2015年12月04日

トラウマ少女が好きです…『心が叫びたがってるんだ。』

トラウマ少女が好きです…『心が叫びたがってるんだ。』

 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(11)で日本中を号泣の渦に叩き込んでいた長井龍雪監督、脚本岡田麿里、キャラクターデザイン田中将賀のトリオが再結成したオリジナル劇場用アニメ(制作も同じくA-1pictures、舞台も埼玉・秩父である)。

 「大人になったら山の上のお城で白馬に乗った王子様と結婚式を挙げる」ことを夢見る少女、成瀬順(CV:水瀬いのり)。いつものように学校帰りに山の上のお城を見に行くと、お父さんがいた。すごい!お父さんは白馬の王子さまだったんだ!興奮した順は帰宅するなり母親(CV:吉田羊)にそのことを話す。「でも隣には知らない女の人がいたんだよ?」強張る母親の表情。山の上のお城とはいわゆるラブホテルで、順は父親と不倫相手の情事を目撃したのだった!
 数日後、荷物をまとめて家を出て行く父親に縋りつく順に父親は冷たく言い放つ。「お前がおしゃべりだからこんなことになったんだよ」傷ついた順の前に玉子の妖精が現れる。
 「君は本当におしゃべりだねえ。そんなおしゃべりの口は封じてしまおう」
 順はそれ以降、言葉をしゃべろうとするとお腹が痛くなる呪いをかけられてしまう。

 高校二年生になった順は呪いのせいで誰とも話せず、自宅にやってくる郵便配達や回覧板すら受け取れないでいた。自分の殻に閉じこもり心を閉ざして生きてきた順だが、担任の城島先生(CV:藤原啓治)から「地域ふれあい交流会」の実行委員に無理やり選ばれる。年に一度、出し物で地域の人々を楽しませる催しなのだが、地域の老人ぐらいしかやって来ないので、生徒はみんなやる気が無い。順以外に選ばれたのは同じようにやる気のない坂上拓実(CV:内山昂輝)、腕を怪我した野球部の元エース・田崎大樹(細谷佳正)、チアリーダー部の仁藤菜月(CV:雨宮天)…
 接点がまるでない4人は反発するが城島は強引に出し物をミュージカルにしないかと提案。順は拓実に喋ることが出来ない理由を携帯メールで打ち明ける。歌なら呪いは関係ないから大丈夫かもしれない。
 拓実が順を主演にしたミュージカルを提案するが、大樹は「ダンマリ女にミュージカルなんかできるわけない」と反発。しかし順は今まで聞いたこともないような歌声を(クラスメイトは順の声すら聞いたことがない)披露し、それが限界だった順はトイレに駆け込んでしまうが、クラスメイトたちはミュージカル、できるかもと思い始める。
 「しゃべることはできなくても、歌なら声を発することができる。今まで伝えられなかった本当の気持ちを歌える」と順も決意し、自らの生い立ちをモチーフにした物語を題材にすることに決まった。
 交流会に向けて一丸となっていく4人だったが、ある日ファミレスで話し合いをしている時、大樹の後輩たちが自分の陰口を叩いているところを目撃し、喧嘩になってしまう。彼らの諍いに耐えられなくなった順は
 「いいかげんにして!言葉は人を傷つけるんだよ!
 と大声で叫んで卒倒してしまう。

 過去のトラウマを乗り越えようとする順の姿に大樹も変わり始め、ミュージカルに前向きに取り組むようになる。しかし発表日前日にある光景を目にしてしまった順は「もうヒロインなんてできない」と拓実にメールを送り、姿を消してしまう…


 ヒロインの順は過去のトラウマが原因で言葉を話せない=本当の気持ちや心にしまいこんでいることを伝えられないということに苦しんでいるが、それは順だけではなく、拓実も過去に交際していた菜月に対して思ってもいないことを口走ったために疎遠になったり、そのことについて菜月自身も悔やむことがあったり、大樹は甲子園出場の夢が絶たれたことでやさぐれ、そのことで周囲にきつく当たったことを内心後悔していたりと、メインキャラのほとんどが癒せない過去の傷を負い、言いたいことを簡単には伝えられないことに苦しんでいる。本当は伝えたいのに、伝えられない。つまり”心が叫びたがってるんだ。”

 思春期の頃の気持ちを伝えられないもどかしさに苦しんだ人(今だに苦しんでいる人がいるのに。俺とか)にとってはこの作品は他人事ではない。「本心を伝えられないもどかしさ」に喘ぐ登場人物を見事に描いていた『ハチミツとクローバーⅡ』の監督だった長井龍雪だけのことはある。

 映画『あの花』で10億のヒットを飛ばした実績があるとはいえ、原作なしのオリジナルとは随分挑戦的な劇場用アニメである。どうもアニメ業界内では長井をポスト宮﨑駿、細田守として第三の地位に就けようという意図があるようで、本作もすでに『あの花』を越える10億越えの成績で、しかもスタートは地味だったが口コミで評判が広がり、じわじわと数字を伸ばしていったというのだからこれはもう本物だろう。ポスト細田は長井龍雪しかいない!


『ここさけ』興収10億円突破!ジブリ&大友克洋&細田守に次ぐ史上4番目
http://www.cinemacafe.net/article/2015/11/02/35341.html


 順を演じた水瀬いのりの切なすぎる演技も素晴らしく、ただでさえトラウマ少女大好きな(俺のことです)アニメオタクにど真ん中ストライク!

 「"ここさけ”どうですか?」
 「ああ…いいですねえ。トラウマ少女も出てきますし…」
 「トラウマ少女、好きなんですか?」
 「え、ええ…まあ…」
 「よく聞こえなかったんですけど、もう一度言ってもらえませんか?」
 「え?いや…その…」
 「もう一度、言ってもらえませんか?」
 「ト…トラウマ少女が…好きでぇす…」
 「へーえトラウマ少女が好きなんですか…いい歳して…クスクスクス」
 「い。いーじゃねえかよぉ!トラウマ少女が好きでもよぉ~」



 という会話が至る所(どこだよ)で繰り広げられたという。あなたも叫びたい心がありますか?俺にはある。





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Posted by 縛りやトーマス at 22:20│Comments(0)映画アニメ
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