2018年01月15日

すべては浜村淳の思し召し『嘘八百』



 最近の邦画は原作モノに偏重していて、アニメ、漫画、小説を片っ端から買い漁ってダメなモノに作り直し、高級食材でつくったゴミが箸もつけられずに捨てられていく…そんな光景を何度も見てきた。オリジナルで面白いものができないのか?そんな邦画の現状に敢然と立ち向かったのが監督・武正晴と脚本・足立紳。この二人が挑んだのは幻の千利休の茶器を巡る駆け引きだ。

 目利きの腕はあるが、うだつの上がらない古物商の小池(中井貴一)は車の中で聞いたカーラジオからスローバラードならぬ浜村淳「西の方角に吉あり」という声に従って西に車を走らせりゃ、たどり着いたのは野田佐輔(佐々木蔵之介)という主の屋敷。佐輔が亡父から譲り受けたという蔵の中から「親父はこれひとつで車一台買えるぐらいの価値がある」という品を見せられるが、小池はそれが何の価値もない贋作だと見抜いてしまう。贋作を買ったという古美術店に行き、店主の樋渡(芦屋小雁)に「こんな立派な店が素人にタダ同然のもん売りつけるとはいただけませんな」と強請りにかけるが、大物鑑定士の棚橋(近藤正臣)が出てきて、「あんた強請りにきたんでっか」と強気に出られてぐうの音もでず、すごすごと退散。

 翌日、再び佐輔からもっと価値のあるものが、と電話されて屋敷に向かうと千利休直筆の譲り状、利休形見の一品という茶器を入れた箱がでてきた。これは間違いなく本物と見抜いた小池は「これもニセモンですわ」と佐輔をだまくらかして100万のはした金で数億円もするであろう茶器を手に入れる。しめしめ、これで大儲けや!と鼻息荒い小池だが、カーラジオの浜村淳「油断大敵でっせ!」とささやく。あわてて調べると茶器は真っ赤な偽物!屋敷へ引き返すと見知らぬ老人(寺田農)が座っていた。なんと佐輔は屋敷の主でもなんでもなく、留守番を預かっているだけのアルバイトだった…
 佐輔はかつては将来を期待された若手陶芸家だったが、樋渡と棚橋に贋作づくりでこき使われすっかり夢も希望もなくし、今では表具屋のよっちゃん(坂田利夫)、達筆な居酒屋のマスター西田(木下ほうか)、箱作りならおまかせの材木屋(宇野祥平)らとともに詐欺を働くまでに落ちぶれていた。

 小池も過去に樋渡らにハメられ、自分の店を売り払って借金を背負わされていたことから「やられっぱなしでいいのか?見返してやろうぜ」と佐輔に発破をかける。本物そっくりの「幻の利休の茶器」を佐輔につくらせ、やつらをハメてやるのだ!なにしろ佐輔のつくった茶器に小池は一瞬騙されたのだから…かくしてくすぶってる男たちの一発大逆転が始まる!


 佐輔の人生は太閤秀吉に重宝されながら、最後は忌み嫌われ切腹を命じられた千利休の人生と似ている。小池は利休が最後につくった茶器に込めた「無念だったであろう」思いをもっともらしくでっちあげて、欲深い鑑定士らを巧妙に落とし穴へと誘導する様子はまさに痛快。ハメたつもりがハメられた!と腑に落ちる話のまとめ方もお見事。観客もすっかり騙されましたわ。

 それにしても、登場人物の行動の鍵を握っているのが実は浜村淳だというのは恐ろしい。大阪ではすべてが浜村淳の手のひらで踊らされているというのか…





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Posted by 縛りやトーマス at 01:05│Comments(0)映画
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