2018年06月12日

子供の幸せ『ゴーン・ベイビー・ゴーン』

 第71回カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した『万引き家族』には胸を打たれた。一見普通ではない、血縁関係のない家族が血縁関係のある普通の家族よりも温かい、という話で終盤、普通でないことを説教する警察官の高良健吾と池脇千鶴の言葉はまったくもって正しいのだが、正しさ故に家族の心にまったく響かないというのを見て「普通がそんなにいいのか、普通って何?」と思わされた。そして『万引き家族』を見ながら思い浮かべたのが『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007)だ。
※以下ネタバレしていますのでご注意ください。




 デニス・ルへインの『私立探偵パトリック&アンジー』シリーズの第4弾でベン・アフレックの初監督作品だ。ボストンの街で4歳の少女アマンダが誘拐され、行方不明になる。アマンダの母へリーン(エイミー・ライアン)が目を離した隙にいなくなってしまったのだという。誘拐事件にマスコミが飛びつく中、警察の捜査に進展がないことにいら立ってアマンダの叔母ベアトリス(エイミー・マディガン)は地元に詳しい私立探偵のパトリック(ベン・アフレックの弟、ケイシー・アフレック)と相棒のアンジー(ミシェル・モナハン)にアマンダの捜索を依頼する。

 へリーンは目を離したどころか、子供を置いて男友達のところに行っていたのだ。おまけにドラッグ中毒のへリーンはヤクの売人チーズ(エディ・ガテギ)の運び屋もやっていた。そんなゴタゴタを知っている警察署長のジャック・ドイル(モーガン・フリーマン)ははじめからへリーンのDVを疑っており、警察はアマンダがもう生きていないと決めつけている。ジャックはベテランの刑事レミー(エド・ハリス)とニック(ジョン・アシュトン)をパトリックにつけてやるが、彼らも真面目に捜査しないし、アンジーも「ゴミ箱に捨てられた子供の死体は見たくない」と乗り気でない。

 パトリックはボストンの地元仲間を使って情報を集め、チーズが誘拐の主犯と断定する。身代金と交換でアマンダを渡すようにいう。チーズは白を切るが数日後に引き渡しを指示。レミー、ニックとともに引き渡し現場に行くも予想外のゴタゴタが起き、チーズは誤射され死亡、アマンダは池に落ちて死体は上がらなかった。

 最悪の結末を迎えた事件だったがパトリックはさらに別の幼児誘拐事件に首を突っ込み、そちらも最悪の結末を迎えてしまう。だが、パトリックはついにアマンダ誘拐事件の真相にたどり着く。


 アマンダはそもそも誘拐されていなかった。へリーンに母親の資格がないと思った人物が信用のおける人間にアマンダを預けて育ててもらおうとしたのだ。


 『万引き家族』では父親のリリー・フランキーが家に帰る途中で団地の廊下でポツンとしている女の子を連れてくる。妻の安藤サクラが女の子を家に帰そうとするが、夫婦が激しく罵り合っているのを聞き、「産みたくて産んだんじゃない」と女の子の母親(片山萌美)が叫んでいるのを耳にし、女の子をそのまま連れて帰る。
 二か月後、女の子の家を訪れた児童福祉相談所の職員が女の子が家にいないのをおかしく思い警察に相談して行方不明扱いになる。リリーや安藤サクラたちの家族は女の子をゆりと呼んで家族同然に暮らす。二か月間も子供を放り出しておくような親のところにいるより偽物の家族のところにいる方が幸せだ、というわけ。


 アマンダを引き取った人物は「あんな母親がまともに子供を育てられると思うか?」といい、この国では親権を主張されれば虐待されている子供を親から引き離すことすらできないと。アンジーもアマンダはこのまま愛情のある人間の元で暮らす方が幸せだと言い出す。悩んだ末、パトリックは警察にすべてを話す。子供が帰ってくれば、母親はきっと変わる、と信じて。


 アマンダが無事、自分の元に帰ってきたヘリーンは…何も変わらなかった。男をつくって遊びに出かけるヘリーンは様子を見に来たパトリックを歓迎し、ベビーシッターが来るまでアマンダを見ていてくれといって出かけてしまう。ひとり寂しそうにテレビを見ているアマンダのソファの隣にパトリックは腰を下ろす。アンジーは荷物をまとめてでていってしまった。
 ルへインの原作小説のタイトルは『愛しきものはすべて去りゆく』だ。




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Posted by 縛りやトーマス at 18:54│Comments(0)レンタル映画館
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