2017年10月08日

日本人はどうして怒らないのか『エルネスト もう一人のゲバラ』



 今年没後50年を迎える革命のカリスマ、エルネスト・チェ・ゲバラ。ゲバラの名がタイトルについてるのでゲバラ本人についての映画と思わせて、主役はゲバラからファーストネームをもらった日系ボリビア人、フレディ・前村・ウルタードであり、彼がゲバラのボリビア戦線にゲリラとして身を投じる姿が描かれる。

 フレディを演じるのはオダギリジョー。体重を12キロ落としてスペイン語を完璧にマスターし、完全になりきった様にまず興奮する。

 フレディは軍事政権に支配され貧富の差が激しい祖国ボリビアで比較的裕福な家に生まれながら近くに住む貧しい家庭に施しを与えるような青年で、やがて貧しい人々のために医師になることを志しハバナ大学の医学部を目指してキューバにあるヒロン浜勝利学校で留学生らと学び始める。幼馴染のグスタポ(ルイス・M・アルバレス)悪友のべラスコ(エンリケ・ブエノ)やキューバ人のアレハンドロ(ジャスマニ・ゲレロ)らと勉学に励むフレディ。

 思いを寄せるルイサがこともあろうにべラスコの子供を出産。べラスコは子供を面倒臭がってルイサと距離を置く様に怒るフレディ。しかしルイサはシングルマザーとして学校に通いながら子供を育てる道を選ぶ。フレディは怒りながらも憎しみを持たずルイサと子供を支えるのだった。
 祖国ボリビアで軍事クーデターが発生。フレディは祖国のためにゲバラのゲリラ部隊に参加、訓練に最後まで残ったフレディはゲバラから戦士名“エルネスト・メディコ(医者)”を授かる。

 祖国へゲリラ戦士として帰国するフレディはルイサの娘スサニータに誕生日プレゼントを渡す。「来年もまた来てね」というスサニータ。だがその願いはかなえられず…


 本作で描写されるのはフレディが学校でボリビア、そして世界の未来について語り合ったり、悪友らと言い争ったり、ボリビア人女性のルイサ(ジゼル・ロミンチャル)にほのかな思いを寄せる様子で、ゲリラ戦が中心ではなく、フレディがキューバで過ごした青春時代の学園ドラマなのだ。
 学園にやってきたゲバラ(ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ)と会ったフレディは「あなたの絶対的自信はどこからくるのか」と尋ねる。ゲバラは「自信とかではなく怒っているんだ。怒りは憎しみとは違う。憎しみから始まる戦いは勝てない」と語る。
 映画の冒頭では使節団として日本の広島を夜行列車で訪れたゲバラの様子が描かれる。しかもいきなり広島に行きたいと日本政府の反対を押し切って夜行列車に乗ってしまうというあたりにゲバラの為人が現れている見事な場面だ。当時日本ではゲバラの名がほとんど知られていなかったので地元広島のマスコミは中国新聞以外は誰もやってこない。同社の記者役を演じる永山絢斗だけが使節団に同行。原爆ドームや原爆資料館を訪れたゲバラが県庁外事課の人間につぶやく。「君たち日本人はアメリカにこんなひどい目に遭わされてどうして怒らないのか」と。

 日本とキューバの合作映画であり、キューバロケにして撮影スタッフの多くは日本人だがキャストはほぼ外国人という挑戦的な企画を阪本順治監督は感傷的にせず、不必要なほどドラマティックに持ち上げようともせずに「寡黙で誠実だった」というフレディの人柄をありのままに描く。邦画でありがちな必要以上に泣かせようとする作風に慣れていると不満に思うかもしれないが、これがドラマの描き方ではないのか。ゲバラも言ってたよ。「君たち日本人はあんなひどい邦画ばかりを見ていてどうして怒らないのか」と…(言ってません)




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Posted by 縛りやトーマス at 04:33│Comments(0)映画
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