりもイッセー尾形の行動が可愛いし笑える。こりゃあ猫よりもイッセー尾形に癒やされるわ!

 この後、小鹿が先生を気にして一緒にミイ探しを手伝ってくれたりして、容子や真由美も巻き込んだ猫探しネットワークが形成されていく。先生がどうしてミイを追い払っていたのかがわかるあたりはなんだかじーんとしたよ。

 いつの間にか結構見入っている自分に気づいて動物映画もたまにはいいな(おい)。迷い猫を探していたはずの先生が徘徊老人寸前と化して自分自身が人生に迷っていることに気づくっていうのはなかなか上手い。『トワイライト ささらさや』(14)でずっこけさせてくれた深川栄洋監督、今回はいい仕事だった。前回もこういうの作りたかったんだろうな~





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Posted by 縛りやトーマス at 11:15│Comments(2)映画
この記事へのコメント
地味ですが、もう少し拡大公開されてもいい作品かなぁと思いました。
Posted by ジョージ at 2015年11月04日 23:11
シャマランの『ヴィジット』の2倍以上だから割と拡大公開してますよ
テーマ的に出演者的にも地味だからこれが限界でしょうけど
Posted by 縛りやトーマス縛りやトーマス at 2015年11月10日 00:50
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