2018年04月04日

これは怪獣映画だ『シェイプ・オブ・ウォーター』



 第90回アカデミー賞、作品賞と監督賞の両方を受賞した瞬間、世界中の怪獣映画オタクが涙したという…メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督は子供の頃テレビや映画館で見たモンスター映画に夢中になり映画作りの道を目指した。その彼の最新作は半魚人と人間の女性の恋愛についての映画だ。ジャンル分けをするならば恋愛映画、ファンタジーということになるが、この作品は間違いなく怪獣映画なのである。


 冷戦時代のアメリカ。航空宇宙研究センターという施設で清掃員として働く聾唖の女性、イライザ(サリー・ホーキンス)はアパートの隣室の住人である画家の老人ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)、職場の黒人女性ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)以外に話し相手もいない、職場と自宅の往復を繰り返す退屈な日々を送っていた。
 センターにソ連から亡命してきたホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)が巨大なタンクを運び込み、「俺はトイレでは用を足す前しか手を洗わない。手を二度洗う男は根性なしだ!」とのたまう傲岸不遜な軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)が指を切る大けがをし、イライザとゼルダは急遽部屋を清掃するよう命令される。イライザはその部屋でタンクの中にいる半魚人を見つける。ここは航空宇宙研究センターの名を隠れ蓑にした秘密研究施設だったのだ。

 神秘的な外見に心奪われたイライザはその後も隙を見ては部屋に忍び込み、エサとしてゆで卵を差し出し、手話を通じて半魚人と心を通わせていく。半魚人とは人間の言葉で会話などできないが、イライザだって口が聞けないから何も問題はない。

 やがて半魚人の処遇をめぐり、ロケットに載せて宇宙飛行士の代わりに宇宙へ送り込めと提案するホフステトラー(半魚人は鰓呼吸できるから、この謎を解き明かせばソ連との宇宙開発戦争に勝てる!というわけ)と手っ取り早く生体解剖すればいい、と主張するストリックランドの両者はぶつかりあう。結局ストリックランドの案を採用することになるのだが、それをこっそり聞いたイライザはジャイルズに半魚人を救う手伝いをしてほしいと頼み込む。人間ではない生き物なのに?と二の足を踏むジャイルズ。だがイライザが手話で「彼を助けなければ私たちだって人間じゃないわ」と言われ、救出を決意する。
 救出作戦が決行され、イライザは偶然居合わせたゼルダの助けを借りて半魚人を運び出そうとするが、ホフステトラーと鉢合わせしてしまう。しかしホフステトラーは「半魚人を入れる水槽には塩分を絶やすな」とアドバイスし、逃亡の手助けをする。ホフステトラーはソ連のスパイで、上官からアメリカが半魚人の秘密を解き明かす前に殺せと命令されていたが、殺すことに反対してイライザたちに半魚人を託すことに。

 無事イライザのアパートのバスタブに半魚人を匿うことに成功したのだが、こっそり抜け出した半魚人がジャイルズの部屋で飼っている猫をボリボリ食ったりするんだよな。なにしろ肉食だから(笑)。「この子たちは友達なんだから食べちゃだめだ!」と怒られてシュンとする半魚人が可愛い。
 イライザは風呂場を目張りして部屋中を水で浸して半魚人と―結ばれる。恋人もおらず仕事前の自慰行為を日課にしているような中年女性が初めて異性(?)と結ばれる場面の美しさときたら!半魚人の勃起のメカニズムもきちんと説明されてるんですよね!スゴイ映画だ!

 デル・トロ監督は子供の頃に見た『大アマゾンの半魚人』(1954)がお気に入りで、『大アマゾン~』はアメリカの探検隊がアマゾンの奥地で見つけたギルマン(半魚人)を捕獲して見世物にしようとする。ギルマンは探検隊紅一点の女性に恋し、攫おうとするが探検隊の反撃を受けて死んでしまう。モンスター映画として公開された『大アマゾン~』は異形の怪物の恐怖を描いているが、デル・トロ監督はこれを美しい愛の物語として解釈し、ギルマンと人間の女性が結ばれる話を想像したという。そのうえで『美女と野獣』風の物語にし、「『美女と野獣』はどうして野獣が最後に人間の王子に戻るんだ?純愛だというなら野獣の姿のまま愛せばいいじゃないか」という長年の疑問をぶつけた。この映画の半魚人は半魚人のままなのだ!
 なので、これはどう考えても半魚人の映画だ。恋愛映画だ、ファンタジー映画だのと甘い言葉では済まされない。どこからどう見ても完璧な怪獣、モンスター映画なのだ。そんな映画がアカデミー賞の作品賞を取ったりしたのは本当に奇跡というしかない。





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Posted by 縛りやトーマス at 23:24│Comments(0)映画
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