2018年03月12日

超人誕生『北の桜守』



 吉永小百合出演120本作品目。『北の零年』『北のカナリアたち』に次ぐ北の三部作完結編。これがなんとも…恐ろしい映画である。
 1945年。開拓団として樺太に渡った江蓮一家。てつ(吉永小百合)は北の大地に桜の木を育てる桜守として日々を過ごし、ようやく桜の木に小さな花が咲いたと喜ぶ。夫の徳次郎に「いつかこの地を桜の花で満開にしましょう」と。ちなみに徳次郎役は阿部寛だ。『ふしぎな岬の物語』で吉永小百合に恋い焦がれる甥の役を演じていた阿部寛がついに夫役に昇格!いや降格か?無理がありまっせ!!

 しかしソ連軍が海を渡り樺太に鉛玉が降り注ぐ。徳次郎は義勇軍に入り、家族を網走へと疎開させる。必ず再会するという約束をし、長男に「母さんと弟を守れ」と言い残し、二度と帰ってはこなかった
 激しい戦火の中を逃れたてつと次男の修二郎だったが、網走で二人を待っていたのはすさまじい貧困であった。着るものも食べるものにも事欠く日々。てつは「こんなところにいつまでも居てはいけない」と修二郎を網走から送り出す。そして1971年の札幌。アメリカに渡っていた修二郎(堺雅人)は妻の真理(篠原涼子)を連れて帰国する。アメリカに本社を置くホットドッグチェーンの日本一号店の支社長を任されたからだ。ホットドッグチェーンといっても見た目はコンビニなんだけど…
 初日から「24時間働けますか?売り上げのためにバリバリ働け!辛くても働け!」と労働基準法をバリバリ無視した宣言をする修二郎支社長!すると一本の電話が。それは15年会っていない母、てつをむしばむ病についての電話だった。網走で小さな雑貨店を営むてつは鏡に向かってブツブツと独り言をいうようになっていた。樺太での知人だった元警官の岸部一徳が世話をしているそうだが「普段はなんてことないのだが、時々こうなっちゃうんだ」修二郎はてつを引き取って札幌で暮らすことに。

 店の売り上げがなかなか伸びない上に奇行が激しくなるてつにいら立ち始める修二郎。以下小百合の奇行の数々。

・公園の桜の木を見て大雨の中、薄墨と糊で修復を始める小百合!
・「美味しいごはんを食べさせてあげよう」と家の庭で竈を炊き始める小百合!
・知らない八百屋で「つけで払う」とネギを持ち去る小百合!


 そう、今回の小百合さんは完全にボケ老人の役なのだ。しかし、天下の大女優吉永小百合を「ボケ老人」呼ばわりすることはできなかったのか、医者も「過去に大きなトラウマがあって、そのせいでしょう」と配慮したコメント。
 これ以上息子に迷惑をかけられないとこっそり家を抜け出す小百合(それが迷惑なんだって!)。修二郎は母と二人で親子の確執を乗り越え、雪解けのための旅に出る。

 吉永小百合は73歳とは思えない体を張ったシーンの数々にチャレンジしている。太田神社という「日本で最も険しい場所にある」という神社に行くのだが、険しい崖路を行き、最後は7mの絶壁をロープ一本でよじ登る小百合!トム・クルーズじゃないんだから…
 この旅の過程で網走での極貧生活を経て確執を深める親子が雪解けを経て家族の愛を取り戻すという話なんだけど、なぜ網走から息子を送り出したのか、という肝心の部分がよくわからず、感動しにくい。そして長男がなぜ出てこないのか、というところ。重要な部分なのに映画の途中でまったく触れないまま話が進む。観客はずっと「長男はどうしたの?」と疑問に思うのにそんな観客の疑問を無視して話が進められる。触れられない理由が説明されないので真相が判明しても興味をそそられず納得もできない。

 那須真知子の脚本は欠陥品ではないのかと疑うほど不親切で雑。さらに戦争中の悲惨な光景をなぜか舞台劇で表現し、またこれが脚本に輪をかけた雑さで、素人演劇なみに見える。本当にケラリーノ・サンドロヴィッチが演出したのかよ!
 戦中の悲惨な生活を描こうとしても、気になるのは吉永小百合の超人的な生きざまだ。戦火の海を泳ぎ、春の肌寒い海に足を踏み入れ、二年間を誰の力も借りず生き延びる。一体どうやって?もちろんそれも説明されない。吉永小百合は大女優であり超人であったからとしか思えない。主人公が不死身の超人であったと判明する『アンブレイカブル』を彷彿とさせるラストシーンには唖然。小百合は超人だった!この映画、スタン・リーとかに見せてあげたい。「日本にも超人がいた!」とX-MENの新シリーズに採用されないかな。こんな人間が本当にいたら日本は戦争に勝ってると思うの。





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Posted by 縛りやトーマス at 00:16│Comments(0)映画トンデモ映画
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