2018年04月03日

お別れだけど、さよならじゃない『リメンバー・ミー』



 ピクサーの大ヒット作である。最近のピクサーは『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』『カーズ』の続編ばかりでネタ切れ感が出ていた。ライバルのディズニー(といってもピクサーはディズニーの子会社だけど)が『アナと雪の女王』『ベイマックス』『ズートピア』とオリジナルのヒット作を立て続けに公開してピクサーを追い抜いて立場が完全に逆転している。ピクサー側にディズニーアニメを上回るオリジナルのヒット作を出さなきゃ、という思いがあったのは間違いない。なにしろこの『リメンバー・ミー』は『アナ雪』や『ズートピア』と同じ流れを持っているから。

 舞台はメキシコ、とあるメキシコ人一家の物語。リヴェラ家は代々靴製造を生業としてきた一族で、かつて一族の長であった男が音楽家になる夢をかなえるために家族を捨てたことから妻のママ・イメルダは音楽を嫌い音楽をすることも聞くことも禁止する掟を家の者に受け継がせた。しかし12歳のひ孫、ミゲルは密に音楽を愛し、手製のギターを弾いて国民的人気歌手のエルネスト・デラクルスを信奉していた。

 年に一度、亡くなった先祖が残された家族に会いにやってくるという「死者の日」が迫る。祭壇に先祖の写真を飾り、墓場から家までの道を花びらで舗装する。日本の盆と同じようなものがメキシコにもある、というのは恥ずかしながらこの映画で初めて知った。

 リヴェラ家も祭壇に先祖の写真を飾っていて、家族を捨てた高祖父の顔の部分だけは切り取られていたが、折りたたまれた写真にはギターが写っていて、それはデラクルスの霊廟に保存されているギターと同じだった!自分の高祖父はデラクルスだと確信したミゲルは死者の日に行われる音楽コンテストに出場しようとするが、ママ・イメルダの娘であり、認知症を患っている曾祖母のママ・ココに代わって一家の長になっている祖母のエレナは「音楽禁止の掟」に従ってミゲルのギターを壊してしまう。夢をあきらめきれないミゲルは「自分はデラクルスのひ孫なんだから」ということで霊廟に忍び込んで祭られているギターを盗み出す。

 するとミゲルは死者の姿が見えるようになり、生きていながら死者の国へ行けるようになる。リヴェラ家の先祖たちと出会ったミゲルはママ・イメルダから「死者の物を盗もうとしたから、死者の国へ送られた。先祖の許しを得られれば生者の国へ戻ることができる」と聞かされるがその許しに「二度と音楽をしない」という条件をつけられたのでデラクルス本人にあって許しをもらおうとその場を飛び出す。ミゲルは生者の世界で家族に会いたいのだが、家族が祭壇に写真を飾っていないからダメだ、という理由で生者の国の入国管理局(風の施設が存在しているのがおかしい)に止められていた死者のヘクターが「自分はデラクルスの知り合いだ」というので、彼と行動を共にしデラクルスから許しを得ようとするのだが…


 死者の国では生者であるミゲルの体はだんだんとドクロ状になっていき、死者の国の夜明けまでに生者の国に戻らないと本当に死んでしまう。デラクルスに会うために死者の国の音楽コンテスト(ここにもあるのかよ)に出なければいけないミゲルはヘクターの知り合いにギターを借りるのだが、その友人は弱っている。「もう、俺を思い出す者は誰もいない」といって消えてしまう。死者の国にいる者は生者の国にいる子孫や知り合いがその人のことを覚えているうちは元気いっぱいだけど、その人のことを覚えている人がいなくなって忘れ去られると二度目の死を迎えてしまう。劇中、画家のフリーダ・カーロやルチャリブレのエル・サントなどが出てくるがこの人たちは生者たちに慕われているのでみんな元気なんだ。「お別れだけど、さよならじゃない」という劇中歌の歌詞はじいんとする。

 墓参りをして先祖を敬うという儀式が伝わっているアジアの人ならこの風習はすんなり理解できるだろう。この映画をきっかけにして風習、文化が異なる国のことを理解できるようになっている。ディズニーアニメ映画は『アナと雪の女王』で性の多様性を謳い上げ、『ズートピア』で種族の多様性をテーマにしていた。ピクサーもこの流れに乗らないと、と思ったのか、その試みは見事に成功している。『リメンバー・ミー』も明らかにこの流れを汲んでいて人種の多様性をテーマにしている。それを説教臭くいうわけでもなく、娯楽作品として完成させているのはただ事ではない。誰も映画見て説教なんてされたくないもんね。

 後半でヘクターやデラクルスの過去が明かされると、そんな内容だと想像もしていない観客は心底驚かされる。強烈などんでん返しがあって、散りばめられた伏線がきちんと回収されていくクライマックスはさすがピクサーだなと思うし、体中の水分を吸い取られること必至。僕も映画が終わったあとはヘクターみたいにガリガリになっていた。





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Posted by 縛りやトーマス at 00:31│Comments(0)映画アニメ
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