2017年04月02日

ストイックな部活青春ものに圧倒『ハルチカ』



 橋本環奈は今、もっともストイックな十代女優である。『セーラー服と機関銃―卒業―』では寂れた商店街を守るために文字通り体を張る(首締められても!)。美少女すぎて可愛らしい役しか回ってこずに損してるのが勿体無い。福岡のアイドル時代も見た目と裏腹のデカ目の態度と押しの強さで人気だったので、彼女を活かす作品が少なくて残念だが、邦画界には彼女の才能に目をつけてなんとか活かそうとしている模様。

 負けん気の強いチカ(橋本環奈)は高校に入学した日に憧れの吹奏楽部に入ろうとするが、部員わずか二名で廃部寸前!小学校の時の同級生、ハルタ(佐藤勝利)がホルンをやってたことを思い出して勧誘するが「僕は高校では勉強するから…」と気弱に断りを入れるハルタにチカの重いローキックが一閃!かつてチカにいじめまがいの行為を受けて子分扱いされていたハルタは彼女の軍門に下って部員集めに付き合わされる。時にはビラ配りに本気が足りないとボディブローを喰らいながら
 タイムリミット寸前で最低限の人数を集めることに成功したチカたち。早速練習だ!フルートを選択するチカ。「チカちゃんフルートできるんだ」「ううん全然」なんとチカはフルート初心者だった!中学時代にやってたバレーを怪我で断念した時にたまたま聴いた吹奏楽部のフルートに心を奪われたチカはそれだけでフルートに憧れていたのだった。

 明後日の方向へと転がる物語に戸惑いを隠せないが、ここから観客は王道の破壊から再生を目の当たりにする。なんとかオーケストラのできる人数20人をかき集めた吹奏楽部は元指揮者だった顧問の草壁(小出恵介)の指導のもとコンクール出場を目指す。
 しかし初心者のチカはフルートのソロがうまく吹けず、練習はいつもそこで詰まってしまう。草壁は壁にぶつかった時、部員たちに「どう対処するか」を自分たちで考えさせるタイプの人間なので課題だけ与えてチカを突き放す。部員たちはチカに不満を抱くようになりケンカを始めてしまう。チカのおかげで再生するはずだった吹奏楽部がチカのせいでバラバラになりかける。
 再生のきっかけはハルタだった。急に倒れてしまったハルタは両親との約束で学業に専念するはずだったが、小学生時代のいじめをよりひどい行為で救ってくれたチカをヒーロー扱いしていたハルタはチカのために学業と部活を両立させようとして頑張りすぎたのだった。それ、恋だよ!!いや、ひょっとしたら彼女から受けた様々な暴力が忘れがたかったのかも…

 普通ならここでチャラチャラとした恋愛ものに陥りがちな話だが、チカはハルタの気持ちを組みながらも「フルートのソロをこなす」ことで答えようとする。元髭男爵という経歴の市井昌秀監督は今時ありえないほど生真面目な物語として本作を撮り、原作のミステリー部分やチカ、ハルタ、草壁の三角関係という大事な部分を無くしてまで「吹奏楽部をテーマにしたストイックな部活青春もの」として完成させた。この「ストイックで生真面目な部活青春もの」に重いローキックやボディブローをビシ!バシ!と決めてくれる橋本環奈ほどうってつけのヒロインはいないだろう。凡百の製作者ならハルタとチカのチャラチャラ恋愛ものに落とし込むところを彼女を使ってストイックな部活青春ものとして描き、見事なクライマックスに集約させる。
 草壁は「様々な問題や不条理に直面した時は少し顔をあげて仲間たちがいることに気づいてほしい」とアドバイスする。チカは「ソロはひとりではできない、仲間がいるからこそできる」ことに最後の最後に気づく。それが痛いほどわかるクライマックスは10年に一度、いや1000年に一度の圧巻だ。




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Posted by 縛りやトーマス at 12:29│Comments(0)映画アイドル映画
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