2018年03月27日

80年代エロサブカル偉人伝『素敵なダイナマイトスキャンダル』



 70~80年代のエロサブカル界の偉人、末井昭の自伝『素敵なダイナマイトスキャンダル』の映画化。
 小学生の頃、母親が隣の家の少年とダイナマイトで自殺したという壮絶すぎる過去を持つ末井氏はその過去に引きずられるように青年時代を駆け抜ける。アートにかぶれてデザインの道に進むが仕事はキャバレー、ピンクサロンの看板描き。「情念の赴くままに」ドギツイ色彩の看板を描きまくるがキャバレーの店長からは「風俗店の客はお前のいうアートなんか見ていない。そんなこと描いてないで“性の万博・世界の国からこんにちは”とか描いとけ!」とドヤされる。母親のダイナマイト心中を唯一肯定してくれたデザイン会社の先輩、近松さん(峯田和伸)から「末井くん!君はこんなろくでもない会社の連中のいうことなんか気にしないで、君のやりたいことを描けばいいんだよ!」と発破をかけてもらっても(峯田の演技もあって、すごく好きなシーンだ)自分のやりたい表現はこの世界でまったく認めてもらえないのだ…
 末井はやがてデザイン会社の同僚から紹介されたエロ雑誌のアルバイトをきっかけにエロ雑誌の世界に入り込み、『ウイークエンドスーパー』『写真時代』といった伝説のエロ雑誌を創刊、時代の寵児となっていく。そんな末井昭を演じるのは柄本佑。見た目と雰囲気が末井さんにそっくり!


 80年代のエロ雑誌をむさぼり読んでいた僕にとってはこの映画で描かれる中学生男子たちのエロにかける思いは涙なしでは見られない。「エッチなお姉さんが話相手になってあげる」という雑誌の電話番号に鼻血を出す勢いでかけてみれば電話は編集部につながっていてバイトの編集スタッフに末井さんが「適当に相手しろ!」とつなぐ。当然まったくお話できないので知り合いの風俗のお姉さんを臨時バイトに雇って話し方をレクチャー、電話回線は数台に増えてレクチャーを受けた編集スタッフ女性の事務的な喘ぎ声が編集部内に響き渡る。それを「エッチなお姉さん・ひとみ」と信じてタバコ屋の赤電話からかける中学生男子たち。これを「アホや」と切り捨てることはできるだろうか?いやできない!

 最近20代の男子と話してみたところ、当然のように「エロ雑誌はほとんど買ったことがない」「ネットでエロは見ている」という。粒ぞろいの美人モデルがなんでもかんでも見せてくれる時代に生きている彼らには、タバコの煙が立ち込める喫茶店で「真鍋のオッちゃん」なる人物があっせんする素人モデルのブサイクぶりはとても信じられないだろう(この真鍋のオッちゃんを舐めダルマ親方こと島本慶が憎めなく演じている)。
 なんでもやります、という名目で紹介された娘が「わたし、水着までしか見せません!モデルなんだから」と言い出して現場は大混乱。あわてて末井は真鍋のオッちゃんにクレームの電話を入れる。その間カメラマンの荒木経惟(演じた菊地成孔がまったく似ていないが、勢いでアラーキーっぽく見せる怪演ぶりだ)が「なんで脱げないんだよ!ははぁ、お前、変な乳首なんだろ!変じゃねえなら見せられるだろうが!」とカマシを効かせ、末井が電話を終えて戻ってきたころにはすっぽんぽん!アラーキーの口八丁手八丁で女を脱がせるテクニックが垣間見れてこれが天才と呼ばれた所以か…

 時流に乗ってバカ売れする末井さんのエロ雑誌だが、ワイセツ表現、女性器が見えそうなカットのせいで毎月のように警察に呼び出され(松重豊があのノリで「これ、入ってるんじゃないの?ダメだよぉ~こんなの載せちゃあ・・・」とゆるい説教をし、柄本佑が「いや、入ってるように見えるだけで・・・」とゆるゆるで交わしていくやり取りは爆笑を禁じ得ない)、発禁処分を食らい続ける。
 金が儲かりすぎて小銭でポケットが重くなると道端に捨ててしまったり、先物取引でン億円の借金を背負ったり、愛人が精神を病んで狂人になってしまったり、最初の妻との離婚を経験し…と母親をダイナマイト心中で亡くした過去に負けず劣らず、嵐のような人生を送っているのに悲壮感がほとんどなく、飄々と人生の岐路を渡ってしまう末井さんのユーモアかつペーソス感あふれる生きざまは、サブカル野郎が人生を生き抜くヒントが隠されているようにも思える。
 そして登場する女性たちの「理想のサブカル感」が現れていて同じ趣味のご同輩にはたまらんね。ダイナマイト心中する母親、尾野真千子。末井さんの最初の嫁、前田敦子(にじみ出るサブカル感!)。愛人役、三浦透子の名前のごとき透明感!さらに狂人になったあとの異常な美しさよ!エロ業界の男たちはみんなバカでスケベ(当たり前だけど)だが、女たちはみな印象的で美しく、そして強い。女装をして、自分の中に女を持っている末井さんらしい男女観が出ている素敵な映画化。






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Posted by 縛りやトーマス at 00:07│Comments(0)映画
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