2017年11月04日

企画・秋元康の似非グルメ感が炸裂『ラストレシピ~麒麟の舌の秘密』



 原作者の田中経一氏のプロフィールを眺めると『料理の鉄人』『とんねるずのハンマープライス』『愛のエプロン』『クイズ$ミリオネア』という、泣く子も黙るヒット番組の演出をしていたことがわかり、その後幻冬舎で小説家としてデビュー、これも大ヒット。自身が代表を務める会社名、ホームラン製作所のごとく柵越え連発。満を持してそのデビュー作を実写映像化したところ、まさかのインフィールドフライといった結果に。いやあ、映画製作って難しいですね!

 本作は2010年代の現在と1930年のふたつの時代を舞台にした大河風ドラマ。現代で「最期の料理人」と呼ばれる佐々木充(二宮和也)は高額の報酬と引き換えに依頼人が食べたい料理をどんなものでも作り上げる(ザ・シェフみたいなやつだな)今回の依頼人は余命いくばくもない入院患者の団時朗・帰ってきたウルトラマンだ。彼の依頼は若い時によく食べていた食堂のオムライスを最後に食べたいというもの。しかし食堂はすでに閉店し、店の人間もどこにいったのかはもうわからない…

 が、その料理を充は病室に持ち込んだ料理セット(いいのかそんなの持ち込んで)でテキパキと調理しだす。そのオムライスは独特な味のソースをつかっていたのだが、充は八丁味噌を加えてソースをつくり、オムライスは完成。一口食べた団時朗は「まったく同じオムライスだー!」と感動にむせび泣く。もう潰れてしまった店のオムライスを充はなぜ料理できたのか?実は彼は一度食べた料理の味を再現できる、“麒麟の舌”という能力を持っていたからなのだった。

 しかし、ここで疑問が浮かび上がる。麒麟の舌の能力は「一度食べた料理の味を再現する」だから、充はどこかでこのオムライスを食べたことがあるのだろうか?ということ。当然、その辺のくだりが説明されるのかと思いきや、そんな説明はまったくされないのだった。じゃあ充はオムライスのソースに八丁味噌を使っていたことがどうしてわかったんだよ?麒麟の舌という設定が物語上、何も生かされていない。
 そんな疑問に誰も答えてくれず、200万円の報酬は払われる。けれど団時朗はオムライスを完食した後に隣にいる嫁さんに

「でも、やっぱりお前の手料理が一番だ」

 とか言っちゃうの(笑) 完食してからそれ言う?そんなの完食してからいうなーっ!!もう200万払ってるやんけ!これは嫁も末期の団時朗に『怪獣使いと少年』に出てきた民衆たちの勢いで襲い掛かってもいいぐらい。これが冒頭の10分で、あとはこのレベルの突っ込みが次から次へとやってくる。


 充は中国料理界の重鎮、楊晴明に呼び出され北京で依頼を受ける。それはかつて満州国でつくられたという日本版の満漢全席「大日本帝国食菜全席」を再現すること。そのレシピは1930年代の満州にて山形直太朗(西島秀俊)という料理人がつくったが、そのレシピは失われてしまった。まずはそのレシピの行方を追ってくれ!という依頼なんだけどそんなの探偵に頼めよ!
 ここからドラマはふたつの時代をいったりきたりすることに。山形直太朗は天才料理人として天皇の料理番を務めていた男で、彼もまた麒麟の舌の持ち主だった…にも関わらず、直太朗もまた麒麟の舌の能力をまるで使わない。

 直太朗はレシピづくりを青年時代の楊晴明とともに始めるのだが、初日に楊晴明が簡単な料理をふるまう。最後の一仕上げとして料理に小さい壺から取り出した調味料(楊晴明曰く、「魔法」)をふりかけ料理は完成。食べた後で直太朗は麒麟の舌の能力で同じ料理を再現する…のだが、楊晴明の調味料は彼が大事にしまい込んでしまったので使わずに調理する。
 と、この展開なら「同じような料理なんだけど魔法の調味料が使えなかったから、少しだけ味が違う!」っていうオチになるはずなのに、楊晴明は同じ味だー!って感想をいう。いや、魔法を使ってないんだから、同じ味じゃないだろ!あの壺に入ってた調味料はなんなんだよ!その説明も一切なし!そして大日本帝国食菜全席のレシピづくりにも麒麟の舌の能力は一切発揮されないまま…


 タイトルにもなっている「麒麟の舌」という能力が物語上、何の意味もないという杜撰な設定。後に判明するある人物と人物との関連性を結びつけるためにしか、機能していない。それだってよほど感が鈍くない限り、すぐに気づくと思うんだけど。
 「麒麟の舌の秘密」という、キャッチーなタイトルを思いついた時点で終了してる。この辺がなんとも「企画 秋元康」の仕事っぽい。タイトル以上のことは思いつかないという。アカデミー外国語映画賞の滝田洋二郎にジャニーズきっての演技派、二宮和也主演とみてくれだけは整えたものの、見た目が派手な料理だから美味いってわけじゃないんだよ。秋元が『料理の鉄人』でグルメを気取って料理をジャッジしてた時に

♪グルメじゃないから なんでもペロリ

 なんて歌詞書いてたあんたがグルメ気取るなよと感じたのを思い出した。秋元康がどんだけグルメか知らないけどこの映画を観る限り、やっぱり大したグルメじゃないな。この映画よりコンビニ弁当の方が美味いよ、きっと。

 こんな鍋の底が抜けきった内容でも女優陣は素晴らしく、仕事しか頭にない直太朗を傍でそっと支える妻役を演じた宮崎あおい(こういう役をやらせると宮崎あおいの右に出るのはいないな)や、後半、重要な役で登場する広澤草の存在感ときたら。『となりの801ちゃん』の主演だった広澤草が東宝の大スクリーンで光り輝くところを観る時代がくるとは、ちょっと感動してしまった。





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Posted by 縛りやトーマス at 04:20│Comments(2)トンデモ映画食べ物
この記事へのコメント
壷の中の調味料はおそらく現場に干されていたイカなど干物の粉だったのであろう事、麒麟の舌なるものの力を瞬時に発揮したわかりやすいシーンだったと思いましたがね。そんな程度の事もわからない方がいるんですね。
いろいろ間違ってるし、ちゃんとご覧になっていたのでしょうか?
「秋元康」とか私も大っ嫌いなので批判したいお気持ちは理解できますが、細かい所をつついて叩くには勿体無い温かい映画でしたよ。
Posted by 宮崎 at 2017年11月04日 05:35
歌詞ひとつまともにコピー出来ないくせに良く批評できるな。
変に見えるのは自分が間違っているからという意識は無いのか?
Posted by 291 at 2017年11月11日 13:54
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