2017年04月07日

お嬢様って怖いなあ『暗黒女子』



 公開前から、W主演のひとりである清水富美加の出家騒動のため変な意味で注目を浴びてしまった作品である。映画興行というもの、客がやってきてナンボ。かつて山口組を主役にした『山口組三代目』を作りながら共産党の映画も作ろうとし、それこそ幸福の科学の映画を自分のところの映画館でかけている東映がこの程度の騒動にビビるわけはなく、「むしろタダで宣伝してもらえてラッキー!」なんて思ってたに違いない。映画は何事もなく公開!

 良家の子女のみが通う聖母マリア女子高等学院(ベタな名前だな)。ある日学院経営者の娘で容姿端麗、成績優秀、全校生徒の憧れの的である「完璧な美少女」、白石いつみ(飯豊まりえ)が学校の屋上から転落死する。自殺か他殺かそれとも事故死か判別しない中、学校中にいつみが会長を務めていた文学サークルの部員の誰かが彼女を殺したという噂が流れる。
 その文学サークルで会長の座を受け継いだ澄川小百合(清水富美加)によってサークルの定例会が行われる。定例会は部員が持ち寄った具材を闇鍋に入れて灯りを消した部屋で食べ、各自が創作した小説を朗読するというもの。今回のテーマは小百合によって「いつみの死」と決められた。一年の特待生、美礼(平祐奈)、老舗料亭の娘、あかね(小島梨里杏)、留学生のディアナ(玉城ティナ)、高校生ながら小説の新人賞を受賞した志夜(清野菜名)の順で朗読が続き、彼女たちは小説の中でひとりの部員を「彼女がいつみを殺した」と名指しする。4人の朗読が終わり、最後に小百合が「これは私が書いたものではなく、白石いつみ本人が書いたものです」と最後の朗読を始める…


 いつみは部員の小説の中でしか語られず、どういった人物かは彼女たちの主観でしか示されない。ある人物の視点と別の人物の視点ではいつみという人物のイメージ、その行動はまったく別の意味で捉えられる『藪の中』状態だ。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』『心が叫びたがってるんだ。』などで思春期男女の諍いやぶつかり合いを瑞々しく描いた岡田麿里がお嬢様学校生徒特有の百合っぽいイメージを漂わせつつ、その裏にあるマウンティング意識といった闇の部分に光を当てる。
 いつみ役を演じた飯豊まりえはぞっとするほど美しく、その内に秘めた悪魔のような本性を見事に曝け出す演技だが、その影にそっと寄り添うような小百合役、清水富美加が真のヒロインとして文字通り「取って代わる」場面は空恐ろしく、単にイヤミス(後味の悪いミステリー)というだけでなく、一級のサスペンスとして完璧。
 
 作品として実に面白いんだけど、騒動から相当時間がたったせいか(もうみんな忘れてるよね)、興行的に厳しい数字らしい。こんなことなら出家騒動が盛り上がってる時に前倒しで公開すればよかったのに!時期的に東映の主力作品、プリキュアと仮面ライダーが組まれていたので繰り上げることが出来なかったと思われる。東映は特撮、アニメがメインコンテンツだからねえ。東映映画の構造的な問題が潜んでいるとしか。

 それと日本の観客がお嬢様学校に抱きがちな「ごきげんよう」「タイが曲がっていてよ」なイメージを破壊してしまったせいかも。『暗黒女子』という黒のイメージではなく清廉潔白な白のイメージを強調してパッケージングから観客を騙してしまった方がよかったような。この映画見て「お嬢様っていいなあ」と思う人はいないもんなあ。世の中は暗黒だ!





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Posted by 縛りやトーマス at 22:35│Comments(0)映画
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