2017年04月29日

20年後の悲惨な未来『T2 トレインスポッティング』



 20年前の1996年といえば単館公開映画全盛の年でラインナップをあげるだけでもゾクゾクする。『ユージュアル・サスペクツ』『イル・ポスティーノ』『デッドマン・ウォーキング』『天使の涙』『スワロウテイル』『キッズ・リターン』そして『シベリア超特急』(笑)その中でも『トレインスポッティング』は別格であり、特別であった。当時、職なし金なし彼女もなしのどん底人生(あれ?今とあんまり変わってないな)だった俺はスコットランド・エディンバラで職、金、希望、何もないがドラッグだけはあるというジャンキーたちが「人生を選べ、未来を選べ」と無限の選択肢があるように嘯きヘロインを決めている様子を見て、ドラッグはアネトン咳止めシロップぐらいしか決めたことないくせに、ビョーキ野郎になった気分でいた。そんな映画の20年ぶりの続編は物語も登場人物もそして観客の俺もきっちり20年過ぎていた。

 本作は映画『トレインスポッティング』の続編であり、原作者アーヴィン・ウェルシュの『トレインスポッティング ポルノ』(原作本『トレインスポッティング』の続編)をベースにしている。だがこの本は「原作の続編」ではなく「映画の続編」だ。映画『トレインスポッティング』のラスト、コカインを売って大儲けした金を持ち逃げしたレントン(ユアン・マクレガー)は気のいい友人のスパッド(ユエン・ブレムナー)にだけは分前をコインロッカーに残した。原作では単にスパッドのことを気にかけただけで金は渡さなかったのだが、映画を見てラストの改変を気に入ったウェルシュが映画のオチを公式に採用して書かれたのが『トレインスポッティング ポルノ』だ。『T2 トレインスポッティング』は原作本『~ポルノ』、映画のオチを採用した続編(ややこしい)。

 レントンはオランダ・アムステルダムで持ち逃げした金を元に事業をしていたが、会社は潰れ、妻に追い出され、健康面にも不安が残る。20年ぶりに実家に帰ってくるが母親は他界、老いた父は母親の願いでレントンの部屋をそのままにしておいていた。何も変わっていない部屋でレコードに針を落とす(イギー・ポップの『Lust for Life』!)が変わり果てた自分にぞっとして針を戻す。
 自分が裏切ったかつての友人たちも変わり果てていた。シック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)は叔母から譲り受けたパブの経営者になっていたが、新しい恋人ベロニカ(アンジェラ・ネディヤコバ)をつかって強請りに精を出す日々。スパッドは恋人のゲイル(シャーリー・ヘンダーソン)と結婚し、息子も産まれていたがサマータイムの導入が理解できず(マヌケすぎ!)遅刻つづきで仕事を首に。自暴自棄になった彼はまたドラッグ漬けになって自殺未遂を起こす。アル中の暴れん坊ベグビー(ロバート・カーライル)は殺人の罪で服役中だが、保釈が下りなかったことから脱獄。息子を誘ってコソドロを始めるが大学にいってホテルの経営を学んでいる息子は「オヤジの仕事には興味がもてない」と反発。大学だの、ホテル経営だの、ベグビーには当然理解できない。

 20年前はノーフューチャー!とばかりに好き放題に青春を謳歌し、それでもいくらでも選択肢はある、人生を選べる!といっていた連中を待っていた未来がコレ?金も仕事も女もない、あるのはドラッグとちっぽけな友情だけだった…あまりに悲惨すぎる20年後に涙するしかない。役者もみーんな年取って髪の毛は薄くなって禿げ上がり、少し走るだけで息が上がる。前作の象徴的な万引きの追っ手から逃げる疾走パートはもう再現できない!ドラッグなんて遊び程度にやって、きちんと就職のための勉強をしていたレントンの女友達、ダイアン(ケリー・マクドナルド)が弁護士になってバリバリ働いていて、しょぼくれたレントンに愛想尽かすところとかもう見ていられない。一体どうしてこうなっちまったんだ!俺たちの20年間はなんだったんだ!?
 やがてレントンは怒り狂うベグビーと再会する。20年ぶりのツケを精算しなくてはならないから。クライマックスもやはり原作とは違う結末が待っている。

 20年後に、同じ役者とスタッフで続編がつくられた意味のある内容だ。最近は80年代の映画ですらノスタルジーだといってリブートされる時代だが、大抵は単なるビジネス以上の理由がなかったりする。『T2 トレインスポッティング』は他のどの映画とも違う、20年後だからこそつくられた意味のある続編だ。俺たちは20年後の今も人生を、未来を選ぶ。どんなに悲惨でも。


これがラストにかかって一作目とつながってエンドロール




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Posted by 縛りやトーマス at 22:36│Comments(0)映画
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