2017年05月10日

アイドルとファンの理想的なwin-win関係『堕ちる』



 岐阜県・桐生市で行われている『きりゅう映画祭』にて話題になった短編映画『堕ちる』は無口な織物職人の男が地下アイドルに本気で恋する様子が描かれた映画だ。その後、イベント上映のような形のみで各地を回っていたためなかなか見ることが出来ない作品として知られていたがこの度商業作品として映画館での上映が決定。俺も噂だけは聞いて期待しており、この度ようやく見ることが出来た。


 無口な織物職人の耕平(中村まこと)は仕事以外は何の趣味も興味もない男だが、行きつけの散髪屋の店長から「うちの娘がアイドルやってるんで、よかったら観に行ってくださいよ」とライブチケットを渡される。
 会場のライブハウス(これが文字通りの地下にあって笑える)に訪れた耕平はカウンターでチケットを渡すも「ドリンク代500円です」と言われ「えっ」となる。ライブハウスは飲食店として登録しているから、ドリンク代を取られるのは当たり前なんだけど、そんなこと知らない耕平の戸惑う様子に思わず「あるある」と頷いてしまう。
 そんな耕平は会場でアイドルオタクから「何曲目の時に振ってください!」といきなりサイリウムを渡されたり、「あなた、新規?」と馴れ馴れしく声をかけられたりして戸惑うばかり。ずっと前からいる古参ヲタと新規(初心者)のあるある感にニヤニヤしてしまう。そんな耕平は当然のごとく会場で地蔵(どうしていいのかわからず呆然と立ち尽くす人)と化す耕平はステージに立った散髪屋の娘であるアイドル、めめたんに心を奪われてしまう。

 それからというもの耕平は寝ても覚めてもめめたんのことが頭から離れない。会場で渡されたCD『Wonder land』(ハロプロ初期を匂わせる名曲)を一日中聴きまくり、部屋にはめめたんのポスターを貼りまくり、グッズである黄色一色のめめたんTシャツをアンダーウェア代わりにして仕事をする(!)。傍目には娘であってもおかしくない年齢の少女に夢中になる「どうかしてる」おっさんなのだが、他人事とは思えません!(この作品は他人事とは思えないかどうかで評価が変わります!)
 耕平はメジャーへの道を夢見るめめたんのために「なんとかしてあげたい」と思うようになり、そうだ、俺の織物職人の腕を奮って彼女のステージ衣装を作ろう!と決心する。職場の人間に変な目で見られながら織り上げた衣装をめめたんの生誕イベで披露する瞬間、耕平の人生は絶頂を迎える。そして後は堕ちていくのだった。
 めめたんはメジャーデビューが決まり上京することに。すると散髪屋の店長を通じてステージ衣装が送り返されてくる!追い打ちをかけるように耕平は織物工場をリストラされ、気がつけば何もないただのおっさんになった耕平は激しく慟哭する。


「め゛め゛だぁ~ん…!」


 地下アイドルの現場に集うオタクがほとんど40代以上で彼らが喫茶店に集まって「今後のめめたんをどう推していくか」を語る集い(全員めめたんシャツ)だとか彼らの異常なまでの馴れ馴れしさといった「あるある感」があまりにリアルだし、めめたんを演じている錦織めぐみはLuce Twinkle Wink☆というグループのメンバーで実際の地下アイドル!彼女の本当に何処かにいそうな地下アイドル感(本当にいるんだけど)など、各所のリアルさが妙な生々しさを産んでいてどこを切り取っても他人事とは思えないのだった。
 衝撃的なクライマックスとラストシーンだが、理想的なアイドルとファンのwin-winの関係が描かれていて鑑賞後はスカッとした爽やかさを覚えたね。「理想的なアイドルとファンのwin-winの関係」とは何か?アイドルは夢がかなって、ファンはそれを応援できるっていうのが理想的な関係でしょう。この間やっていたフジテレビの『ザ・ノンフィクション』の『その後の中年純情物語』では売れない地下アイドルの小泉りりあことりあちゃんとそのファンの中年男性、きよちゃんの二年後の顛末が描かれており、りあちゃんは未だに売れない地下アイドルとして模索の日々を送り、きよちゃんは頼まれてもいないのに薄暗い部屋で彼女のためのグッズを作っている(『パーフェクト・ブルー』じゃないんだから)という、どう考えても最悪の展開としか!前回はきよちゃんの純情ぶりに涙したが、今回は堕ちるとこまで堕ちきった感があり、これ以上見ていられない。

 『堕ちる』はたとえ堕ちるとこまで堕ちても幸せそうで夢のようなハッピーエンドであり、多くの「もう、後戻りできない」アイドルファンは涙してほしい。





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Posted by 縛りやトーマス at 04:27│Comments(0)映画アイドル
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