2016年04月25日

泣きより笑いだよな!『モヒカン故郷に帰る』

泣きより笑いだよな!『モヒカン故郷に帰る』
劇中ネタにされる広島・菊池涼介が自らポスター出演


 ソフトモヒカンのデスメタ野郎、田村永吉(松田龍平)は同棲中の恋人・由佳(前田敦子)が妊娠したことから、結婚を決意。両親に紹介するため7年も帰っていなかった故郷の離島・戸鼻島へ由佳を連れて行く。
 実家には矢沢永吉をこよなく愛し、地元の中学校で吹奏楽部に『アイ・ラヴ・ユー、OK』を教えこむ父親・治(柄本明)、カープキチ◯イの母親・春子(もたいまさこ)、何かあったらすぐに帰省するボンクラ弟・浩二(千葉雄大)と一家揃っていた。結婚報告するも吹奏楽の道に進まず家 出するようにバンドマンを志した永吉が「バンド活動以外は草(パクチー)を育てている」とフラフラしている様子を聞いた治は怒り心頭!一触即発の親子喧嘩が始まるも長男の結婚はこりゃめでてえや、と周囲に電話をかけまくり宴会が始まる。ところがその夜に倒れた治、かつぎこまれた病院で末期がんで余命いくばくもないと診断されてしまう。
 とりあえずは治に何も知らせまいとする田村一家だが、ボンクラの浩二が急に「俺、実家の酒屋、手伝うから」と言い始め、病室のラジオから流れるデーゲームでゴールデングラブ3度受賞を誇る広島、菊池が満塁で凡退したのを治が「菊池あかんのう」とぼやくといつもは率先して野次るはずの春子が「ええやないの!菊池やって…頑張ってるんやからぁ!」と言い出し明らかに妙な空気が流れる病室。何かを悟って永吉と由佳に「わしはガンか?」と訪ねてしまう治に由佳はわざとらしく首を振るのに永吉は力強く頷いてしまう!「…どっちや?」


 反りの合わない父親の元に息子が結婚相手を連れて帰ってきたところ、まさかのガン告知!バラバラだった家族がそれをきっかけにまとまってゆく…という手垢まみれの昭和ホームドラマでありきたりの展開を想像するのだが、自ら脚本を書いた沖田修一監督はこの手の家族モノ、病モノにありがちな展開、ストーリーを全力で否定してゆく。普通ならしつこいほどに泣かせようとする展開になるはずが、沖田監督の演出は観客が泣こうとすると笑わせにかかるのだ。前述した病室のエピソードや治と吹奏楽部のカラミ(部長を演じている富田望生は『ソロモンの偽証』でいじめられっ子を演じていた役者だが、程よいブサイク演技が…たまらなく最高です!褒め言葉だからな!)など、凡百の観客の首根っこを掴んででも泣かせようとする映画ならしつこく泣かせにかかるはずが、どうも沖田監督がそういうのを嫌がってそんな場面になればなるほど、とぼけた笑いを放り込んでくるのだ。わざと!そうでなきゃ感動的なクライマックスの結婚式であんなオチはありえないわな。その意気や良し!病気を持ち出せばなんでも泣くと思っている邦画製作者は全員本作を見て、モヒカンにした上で帰郷せよ!

 また松田龍平、前田敦子、柄本明といった役者たちがとぼけた笑いにマッチしていて愛すべき映画である。アイ・ラヴ・ユー、OK!






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Posted by 縛りやトーマス at 22:21│Comments(0)映画
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