2018年07月21日

その後の人生『最後のランナー』



 映画そのものは見たことがなくても、ヴァンゲリスの有名なテーマ曲はみんな知ってる『炎のランナー』。



『炎のランナー』はユダヤ系のハロルド・エイブラムスとスコットランド人のクリスチャン、エリック・リデルの二人が互いの誇りをかけてパリ五輪の短距離走(100m)で対決しようとするが、予選が日曜日に行われることから安息日に走ることはできないとするリデル。アンドリュー・リンゼイ卿が400mの代表権を譲るといい、リデルは100mを棄権する。ハロルドは100mで、リデルは400mでそれぞれ金メダルを取るが、決着は永遠につけられることがなかった…
 映画ではその後リデルが布教のため宣教師として中国に渡ったことが語られる。中国でリデルがどのような人生を送ったのか?に迫るのが『最後のランナー』だ。


 パリ五輪で金メダルを取った後、数多のスポンサーからの誘いを断ったエリック・リデル(ジョセフ・ファインズ)は宣教師として出生地であった中国・天津へ渡る。パリ五輪の翌年1925年のことである。
 中国で家族とともに暮らし、人種の分け隔てなく人道支援に励むリデルだが、満州事変が起き日本軍が天津を支配すると状況は一変する。領事館は国外退去を促すが現地にとどまって人道支援を続けることを選択したリデルは家族をカナダへ逃がし、自分は中国に残る。
 避難者の中国人たちと暮らし、日本軍に対抗するレジスタンスのジ・ニウ(ショーン・ドウ)や少年シャオ・ション(サイモン・ツウ)に慕われ日々を送るが太平洋戦争が勃発すると在留外国人たちにとって中国は暮らしづらくなる一方になる。ついに日本軍に捕らえられたリデルは外国人らとともに収容所へ送られる。
 リデルがパリ五輪のメダリストだと知った湯本少佐(小林成男)はレース対決を申し入れる。この辺は『不屈の男 アンブロークン』にも似たシーンがある。体力をつけろと多くの食べ物が振舞われるがリデルは拘留されている仲間たちや学校の子供たちに分け与えてしまう。レースは当然惨敗。勝利に沸き立つ日本兵たち。しかし食事を子供たちに分けていたことを知らされると激怒した湯本の命令でリデルと反発したデヴィッド(ザック・アイルランド)は独房に放り込まれる。

 日本兵による嫌がらせ、虐待が続くあたりも『不屈の男 アンブロークン』と似ており、あのころの日本軍はどこでも同じようなことやってたんだな。こういうと熱心な愛国者の人々は「また反日映画か。許せん!」と映画を観てもいないのに息巻いてるのです。日本軍の過去の悪行から目を逸らしてはいけない。しかし本作では悪化する戦況の中、レジスタンスによる支援物資の提供を知っていながら見逃したりする日本兵が居たりもするのでご安心を。どんな時にも人道的にふるまう人間がいるものである。

 とはいえひどいやつもやっぱりいる。デヴィッドへの凄まじい虐待がそれで、あまりの仕打ちに耐え切れずデヴィッドはニウに脱獄を手配してもらう。肥溜めの桶に浸かって逃げ出すという想像を絶する手段で脱獄を成功させるが、逃亡を手伝ったとアメリカ人のヒュー(ジェシー・コーヴ)が疑われ独房に入れられ、今までは見逃されていたレジスタンスによる物資提供もストップする。劣悪な環境で気管支を患い生命の境をさまようヒュー。彼のために薬を手に入れようとするリデルはもう一度少佐に対決を申し込む。だが少佐が提示した対決の日は日曜日。リデルは仲間のために安息日に走ることを決意するが自身の体も病に侵されていたのだった。


 信仰という信念のために走る、という『炎のランナー』でのリデルとまったく同じテーマなのだから思い切ってこちらの映画でも『炎のランナー』のテーマ曲流してほしかったなあ。ラストがもっと感動的になったと思うのだが。





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Posted by 縛りやトーマス at 03:19│Comments(0)映画
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