2016年06月29日

ベルリンよ、私は帰ってきた!『帰ってきたヒトラー』

ベルリンよ、私は帰ってきた!『帰ってきたヒトラー』

 ヒトラーが帰ってきた!現代のベルリンに!という奇想天外な設定の同名小説の映画化。パンチの効いた(効き過ぎる)風刺映画であった。

 自殺したはずのヒトラー(オリバー・マスッチ)はベルリンの郊外で目を覚ます。部下に破壊しろと命じたはずのベルリンが健在なのに疑問を懐き、よろよろと倒れこんだ売店の新聞で現在が2014年であることを知る。
 売店の主は彼を「ヒトラーのそっくり芸人」と勘違いし、食事と住処を与える代わりに店番をさせる。その間に新聞や雑誌をむさぼり読んだヒトラーは戦争に負け、今はキリスト教民主主義が支配するドイツの現状を憂う。
 その頃、勤めていたテレビ局をリストラされたザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)は舞い戻るための手段としてヒトラーを担ぎ出し(彼はヒトラーが本物だとは知らない)、「ヒトラー総統がドイツの街を練り歩き、人々の社会に対する不満を聞きます」という突撃ロケ番組を企画する。カメラとマイクを向けられた一般市民は不況になんら対策を打てず、移民問題に妥協を続ける政府への不満をぶちまける。市民の声を聞いたヒトラーは力強く宣言する。「私に任せなさい!」
 これらのシーンに出てくる市民はすべて本当の一般人で、しかも映画の撮影だということを知らずに喋っている。カメラやマイクを向けられているから何かの撮影だとはわかっているけど、『帰ってきたヒトラー』という映画の撮影とはわかってない。だから彼等とのやりとりは完全にアドリブで、中にはヒトラーを演じるマスッチに「不謹慎だ」と怒り出す人や、実際にホロコーストで知人縁者を亡くした老婆が出てきてドン引きしたりする。そんな『電波少年』ばりのガチロケ(電波少年はやらせだったけど…)に顔色変えずに挑むマスッチの胆力、恐るべし(一応は暴力沙汰にならないようにスタッフに扮したボディガードがついていたらしいが)。

 ついにはネオナチの後継者的存在なドイツ国家民主党(NPD)のデモに乗り込んでいくマスッチら撮影陣。そんなところだからヒトラーが歓迎されるのかと思いきや、結構ドン引きされちゃうという。移民なんぞ追い返せ、軍備増強してガンガン戦争しろ、というメンバーに観劇したヒトラーは「君を最前線の司令官に任命するぞ!」というのだが急にしどろもどろになりはじめる。「カメラを向けないでくれ」と言われたスタッフはレンズを下に向ける。RECしたままで!

「こういうおふざけはやめてくれないか?」
「貴様、総統の命令が聞けないのか!?」
「いや…あんたが本物の総統だったら従うけど…あんた偽物じゃん」

 NPDのデモに参加するような極右思想に毒された連中が何にも考えてないタダのバカということをこの映画は暴いてしまう。しかしヒトラーに扮したマスッチが街を行けばドイツ市民や旅行中の外国人なんかは「すげー!そっくりだ!」と大騒ぎしヒトラーとスマホで写メを撮る人が続出。ピースサインをする若者にヒトラーは「違う、こうだ!」と片手を挙げるしぐさをする。すると彼等も真似して「総統閣下万歳!」と声を挙げる。
 物語では政府への不満もあってか力強いメッセージを打ち出し、言葉巧みにテレビの視聴者を扇動するヒトラーの言動は人気を呼び、再び政界進出か?という展開になるのだが実際のロケ現場でも似たようなことが起きてしまう。
これを単なる絵空事といえないのが、実際アメリカではヒトラーのように極右的な言動で人気を集めるドナルド・トランプがいたりする。独裁者が誕生する原因は彼等を支持する国民の側にあり、だからこそ同じことは時代を越えて繰り返される。これを「単なる小説、映画の中だけの話さ」で済まされるのか?




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Posted by 縛りやトーマス at 22:12│Comments(0)映画
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