2017年12月24日

お前はジーグだから『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』



 クールジャパン、なんていったところで今日本で放送されてる深夜アニメのほとんどは諸外国ではほとんど注目されず、アニメーターは相変わらずブラックな環境を脱することができず、広告代理店の連中ばかりが儲かってる状況。しかし本当に外国でも人気のあるアニメは存在していて、その一つが永井豪のロボットアニメ。『UFOロボグレンダイザー』はフランスで『ゴルドラック』と名を変えて大ヒットしフランスでもっとも知られた日本のアニメになった。当時フランスに日本の政治家が訪れるというのでフランスはグレンダイザーの像なんかを作って歓待したが、日本の政治家は誰もグレンダイザーを知らずポカーンとしたという…クールジャパン!

 グレンダイザー同様、海外で人気を博した永井豪のロボットアニメ『鋼鉄ジーグ』を幼少時にイタリアで見たというガブリエーレ・マイネッティ監督は「日本のアニメヒーローに影響を受けたイタリアのスーパーヒーローものを作ろうとした」という。『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』という不思議な日本語のタイトルにして。

 主人公のエンツォ(クラウディア・サンタマリア)は窃盗を繰り返して暮らすチンピラだ。ある日高価そうな時計を盗んで追われたエンツォは水路に沈めた放射性廃棄物のドラム缶に落ちてしまう。親父と慕うセルジョの依頼で麻薬取引を手伝うが、トラブルでセルジョは殺され、エンツォも腹に銃弾を受けてビルから落ちる。しかしエンツォは傷一つ追っていなかった。放射性廃棄物に落ちたことで自分が常人ではない、鋼鉄の肉体を手に入れたことを知る。しかしチンピラの生きざまが染みついたエンツォはせっかくの力をATM荒らしなどにしか使わない。

 劇中、イタリアの街で爆弾テロが多発している様子が繰り返し報道されるから、観客はエンツォがスーパーヒーローの使命に目覚めて爆弾テロと戦うのだと想像するが、チンピラのエンツォにとって遊べるだけの金を手にして、アダルトビデオを見ながらヨーグルトにありつく日常だけが自分のすべて。
 そんな彼だがセルジョの娘、アレッシア(イレニア・パストレッリ)がマフィアのジンガロ(ルカ・マリネッリ)に拷問されているのを見て、罪悪感と同情から助けようとする。アレッシアはエンツォの活躍を見て「あなた、司馬宙みたいね!」という。不幸な境遇から精神を病んでアニメ『鋼鉄ジーグ』のDVDを見ることだけが心の支えの彼女は現実世界と『鋼鉄ジーグ』の世界がごっちゃになっている。

「その力を人類のために使って」「闇の日から世界を救うのよ」

 わけのわからないことをいう上にチンピラ生活を戒めようとするアレッシアをエンツォは鬱陶しがるが鋼鉄ジーグのアニメを一緒に見たことで同情以上の行為を持つ。だが触れただけで彼女が激しい拒絶を示すのを見て彼女が精神を病んだ理由がセルジョに性的虐待を受けていた過去にあることを知る。自身も悲惨極まりない少年時代を過ごしていたエンツォは彼女だけのヒーローになろうとする。

 本作は『鋼鉄ジーグ』の実写映像化ではなく、『鋼鉄ジーグ』という作品をヒーローの象徴としたまったく別の物語。でありながら『鋼鉄ジーグ』というヒーローをきちんと表現している。『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』といった他の永井豪作品とは違って『鋼鉄ジーグ』は主人公の司馬宙自体がジーグの頭部になるサイボーグで、父親によって知らない間に改造されたというすさまじい過去を持つ。ジーグはヒロイン・美和が操縦するビッグシューターという航空機から打ち出されたパーツを合体させて完成するロボットで、ヒロインがいないとロボットになれない。アレッシアというヒロインがいて初めてヒーローとして成立するエンツォという物語の設定は完全にアニメをなぞっている!

 世界を救うからヒーローなのではない。たった一人の笑顔を見るために立ち上がる男こそがヒーローなのだ。胸が熱くなる映画だった。





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この記事へのコメント
エンツォが名前を尋ねられて名乗るシーンはグッと来ました。
Posted by win88 at 2017年12月29日 01:47
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